東京大学 大学院情報学環 藤本研究室
投稿日時: 2024-07-11 投稿者: inuda
みなさん、こんにちは!修士2年の犬田悠斗です。
7月4日のゼミ活動では、斉さんの関連論文紹介と研究室企画「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」のミーティングが行われました。
今回は、報告内容が2つだけと短くなりそうなので、余った紙幅を使わせていただいて、はじめに私の研究関心について書かせてください。
私は、「ゲームを基盤とした社会(Game Based Society)」を目指して研究を行っています。
え、「ゲームを基盤とした社会(GBS)」ってなに?と多くの人が思われたと思います。
この「ゲームを基盤とした社会(GBS)」とは、多くの人がゲームを通じて社会貢献している社会のことを指しています。具体的には、多くの人がゲームをすることで、研究やボランティア活動に貢献し、社会を支えているような世界のことです。
このビジョンを目指そうと思ったきっかけは、ジェイン・マクゴニガル著の〈幸せな未来は「ゲーム」が創る〉で紹介されていた『Foldit』というゲームでした。『Foldit』とは、遊ぶことでタンパク質の折りたたみ構造の解析に貢献できるゲームです。このゲームを知った時に、「ゲームを遊んでいたら、勝手に社会貢献に繋がるってめっちゃ面白いな」と思いました。しかし、このゲームを実際に遊んでみると、「あまり面白くない」(個人的に)。そこで、より面白い、社会貢献のゲームを作り、この考えを広めたいと思い、「遊んでいたら勝手に社会貢献に役立つゲーム(クラウドソーシングゲーム)」の研究を始めました。
そして、現在、この社会貢献に役立つゲームの開発などを通じて、「ゲームを基盤とした社会(GBS)」の実現を目指しています。「ゲームを通じて社会をデザインする」って、すごく魅力的じゃないですか。
ただ、これだけでは、「ゲームを基盤とした社会(GBS)」や「社会貢献に役立つゲーム(クラウドソーシングゲーム)」について何を言っているかわからないという方も多いと思います。
「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」では、これらについてより具体的な話をしたいと考えています。そして、開発したゲームの試遊もできます!少しでも興味のある方は、ぜひ現地でお話させてください!
「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」の参加は、こちらから!
さて、長々と語ってしまいましたが、以下からゼミ活動の報告に移ります。
■【斉さん】関連論文紹介
斉さんは、下記の論文を紹介されました。
Govender T, Arnedo-Moreno J. (2021) . An Analysis of Game Design Elements Used in Digital Game-Based Language Learning. Sustainability, 13(12), 6679. https://doi.org/10.3390/su13126679
この研究では、デジタルゲームベースの言語学習(以後、DGBLL)における5つのリサーチクエスチョン(以後、RQ)が立てられています。そして、それらをもとに、ゲームデザイン要素に関して、DGBLLに関する論文のレビューが行われています。
1つ目のRQは、「 DGBLLにおいて最も頻繁に使用されるゲームデザイン要素は何か?」です。このRQについては、フィードバックシステム、テーマと物語、ポイントまたは経験値、レベルと進行度合いの可視化が 最も頻繁に使用されていることが示されていました。
2つ目のRQは、「特注のゲーム、市販のゲーム、娯楽用ゲーム、教育用ゲームの間でゲーム要素にはどのような違いがあるか?」です。このRQについては、娯楽用ゲームと教育用ゲームで、ゲーム要素の量に大きな違いがあり、前者の方がゲーム要素が多いことが示されていました。また、特注のゲームと市販のゲームでは、前者の方がゲーム要素が多いことが示されていました。
3つ目のRQは、「特注のゲームと市販のゲームで、特定の年齢層における結果への影響に違いがあるか?」です。このRQについては、小学生以外では、市販のゲームの方が多く使用されていることが示されていました。ただし、年齢層で論文数に大きな違いがあるため(就学前、中学生が少ない)、就学前、中学生に対するより多くの研究が必要であることが指摘されていました。
4つ目のRQは、「言語技能に関するデザイン要素の間には違いがあるか?」です。このRQについては、語彙の獲得と保持でゲームの使用が最も多く、インプットとアウトプットでゲームの使用が少ないことが分かりました。また、コミュニケーションスキルで使用されたゲームが、最も多くのデザイン要素(ソーシャルディスカバリーなど)を含んでいることが分かりました。
5つ目のRQは、「DGBLLアプリケーションで潜在的な効果を示したあまり使用されていないゲームデザイン要素は何か?」です。このRQについては、評価のためのボスバトルや収集・交換などが挙げられていました。
斉さんは、この論文のRQをもとに不明瞭な箇所を分析し、より精緻なRQを立てられていました。この論文はDGBLLにおけるゲームデザイン要素のレビュー論文であり、今後の斉さんの研究で大いに役立つだろうと思いました。
■研究室企画「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」
8月6日(火)・8月7日(水)に長崎市中央公民館で開催する「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」のミーティングを実施しました。ミーティングでは、プログラム概要や会場の設備などについて話し合いました。
「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」では、ゲーム学習分野を中心にさまざまな研究成果を発表します。特に注目のセッションとしては、小学校教諭で、エデュテイメントプロデューサー の正頭英和氏と藤本徹先生らがパネルディスカッションを行う〈『桃太郎電鉄 教育版』事例研究シンポジウム〉やプロマインクラフターのタツナミシュウイチ氏を講師としてお招きする〈『教育版マインクラフト』特別講演セッション〉があります。
加えて、〈教育版マインクラフトで創る未来の学び:教育効果と実践事例〉という題目で、Minecraftカップ運営委員会ディレクターの土井隆氏に講演を行っていただきます。もちらん藤本研究室の研究員や大学院生の研究成果を中心とした、興味深い発表もご準備しております。
「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」の参加は、こちらのフォームから!
また、8月4日〜8日に長崎市役所で開催される「ミライの平和活動展 in 長崎 〜テクノロジーでつながる世界〜」に連動した企画セッション「戦争とゲーム」を8月6日(火)15:30〜16:30に長崎市役所多目的ホールで行います。
ミライの平和活動展 in 長崎の詳細についてはこちらのウェブサイトをご覧ください。
みなさんとともに、「ゲームの遊びと学びの未来」について考えられることを心から楽しみにしております。では長崎で!
以上が、7月4日のゼミ活動報告です。ぜひ、来週のゼミ報告記事もお読みください。
それでは!