東京大学 大学院情報学環 藤本研究室
Monthly archive: May 2023
post date and time: 2023-05-29 contributor: hamada
こんにちは。M1の濱田です。早速、ゼミ活動の報告です。
今回は、文献研究(犬田さん)、事例研究+進捗報告(濱田)、研究員発表(木村さん)の三本立てでした。そして、ゼミ終わりに台湾料理を食べに行く会が開催されました!
犬田さんは、ゲームを使用したデータ収集法について研究されていて、その基盤となる枠組みについての紹介でした。
文献はこちらです。
・Harms, J., Wimmer, C., Kappel, K., Grechenig, T. (2014) “Gamification of online surveys: conceptual foundations and a design process based on the MDA framework” . In: Proceedings of the 8th Nordic Conference on Human-Computer Interaction: Fun, Fast, Foundational. pp. 565–568. ACM
・Hunicke, R., LeBlanc, M., and Zubek, R. (2004) “MDA: A formal approach to game design and game research”. In Proc. AAAI-04 Workshop on Challenges in Game AI ,1–5.
・Jarrett, C., and Gaffney, G. (2008) “Forms that work: designing web forms for usability”. Morgan Kaufmann,pp5-6
発表によると、ゲーミフィケーションを用いたオンライン調査では、MDAモデル(ゲーミフィケーション)、アンケートフォームデザイン、調査領域の3つの軸をもとに、それぞれをどのように組み合わせるかについて考えながらデザインしていく必要があるとのことでした。
また、WEB調査にゲーミフィケーションを組み込むことで、回答者のモチベーションやエンゲージメントといった心理面・行動面の両方に対して効果が期待できるが、一方で、ゲーミフィケーションの要素が回答の統計誤差につながる可能性もあるとのことでした。
私(濱田)の発表では、ケンブリッジ大学英語検定機構が開発した『English Adventures with Cambridge』という英語が学べるMinecraftゲームを紹介しました。私の目指すゲームも今回の事例のように、Minecraft内でのNPCとの対話や与えられたタスクの遂行によって付随的に英語が学べるような仕組みにしていきたいと考えています。しかし、具体的な設計図が全く見えない…という相談も兼ねての事例研究発表でした。
藤本先生をはじめ、みなさんからのフィードバックにより、今後の方針として、まずはMinecraftの論文を読み漁り、教育の場面でMinecraftがどのような使われ方をしているかを調査するという結論に至りました。最終的にどのようなゲームにしたいのか決めてから文献調査などを行っていくというより、調査を行っていく中で作りたいものが見えてくるというボトムアップ的なアプローチもあると気づき、個人的にとても有意義な発表となりました。
木村さんの発表は、科学とは何か、相関関係と因果関係とは何かというところから始まり、「AならばBである」という命題において、「Aである」からといって「Bである」とは限らないという後件肯定の誤謬についてのお話がありました。
これをふまえて脳機能イメージングについて考えたときに、脳機能イメージングは行動(木村さんの研究の場合はゲームプレイ)と脳活動の相関を見ているにすぎず、相関関係があるからといって因果関係があるということにはならないということでした。
また、脳科学的な説明を加えると、たとえそれが良くない説明だったとしても一般人は信頼しやすくなるという興味深い研究を紹介してくださいました。言葉に踊らされず、その相関関係・因果関係をきちんと理解しようということを改めて肝に銘じました。
参加できる人のみで新居さん一押しの台湾料理を食べに行きました。今回は昨年卒業された叶さん、升井さんも参加してくださいました。おいしい台湾料理を食べながら、藤本先生や先輩方からのありがたいありがたいお話を聞くことができ、とても楽しい会になりました。ぜひまた行きたいです!
post date and time: 2023-05-19 contributor: inuda
みなさん、こんにちは!M1の犬田です。
今週になり最高気温が30度を超える日が出てきて、いよいよ初夏がやって来たなと感じます。キャンパス内でも半袖を着る人が多くなってきて、私が長袖のパーカーで授業に行くと友達に「よくそんな暑そうなの着れるな」と言われるようになってきました。そんなこんなで、最近はそろそろ衣替えをせねばとぼやーと考えています笑
さて、それでは今週のゼミ報告に移りたいと思います。
今回は、文献研究(春口さん)と、事例研究(大空さん)、プレイセッション(大空さん)という内容でした。
■文献研究(春口さん)
春口さんは、『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』という書籍の「8章 学習のためのゲームデザイン」について発表してくださいました。
8章では、学習のためのゲームデザインの普遍原理として、「ゲームのビジョンを作る」、「ゲーム空間の設計」、「教授空間の設計」の3つが挙げられていました。
「ゲームのビジョンを作る」では、学習ゴールを設定すること、ゲーム内の要素と現実のものの特徴が一致している真正性があること、徐々に難しくなるような難易度構成にすることなどが書かれていました。「ゲーム空間の設計」では、ゴール、ゲームの仕組み、ルールといったゲームの構成要素を設計する方法が書かれていました。「教授空間の設計」では、教授空間を設計する上で、難易度の調整やヒントを与えるコーチング、フィードバック、例示、練習機会の提供について考慮する必要があると書かれていました。
春口さんは、この普遍原理を、自身が作成されている「通信プロトコルと階層の学習を支援するゲーム」にも適用し、よりよい学習用ゲームを作成するためにはどこを新たに磨くべきか検討されていました。具体的には、プロトコルについての解説機能の実装と、その解説機能とゲーム機能の連動について考えられていました。
今回の春口さんの発表は、ゲームデザインの理論を実践にどう用いるかについて、わかりやすくまとめられていて、理論を実践に移す際に大変参考になるなと思いました。
■事例研究(大空さん)
大空さんは、事例研究として防災シミュレーションカードゲーム『クロスロード』を紹介してくださいました。
このゲームの目的は、2つあります。1つ目は、災害対応に関する様々な意見や価値観を参加者同士で共有すること、2つ目は災害に対して誠実に考え対応するために、災害が起こる前から考えておくことです。
ゲームのルールは、カードに書かれた災害時に起こりがちなジレンマ(例:ペットを避難所に連れていくか)に対して、参加者はYesかNoのどちらかを選び、その選択肢のカードを伏せます。そして、一斉にオープンし、参加者同士で意見交換を行います。多数派とオンリーワンの人は座布団をもらうことができ、ゲーム終了時に最も座布団の多い人が優勝です。
現在大空さんが作成されている研究倫理教育のカードゲームとクロスロードの共通点は、答えのない問題に対して意思決定をする点です。研究では、研究不正とは言えないが責任ある研究活動とも言えない、「疑わしい研究活動」が生じています。この「疑わしい研究活動」の是非という問題と災害時のジレンマは、答えを出すことが難しい、もしくは答えがないという点で共通しています。
大空さんは、この類似性から、クロスロードのゲームデザインの一部を自身の研究倫理教育のカードゲームに応用できないか検討されていました。
大空さんの発表で、事例研究を通じて実際に自身のゲームに使えそうな部分を見つけだす方法について学習することができました。
■プレイセッション(大空さん)
プレイセッションでは、大空さんが現在作成されている『QRPゲーム(仮)』というボードゲームをゼミのメンバーで遊びました。
このゲームのルールについて簡単に説明します。まず、親と子に分かれます。そして、上記でも述べた「疑わしい研究活動(QRP)」の具体的な事例が与えられます。子はその事例が研究倫理的に問題があるかないかを5段階で評価し、一方で親は子が5段階のうちのどれを選ぶ人が多いかを当てにいきます。そして、それぞれがどれを選んだのかを見せ、そう評価した理由について話し合います。親は、同じ評価を選んだ子の人数分だけポイントを獲得することができます。この一連の流れが終わる度に、親を交代していきます。
すごいなと思ったポイントは沢山あるのですが、今回は3つ紹介します。1つ目は、遊ぶ前に見る研究倫理の背景知識に関するスライドの完成度の高さです。研究不正の全体像からはじまり、疑わしい研究活動まで網羅的に、そして端的に分かりやすくまとめられていて、すっとゲームを始めることができました。2つ目は、遊ぶ際に使うカードのデザインの美しさです。必要最小限の文章量と人物の絵がプレイヤーに見やすいように配置されていて、ストレスなく遊ぶことができました。3つ目は、不正防止のための工夫です。このゲームはチーム戦なのですが、ゲームが始まる段階では誰とチームかは分からず、ゲーム終了後に公開されます。そのため、勝つために点数をわざと下げるような行為が起きないようになっています。
実際にゲームプレイをしてみて、とても楽しく、そして多くの学びを得ることができました。特に先生方と一緒にプレイすることで、研究倫理に関する持つべきスタンスを学ぶことができました。一方で、答えがないとは言え、学生のみでプレイすると明らかに誤った結論になってしまう危険性も少しあるかなと思いました。ただ、この点については、考え方の指針をヒントとして示すことで解決できる問題だろうなと思いました。
今回の報告は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。来週の記事もぜひお読みください!
post date and time: 2023-05-17 contributor: snii
10年・20年先にも続く自信を育てる教育指導の研究・実践のリーディングカンパニーへ
子どもの成長の可能性を拡げるプレイフルな教育の研究
KECグループ【学習塾を運営する株式会社ケーイーシー(本社:奈良県生駒市)、教育コンテンツの開発と販売・コンサルを行う株式会社KEC Miriz(本社:大阪市)】と国立大学法人東京大学大学院情報学環(所在地:東京都文京区、学環長:山内祐平、藤本徹研究室(准教授:藤本徹)/以下、東京大学)は、遊びと学びに関する理論を応用した心理測定尺度の開発と評価に関する共同研究を開始しました。
■共同研究の目的
この共同研究は、KECグループが推進する“エンターテインメント”と“テクノロジー”と“エデュケーション”をかけ合わせた造語“エドテックテインメント”によって、「子どもたちがわくわく学び、夢や目標をもってやり抜く力を身につける教育コンテンツの提供」を実現するために、理論的枠組みや実践方法を確立することを目的としています。
■共同研究の概要
● 子ども向け性格テスト『スタディ・ドクター』をより教育に役立つ観点で再構築した改良版の設計
● 学習者がプレイフルに学ぶEdTech(教育×テクノロジー)コンテンツ・授業の開発
● プログラミング教材「プロクラ」の教育効果の検証
● 調査・分析・開発研究を通した中長期的な研究開発構造の検討
■研究代表者コメント
-KECグループ 代表 小椋義則
私自身、会社経営を通して、塾の運営を通して、人(生徒)のやる気が大きく変わり、組織(教室)が活気づくことに力を注いでまいりました。
そしてKECグループはスタッフのモチベーションの高さにおいて評価をいただき様々な賞をいただいてきました。
少し相手に寄り添った話し方をすること、組織にちょっとした仕掛けを組み込むことで、人や組織は別人・別組織のように変わる姿を何度も目にしてきました。
今回の共同研究によってこれまでの教育手法や育成手法の効果検証を行い、学術的に体系立てることでより一層効果的な教育環境の提供ができると考えています。
-東京大学大学院情報学環 准教授 藤本徹
本共同研究プロジェクトでは、子どもたちの遊び心や好奇心を活かした学びの場作りや、個々人の状況に応じた学習支援の基盤となる、学習者の性格面・意欲面の評価手法や学習支援の個別化などの仕組みの研究に取り組みます。テクノロジーによってエデュテインメントのあり方をアップグレードすることで、多くの人々の将来の豊かな学びにつながる楽しい学びの入口を創ることに貢献し、研究成果を広く社会に発信したいと考えております。
■KECグループ
-株式会社ケーイーシー
奈良県・大阪府・京都府にKECゼミナール・KEC個別のブランドを中心として学習塾を展開。
ゲーミフィケーションを取り入れた組織運営を行い、リンクアンドモチベーションが主催する従業員モチベーション調査において全業種の中で、2017年全国4位、2022年中小企業部門全国7位を受賞。
● 先生が自ら仕事を楽しみ熱く語ることで生徒のやる気を引き出す指導者の理念実践教育
● オリジナル計画手帳を活用した生徒指導・楽しく学べる教室環境
● 上記を徹底してサービスする仕組み作り
これらが評価され、2022年度関西経営品質賞ゴールドを受賞。
奈良県を本社とした企業、教育サービス企業としても初めてのゴールド受賞となる。
-株式会社KEC Miriz
KECグループで実践された教育ノウハウを活用し、エドテックテインメント(教育×エンターテインメント×テクノロジー)を体現した教材やコンテンツを開発し、全国の教育機関に提供している。
プログラミング教室「プロクラ」、英会話教材「CHATTY」、子ども向け性格テスト「スタディ・ドクター」を開発、全国の教育機関へ販売している。
プログラミング教材「プロクラ」(全国500教場以上で展開)は、子どもたちから人気のゲーム”マインクラフト”を活用した教材で、まさにゲームで学びを作り出している。
■東京大学大学院情報学環 准教授 藤本徹
博士(Ph.D in Instructional Systems)専門:ゲーム学習論、教育工学。著書に「シリアスゲーム」(東京電機大学出版局)、「ゲームと教育・学習」(共編著・ミネルヴァ書房)、訳書に「テレビゲーム教育論」(東京電機大学出版局)、「幸せな未来は「ゲーム」が創る」(早川書房)など。
研究室ウェブサイト:
https://ludixlab.net/
【本件に関してのお問い合わせ先】
株式会社ケーイーシー
〒6300-0253奈良県生駒市山崎新町2-37 エミネンス生駒1F
経営企画課
担当:藤本 夕紀
keieikikakushitsu@kec.gr.jp
東京大学大学院情報学環 藤本徹研究室
担当:特任研究員 坂井裕紀
〒113-8654 東京都文京区本郷7-3-1
ludix-contact@ludixlab.net
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東京大学大学院情報学環の以下Webページにも同内容が掲載されています。
これまでの継続した研究プロジェクトに加え、今年度から新たに開始した共同研究プロジェクトが複数進められています。
ますます充実していく藤本研究室の研究活動に、どうぞご期待ください!
post date and time: 2023-05-11 contributor: haruguchi
こんにちは、修士2年の春口です。
4月27日のゼミ活動報告をさせて頂きます。
今回は、犬田さん、濱田さん、財津さんの発表でした。
濱田さんの発表は事例研究で、「マグナと不思議の少女」についてでした。
英語しか分からない少女と日本語しかわからない少年と英語・日本語両方分かるスライムをメインキャラクターにしたRPGのようなゲームです。
特徴的なのが、ゲーム内で英語の発声を求められその発音をAIが評価してくれるという点です。
例えば敵に攻撃する時は「Attack」の発声が求められ、その発音の良さによって攻撃の威力が変わる等です。
この機能によって一人でも英語のスピーキングの練習ができるゲームになっています。
濱田さんは、本ゲームの学習要素の部分について「学習要素を細かく分解して、一つのステージにある学習要素を少なくしている」といった点を挙げられ、ご自身の研究でも先に学びの部分を細かく分割して後で遊びに対応させていくといった手法を取りたいといった分析をされていました。
また本ゲームの長所と短所について、フィードバックがすぐに来る所が長所でプレイヤーの自由意志で会話できない点が短所だと分析されていました。
犬田さんの発表も事例研究で、色々なノベルゲームを遊んだ結果を報告されました。
送電灯のミメイ、ありすえすけーぷ、きみの偽物に恋をする等のノベルゲームを紹介され、ノベルゲームの分類軸として「分岐があるかどうか」「プレイヤーのインタラクションがあるかどうか」の2つの軸を提案されました。
またこの軸を前提とした上でご自身の研究では、選択肢を増やして結果を複数用意するとデータ収集が大変になる事ため選択肢を複数用意しても結論は同じになるようにするといった点や、ゲームそのものの面白さはインタラクションの量で変わってくるといった点の分析を活かしたいとの事でした。
Q&Aでは、インタラクションの種類も分類できるのではという指摘や、分岐したという事実があればプレイヤーは遊んだ気持ちになるため、どの選択肢でも同じ結論に至るというアプローチは良いと思うという指摘、研究を方法論として位置付けるかどうかで研究内容が大きく変わるといった指摘がありました。
財津さんの発表は東京大学で主催されたマインクラフトを用いたワークショップの分析についてでした。
ワークショップの始まる前と終わった後に取ったアンケート内容を分析し、相関の有無等を見つけるという内容でした。
今回のアプローチは、事前に仮説を立ててワークショップで検証するという形ではなくワークショップという実践を先に行いそこから意義のある結果を見つけ出すという形のアプローチでした。このため、結果を見つけ出すのに大変な努力が必要との事で、結論を見つけ出すのに苦労されているというお話でした。
研究は仮説を最初に建てるモノという先入観があったため、実践が先にあるという今回のような研究方法はとても新鮮に思えました。
以上が前回のゼミの活動報告です。
post date and time: 2023-05-11 contributor: snii
藤本研究室が所属する文化・人間情報学コースの入試説明会が5月27日(土)15時からオンラインで開催されます。学際情報学府に入学して藤本研究室で活動したい方は、どうぞご参加ください。
詳細は以下のサイトに告知されていますので、ご確認ください。
https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/event/230502event
これに合わせて、藤本研究室への入室を希望する方を対象とした説明会を以下の通りオンラインで開催します。
日時:
2023年6月2日(金)17:00-19:00(希望する面談が終了した方から順次解散)
17時00分〜17時30分:藤本研究室の説明、Q&A(全体)
17時30分〜19時00分:(希望者のみ)藤本准教授との個別面談
(希望者のみ)研究室所属の大学院生やスタッフとの面談
どのような活動をしているか、どのような研究で指導を受けられるかを説明します。
参加希望の方は、事前に下記の参加申込フォームに必要事項を記入してお申し込みください。折り返し、Zoom会議室のURLをメールでお送りします。
https://forms.gle/LFgZkpYYBCK8kQsA9
ご参加をお待ちしています。