月別アーカイブ: 2023年12月

【11月30日】ゼミ活動のご報告

こんにちは。M2の春口拓人です。
11月30日に行われたゼミ活動の報告を致します。
発表内容は大空さんと濱田さんの研究進捗報告と大空さんのプレイセッションです。

大空さんの進捗報告では11月18日に開催されたサイエンスアゴラの出展内容とその際に行ったアンケートの集計結果についてでした。
12名の参加者がおり、それぞれの方からのゲーム内容のフィードバックについて発表されました。
特に印象的だったのが研究者や大学学部生とビジネスパーソンの間にある評価の違いです。
前者の方はゲームに好印象な意見が多いのに対して後者の方は批判的な意見が多く、研究が身近にある人ほど意欲的に取り組める内容である印象でした。この点を、学びを消化する場所が見つけられなかったからではないかと考察されており私も同様の考えでした。ほかにもゲームの進行時間が長く途中で飽きが来るため、対象によって事例をカスタマイズするべきという考察もあり、ゲームの面白さや有効性が確認できたのと同時に改善点も多く発見できていたと感じました。

浜田さんの進捗報告では前半がサイエンスアゴラの活動報告で、後半は研究内容についてのお話でした。
Minecrafと英語学習をテーマに関心のある分野が徐々に絞り込まれてきており、ワークショップの経験から研究の方向がしっかりと定まってきていると感じました。卒業後のキャリアについてのお話も少しされており、様々な方をロールモデルとしながら濱田さん自身のキャリアを決めていかれると良いのではないかと感じました。

プレイセッションでは大空さんが準備されたMOONSHOOTERという国の事業について告知を行いながら科学技術コミュニケーションを促進させる、科学技術と社会の接続に資するボードゲームのプロトタイプを遊びました。MOONSHOOTERに採択されている研究を知りながら様々な視点からその研究を考える事ができる良いゲームだと感じました。研究に対する市民の期待と不安を考えるというテーマにピッタリだと思います。

以上が11月30日のゼミ活動報告です。

【11月9日】ゼミ活動のご報告

こんにちは。研究生のジョナです。

段々と寒くなっているこの季節ですが、外で食べる暖かい焼き芋の美味しさなど、この時期ならではの幸せも多く感じ取っています!みなさんはいかがお過ごしでしょうか!

早速ですが、先週のゼミ活動のご報告に入りたいと思います。今回のゼミ活動は文献研究(M2大空さん、M1濱田さん)とプレイセッション(木村先生)でした。

文献研究 M2大空さん 

<教育デザイン研究の理論と実践> 第6章 評価と省察

文章では評価と省察の全体像からはじめ、それぞれがどういうものか(評価はデザインとプロトタイプについて洞察を得るため用いる、省察は評価から得たものを振り返って考察する)、またそれらを行う理由及び効果、実施する際のポイントなどが紹介されました。

評価は計画、フィールドワーク、意味づけという3つのステップで構成されます。省察は有機的な省察と構造化された省察の2つのステップで構成されています。

大空さんは自分の研究の各段階が文章でどのステップと当てはまるかを詳しく説明してくださいましたので、内容を非常に具体的に理解することができ、今後自分の研究を進める参考にもなりました。

発表後の討論では「自分の研究を他人に伝える際にちゃんとしたフレームに従って文書化する必要性」や、「brush upを繰り返し行う開発研究では、経験をリソースとして次の開発に繋ぐ時に必要」、「実験ノートの必要性」などと、先生方から多くの貴重な意見がありました。

文献研究 M1濱田さん 

Reinders, H. & Wattana, S. (2014). Can I Say Something? The Effects of Digital Gameplay on Willingness to Communicate. Language Learning & Technology, 18(2), 101–123.

この論文はEFL(English as a Foreign Language)に関する論文で、コミュニケーション意欲(WTC, Will to Communicate)の調査方法などを取り扱った、濱田さん自身の研究ととても関連性の高い内容でした。

この研究ではオンラインゲームをプレイすることが英語学習者のコミュニケーション意欲にどんな影響を与えるかを調査し、特別に設定されたクエストを行うことでWTCにどんな変化が生じたのかをアンケート調査で測定しています。結果、学生の英語への自信や言語不安、コミュニケーション能力などの領域で明らかな改善が見られたことで、ゲームベース言語学習の教育効果が肯定されています。討論の段階では、論文で扱う調査方法の適切性についての議論が行われました。

プレイセッション 木村先生 

<トラベル島のニャンコ>

今学期の始まりに一度木村先生が紹介してくださった<トラベル島のニャンコ>という農場経営ゲームをメンバーでプレイしました。自分のペースで「適当に遊ぶ」組(5人)と何かを目的にして「頑張って遊ぶ」組(5人)に分け、ゲーム内で自由に活動しました。プレイ前後にはFlowの研究調査として事前テストと事後テストを行いました。

このゲームは農作物や畜産物を収集又は加工し、島を訪れる猫たちに売ることで、経験値と財産を増やしていく流れとなっています。私は頑張って遊ぶ組でしたので、ゲーム内でコインを多く集めることを目標とし、時間ギリギリまで挑戦しました。ゲーム内で得た成果をみなさんで共有した結果、頑張り組のランクがやや高いとなりました。

討論の段階ではFlowに関して、ゲームをやっている最中にデータを取れない点、個人差が存在する点、<トラベル島のニャンコ>は適切なゲームになるかどうかなどについて議論されました。木村先生によると、Flowの研究で最も多く扱われているゲームはTetrisだそうです。Tetrisを思い出すとなんとなくその理由がわかる気がしました。

以上が11月9日のゼミ報告となりますが、ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

では、また次の記事でお会いしましょう!

10月19日 ゼミ活動の報告

こんにちは、修士2年の春口です。
10月19日に実施されましたゼミの活動報告をさせて頂きます。
発表者は春口、犬田さん、財津さんの3人です。

 春口の発表では、Amazon社が公開している「AWS CloudQuest」というゲームの事例紹介を行いました。
 このゲームはAmazon社が提供しているAWSというサービスを扱えるようになるためのゲームで、実際のAWSのコンソールを使いながら課題を作る事でAWSの使い方が学べるようになっています。ゲームはRPG形式でクラウド島という仮想の島の課題を探すパートと課題解決を通してAWSの使い方を学ぶ学習のパートに分かれています。
 学習のパートは、「Learn」「Plan」「Practice」「DIY」という4つのSTEPで構成されており「Learn」「Plan」でAWSの使い方の座学を「Practice」「DIY」で基礎的な課題と応用課題の作成をそれぞれ行います。座学では資料を読む事が中心となっていますが、AWSサービスの構造や専門用語の解説がしっかり行われておりわかりやすい内容でした。課題の作成ではAWSコンソールを使って課題を作成しますが、こちらもしっかりとした解説があり詰まる事なく課題を作成することができました。
 総じて内容が分かりやすく、ゲーム形式で取っつきやすいためAWSをこれから触るという学習者にピッタリの内容だと感じました。

 犬田さんの発表では、ゲームによってデータ収集をしている事例を調べるという目的で「Skill Lab Science Detective」というゲームの事例紹介が行われました。
 「Skill Lab Science Detective」はScience At Homeによって作成された認知スキルを試す様々なミニゲームを遊ぶことができるゲームです。ゲームの目的は、よりよいゲーム体験の開発やより効果的に科学問題に貢献させる方法の検討、認知マップ・認知指標の作成、認知スキルの正常な理解などとなっています。
 ゲーム内では様々な認知スキルを試すミニゲームを遊ぶ事ができ、これらを遊ぶ事で自分の認知スキルについての認知マップが作成されます。このゲーム単体でどのようなデータが取れるのか、個人の継続的なデータを取るのが目的なのかなど様々な議論が行われましたが、継続的なデータの収集が目的だろうという結論に落ち着きました。
 また、このゲームの紹介を通して犬田さん自身の研究についての整理も行われたためとても有意義な発表であったと思います。

 財津さんの発表では、「Board Games Enhance Creativity: Evidence From Two Studies」という論文についての発表でした。
 論文では、創造性が従来の教育法ではなかなか育たずゲームのような代替的で強力な方法を用いる事は理にかなっているがボードゲームと創造性の関連性を調べた研究はほとんどないとして、ボードゲームのプレイ頻度と創造性に関するいくつかの指標との関連を探るアンケート調査とボードゲームをプレイすることが創造的パフォーマンスに及ぼす影響を調べる実験的手法の2つの研究の結果が示されていました。
 アンケート調査の方では、ボードゲームのプレイ頻度と創造的潜在能力及び創造的パフォーマンスの2つに関連性が認められており、ボードゲームを定期的にプレイすることがより高い潜在的能力と関連することが示唆されました。実験的手法では、創造的なボードゲームをプレイすることが被創造的なボードゲームをプレイすることよりも独創性の改善につながる事が示唆される一方で、この独創性の改善は事前の創造的潜在能力が低いほど強くなるという仮説が否定されました。
 発表後の意見交換では、ボードゲームのプレイ頻度が創造的パフォーマンスと関連がある点はとても納得ができる一方で、独創性の改善について事前の能力が低いほど強くなるという仮説が否定された点には、チーム組みの方法やチーム内の創造的潜在能力の偏りが影響がでたのではないかなど様々な意見がありました。私もより中長期的な創造性の熟達の部分にはボードゲームはどのような効果を発揮するのかが今回の実験では明らかではなかったため気になる所でした。ボードゲームと創造性の関連については、財津さんがご自身の研究でデータを蓄積されている所のためこれからの財津さんの研究結果が気になる論文紹介の時間となりました。

以上が10月19日のゼミ報告となります。

【10月5日】ゼミ活動のご報告

Sain Bainuu(こんにちは)!

皆さん、初めまして。研究生のジョナです。

中国内モンゴル出身で、今学期から研究室でお世話になります。

先週10/5に行われたAセメスター初のゼミの報告を担当することという、ありがたい機会をいただきました。

早速ゼミ活動のご報告をしていきたいと思います。今回のゼミ活動は私(ジョナ)の自己紹介と皆さんの夏休み活動報告でした。

最初に、藤本先生から研究室の紹介をしていただきました。活動報告では自分が取り組んでいる教科書の出版や事例研究のゲームなどを紹介しました。その中、ポケモンスリープについて、メンバーで何人か遊んでいるようで、使いやすさなどについて面白い討論もありました。

続いて、私から挨拶と自己紹介、研究関心について発表しました。

私の研究テーマは少数言語学習・文化体験ゲームのデザインです。具体的に説明しますと、モンゴル語学習を例に、ゲーム内で言葉や文化の環境を体験することで、いかなる学習効果を得るかについての研究です。大学では情報科学・技術を専門としていました。言語学習にも以前から興味を持ち、これからは今まで学んだ知識を活かしながら、少数言語学習に役立てるゲームをデザインしたいと思っております。

引き続き、夏休みの活動について発表順にご報告したいと思います。

M2春口さん:いくつかの会社から内定をもらい、その中で、とある会社で就職することがお決まりになったそうです。おめでとうございます!友達との東京観光や修士の皆さんでお食事など活動もいろいろあったようで、とても思い出の残る夏休みだと思いました。

M2大空さん:研究ではDIGRAでの発表、ゲームのテストプレイ、デザインの完成、FOST申請、論理審査申請など、研究以外にも親子ゲームジャムや関連論文と事例の研究など多くの活動を行ったようです。今後の履修登予定や日程の計画をはっきり立てていることが非常に勉強になりました。

財津先生:八月末に行われた親子ボードゲームジャムとその調査などについての報告を行い、実験の準備や論文執筆などを進めたようです。過去のデータと合わせて、今後の論文化や発表を目指しているとのことです。研究外活動で上方から撮ったアローラナッシーの写真は面白かったです!

M1濱田さん:多くのワークショップに参加し、自分でも企画したとのことを聞いてとても憧れました。この夏は広島に行って、Minecraft Eduのワークショップに参加したそうです。歴史や平和教育にゲームの活躍する可能性について新たな知識を得ることができました。

M1犬田さん:発表や学会活動以外にフロントエンド言語やphotoshopなど勉強し、就活にも力を入れたようです。自分で作ったゲームプラットフォームをお見せしました。研究や学習以外も美術館や映画など豊富な活動をしていて、とっても充実な夏休みの過ごし方が参考になりました。

坂井先生:家族、仕事、そして研究活動、全てに「Mission Complete」という印象的なマークをつけたかっこいい報告でした。特に、論文の文字数の変化には驚きを感じました。また、下鴨神社の御手洗祭については初めて知りましたが、その紹介を聞いて、ぜひ訪れてみたいと感じました。

新居先生:夏休みにはユニバーサルスタジオで楽しい時を過ごされたとのことです。キュートなポケモンの食べ物の紹介もしていただき、非常に興味を引かれました。楽しく遊べるための経験談もいっぱい共有していただき、ユニバーサルに行くときは参考にしたいと思いました。

木村先生:基礎文献紹介の記事の執筆、心理学の主要な概念の整理、研究メモのノート作成などの内容で報告をしました。事例研究で二つのゲーム(トラベル島のニャンコ、グラブル)を取り上げ、それぞれのゲームについて様々な情報を共有してくださり、大変興味深かったです。

以上がゼミ報告となりますが、不十分も多くあると思いますので、次からは皆さんが発表する際に十分な記録をして、知らないものを検索し、多様な感想を出せるようになりたいと思います。

また、藤本先生の冒頭の研究室紹介で、InputとOutputを重視していることを知り、これからは両方も欠かせないように、Inputしているもの(論文、事例研究)をよく整理し、Output する力(発表、文章作成)を高める方面で頑張っていきたいと考えました。

今回のゼミ活動の記録もまた、Output の力を高める一つの機会であり、大切にしたいという気持ちで書きました。

ゼミの後、メンバーの皆さまから温かい歓迎会を開催してくださり、美味しい料理と飲み物を沢山ご馳走になりました。お腹も心も幸せに満たされ、楽しい時間を過ごしました。OBの方(升井さん、池尻さん)も参加してくださり、いろんな話を聞くことができました。皆さんといろんな共通話題を見つけることができて、うれしい限りです。

次のゼミでは、研究計画について発表することになっており、研究室の皆さんの貴重なアドバイスや意見をお聞きできることが楽しみです。

これからは研究に限らず、いろんな方面でメンバーの皆さんから学ぶことになると思います。人間としての成長を得られることが楽しみです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。これから、どうぞよろしくお願いいたします。

また次の報告記事でお会いしましょう!

Bayartai(さようなら)!

ジョナ(卓娜/Jona Honuud)

6月1日 ゼミ活動報告

こんにちは、春口です。
6月1日のゼミ活動報告を致します。今回は犬田さん、濱田さん、坂井先生の3名の発表でした。

犬田さん:進捗報告
 データの評価とデータの収集についての、2つに分けて報告されました。
 データの評価については、「ゲーミフェイケーションによって収集したデータに誤差が生じる」という批判を取りあげ、むしろ深層心理に近いデータが取れるのではないかという考えを示され、同時に、ゲームによって没入・集中している状態であるフロー状態に入る事ができるため余計な思考が消えるため、という点を根拠として取り上げられました。ただ、この点については質疑の時間で研究員の木村さんから、「フロー状態はあまり特殊な状態で無く、質問紙を書いている時もフロー状態にあると言ってよいと思う。そのため、フロー状態を以て深層心理に近いデータが取れるという考えは当たらないのではないか」という意見があったため再度考察してみる必要がありそうです。
 データの収集についてはあまり進んでいないとの事でした。行動経済学の本を読んで、ちょっと思っていたのと違ったため社会心理学の方面で探してみるそうです。質疑の時間で、社会心理学の本を読むよりは質問紙法自体の課題に関する論文を読むと良いという意見も合ったため、様々な方面からアプローチを取る事になりそうです。

濱田さん:進捗報告
 現在はMinecraftを使った学習の論文を読み漁っている所との事でした。主にSTEAM教育や英語教育がテーマのものを当たっているそうです。
 研究に関する活動として、本校の渡辺研究室主催の平和学習ワークショップやマイクラカップWSに参加しているそうで、ワークショップの設計や運営から論文執筆までの流れが学べる良い機会になりそうです。広島にも行けるとの事でとても羨ましいです。

坂井先生:研究員発表
 坂井先生の発表は現在執筆されている博士論文の研究内容についてのお話でした。ノベルゲームを使った死生観教育について実施した研究の結果について説明を頂きました。このゲームについては授業の方で触れさせて頂く機会があったため、その時の経験と照らして聞いたため理解しやすかったです。授業で触れた部分は研究の一部分だけであったため、その前後に何を行ったのかや回答した質問紙がどのような背景で作成されたかを聞く事で研究としての全体の流れを学ぶ事ができ、自分の研究でも真似できる部分は取り入れようと思いました。

以上が6月1日のゼミ報告です。

[4月27日] ゼミ活動報告

こんにちは、修士2年の春口です。
4月27日のゼミ活動報告をさせて頂きます。
今回は、犬田さん、濱田さん、財津さんの発表でした。

濱田さんの発表は事例研究で、「マグナと不思議の少女」についてでした。
英語しか分からない少女と日本語しかわからない少年と英語・日本語両方分かるスライムをメインキャラクターにしたRPGのようなゲームです。
特徴的なのが、ゲーム内で英語の発声を求められその発音をAIが評価してくれるという点です。
例えば敵に攻撃する時は「Attack」の発声が求められ、その発音の良さによって攻撃の威力が変わる等です。
この機能によって一人でも英語のスピーキングの練習ができるゲームになっています。
濱田さんは、本ゲームの学習要素の部分について「学習要素を細かく分解して、一つのステージにある学習要素を少なくしている」といった点を挙げられ、ご自身の研究でも先に学びの部分を細かく分割して後で遊びに対応させていくといった手法を取りたいといった分析をされていました。
また本ゲームの長所と短所について、フィードバックがすぐに来る所が長所でプレイヤーの自由意志で会話できない点が短所だと分析されていました。

犬田さんの発表も事例研究で、色々なノベルゲームを遊んだ結果を報告されました。
送電灯のミメイ、ありすえすけーぷ、きみの偽物に恋をする等のノベルゲームを紹介され、ノベルゲームの分類軸として「分岐があるかどうか」「プレイヤーのインタラクションがあるかどうか」の2つの軸を提案されました。
またこの軸を前提とした上でご自身の研究では、選択肢を増やして結果を複数用意するとデータ収集が大変になる事ため選択肢を複数用意しても結論は同じになるようにするといった点や、ゲームそのものの面白さはインタラクションの量で変わってくるといった点の分析を活かしたいとの事でした。
Q&Aでは、インタラクションの種類も分類できるのではという指摘や、分岐したという事実があればプレイヤーは遊んだ気持ちになるため、どの選択肢でも同じ結論に至るというアプローチは良いと思うという指摘、研究を方法論として位置付けるかどうかで研究内容が大きく変わるといった指摘がありました。

財津さんの発表は東京大学で主催されたマインクラフトを用いたワークショップの分析についてでした。
ワークショップの始まる前と終わった後に取ったアンケート内容を分析し、相関の有無等を見つけるという内容でした。
今回のアプローチは、事前に仮説を立ててワークショップで検証するという形ではなくワークショップという実践を先に行いそこから意義のある結果を見つけ出すという形のアプローチでした。このため、結果を見つけ出すのに大変な努力が必要との事で、結論を見つけ出すのに苦労されているというお話でした。
研究は仮説を最初に建てるモノという先入観があったため、実践が先にあるという今回のような研究方法はとても新鮮に思えました。

以上が前回のゼミの活動報告です。

【12月8日】ゼミ活動報告

皆さんこんにちは、M2の叶です。

最近おすすめのスポットは三四郎池です。論文執筆期間の気晴らしの良い場所です。(雨天は足元を注意すべき)

冬(?)の三四郎池

早速今週のゼミ内容を共有します。今週は関連研究と文献輪読の回でした。発表者は叶、M1の大空さんと特任研究員の木村さんでした。

「Introduction」と「Literature Reivew」の書き方(叶)

自分は今回、少し変わったテーマではありますが、論文執筆時の「Introduction」と「Literature Reivew」の書き方について共有しました。最近は英語論文の書き方について色々調べた情報を整理しました。南カリフォルニア大学図書館の論文執筆ガイド(①)とユーチューブでの論文執筆に関する動画(②③)を参照して、この2章の書き方と構成などを以下の図にまとめました。

イントロダクションの内容と構成
文献レビューの準備と執筆時の構成

参考文献


インストラクショナルデザイン理論とモデル(①)(第1章&第8章)(大空さん)

第1章は「学習者中心の教育パラダイム」です。「学習者中心」とは、個々の学習者と学習そのものに焦点を当てる立場であり、「指導者中心」の反対とも言えます。その普遍的原理には、①達成基盤型のインストラクション、②課題中心型のインストラクション、③個人に合わせたインストラクション、④役割の変化、⑤カリキュラムの変化があります。

第8章は「学習のためのゲームのデザイン」です。ゲーム型基盤の教育アプローチは、豊かで没入型の経験を通した学習促進を目指しています。その普遍的原理には、①ゲームのビジョンを創造する、②ゲーム空間の設計、③教授空間の設計があります。

大空さんは、今回紹介した理論から自分の研究の気づきを得て、研究に「学習者中心」というキーワードを導入して説明し、また、ゲームのデザイン上はレベル分け、カードのカスタマイズ性の活用、ミルフィーユ型プログラムなど、デザイン上のアイデアを共有しました。今後の大空さんの研究のゲーム型ワークショップデザインのさらなる具体化を楽しみしています。

参考文献

  • ① C.M.ライゲルース, B.J.ビーティ, R.D.マイヤーズ(編), 鈴木克明(監訳)(2020)学習者中心の教育を実現するためのインストラクショナルデザイン理論とモデル.北大路書房.

ビデオゲームの活用と脳活動に関連する実証的研究の紹介(木村さん)

特任研究員の木村さんは、①医療のシリアスゲーム研究、②高齢者の認知制御トレーニングのシリアスゲーム研究、③ビデオゲームトレーニングと報酬系の研究という3本の論文を紹介しました。

その中で、自分が最も面白いと思ったのは②です。この研究は『ニューロレーサー(NeuroRacer)』という視覚運動追跡課題と同時に知覚弁別課題に取り組む型のシリアスゲームの実証実験です。この研究は、「ニューロレーサー」を60歳〜85歳までの高齢者46名を毎週3時間の頻度で、1か月の間にプレイしてもらいました。プレイしていない対照群と比較すると、実験群は1か月後でマルチタスクのパフォーマンスが有意に向上しました。しかも驚くことに、実験効果は6か月後も持続していました。簡単に言いますと、脳はマルチタスクのシリアスゲームのトレーニングにより活性化できることが証明されました。

最後に、木村さんはビデオゲーム研究の現状についての所見を述べました。

  1. インパクトのあるシリアスゲーム研究は、実証的研究の専門性とビデオゲームの開発力を両立させている。
  2. 厳密な人対象の実証的研究では,複合的刺激であるビデオゲームの扱いが非常に難しい。
  3. 研究データとして行動ログを取得可能なビデオゲームを開発することが重要である。

参考文献

  • ① Cole, S. W., Yoo, D. J., & Knutson, B. (2012). Interactivity and reward-related neural activation during a serious videogame. PLoS ONE, 7(3),e33909.
  • ② Anguera, J. A., Boccanfuso, J., Rintoul, J. L., Al-Hashimi, O., Faraji, F., Janowich, J., Gazzaley, A. (2013). Video game training enhances cognitive control in older adults. Nature, 501, 97–101.
  • ③ Lorenz, R. C., Gleich, T., Gallinat, J., & Kühn, S. (2015). Video game training and the reward system. Frontiers in Human Neuroscience, 9, Article 40.

今回の報告は以上になります。最後にお読みいただきありがとうございます。

【11月24日】ゼミ活動報告

皆さんこんにちは。外国人研究生の蔡です。

今週のゼミ記事も私によりご報告させていただきます。

よろしくお願いいたします。

今回は研究進捗(叶さんと升井さん)と研究員発表(財津さん)でした。

・研究進捗 「進捗報告」 叶さん

叶さんは、現時点での研究進捗と成果などをご紹介してくださいました。

①洗練された概念、カテゴリーと結果図

②考察

③論文のアウトラインと進捗

叶さんは、ゲームプレイヤーの第二言語学習の過程での概念をより深く洗練することを通じて、統計の数に合う合理的な概念で、ゲームプレイヤーの学習過程のフローチャートが出来上がりました。その図を見ると、ゲームプレイヤーがゲームをするとき、面白さと効率の重視の差ため、心理的な変化と行動の変化になるということをよく納得できました。

そして、叶さんは、研究の過程で考えた面白いアイデアなどをご紹介してくださいました。例えば、

①図の違う点いて、異なるプロセスを経る

②一般化しきれない部分がある

最後に、叶さんは、現時点での論文のアウトラインと進捗をご紹介してくださいました。

叶さんの今後の研究成果を期待しています。

・研究進捗 「進捗報告」 升井さん

升井さんは、研究のテーマと内容、そして、現時点での進捗と今後のスケジュールをご紹介してくださいました。筆者が新入生のため、升井さんは特に研究のテーマと内容をご紹介してくれまして、感激します。

①章立て

②執筆方内容の修正

③今後のスケジュール

升井さんは論文の構成、もらったアドバイスによる修正した執筆方内容などを紹介してくれまして、升井さんの進捗をわかりました。そして、升井さんの今後の論文スケジュールを見ると、升井さんが順調に論文の作成を進めていることをわかりました。升井さんの今後の研究成果を期待しています。

・研究員発表 「小学校高学年向けのゲームジャム型ワークショップの実践とその教育的効果に関する研究ー創造性に着目して」 財津さん

財津さんは、ずっと行われている研究の成果をご紹介してくださいました。

財津さんは、ゲームジャムに関する教育的効果の測定は少ないことがきっかけを紹介して、「ゲームジャム型ワークショップの参加者の創造性への影響」と「小学校高学年の子どもたちを対象にゲームジャム型ワークショップを開発・実施する」を注目し、「新しい家事」という子供向けの親子ゲームジャムを設計しました。

ゲームジャムの時間設定は二日間の12時間です。実施した場所は第一回の福岡県福岡と第二回の東京都文京です。具体的な内容を以下のリンクをご参照ください。

夏休み親子ボードゲームジャム2021in福岡(2日目)を実施しました!https://note.com/saikorojuku/n/n78feccfbf3ad 

【制作ゲーム公開】夏休み親子ゲームジャム2022 

そして、財津さんは、実施されたゲームジャムから様々な面白いデータを収集していたので、それをよく分析し、紹介してくださいました。

まず、財津さんは、ワークショップ実施前、実施直後、実施1ヶ月後の三つの時期に分けて、評価のプロトコルと測定指標を設定し、主要な従属変数「子どもの創造的自己効力感」、「行動変容ステージ尺度」を決めました。

次に、結果として、行動変容ステージの変化は「ステージ移行(-)」予想以外の結果が出てきました。そのほかには、「家事」より、「ゲームを作ること」に対するmini-cがたくさんあったので、最初に設定された目的とちょっと違い、今後の研究の方向性になりました。

最後に、結論は、統計的有意差が見られなかったため、教育的効果があったとは言えないということです。

そして、みんなさんはなぜ予想通りのデータが出ていないかと今後の研究の方向などディスカッションを行うことができました。財津さん今後の研究を期待しています。

今回の報告は以上になりました。

最後までお読みいただきありがとうございます。それでは、また来週!

【11月17日】ゼミ活動報告

皆さんこんにちは。外国人研究生の蔡です。

最近、寒いですが、いよいよ秋の感じが強くなりますよね。

東京大学本郷キャンパスの正門に入って、銀杏並木の黄葉は綺麗です。

葉を散らしている

さて、今週のゼミ報告に移りたいと思います。今回は文献研究(升井さん)と事例研究(春口さん)とプレイセッション(木村さん)でした。

・文献研究 「研究テーマ関連論文の概要紹介」 升井さん

升井さんは、研究テーマ関連論文2つをご紹介してくださいました。

一つは、英語文献「Toward Truly Accessible MOOCs For Persons With Cognitive Impairments A Field Study」です。障碍者と非障碍者の離脱率の違いを測定することで、ビデオ学習においてユーザーにカスタマイズの権利があることが大切だということをわかりました。これも、升井さんの修論と同じ主張をしています。

そして、論文の実験結果から見ると、障碍者と非障碍者による履修の脱落率の違いはなかったという結果をわかりました。

もう一つは、「日本における自己調整学習とその関連領域における研究の動向と展望」です。この論文を通じて、自己調整学習という今後の研究の方向性を明らかにする概念をわかりました。

自己調整学習とは、

①メタ認知:獲得したカスタマイズアイテムを俯瞰して学習履歴を認知

②動機づけ:自己決定理論にもとづくモチベーションの維持

③学習方略:自分に適したシステムデザインで自らの学びに責任を持つ

それで、今後の自己調整学習研究の方向性は以下の2つが有力である。

①理論をもとに実践を創る研究

②理論をもとに実践を切り取る研究

最後に、升井さんは、「Readable」というpdf翻訳工具をご紹介してくださいました。とても便利なので、助かりました。

・事例研究 「ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング」 春口さん

春口さんは、任天堂より製作された『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』という言語を使わずにゲームプログラミングのゲームをご紹介してくださいました。

このゲームに対して、学習の観点から見ると、良いところは、

①言語感の無いシステム

②アイデアを思いつくから完成までのプロセスが早い

一方で、悪いところは、

①ゲーム作成に必要なテクニックは学べない

②ゲームの規模に制限がある

以上のようにまとめると、みなさんがよく注目のポイントは、ゲーム自体で自己完結しているのでその後への繋がりをどうするかが学習ゲームとしての課題である。

・プレイセッション 「手続き記憶としてのコマンド入力」 木村さん

木村さんは、記憶の種類の中で、非宣言的記憶の一種としての手続き記憶をテーマにして、今回のプレイセッション「格ゲーのコマンド入力の習得に挑戦!」をいただきました。

手続き記憶とは、自転車の乗り方、キーボードの入力、ビデオゲームの操作など繰り返し訓練することによって自動化や無自覚化が進んで、いったん十分な水準で獲得されると長期間にわたって忘却されにくいということです。

これによって、今回のプレイセッションで、『ソウルキャリバー V』という格闘ゲームの中で、みなさんは「波動拳!」(↓↘→+ボタン)というスキルの入力を一緒に挑戦してみるという感じになりました。

プレーするルールは、「波動拳!」の練習と挑戦を10回ずつで、可能な限り技を繰り出します。そして、皆さんは二つのチームに分けて、達成数が多いチームは勝利になります。

プレーする時間は早いですけど、非常に楽しかったです。

このように、結果を見ると、やったことがある人とやったことがない人も、コマンド入力は意外と難しいです。そして、操作の方法の説明も伝わりにくいということを感じました。最後に、「↓↘→+○ボタン」を手続き的記憶として定着させたプレイヤーは「↓↘→↓↘→+○ボタン」などのより複雑なコマンド入力をより早く習得すること、つまり、正の転移があるということをわかりました。

今回の報告は以上になりました。

最後までお読みいただきありがとうございます。それでは、また来週!

【10月20日】ゼミ活動のご報告

皆さんこんにちは。M2のイェです。
最近は寒くなってきて、本郷の並木は黄色に染まっているところです。
今回のゼミは、初めて情報学環本館の教室で行われました。
高層なので秋の午後の青空と日暮れを満喫しました。

教室から眺められた景色!きれい!

本題に戻りますが、今回のは升井さんと自分の事例紹介とサイさんの進捗報告でした。

・「桃太郎電鉄教育版」(升井さん)

升井さんは自分のTGS2022とEDIXオンラインの経験を踏まえて、長年に日本で愛されてきた「桃太郎電鉄」シリーズの教育版を紹介しました。今冬リリースする予定で、その特徴としては、ブラウザ環境、教育現場に導入無料、普通版と比べて学習に適している内容や機能の追加(*)などが挙げられます。

* 具体的には①地方を限定してプレイ、②情報の補足的表示、③先生側のコントロール、④「貧乏神」の排除などがあります。

升井さんは、一般人と社会科教員の意見のレビューも共有してから、最後にはゼミがチームに分けて、「教育版ならではの新たな機能を追加するなら何を入れるか?」というテーマでディスカッションをしました。提案のまとめは以下になります。

  • 学習効果を測れる機能 
  • レベルアップ、バッジ 
  • 図鑑をつくる機能
  • 駅の物件を追加する機能
  • 過去の地図でも遊べる機能 変遷機能

・「Disco Elysium」(叶)

夏休みの時にプレイした積みゲーであり、110万ワードがある刑事物語アドベンチャーRPGの「Disco Elysium」をメイン事例として紹介しました。

自分的に思う本作の良い点としては、芸術性が高い、テキストベースのわりにはインタラクションが多くて自由度が高い、サイコロを振るという運的な判定で即時的なフィードバックをもらえるなどが挙げられます。

また、(研究テーマ的に)最も重要なのは多国語対応で言語学習のためにも役立つという点です。「L」ボタンで簡単に言語を切り替えられる英語のフルーボイズ付いているといった機能がゲームの学習効果を高めたと考えられます。

私はプレイする時には中国語をメインでプレイし、時々原文の英語に切り替えて照らし合わせるようにしていました。ゼミでは今までの研究でM-GTAで生成した概念を自分の体験で説明してみました。


・蔡さんの進捗報告

蔡さんは「歴史教育ゲームの開発 -洛中洛外図屛風絵のシリアスゲーム化-」という新たな研究テーマを提案しました。

洛中洛外図屏風は、京都の市街(洛中)と郊外(洛外)の景観や風俗を描いた屏風絵です。蔡さんは、洛中洛外図屏風をモチーフにしたゲームで遊ぶことを通じて、歴史場所や歴史人物などの知識を勉強すると考えています。そのアイデアに基づき、ゲームのデモを制作して建築と人物のモデリングを報告しました。ゼミメンバーがその制作の素早さと完成度の高さに驚きました。

その後のディスカッションでは、皆さんが蔡さんの研究テーマに対して問いを投げました。「誰かにどのような場面でプレイするのか」、「どのような内容を勉強するのか」、「ゲームをどのようにプレイするのか」、「それがどのように学習と繋がるのか」など、研究計画をさらに明らかにする際に答えなくてはならない質問がたくさん挙げられました。これらの問いに対して、蔡さんの今後のご報告を楽しみしております。

今回の報告は以上でした。最後までお読みいただきありがとうございます。また来週!

(ちなみに、「Disco Elysium」はSTEAMでセール中ですので興味がある方はどうぞ…