東京大学 大学院情報学環 藤本研究室
Monthly archive: July 2024
post date and time: 2024-07-26 contributor: ziminmo
皆さんこんにちは、修士1年の莫です。
充実した生活を過ごして、いよいよ今学期最終回のゼミ報告になります。今回は研究生たちの活動成果報告と、ゼミ生たちの研究進捗・夏季活動計画発表です。
では、早速ご報告させていただきます!
斉さんは研究計画の検討・深化を続けていきました。前回のサブゼミで先生から投げかけられた質問に基づいて、「なぜTOEICを研究対象に選んだのか」という研究背景を要約して、いくつかの研究質問から掘り下げて文献研究を通じて、デジタルゲームを用いた言語学習(Digital Bame Based Language Learning, DGBLL)の現状をより深く分析することを期待しました。ゲームデザインと妥当性テストについては、プロトタイピングでの要素を挙げて、それに対して解決策も提案しました。夏休みでは、DGBLLの文献調査を中心に活動しながら、研究計画書の作成に取り組む予定です。
今学期、ジョナさんはさらに研究計画をブラッシュアップして、CLD児(Culturally Linguistically Diverse Children)を今後の研究対象として絞り込みました。日本における継承語の問題点から、日本でのモンゴル語教室に質的調査を通して、CLDの子どもたちの言語学習の現状を把握しようとしています。また、その改善策として、継承語のシリアスゲームを開発して、有効性を評価する予定もあります。そして、今学期の活動報告としては、ジョナさんはデザイン関連の講座を多く履修して、Figmaの使い方を学んだり、さまざまなゲームをデザインしたりしていました。
莫のこの夏休みでのメインタスクは、先週のプレイセッションで全員に体験して頂いた本郷巡り謎解きの制作、そして9月の遠征計画で口頭発表される予定のMMGレビューの2本です。この2ヶ月でいっぱい読んだり書いたりするのが必要があるので、自分の計画に従って完了できるように頑張ります!
犬田さんの進捗・活動計画発表は、まず修士研究の中間報告を中心として始ましました。従来のWEBアンケート調査は効率が低下しているという問題があって、ゲーム化は効果を上げることが証明されていました。しかし、これまでの調査ではゲーム開発に多くの時間を必要して、研究対象の問題も単一的であった。先行研究の問題点を解決するために、生成AIを活用したシナリオプロンプト型WEBアンケートを開発し、それを評価することで、先行研究の問題点に対して可能な改善方法を提示しようとしています。 現在、犬田さんの研究は倫理審査の段階で、承認後に調査を開始してデータを分析する予定です。夏休みの活動計画としては、多くの学習プログラムに参加するだけでなくて旅行・ゲーム等も予定されていて、すごく充実した2ヶ月になりそうな予感がします。
大空さんは図表を使いながら、今学期の成果と現在取り組んでいるいくつかの課題を見せてくれました。今学期の成果としては、社会調査とAI倫理の2つの授業で研究倫理に関連するトピックについて研究を行いました。そして、サブゼミで研究要旨と背景を洗練させたことも上げられました。そこから修士研究で使えるデータにより多くサポートできると望んています。また、Replaying Japan、サイエンスアゴラと遠征プログラムの準備も推進しているそうです。
ゼミの後は、福島先生の特任研究員満了と名誉教授就任お祝い会+研究室納涼会で、研究室のみんなで福島先生と合流して食事に行きました。福島先生、おめでとうございます!
それでは、今回のゼミ活動報告は以上となります^^
最後にお知らせですが、8.5~8.8の長崎シンポジウムでは、斉さん・ジョナとん・莫が一緒に、最前線記者として最新情報をお届けします。是非ともラボニュースをご一読ください。
皆さん、お疲れ様でした!
post date and time: 2024-07-19 contributor: jona
皆さんこんにちは!研究生のジョナです。
今回のゼミでは、坂井先生の研究員発表と莫さんのプレイセッションの2本立てで行いました。それでは早速、ゼミ活動のご報告に移りたいと思います。
坂井先生:研究発表
坂井先生は「死と喪失をテーマにしたゲームの影響」について研究発表を行いました。若者の自殺は他の年齢層に比べて多く、近年では増加傾向にあります。その一因として、自分の命に対する態度、すなわち死生観の欠如が挙げられます。このため、死生観に影響を与える要因の検討は極めて重要です。
従来、死生観の空洞化については、伝統儀礼からの離脱や大衆娯楽文化の影響が指摘されており、特に死を繰り返すことができるゲームが死生観を揺るがしているのではないかという意見がありました。しかし、ゲームでの死の繰り返しが現実世界との混同を引き起こすという指摘に対しては、ゲームは現実世界と切り離された空間であり、若者は混同していないという反論もあります。
坂井先生は自身の研究で、ゲーム(殺傷表現のあるゲーム)がどのように死生観に影響を与えているかを検討しました。そして、適切な使用モデルを提示することで、若年層のWell‐Beingに貢献することを目指しました。この研究では大学生と短期大学生を対象に、バトルロイヤル形式のゲームのプレイ時間と死生観の関係を分析しました。その結果、殺傷表現のあるゲームのプレイ時間が長い若者は、短い若者に比べて死への恐怖・不安が低く、人生の目標意識が低い、死後の世界観が希薄であるという結果が得られました。
このことから、ゲーム自体が死生観に影響を及ぼすのではなく、ゲームとの接し方が関連していると推測できます。適切な指導を行い、現実世界での習慣や活動への参加を推進することで若者の死生観を育み、自殺予防につなげることが可能と考えられます。
発表後、ゼミメンバーで活発な討論が展開され、プロゲーマーなど異なる背景を持つ対象者についての検討、死を積極的にとらえるゲームの効果についての検討など、様々な見解が提示されました。
莫さん:プレイセッション
莫さんからは、自分の設計した室外謎解きゲームのテストプレイを行いました。このゲームはキャンパス内の建物やスポットでヒントを探し、チームで協力して謎を解く内容でした。
私はこのゲームを通じて、学校に関する新しい知識や今まで知らなかったスポットを知ることができました。建物を観察し、歴史などの関連知識を得ることもでき、校内をゆっくり散歩するには最適なゲームだと思いました。
今回のテストプレイを通して、レベルデザインや安全性の確保、言語の適切性などについて先生方から非常に有益な意見がありました。この経験を基に、進化したゲームの完成が楽しみです。ゲームの完成版は来学期の制作展で公開されるとのことです。皆さんもぜひお楽しみください!
今回のゼミ活動報告は以上となります。
お読みいただきありがとうございました!
post date and time: 2024-07-11 contributor: inuda
みなさん、こんにちは!修士2年の犬田悠斗です。
7月4日のゼミ活動では、斉さんの関連論文紹介と研究室企画「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」のミーティングが行われました。
今回は、報告内容が2つだけと短くなりそうなので、余った紙幅を使わせていただいて、はじめに私の研究関心について書かせてください。
私は、「ゲームを基盤とした社会(Game Based Society)」を目指して研究を行っています。
え、「ゲームを基盤とした社会(GBS)」ってなに?と多くの人が思われたと思います。
この「ゲームを基盤とした社会(GBS)」とは、多くの人がゲームを通じて社会貢献している社会のことを指しています。具体的には、多くの人がゲームをすることで、研究やボランティア活動に貢献し、社会を支えているような世界のことです。
このビジョンを目指そうと思ったきっかけは、ジェイン・マクゴニガル著の〈幸せな未来は「ゲーム」が創る〉で紹介されていた『Foldit』というゲームでした。『Foldit』とは、遊ぶことでタンパク質の折りたたみ構造の解析に貢献できるゲームです。このゲームを知った時に、「ゲームを遊んでいたら、勝手に社会貢献に繋がるってめっちゃ面白いな」と思いました。しかし、このゲームを実際に遊んでみると、「あまり面白くない」(個人的に)。そこで、より面白い、社会貢献のゲームを作り、この考えを広めたいと思い、「遊んでいたら勝手に社会貢献に役立つゲーム(クラウドソーシングゲーム)」の研究を始めました。
そして、現在、この社会貢献に役立つゲームの開発などを通じて、「ゲームを基盤とした社会(GBS)」の実現を目指しています。「ゲームを通じて社会をデザインする」って、すごく魅力的じゃないですか。
ただ、これだけでは、「ゲームを基盤とした社会(GBS)」や「社会貢献に役立つゲーム(クラウドソーシングゲーム)」について何を言っているかわからないという方も多いと思います。
「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」では、これらについてより具体的な話をしたいと考えています。そして、開発したゲームの試遊もできます!少しでも興味のある方は、ぜひ現地でお話させてください!
「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」の参加は、こちらから!
さて、長々と語ってしまいましたが、以下からゼミ活動の報告に移ります。
■【斉さん】関連論文紹介
斉さんは、下記の論文を紹介されました。
Govender T, Arnedo-Moreno J. (2021) . An Analysis of Game Design Elements Used in Digital Game-Based Language Learning. Sustainability, 13(12), 6679. https://doi.org/10.3390/su13126679
この研究では、デジタルゲームベースの言語学習(以後、DGBLL)における5つのリサーチクエスチョン(以後、RQ)が立てられています。そして、それらをもとに、ゲームデザイン要素に関して、DGBLLに関する論文のレビューが行われています。
1つ目のRQは、「 DGBLLにおいて最も頻繁に使用されるゲームデザイン要素は何か?」です。このRQについては、フィードバックシステム、テーマと物語、ポイントまたは経験値、レベルと進行度合いの可視化が 最も頻繁に使用されていることが示されていました。
2つ目のRQは、「特注のゲーム、市販のゲーム、娯楽用ゲーム、教育用ゲームの間でゲーム要素にはどのような違いがあるか?」です。このRQについては、娯楽用ゲームと教育用ゲームで、ゲーム要素の量に大きな違いがあり、前者の方がゲーム要素が多いことが示されていました。また、特注のゲームと市販のゲームでは、前者の方がゲーム要素が多いことが示されていました。
3つ目のRQは、「特注のゲームと市販のゲームで、特定の年齢層における結果への影響に違いがあるか?」です。このRQについては、小学生以外では、市販のゲームの方が多く使用されていることが示されていました。ただし、年齢層で論文数に大きな違いがあるため(就学前、中学生が少ない)、就学前、中学生に対するより多くの研究が必要であることが指摘されていました。
4つ目のRQは、「言語技能に関するデザイン要素の間には違いがあるか?」です。このRQについては、語彙の獲得と保持でゲームの使用が最も多く、インプットとアウトプットでゲームの使用が少ないことが分かりました。また、コミュニケーションスキルで使用されたゲームが、最も多くのデザイン要素(ソーシャルディスカバリーなど)を含んでいることが分かりました。
5つ目のRQは、「DGBLLアプリケーションで潜在的な効果を示したあまり使用されていないゲームデザイン要素は何か?」です。このRQについては、評価のためのボスバトルや収集・交換などが挙げられていました。
斉さんは、この論文のRQをもとに不明瞭な箇所を分析し、より精緻なRQを立てられていました。この論文はDGBLLにおけるゲームデザイン要素のレビュー論文であり、今後の斉さんの研究で大いに役立つだろうと思いました。
■研究室企画「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」
8月6日(火)・8月7日(水)に長崎市中央公民館で開催する「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」のミーティングを実施しました。ミーティングでは、プログラム概要や会場の設備などについて話し合いました。
「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」では、ゲーム学習分野を中心にさまざまな研究成果を発表します。特に注目のセッションとしては、小学校教諭で、エデュテイメントプロデューサー の正頭英和氏と藤本徹先生らがパネルディスカッションを行う〈『桃太郎電鉄 教育版』事例研究シンポジウム〉やプロマインクラフターのタツナミシュウイチ氏を講師としてお招きする〈『教育版マインクラフト』特別講演セッション〉があります。
加えて、〈教育版マインクラフトで創る未来の学び:教育効果と実践事例〉という題目で、Minecraftカップ運営委員会ディレクターの土井隆氏に講演を行っていただきます。もちらん藤本研究室の研究員や大学院生の研究成果を中心とした、興味深い発表もご準備しております。
「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」の参加は、こちらのフォームから!
また、8月4日〜8日に長崎市役所で開催される「ミライの平和活動展 in 長崎 〜テクノロジーでつながる世界〜」に連動した企画セッション「戦争とゲーム」を8月6日(火)15:30〜16:30に長崎市役所多目的ホールで行います。
ミライの平和活動展 in 長崎の詳細についてはこちらのウェブサイトをご覧ください。
みなさんとともに、「ゲームの遊びと学びの未来」について考えられることを心から楽しみにしております。では長崎で!
以上が、7月4日のゼミ活動報告です。ぜひ、来週のゼミ報告記事もお読みください。
それでは!
post date and time: 2024-07-09 contributor: snii
藤本徹研究室は8月6日(火)・8月7日(水)に「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」を長崎市中央公民館にて開催いたします。
ゲーム学習(エデュテインメント、シリアスゲーム、ゲーミフィケーション)分野のさまざまな研究成果を共有し、ゲームの遊びと学びを体感できる場を提供します。このテーマに関心のある方々に、次のアクションを起こすための学習や実践の機会を提供します。ぜひご参加ください。
日時:2024年8月6日(火)10:30〜17:00、8月7日(水)10:30〜16:30
場所:長崎市中央公民館(長崎市民会館内)2階 視聴覚室・第5研修室(長崎県長崎市魚の町5番1号)
対象:教育関係者、研究者、学生、保護者、関連事業者など(発表テーマに関心のある方はどなたでもご参加いただけます。)
参加費:無料
参加申込期間:7月9日(火)〜8月7日(水)
※当日会場でも受付可能ですが、会場の席数が限られていますので、なるべく事前の参加登録を行っていただくようお願いします。
参加申込方法:こちらのオンラインフォームから
主催:東京大学大学院 藤本徹研究室
協力:NPO法人 Educe Technologies、東京大学大学院 渡邉英徳研究室
協賛(五十音順):株式会社イオンファンタジー、株式会社ギルドヒーローズ、株式会社ケーイーシー、株式会社KEC Miriz、株式会社コナミデジタルエンタテインメント、一般社団法人日本シングルマザー支援協会
後援:東京大学大学院情報学環メディア・コンテンツ総合研究機構、日本デジタルゲーム学会ゲーム教育SIG
お問い合わせ: ludix-contact”@”ludixlab.net (ダブルクォーテーションを削除してください)
(タイトルはいずれも仮)
(1)企画セッション:『桃太郎電鉄 教育版』事例研究シンポジウム
<セッション概要>
桃太郎電鉄教育版を用いた授業に取り組む教員の方々による実践状況調査の結果を紹介し、有識者を交えてこれまでの成果と今後の課題を検討するパネルセッションです。
・趣旨説明(准教授 藤本徹)
・講演(小学校教諭、エデュテイメントプロデューサー 正頭英和氏)
・関連研究動向、事例研究(広島大学大学院 准教授 池尻 良平氏)
・パネルディスカッション
(2)『教育版マインクラフト』特別講演セッション
<セッション概要>
プロマインクラフターのタツナミシュウイチ氏を講師にお迎えして、これまでのマインクラフトの教育実践の取り組みや、最新のJAXAが開発した「Lunarcraft」の事例について話題提供していただき、今後の展望をディスカッションします。
(3)研究発表
<セッション概要>
藤本研究室の研究員や大学院生の研究成果を中心とした、ゲーム学習研究の最新動向を学べる講演セッションです。
・死と喪失をテーマにしたゲームの教育的効果 ー学習意欲とwell-beingに着目してー (特任研究員 坂井裕紀): 通常、喪失は強いストレスであり、心の健康を損ねる原因です。しかし、強いストレスが心の成長につながることもあります。他方、ゲームを教育や仕事に応用する「ゲーミフィケーション」の効果に注目が集まっています。これらのことから、喪失をテーマにしたゲームの体験が心の成長に及ぼす影響を検討しました。本発表では、大切な物事の喪失をテーマにしたゲームを用いたワークショップの実施結果を報告します。
・クラウドソーシングゲーム ー遊ぶことで社会貢献できるゲームの可能性ー(修士2年 犬田悠斗) : クラウドソーシングゲームとは、遊ぶことで、勝手に社会貢献に役立つゲームです。例えば、ゲームをしていたら、勝手に科学研究やボランティア活動に貢献できていた。そんなことが、実際に可能になってきています。この発表では、クラウドソーシングゲームの面白い事例を紹介し、このゲームの持つ可能性についてみなさんとお話したいと思っています。ぜひ一緒に考え、話し合いましょう!
・シリアスボードゲームの開発と実践 ーゲームを活用したデザインリサーチー(修士2年 大空理人) : 国内外において、教育目的のボードゲームの開発が盛んに行われています。ボードゲームは手軽にプロトタイピングから実装まで行える一方で、ゲーム制作のプロセスが見えない状態では、ハードルを感じたり、困難が生じたりする場合があります。そこで、その制作プロセスをより一般化するために、インストラクショナルデザインに基づくゲームデザインについて検討します。本発表では、シリアスボードゲームの『QRP GAME』を事例に、ゲームを作って終わりではなく、学習プログラムとして継続させる工夫について報告します。
・大人のためのゲーム学習 ーゲーム研修における学習環境デザインー(修士2年 大空理人) : 近年、企業内教育においてゲーム研修が、新たな学習手法として注目を集めています。しかし、ゲームという性質上、学習とは関係のない「気晴らし的な楽しさ」を提供するものだと思われ、研修への活用に懸念が生じています。また、カスタマイズ性のない画一的なものであるという誤解もあります。そこで、従来のイメージから、ゲーム研修をリフレーミングするために、6つの学習理論と実践を結びつけて検討します。本発表では、ゲーム研修が提供する本質的な「やりがいのある楽しさ(hard fun)」について報告します。
・Minecraftを活用した英語コミュニケーション意欲向上のためのワークショップ実践(修士2年 濱田璃奈) : 本発表では、Minecraftを用いた英語学習ワークショップの設計と実践事例を紹介します。特に英語コミュニケーション意欲の向上を目的とした活動を中心に、ワークショップの効果を調査した結果を共有します。調査データを基に、参加者の意欲や学習成果の変化を具体的に示し、教育現場での応用可能性について考察します。
・教育版マインクラフトで創る未来の学び(土井隆氏):教育効果と実践事例 : 本シンポジウムとの連動企画として開催したMinecraftワークショップ「教育版マインクラフトで長崎の歴史を学ぼう」やMinecraftカップ全国大会の取り組みなど、これまでのマインクラフトを導入した教育実践の成果について発表します。
(4)ゲーム体験ワークショップ・デモ展示
<セッション概要>
藤本研究室の研究員や大学院生の研究成果を中心に、ゲーム学習研究の成果を体験しながら学べるセッションです。
・実験哲学ゲーム「Free Will 自由意志と道徳的責任」(修士2年 犬田悠斗): 哲学の問題に関する人々の直感を明らかにするゲームである『Free Will 自由意志と道徳的責任』のデモ展示を行います。このゲームでは、自由意志と道徳的責任に関するシナリオを進めてもらい、最後にいくつかの質問に答えてもらいます。このゲームでの回答が、哲学の問題の解明に役立てられるかも!
・クラウドソーシングゲームのプラットフォーム「Meta Crowdsourcing Game」(修士2年 犬田悠斗): 遊んでいたら勝手に社会貢献に役立つゲームであるクラウドソーシングゲームのプラットフォームを展示します。プラットフォームの中には、科学研究やボランティア活動に役立つゲームがたくさんあります。実際にこれらのゲームをプレイすることで、社会に貢献してみましょう!
・SF作品を作ろう!「ゲームを基盤とした社会」を創造するワークショップ(修士2年 犬田悠斗) : 「ゲームを基盤とした社会」と聞くと、どのような社会を思い浮かべますか。今回のワークショップでは、「多くの人がゲームを通して社会貢献している社会」について一緒に考え、創造してみます。また、「SFプロトタイピング」という、フィクションを用いて、まだ存在しない未来を想像する手法についても解説します。SF(サイエンス・フィクション)の力を使って、妄想を爆発させ、まだ見ぬ社会を一緒に形作りましょう!
・未来の研究について考えよう!カードゲーム「ムーンシューター」を使った対話型ワークショップ(修士2年 大空理人): 「ムーンシューター」は、“未来の研究”をテーマにしたカードゲームです。未来の研究を考えることは、研究者に限らず、私たち一人ひとりにとって重要です。しかし、いざ未来の研究について話し合ってくださいと言われても、なかなか難しいのではないでしょうか?そこで、この話しにくさを払拭し、楽しみながら対話を深めるために、このゲームを開発しました。未来を生きる私たち全員が、それぞれの立場で科学技術と社会の繋がりについて考える必要があります。個々の体験や意見を混ぜ合わせながら、どんな期待があるか / 懸念があるかを一緒に探究することで、新たな視点や考え方を身につける機会をつくります。
・研究のグレーゾーンについて考える!カードゲーム「QRP GAME」のデモ展示(修士2年 大空理人) : 倫理規範、コンプライアンスと聞くと、ややこしい、面倒くさいという印象を持つ方も多いのではないでしょうか?そこで、こうしたネガティブなイメージを払拭し、楽しみながら倫理に対する考えを深めるために、このゲームは開発されました。「QRP GAME」は、“疑わしい研究行為(通称QRP)“をテーマにしたカードゲームです。研究のグレーゾーンを判断することは、大学・企業等の研究者だけでなく、レポートを執筆する学生や自由研究を行う児童生徒にも必要なスキルです。多様な世代が、個々の体験や意見を混ぜ合わせながら、どんな研究行為が良いのか/良くないのかを一緒に探究することで、より良い研究成果のアウトプットと科学界全体の発展に寄与します。
・英語の勧誘表現を学習できるカードゲーム「Shall we dance? 一緒に踊らないかい」(修士2年 犬田悠斗): 英語の単語カードで口説き文句を作り、相手に「この人いいな!」と思わせるカードゲーム『Shall we dance? 一緒に踊らないかい』のデモ展示を行います。このゲームでは、英語でキザな口説き文句を面白おかしく言い合いながら、英語の助動詞や勧誘表現、依頼表現を学習することができます。英語力を駆使して、より多くの気になる人から好感度を獲得しましょう!
(5)連動企画セッション:「戦争とゲーム」
<セッション概要>
・セッションテーマについて(准教授 藤本徹)
・事例研究「平和学習とゲーム」(特任研究員 木村知宏): ゲームには他のメディアとは異なる特性があります。本発表では、戦争をテーマとしたゲームの事例を紹介します。近年は反戦のメッセージが込められたゲームや、一般市民の側から戦争を体験するゲームなど、様々なものがあります。これらの事例とゲームの研究の理論をもとに、平和学習にゲームを活用することのメリットについて検討します。
・ディスカッション
8月4日〜8日に長崎市役所で開催される「ミライの平和活動展 in 長崎 〜テクノロジーでつながる世界〜」に連動した企画セッションを8月6日(火)15:30〜16:30に長崎市役所2階多目的スペースで行います。戦争をテーマとしたビデオゲームの事例を紹介し、平和学習にビデオゲームを使用することのメリットについて検討します。シンポジウムの開催場所である長崎市中央公民館から長崎市役所までは徒歩2分ほどの距離です。
なお、この展示会ではデジタルツイン・VRなどのテクノロジーを活用した新世代の平和活動コンテンツとともに、ウクライナ・ガザ地区など、世界の紛争地域の被災状況を伝える展示、日本原水爆被害者団体協議会による原爆写真展、長崎国際テレビによる平和コンテンツなどを体験できます。シンポジウムと合わせてぜひご参加ください。
ミライの平和活動展 in 長崎の詳細についてはこちらのウェブサイトをご覧ください。
皆様とこの夏、長崎でお会いできることを楽しみにしています。
post date and time: 2024-07-04 contributor: osora
こんにちは、修士2年の大空です。
今週のゼミ活動について、報告いたします。今回は、莫さんによる文献研究、ジョナさんによる研究関連論文紹介、犬田さんによるプレイセッションの3本立てでした。
どの発表からも皆さんの研究進捗が伺える素敵な内容だったので、以下でそれぞれについて紹介したいと思います。
莫さん
莫さんは、チームの共有情報と未共有情報のバイアスにおけるInformation Sampling Modelの文献研究を行われました。
文献のテーマは「Information Sampling and Adaptive Cognition」のChapter 13「Information Sampling in Group Decision Making:Sampling Biases and Their Consequences」というものです。
専門的な内容ではありましたが、金魚すくいにおけるチーム戦を例に、分かりやすく解説していただき、当分野について、研究室メンバーの理解も深まったと思います。こうした分野の話はなかなか触れる機会がないため、個人的に学びの多い内容でした。
この文献から、莫さんは、自身の研究テーマである未共有情報を実体化とする手段としてのMMG(マーダーミステリーゲーム)について考察され、着実に研究が進んでいる様子が伺えました。ゲームデザイン時における厳密な設計のアイデアとして上手く使えそうです。
また、共有情報と未共有情報の配分については、ゲームデザインの観点から、研究室メンバーでディスカッションも広がり、今後の莫さんの研究にも寄与する内容が話し合われたので、今後の進捗も楽しみです。
ジョナさん
ジョナさんは、CLIL(Content and Language Integrated Learning)という概念に着目し、関連論文発表を行われました。
関連論文のテーマは「Content and language integrated learning through an online game in primary school: A case study」というものです。
CLILとは、教科科目やテーマの内容(content)の学習と外国語(language)の学習を組み合わせた学習(指導)の総称を指します。これは、ジョナさんの研究をより一層充実させる理論的枠組であるような印象を抱きました。
また、このCLILとGBL(ゲーム学習)の関係について、ジョナさんは考察されていました。具体的には、GBLは外国語学習に効果的で学生のエンゲージメントと動機づけを高めることができ、CLILも同様に、言語使用に目的と意味不安を軽減し興味と動機づけを高めるとされているため、共通の部分があることがわかりました。
その上で、では学習環境をどう設計すればいいのかという観点で、言語学習ゲームのインストラクショナルデザインが他分野とどう違うのかについてディスカッションが深まりました。ジョナさんは理論と実践の両方を行われているので、それらが上手く紐づいていくことが楽しみです。
犬田さん
犬田さんは、修士研究で開発中のゲーム「Free Will 自由意志と道徳的責任」を実践されました。
これは、実験哲学におけるゲーミフィケーションを活用したWEB調査で、ゲームを楽しんでいるうちに自然と社会課題解決に寄与するクラウドソーシング型のゲームです。
プレイセッションでは、内容は同一である、従来のWEB調査とゲームによる調査の比較を行いました。研究室メンバーを2つのグループにわけ、従来のWEB調査→ゲームによる調査を行う群と、その逆の群で行い、お互いの感想をシェアしました。
率直に、体験としてゲームの方がより豊かで、没入感あるものだったということが共通の感想として見出されました。また、これまでの発表で行われたゲームデザインやUIの内容が盛り込まれていたことも良かった点で、個人的に犬田さんのこれまでの研究活動が詰まった内容だったと思います。
これから犬田さんは修士の中間報告会がありますが、十分魅力的に感じる研究だと思うので、ぜひ頑張っていただきたいです。また、今後、外部の発表において、このゲームを触れられる機会があるので、関心のある方はぜひ引き続き情報をチェックしていただければと思います。
今週のゼミ報告は以上となります。それでは!
大空
post date and time: 2024-07-04 contributor: snii
株式会社コナミデジタルエンタテインメント様との共同研究の一環として、「桃太郎電鉄 教育版」の利用状況や実践事例を把握し、今後の情報提供や開発に寄与するためのアンケート調査を開始しました。回答期限は7月26日(金)です。詳細は下記のWebページをご覧ください。
https://www.konami.com/games/momotetsu/education/index.php
ご協力のほど、よろしくお願いいたします!
post date and time: 2024-07-01 contributor: hamada
渡邉英徳研究室と藤本徹研究室は、8月5日(月)- 6日(火)に、Minecraftワークショップ「教育版マインクラフトで長崎の歴史を学ぼう」を長崎市役所にて開催します。本イベントは、「ミライの平和活動展 〜テクノロジーでつながる世界〜」(8月4日(日)〜8日(木))の一環として行なわれます。
イベント概要
かつて長崎にはどのような街があり、それが原爆によってどのように変わってしまったのか。
原爆投下日の8月9日を迎えるにあたり、世界の子どもたちに支持されている「Minecraft」を通して長崎の歴史について理解を深めるワークショップイベントを実施します。参加費は無料です。
教育版マインクラフトを使って、 参加者全員でマルチプレイで街をつくりましょう。
テーマは「原爆投下前のナガサキの暮らしと街並み」 です。
みなさんの想像力を最大限発揮してください!
講師にはプロマインクラフターのタツナミシュウイチさんをお招きします。
参加者全員で協力しながら、グループになって一緒に考え、ワールドを作ってみましょう! ※マルチプレイでの作業となりますので、他の参加者への迷惑行為が見受けられた方にはご退出いただく場合がございます。
※定員が超過した場合は抽選となります
①Minecraftカップ全国大会への参加登録 → こちらから
②申し込みフォームから申し込み → こちらから
※申し込みフォームには、ワークショップへの参加登録時に登録したメールアドレスと同じアドレスを入力してください。
③問い合わせ :こちらから
主催:東京大学大学院 渡邉英徳研究室・藤本徹研究室、Minecraftカップ全国大会運営委員会
協力:NIB長崎国際テレビ