東京大学 大学院情報学環 藤本研究室
Monthly archive: May 2024
post date and time: 2024-05-17 contributor: inuda
みなさん、こんにちは!M2になりました犬田です。
今年は東京の桜の名所に行って花見をしようと決意していたのですが、気がついたらすべて散っていました。悲しいです。あと、就職活動も無事終了しました。
さて、5月9日に行われたゼミ活動の報告をします。発表内容は、莫さんの関連論文紹介とジョナさんの文献研究です。
■【莫さん】関連論文紹介
莫さんは、以下の2つの論文を紹介されました。
①Folz, H. N., Black, J., & Thigpen, J. (2023). Evaluation of a murder mystery activity to teach patient communication interviewing skills. Currents in pharmacy teaching & learning, 15(6), 581–586.
②Kavanaugh, R., Pape, Z., LaTourette, B., & Lehmier, S. (2022). Who killed Mr. Brown? A hospital murder mystery in a pharmacy skills course. Medical teacher, 44(10), 1151–1157.
2つの論文はどちらも、マーダーミステリーゲームを用いて医学生のコミュニケーション能力を向上させることを目的としています。研究結果としてはどちらも、医学生がコミュニケーションスキルを学ぶ上で、マーダーミステリーゲームが効果的であることを示唆していました。ただ、どちらの文献にも、マーダーミステリーゲームの定義や学習効果を高めるメカニズムについての言及がなかったので、今後行っていきたいと仰られていました。
発表の後のディスカッションでは、患者の症状から病気を特定する行為や限られた情報から死因を推測する行為は、与えられた情報から犯人を推理するようなマーダーミステリーゲームと相性がよいという意見が出ました。与えられた情報から何かを推測する活動とマーダーミステリーゲームを組み合わせることで、意義のある体験を生み出すことができるのではないだろうかと思いました。
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■【ジョナさん】文献研究
ジョナさんは、今年2024年3月に発売された藤本先生が編著の「シリアスゲーム」の「第3章 シリアスゲームのデザイン」を紹介されました。第3章は、情報学環にいらっしゃった池尻良平先生が執筆を担当されています。第3章では、シリアスゲームのデザイン論、特に学習領域に合わせたゲームデザイン論について、多くの事例とともに説明されています。
本書ではまずゲーム学習のフレームワークとして、スタールダイネン&デフレイタスの「ゲームをベースにした学習のフレームワーク」が紹介されています。このフレームワークは、「学習→インストラクション→評価」の3段階で構成されています。個人的には、2段階目のインストラクションにおいて、ゲーム要素を「文脈、表現、教育学、学習特性」に分けているところに面白さを感じました。
また、学習に効果的なゲーム要素として、「競争」、「協力」、「探究発見」などが紹介されていました。そして、学習領域に合わせた効果的なシリアスゲームのデザイン手順として以下が提案されていました。
1.学習領域ならではの目的、要素、キー概念を発見する
2.キー概念との親和性の高いゲーム要素を同定する
3.キー概念を絡めたメインルールをデザインする
4.学習を促す追加ルールをデザインする
5.シリアスゲーム外の学習をデザインする
感想としては、一般的なゲームデザインの指南書を読むだけでなく、開発するジャンルに特化したゲームデザインの本を読むことで、より適した思考法やデザイン手法を学習することができるなと改めて思いました。
以上が、5月9日のゼミ活動報告です。ぜひ来週のゼミ報告記事をお読みください。
それでは!