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【9月29日】運動ゲーのプレイヤーのエンゲージメントは、どこから生じ、どこまでプレイヤーを影響するのか?

post date and time:   2021-09-29   contributor:   Ye Zhiqing

皆様こんばんは。M1の叶です。
夏休みはそろそろ終わるところなのですね。

実は先週北海道の友人に訪ねて帰ってきたばかりで、北海道の美味しい食べ物(スープカレー、牛乳、ハンバーグ…)いっぱい食べまして、とても元気(太りました)ですが、休みの前に立てた計画がまだ色々終わらせていなくて焦ているところです。
夏休みの前に計画をいっぱい立てた自分に申し訳ない気分なのですが、残りの何日間にはできるだけ頑張ります!!

では、早速今日の本題に入りたいと思います。
先学期は『リング・フィット・アドベンチャー』(下記:RFA)事例研究の回で紹介しました。実は自分は随分前からもう一つの運動ゲームのUBIソフトの『ジャスト・ダンス』(下記:JD)シリーズの大ファン(今日も遊びました)なので、いつかに『RFA』と『JD』の比較を踏まえてシリアスゲームのあり方について論じたいと思っていました。

今回は、ゲーム属性とエンゲージメントの視点から『RFA』と『JA』のゲームプレイとそれがもたらす効果・影響を論じたいので、5月の文献研究で張さんが紹介してくれた論文『学生エンゲージメントのためのゲーミフィケーション:フレームワーク (Gamification for student engagement: a framework)』(Rivera, 2021) という論文を読み直しました。

ですが、今回はそのフレームワークではなく、その裏にある二本の論文が提唱した理論・モデルを使って分析してみました。それぞれは:

1・『Toward a Taxonomy Linking Game Attributes to Learning: An empirical Study』(Bedwell, 2012)(先行のゲーム学習研究に基づいて学習効果の分析上で使える9つのゲーム属性のまとめ)
2・『Framing student engagement in higher education』(Kahu, 2013)(高等教育における学生のエンゲージメントの影響要因とそれがもたらす影響に関するモデルの提案) 

5月紹介されたフレームワーク (Rivera, 2021) は、大いにこの二本の文献に基づいたものだと考えられます。紙幅を省くために、これからは、表を使ったり、箇条書きにしたり、文章体にします。


まず、Bedwell (2012) が提案した9つのゲーム要素の枠を使って『JD』と『RFA』のゲーム要素を簡単に分析する。

・「ー」は、エンゲージメントにネガティブ影響を与える要素で、逆に「+」はポジティブな影響を与えるゲーム要素。「△」はどちらも言えない要素が、さらに工夫されれば「+」になることができる要素。

(9属性の定義の詳細はBedwellの論文に参照)Just Dance(ジャスト・ダンス)Ring Fit Adventure(リング・フィット・アドベンチャー)
Action language(ゲームシステムと交流する仕方)・運動ゲーとして普通。新鮮感がない(ー)・「リング」は今までないので新鮮(+)
Assessment
(評価・フィードバック)
・即時フィードバック(形成的評価)と総括的評価(+)
・「Sweat mode」でカロリー消費が表示できる(+)
・ゲームスコアをさらに上げるためのヒントが提供されていない(ー)
・即時フィードバックと総括的評価(+)
・カロリー消費が表示できる上に、詳細データ詳しく調べられる(++)
Conflict/ Challenge(衝突・チャレンジ)・踊るソングの難易度が3レベルに分けられたが参考にはならない(ー)
・難易度が調節できない(ー)
・運動負荷が随時調節できる(+)
・システムがプレイヤーのデータをモニタリングして最適な難易度を推薦する(+)
Control
(コントロール)
あまりない(△)インタラクションが『JA』と比べて多様なのでより多くある。(△)
Environment
(ゲーム世界)
・ダンス場。踊るシーンも工夫される(+)・アドベンチャーモードならある(+→ー)
Game fiction
(ゲーム虚構・物語)
・All star mode (Just dance 2020だけ)。正直没入できない(△)アドベンチャーモード。慣れたら没入感が失われる。(+→ー)
Human Interaction(人間同士のインタラクション)・少ない。(△)少ない。ランキングを見るぐらい。(△)
Immersion
(没入感)
・踊る音楽といった感覚的刺激が与えられる(Sensory stimuli)(++)・ミニゲームではリアル世界と違う世界として認識する(+)が、
・アドベンチャーモードだと慣れたら没入感が失われる。(+→ー)
Rules/ Goals
(ルール・ゴール)
ルールは運動。ゴールは、『RFA』が『JA』より多様。運動したいと思う程度によって、エンゲージメントの程度も異なるだろう。

簡単にまとめると、二本のゲームが代表した運動ゲーは、評価(Assessment)とルール・ゴール(Rules/ Goals)が最もエンゲージメントをもたらす属性だと言えよう。その一方、チャレンジ (Conflict/ Challenge)、コントロール (Control) と没入感 (Immersion) に関するゲームデザインは、また工夫できることがあるだろう。

『Gamification for student engagement: a framework』(Rivera, 2021)という論文では、Kahu(2013)のモデルがゲーム学習の文脈で活用する際、ゲーム要素がエンゲージメントの先行影響要因とエンゲージメントそのものに影響を与え、ひいてにエンゲージメント状態が学習に短期・長期の影響を与えるという結論に至った。次に、Kahu (2013)の「Conceptual framework of engagement, antecedents and consequences」を踏まえて、この二本のゲームの場合には、エンゲージメントがどのように影響され、何を影響したのかをまとめて概念図を作ってみた。

実証したわけではなく、自分のプレイ経験と感覚でモデルを応用して分析してみたが、運動ゲーの要素の中の没入感、調節、評価 (Immersion、Challenge、Assesement) がエンゲージメントの情意領域に影響を最も与え、これらの要素をうまくデザインすることによって、エンゲージメントを向上させる可能性もあるのではないか。また、評価 (Assesement) はエンゲージメントの認知領域の自己管理(self-regulation)にもつながると思う。

この何本かの論文を読んだ後、まずシリアスゲームとゲーミフィケーションの関係について一つ自分の考えをまとめた。それは、ゲーミフィケーションの終極的な産物はゲームだということ。あるコンテンツ・ゲームは、ゲーミフィケーションされたコンテンツなのか、シリアスゲームなのかは、結局にはゲームプレヤーかコンテンツの利用者の自己判断になるのではないかと思うようになった。例えば『RFA』も『JD』も、ゲーミフィケーションされた運動インストラクションとして捉えることもできるし、シリアスゲーム、あるいはゲームとして捉えることも全く問題ない(むしろ後者は主流だろう)。

ゲーミフィケーションされたコンテンツとゲームの共通特性としてはゲーム属性(Game attributes)があるということだ。なぜ『JD』と『RFA』をプレイすることが、ユーチューブでの筋トレ動画やダンス動画を見ながら真似するということと異なるかと言うと、ゲームはゲーム属性を持っているからのだ。そのゲーム属性が、我々プレイヤーたちの態度、認知と行為(Attitude、cognitive、Behavior)の変容を介して、プレイヤーのエンゲージメント(参与感)を高め、そのエンゲージメントがまたプレイヤーの生活にさらに深い影響を与えるのだ。


今回は論文で勉強したモデルを使ってゲーム事例を分析する試みだった。ゲーム要素とエンゲージメントの関係などに関しては、まだ色々考えきれない、説明しきれないところがあると思いますが、この9要素のまとめはゲーム分析する際とても活用できるレンズであり、エンゲージメントが媒介として学習成果を影響するというのも、とても説得力がある研究結論だと思います。色々紹介不足かもしれませんが、今回の記事も学習メモのようなものになっていましたが、読んでいる皆さんのお役に立てば嬉しいです。

この休み前立てた計画の中でも「ちゃんと運動する」というのもこの二本のゲームのおかげで完成度が最も高い目標になりました。

最後まで読んでいただいてありがとうございます!

参考文献

・Errol Scott Rivera & Claire Louise Palmer Rivera, E. S., & Garden, C. L. P. (2021). Gamification for student engagement: a framework. Journal of Further and Higher Education, 1-14.
・Kahu, E. R. (2013). Framing student engagement in higher education. Studies in higher education38(5), 758-773.
・Bedwell, W. L., Pavlas, D., Heyne, K., Lazzara, E. H., & Salas, E. (2012). Toward a taxonomy linking game attributes to learning: An empirical study. Simulation & Gaming43(6), 729-760.

【学会発表報告】日本デジタルゲーム学会

post date and time:   2021-09-29   contributor:   snii

日本デジタルゲーム学会 (DiGRA JAPAN) の2021年夏季研究発表大会が2021年9月12日に開催され、当研究室から3名が発表を行いました。発表タイトルと発表者を以下の通り、目次から抜粋してご紹介します。

☆セッション1 シリアスゲーム

オンライン環境におけるボードゲーム実践によるまちづくり学習の可能性
石田 好一, 藤本 徹

☆セッション5 教育

ゲームにおける創造性の評価手法の提案―mini-c に着目して
財津 康輔, 藤本 徹

☆インタラクティブセッション

農業シミュレーションゲーム「ファーミングシミュレーター」を軸とした多方面のデジタルゲーム研究の展開
藤本 徹

予稿集はこちらからご覧いただけます。


私もドキドキしながら初めて参加してみましたが、非会員でも3,000円で聴講できました。
個人的には、スマブラを企業研修に取り入れている実践例の発表が勉強になりました。研究テーマも多岐に渡り、とてもオープンかつフレンドリーな雰囲気が印象的でした。

10月には別の学会の秋季全国大会があり、こちらで発表を予定している院生の方々は日々研究をブラッシュアップしています。藤本准教授の個別指導はもちろんのこと、ゼミで発表のリハーサルを予定していたりと、少人数ならではのきめ細やかな指導が行なわれています。

あと1週間と少しでゼミが再開します。夏休みにどんな挑戦・活動をされたのか、報告を聞くのが楽しみです!
(余談ですが私の夏休みの冒険はDiscordでポケモンユナイトの国内外コミュニティ3つをハシゴして武者修行してきたことです。英語の早口が聞き取れなくてチームの戦略が掴めず、好き勝手に伸び伸びプレイしていたら試合後にアメリカ人のガチ勢に詰められました…いやはや、良い経験になりました&英語の勉強もっと頑張ります)