東京大学 大学院情報学環 藤本研究室
Monthly archive: January 2023
post date and time: 2023-01-25 contributor: masui
お世話になります。M2の升井です。
早いもので本日が2022年度秋学期の最終ゼミとなりました。
私の方は、修士論文の提出が完了し、論文審査を残すのみとなります。この2年間はあっという間に過ぎましたが、藤本ゼミのおかげで充実した院生生活が送れたように思います。ゼミの皆さんには本当に感謝です。
さて、本日は
以上の2本立てでした。
研究生、M1からの進捗報告では、それぞれが日々積み重ねてきた成果を発表してくれました。研究生のヨウさん、サイさんは自身がこれからやっていく研究の方向性を固め、先行研究を深めたりプロトタイプを製作したりと、しっかり前に進んでいる印象です。M1の大空さんと春口さんは、A2セメスターの授業のレポートや学校外の活動など、とても忙しいとは思いますが、春以降の研究について色々と動いているようで感心します。
プレイセッションでは、叶さんが「Goose goose duck」という人狼パーティーゲームを扱ってくれました。「Goose goose duck」は私が昨年度の秋学期に事例紹介で取り上げた「Among Us」のようなオンラインゲームで、「Among Us」より複雑な役割があったりと、+αされています。私は速攻で〇されて、皆が楽しんでいる姿を眺めていました。人狼要素があるので、頭を使って推理力やコミュニケーション能力が育成されそうなゲームです。「Among Us」は低予算のゲームですが、「Goose goose duck」は思い切り予算をかけてスピード開発したと思われます。市場で勝つためには、こんな開発方法も正解なんだとじみじみ思いました。
2年間を振り返って、自分は何がしたくてこのゼミで学んだのかを再確認しました。多分、自分は「面白いものをもっと面白くする」ということよりも「面白くないものを面白くする」ということに興味があるのだろうなと思います。だからこそ、ゲーミフィケーションをテーマに選んだのだと。正直、他のゼミ生は自分でゲームを作ったり、市場にあるゲームを分析したり、どちらかというとゲームゲームしていて羨ましいと思ったこともあります。でも、地味だけどゲーミフィケーションはこれからの世の中にきっと役に立つ、そう信じてこれからの自分の人生を送っていこうと思います。
post date and time: 2022-10-08 contributor: masui
M2の升井です。お世話になります。
秋学期がスタートしました!初回ゼミの報告です。急に寒くなったり、衣服の調整が難しい時期になりましたね。本郷キャンパスは毎年恒例の銀杏の臭いが充満しており、すっかり秋を感じています。
■サイさんの自己紹介
ゼミに新メンバーがやってきました。中国から外国人研究生として在籍するサイさんです。サイさんの詳しい研究内容や経歴は本人の記事に任せるとして、凄かったのはゲーム開発を複数していることです。今回、そのデモムービーを見せてもらいました。中国風の趣のある背景や凝ったドットキャラなど、練りに練られていました。
■夏季休暇期間の報告
ゼミ生と研究員の方が夏季休暇期間の報告をおこないました。ゼミ合宿で会っていたのである程度内容は把握していましたが、他にも色々とアクティブに活動されていたようで何よりです。特にボードゲーム領域の大空さんや財津さんはボードゲームジャムや熊本遠征など、外部の人との交流が充実した夏になったのではないかという印象でした。私個人としては、お陰様で無事にビデオ学習システムの実験を終えられたことが一番の収穫です。とても面白いデータが集まったのではないかと思っています。ご協力いただいた方々、ありがとうございました。
■ゼミ合宿(施設調査)の報告
9/29-30にかけて研究室のみなさんと大阪での施設調査に行ってきました。
① REDEE
https://redee.game/
REDEEはゲームでデジタルを学ぶ体験施設で、プログラミング体験やe-sports体験などができます。実は、春学期に事例紹介で私が取り扱った施設でもあります。スケール感が大きく、遠足や修学旅行などでも大人気で、このような施設の存在があることでゲームと教育が対立関係ではなく、シナジーのあるものだと世間に認識されていくのではないかと思いました。
② ボードゲームホテル MIMARU大阪 難波STATION
https://mimaruhotels.com/jp/hotel/namba-station/boardgame/
ボードゲームに特化したホテルに泊まりました。ホテルのあらゆるところがボードゲーム要素に飾られていて、ボードゲームのためのホテルだなと感服しました。部屋の机やソファーもボードゲームがしやすい設計になっていて、夜遅くまで楽しめます。テラスでのBBQも楽しかったです!
③ アクティブラボ
https://kc-i.jp/facilities/the-lab/active-lab/
アクティブラボは、企業や大学などのエキサイティングな技術や活動を、大人から子どもまで、楽しく、わかりやすく紹介する展示エリアとのことです。体験型で、色々な技術に触れることができます。一番驚いたのは、藤本先生がダンスゲームで一曲全部踊り切ったことです。まさにアクティブでした。
最後に…
現在は鋭意、修論の執筆で忙しい日々を送っています。今後は、新メンバーのサイさんの記事もあると思うので、お楽しみに!
post date and time: 2022-08-13 contributor: masui
M2の升井です。
最近は修士研究の実験で忙しい毎日を送っています。
具体的には、開発したビデオ学習システムのプロトタイプを触ってもらって、データを収集しているという状況です。
今回は、実験をやっていて感じたこと、気づいたことを書いていきます。
まず、8月になってから実験に参加してくださった方々、これからの予定を入れてくれた方、本当にありがとうございます。おかげで、修論に向けて歩みを進めていくことができます。
研究というのは、先生をはじめ、ゼミのメンバー、さらには実験に参加してくれる被験者の方々の協力がないと成立しないということを実感しています。研究は一見孤独なようで、色々な人との関係性の中で成り立っているのだということをあらためて認識しました。
また、実験に参加してもらった人とは世間話もするので、学部生であれば進振りのことや、院進のことで軽く相談に乗ったり、院生であれば今の研究の進捗や進路の話など、様々な人との対話の場にもなっていてとても充実しています。
この実験をするにあたって、大変だったことはプログラミングの経験がほとんどない状態からプロトタイプをつくる必要があったので、プログラミングの教育系YouTuberの動画をみたり、オンライン家庭教師の方に教えてもらったり、試行錯誤しながら何とかカタチにしたことです。プログラミングのセンスがあれば、もっと複雑なシステムも組めたとは思いますが、既存のツールだったりを上手く活用しながら手を抜くところは抜いて、やりたいことを実現してきました。頑張った甲斐がありました。
最後に、このブログを見てくださっている方(大学生、大学院生)にお願いがあります。おかげさまで、多くの人に参加してもらっていますが、さらに実験のデータを充実させるために新規の参加者を若干名募集します。学外の方も大歓迎なので、藤本ゼミや学府に興味のある方はこの機会に私と話しましょう。友人同士で来てもらってもOKです!8月中であればスケジュールは柔軟に対応できます。
内容:オンライン授業システムのテストモニター
対象:大学生、大学院生
日程:〜8/31
所要時間:50分程度
謝礼:2000円(交通費込み)
場所:東京大学本郷キャンパス
担当者名:升井
※こちらのフォームから連絡をください、詳細をお送りします
post date and time: 2022-07-16 contributor: masui
お世話になります。M2の升井です。
Sセメスターのゼミもあと僅かになり、私の修士研究もこれから山場に差し掛かります。今日はM2の叶さん、升井の研究進捗発表、研究員の木村さんのプレイセッションの2本立てでした。
■研究進捗発表
叶さんの発表はM-GTAのインビュー、概念生成の進捗報告でした。インタビュー時間が長く、一人一人に相当の時間がかかる研究手法ですが、大分インタビューや文字起こしが進んでいる様子でした。文字起こしのツールの話になり、中国語対応のものやAIで精度の高いものなど、色々と知れて勉強になりました。大変な研究だとは思いますが、叶さんのバイタリティならしっかりとやり切って、よい修士論文が完成するのではないかと思います。
升井の発表では、中間発表に向けてリハーサル的なものを行いました。発表の機会があると、自分の研究を人に伝えるために振り返ったり、構造をシンプルにしたり、得られるものが大きいです。最近の感触では、自身の研究がクロージングする段階に迫ってきたように思います。20日の中間発表では優秀な先生方や学生から自分の研究内容やプロトタイプに対しての貴重な意見がもらえるので、楽しみでなりません。
■プレイセッション
研究員の木村さんプレゼンツのプレイセッションは
「いつもお空のどこかで誰かを助ける ―主人公たちの向社会的行動を探し出せ―」
というタイトルで、「グランブルーファンタジー」というCygamesのソシャゲーを活用した、2チームの対戦型のプレイセッションをしました。
※ルール
個人のスコア=向社会的行動(prosocial behavior)の回数+上昇したRank数 のチーム合計で勝敗がつく
向社会的行動とは、他者や社会の利益になる行動のことで、ストーリー中の主人公たちの向社会的行動を見つけ出し、それを示す台詞をスクリーンショットで記録することでポイントになります。
戦術的には、ランクの上げと向社会的行動のスクショのバランスを考えながら効率的にポイントを獲得していくことが求められます。
私のいたAチームでは、M1の春口さんが達人レベルでグラブルをやりこんでいたので、自動的にリーダー役割を担って即効性のある作戦を指揮してくれました(仕事ができる!)おかげで、効率的にランクを上げるタスクをこなすことで、見事相手チームに5ポイントの差を付けて勝利をつかめました。
プレイセッションでは戦略性があると、両チームが燃えるように思います。普段のゲームを違った切り口で観察したり、スクショしたり、交渉したり、マルチな活動で非常に楽しかったです。
(熱中するゼミメンバー↓)
post date and time: 2022-06-17 contributor: masui
お世話になります、M2の升井です。今回のゼミは、叶さんよる研究分野関連論文紹介、大空さんによる文献研究、木村さんによる研究員発表でした。
木下康仁 (2020) 定本 M-GTA :実践の理論化をめざす質的研究方法論. 医学書院
木下康仁 (2007)ライブ講義M-GTA : 実践的質的研究法 : 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチのすべて. 弘文堂
叶さんが修論で用いているM-GTA (Modified Grounded Theory Approach)という質的研究法に関する文献の紹介でした。
元となるGTA(Grounded Theory Approach)との違いについてなど、難しいテーマを噛み砕きながら説明してくれました。
インタビューから得られたデータを定義づけし、理論的メモなどを加えながら質的に分析していくアプローチで、緻密な作業が求められ、かつ、研究者の言語化のセンスが試される研究手法だと思いました。
Rey, G.D. (2012). How seductive are decorative elements in learning material?. Journal of Educational Multimedia and Hypermedia, 21(3), 257-283. Waynesville, NC USA: Association for the Advancement of Computing in Education (AACE). Retrieved September 27, 2021 from https://www.learntechlib.org/primary/p/39253/.
大空さんが選んだ文献はSeductive detailsに関する論文です。Seductive detailsとは翻訳すると誘引性付加物で、Reyの研究はマルチメディア教育メッセージの装飾要素が学習成果を改善するか損なうかを調査することを目的としています。
ディカッションでは、イラスト等の装飾物を使うことに対して、効果のある学習者とそうではない学習者がいるのではないかという話になり、内的動機付けのされている学習者にとってはかえって邪魔になるという考察をしたりしました。
ビデオゲームが脳活動に与える影響に関する研究の紹介―「ゲーム学習」と「悪影響」の視点から―
というテーマで、様々な論文や書籍の紹介をしてくれました。木村さんの研究領域は脳科学とゲームで、脳科学的にゲームの作用を測定している点が興味深いです。発表を聞いて、我々の研究室はゲームと教育をテーマにしているので、ゲームの良い所を探るということにフォーカスされやすいのですが、悪影響に関するデメリットの側面もバランスよく考慮していくことが大事だと再認識しました。
また、ゲームを研究材料として扱うときに、複雑なゲームシステムのものは測定しにくく、比較実験をするためにはゲームデザインの簡素化が必要になり、これが市場の複雑なゲームとの中身の乖離を生んでいるという課題があることが話題になりました。
今回のゼミ全体を通して、ゲームや教材が時代とともに高度化していく中、それに応じた研究手法なりの発展も必要になってくるのだと感じました。そして、教育工学やゲーム学習の研究の重要度は増々高まり、この藤本研究室のようなところの意義が大きくなるのだろうと思います。
最後になりますが、夏の院試に向かって準備を進めている皆さん、体に気を付けて頑張ってください。
post date and time: 2022-05-23 contributor: masui
M2の升井です。今回のゼミは自身初の対面で行われ、とても新鮮な気持ちで迎えることができました。M1の優秀な後輩もできて、これから1年頑張ってゼミを盛り上げたいと思います。
C.M.ライゲルース, B.J.ビーティ, R.D.マイヤーズ(編), 鈴木克明(監訳)(2020)学習者中心の教育を実現するためのインストラクショナルデザイン理論とモデル.北大路書房.
第3章 課題中心型インストラクションの原理
第4章 個人に合わせたインストラクションの原理
第3章では、課題中心型インストラクション(TCI)について扱われています。TCIとは学習課題を中心に①学習課題、②既有知識の活性化、③例示/モデリング、④応用、⑤統合/探究の要素で構成され、さらに、フェードアウトする足場かけが施された学習モデルです。
ディスカッションでは資源対学習者数の効率の悪さを克服するためには何が必要かなどを話し合いました。アクティブラーニング全般に言えることですが、協働作業の時間の確保のために③例示の部分を事前のビデオ視聴に置き換えるなどの工夫ができます。しかし、そのビデオと協働作業との接続の工夫の余地はまだまだ残っていそうだと思いました。
第4章では、個人に合わせたインストラクションについて様々なことを個別化する方法論が示されています。章の中で「グラインディング=わざと繰り返し作業をプレイヤーにさせること」というゲーム用語が出てきて、グラインディングについての経験などを話しながら盛り上がりました。やはり、ゲーム学習の研究室なのでゲームの話になると白熱します。
ケイティ・サレン, エリック・ジマーマン (2019) ルールズ・オブ・プレイ:ゲームデザインの基礎(再編集版)ニューゲームズオーダー
第3章 意味ある遊び
第4章 デザイン
M1の春口さんが担当でした。春口さんの発表資料はスライド形式で、自分の解釈なども交えながらのプレゼンは斬新でした。第3章の「ゲームを作ること」とは何かというディスカッションで、「人の行為の変換装置を作ること」や「体験を作ること」などの各々の意見が出たり、スプラトゥーンとFPSのデザインの違いなどを考察したりして盛り上がりました。また、第4章では記号論などを織り交ぜながら、ゲームデザインとは何ぞやということを話し合いました。藤本ゼミの研究ではシリアスゲームなど、自作のゲームを作る学生も多いので、ルールズ・オブ・プレイのゲームデザイン論はとても役に立つ内容だと思いました。
財津さんが担当したプレイセッションではルールを追加・削除する大富豪を2チームに分かれてプレイしました。片方のチームは大富豪になった人がルールを新たに1つ追加して、もう一方のチームは大富豪になった人がルールを1つ削除するという特別な仕掛けがありました。大富豪といえば、そもそも人によっては大貧民と呼んだり、ローカルルールがあったりで、ルールに調整がかかりやすいゲームです。私のチームは減らす方で、Jバックを消すなどのルール変更がなされました。ディスカッションで興味深かったのは、どこまでルールを消すと大富豪がゲームでなくなるのか?ということです。極論、「手札を配る」というルールを消すとゲームが成立しなくなったり、手札を全部見せてプレイするというルールにすれば、ゲーム感覚は全然違うものになったり、ルールを作るという作業は思ったよりもクリエイティブであるということを体感しました。対面ならではのゲームで、久しぶりにリアルの人と交流できて楽しかったです。
さて、今日はこのあと藤本ゼミの入試説明会があります。院生として、受験しようと思っている人たちにZOOMで話す機会があるので、多くの人にゼミの魅力が伝えられるように頑張ります。
post date and time: 2021-12-17 contributor: masui
お世話になります。修士1年の升井友貴です。
先月、研究室で写真撮影する機会があり、服を買ったり、美容院に行ったり、ひげの脱毛をしたりと久々に身だしなみに気を遣いました。良い写真を撮ってもらったので、年賀状に使おうと思います。
さて、今日のゼミは「研究関連論文の紹介」「プレイセッション」の2本立てでした。
沼山博,村瀬桃子,棚村正(2018)シミュレーションとゲーミングの特別活動への導入: 新中学校学習指導要領との関連から.山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所報告,45:193-203
山中洋平ほか(2018)ファシリテーターの「場のデザイン」育成における失敗体験パターンカードの有効性.国際P2M学会研究発表大会予稿集,2020.Spring(0):254-268
敷田麻実(2009)よそ者と地域づくりにおけるその役割にかんする研究.国際広報メディア・観光学ジャーナル,9:79-100
1つ目の協力ゲームを用いた実験的研究では、言葉を用いないゲームをチームで行うことで、非言語のコミュニケーション能力が高まるなどの6つの効果を検証しています。2つ目のファシリテーターに関する論文では、ファシリテーションの能力に焦点を当ててカードを使った教材を開発したものでした。最近、ZOOMのグループワークなどでファシリテーターの役割をすることがあって、対面よりもやりにくさを感じますが、その原因は1つ目の論文のような非言語の部分が削がれるからのように思います。ZOOM会議などのスキルがこれからの時代重要になってくると思うので、上手になりたいなと思いました。
私のプレイセッションで、前々からやりたいと思っていた、パチンコアプリの実況をしました。ルールは至ってシンプルで、30分以内に大当りすればゼミの皆さんの勝利、大当りできなければゲームマスターの私の敗北という設定にしました。また、裏ルールとして、こちらが設定した5つの想定質問を3個以上踏むというミッションも設けました。
選んだ機種は平和さんの「P戦国乙女6暁の関ケ原」です。1/222で大当りする、戦国武将が美少女化した世界観のオリジナルコンテンツです。私が台の実況をしながら、質問にひたすら答えていきました。裏ルールのおかげか、とても多くの質問をいただき、やりがいがありました。途中、派手な演出が発生しだして見事大当りしたので、私の負けが決定しました。
今回の気づきとして、オンライン授業等で、質問を多く投げてもらいたいという狙いがある場合に、想定質問を踏むというゲーム性を持たせるという手法は結構有効なのではないかということです。
来週のゼミではM2のお二人の修論を読みます。ブルーライトカット機能付きのメガネを新調したので、ばっちり準備できています。
post date and time: 2021-12-06 contributor: masui
お世話になります。修士1年の升井友貴です。
本郷キャンパスではイチョウの葉がすっかり黄色く染まり、銀杏があちらこちらに落ちています。人は臭いの記憶が深く残るそうなので、きっと今後の人生で茶碗蒸しを食べるたびにキャンパスライフを思い出すことになるでしょう。
本日のゼミは、「研究関連論文の紹介」「文献研究」「プレイセッション」の3本立てでした。
張さんはオノマトペに関するゲーム型教材の研究をしていて、今回の発表はオノマトペに関するものを3本選んでくれました。ざっくりまとめると、日本語学習のオノマトペの分析について様々な側面からアプローチしている論文でした。張さんは今の時期は修士論文の執筆をがんがん進めていると思いますので、紹介してくれた論文もしっかり位置づけが明確化されていたと思います。論文を書くためには文献研究をこつこつ積み上げていくことが必要で、この研究関連論文の紹介も張さんの修論にめちゃくちゃ役立っているのだろうと思いました。
Jesse Schell(2019)「ゲームデザインバイブル(第2版)」オライリー・ジャパン
2章:ゲームデザイナーは体験を創り出す
3章:体験はプレイ環境で起こる
4章:体験はゲームから生まれる
ゲームデザイナーは心理学、人類学、デザインの3つのアプローチや内観(自分自身の体験の観察)を使いこなすことが大切ということでした。特に印象に残ったことは、ゲームデザイナーは玄人好みのものを作ってしまうという戒めでした。これは、自分にも当てはまって、自分がそのジャンルに精通しすぎているとマニアックなものを好むようになり、結果としてユーザーとの距離感が掴めなくなるように思います。ライトユーザーの気持ちをメタ的に理解するには、開発者だけのコミュニティ以外にも属しておくことが大切なのではないかと考えました。
叶さんのプレイセッションは「チョンマゲ・オン・ザ・ヘッド」という日本語を英語だけで説明するコミュニケーションパーティーゲームをしました。
まず、ゼミのメンバー全員が英語で自己紹介しました。(私はこのところずっと英語を喋っていなかったので、とても焦りました。)
さて、ゲーム開始です。初めに一人一人がお題とNGワードを考えました。(例:お題=さくら、NGワード=cherry blossom、pink)
次に、説明担当者は他の人が考えたお題を英語だけで説明します。このとき、NGワードを使うとは禁止で、自分の持っている英語力で一生懸命伝えます。そして、回答者がお題を当てられれば説明担当と正解者が1ポイント獲得という流れです。ゲーム中は全員が質問等含めて英語になります。
このようにゲームを用いることで、ゲームに勝つために恥ずかしがらずに英語を話すことが可能になります。最近は、デジタルゲームを使った英会話教室なども出現していて、ゲームの持つ人を夢中にさせる力は語学学習に有用だと実感できました。
最後に…
気づけばもう12月で、M2のお二人は追い込みの時期だと思います。自分も修論をチェックする機会があるようなので、論文が読めるのを楽しみにしています。頑張ってください!
post date and time: 2021-11-05 contributor: masui
M1の升井です。お世話になります。
先日、東京六大学野球の東大野球部の試合を観戦してきました。結果は0-0で引き分けでしたが、強豪相手に一生懸命プレーする選手たちの姿に勇気をもらいました。秋季リーグも終わって、すっかり秋も深まり気温も低くなりました。皆さん、カゼを引かないようにお気を付けください。
さて、本日のゼミは、研究関連論文の紹介&文献研究&事例研究の3本立てでした。
今回私が紹介した論文は次の3本です。
Ortega-Arranz A., Bote-Lorenzo M., Asensio-Perez J., Martinez-Mones A., Gomez-Sanchez E., Dimitriadis Y. (2019) To reward and beyond: Analyzing the effect of reward-based strategies in a MOOC. Computers & Education, vol.142. 103639. https://doi.org/10.1016/j.compedu.2019.103639
雨宮 智浩, 青山 一真, 伊藤 研一郎(2021)「遠隔講義における講師アバタの見かけによって変化する受講希望度が授業への積極的参加行動に与える効果―オンライン授業への導入事例―」日本バーチャルリアリティ学会論文誌, 26 巻, 1 号, p. 86-95,
佐藤 満明, 柄本 健太郎, 向後 千春(2015)「講義動画中におけるクイズの提示が受講者の学習意欲に及ぼす効果」日本教育工学会論文誌, 2015, 39 巻, Suppl 号, p. 77-80
1本目のArranzさんの論文はMOOCsのゲーミフィケーションに関するもので、特に報酬(reward)に焦点を当てています。バッジ(badge)とリディーム(redeem)の2種類の報酬の効果を実験的に測定しています。実験では、バッジだけでなく何かしらの特典がある方が学習者のエンゲージメントを高めることが示唆されています。
2本目の雨宮さんの論文は遠隔授業時の教師の顔をアバターにする研究です。教師の顔をそのまま映すのではなく「Avatarify」というアプリを使用して別人の顔になって講義をします。実験では、より学習者にとって魅力的なアバターで講義をした方が、学習者の積極性が高まることが示唆されています。
3本目の佐藤さんの論文はe-learningの講義動画にクイズを挿入する取り組みです。実験では、クイズを挿入することでARCSモデルから参照した注意、関連性、自信、満足感のうち自信と満足感が高まったと報告されています。
張さんが発表した文献は教授エージェントに関する海外の論文でした。
Sahimi, S. M., Zain, F. M., Kamar, N. A. N., Samar, N., Rahman, Z. A., Majid, O., Atan, H., Fook, F. S., & Luan, W. S. (2010). The Pedagogical Agent in Online Learning: Effects of the Degree of Realism on Achievement in Terms of Gender. Contemporary Educational Technology, 1(2), 175-185. https://doi.org/10.30935/cedtech/5973
教授エージェントとは、オンライン学習のコンテンツで教師の役割を果たし、学習者とコミュニケーションしながら学習をサポートするものです。この論文では、エージェントのアバターのリアル度を3段階設けて、その効果の違いがジェンダーで差があるかを実験的に調査しています。結果は、学習効果に有意差はなく原因としてスプリットアテンション効果の影響が大きいと考察されています。実験で有意な差が出なかったときに、いかに論文としてまとめていくかの参考になる論文でした。
今回叶さんが選んだテーマはREADING AIDSでした。叶さんは物語中心のゲームプレイと第二言語学習に関する研究をしているので、その補助ツールとなるREADING AIDSについて深堀してくれました。Readlang、Mouse dictionary、リーディング・チュー太の3つのツールについて比較検討して、ゲームで外国語を学ぶ際に必要なREADING AIDSの要件を考察しました。個人的には、Mouse dictionaryのレスポンスの速さに驚きました。また、英語論文を読んで整理するためのコツのようなものも皆で話し合えて、ためになりました。
本日のゼミを終えて、やはり一人で論文などに触れるよりも、他者の視点を入れることでより自分にとって有意義なものになることを実感しました。今週は藤本ゼミの説明会もあり、冬期の大学院入試が迫っています。興味を持たれている方は、ぜひエントリーをご検討ください。
post date and time: 2021-10-08 contributor: masui
M1の升井です。お世話になります。
今日から秋学期のゼミがスタートしました。秋学期のゼミは春学期の内容に加えてゲスト回があったり、英書の特別文献研究があったり、盛りだくさんで非常に楽しみであります。
初回の今回は①夏休みの活動報告と②藤本先生によるプレイセッションでした。
夏休みに各自が行った活動を報告しました。M2のお二人は修論に向けて既に論文を書き始めたそうです。M1の叶さんも友人との交流を深めるなど、諸々充実した夏休みだったようで、とても羨ましいです。自分は本郷の総合図書館に結構行っていたのですが、コロナ禍ということもあり人と接することがほとんどない淋しい夏だったように思います。10月16~17日には日本教育工学会の秋大会があり、ゼミメンバーと一緒に参加することになっています。(去年は一人ぼっちで参加していてアウェーだったので、今年は心強いです)
・Foldit
・ぐんまのやぼう
上記2つのゲームをグループに分かれてプレイし、その後にレビューしました。
Folditはタンパク質の構造予測を行うコンピュータゲームで、2008年にリリースされた歴史ある有名なシリアスゲームの1つです。人がゲーム感覚でサイエンスの発展に貢献するというロジックで、ゲームをすることが社会に直接役に立つ好例でもあります。こちらは研究室にいた3人がプレイし、レビューをしてくれました。
ぐんまのやぼうは、2012年にリリースされたスマホゲームで、群馬県をモチーフにしたゲームです。私はパズドラをやっていたので、コラボで何となく存在は知っていました。調べたところ、作者は群馬出身の方で、群馬県の知名度が全国ワーストということがきっかけで製作したそうです。
レビューの際には以下の項目をディスカッションしました。
・このゲームのゴール
・このゲームでのプレイヤーの主要な活動(ゲームのコアダイナミクス)
・このゲームのメカニクス(プレイヤーに課される制約条件やルール)
・このゲームに取り入れられているゲーム要素
・このゲームで関連する学習要素
・このゲームがプレイ意欲を高めている要素
私が参加した「ぐんまのやぼう」では、次のようにまとめました。
このゲームのゴール
・日本を群馬県に天下統一する
このゲームでのプレイヤーの主要な活動(ゲームのコアダイナミクス)
・都道府県を制圧する
・Gを稼ぐ(収穫する、スゴロクする、ガチャをする)
このゲームのメカニクス(プレイヤーに課される制約条件やルール
・収穫に待ち時間
・隣の県しか制圧できない
・人口の多い県はGがかかる
このゲームに取り入れられているゲーム要素:
・運(スゴロク)
・ストーリー
・ゆるゲー
・待ち時間
・レベルアップ
このゲームで関連する学習要素:
・群馬のご当地要素(食材、駅、市)
・47都道府県
このゲームがプレイ意欲を高めている要素:
・制圧欲
・地元愛 (上毛カルタ)
ゲームレビューをすると、一人では気が付かない視点でゲームを捉えることができたり、やはり学びが大きいです。
さて、秋学期も学際的でバラエティに富んだ授業が待っているので、目指せフル単です!