東京大学 大学院情報学環 藤本研究室
カテゴリー: Lab news
投稿日時: 2024-12-16 投稿者: keirinkyou
皆さん、こんにちは! 外国人研究生の叶です。12月12日のゼミ活動では、叶、大空さん、Leafyさんの研究進捗発表です。
まず、私の発表です。私は『The Rules of Play』第27章「シミュレーションゲーム」について、その特徴をいくつか紹介しました。次に、自分のゲームについて、想像的没入をいくつかの観点から抽出し、その中で「代理感」を研究対象として選びました。代理感についての説明と関連文献のレビューを行い、それを基に2つの研究課題を提案しました。
この研究課題を解決するため、またシミュレーションゲームの特徴を活かすために、ゲームの基本的な枠組みを紹介しました。そして、代理感を表現するためのゲームデザインも行いました。しかし、代理感という概念はゲームデザイン学では公式な定義が存在せず、この点で研究が難航しました。
その後、木村先生から「主体感」という言葉を提示いただき、これが代理感を部分的に代替できる可能性があるとの示唆を受け、新しい研究の視点が開けました。また、藤本先生からは、ゲームデザインに関する具体的なアドバイスをいただきました。例えば、ゲーム内容を簡素化し、小さな要素から設計を始める方が初心者にとって取り組みやすいといった、非常に有益な提案をいただきました。
まず、大空さんは最近読んだ文献についての調査を発表しました。教育社会学の観点からゲーム学習論を分析し、倫理学、教育工学、ゲーム学との相互作用や関連性について説明しました。また、自身の今後の研究との関係性や、将来的な研究進展の方向性についても触れました。
最近の活動としては、報告書の公開や卒業論文の執筆がありました。さらに、ある科学教育向けゲームを紹介しました。このゲームは、科学の世界に触れる機会のない子供たちに科学の魅力を伝えることを目的としています。ゲーム内容は、小球が光源を反射する仕組みを利用し、決められた回数内で自分の色の小球をより多く増やすというものです。子供たちはこのゲームを通じて光の反射の魅力や科学学習の楽しさを体験できます。
まず、研究テーマの変更に至るまでの経緯について説明しました。その後、最近行った背景調査について紹介しました。調査内容には、さまざまな詐欺防止教育の形式が含まれており、例えば従来の授業形式、シリアスゲーム、詐欺テストなどがあります。
さらに、具体的なケーススタディや、他のゲームから参考にした有用なゲームメカニズムについても報告しました。加えて、最近の成果として、効果的な詐欺防止教育の形式や行動学に関する理論を共有しました。これらは、私の研究にも多くの示唆を与えてくれました。
最後に、今後の研究計画について簡単に説明し、研究のタイムラインも提示しました。
以上が、12月12日に行われたゼミの内容です。それぞれの研究の進捗や意見交換を通じて、有意義な議論ができたと感じます。今後の研究活動も引き続き頑張りましょう。
投稿日時: 2024-12-11 投稿者: leafyyan
皆さん、こんにちは! 外国人研究生のLeafyです。12月5日のゼミ活動では、莫さん、犬田さん、アマンダさんの研究進捗発表、そしてLeafyが準備したプレイセッションが行われましたので、ご報告です。
■【大空さん】ゲームジャム
発表の開始前に、大空さんが参加したScientific Game Jamについての経験を共有しました。ゲームジャムは、ゲーム開発者やデザイナー、そしてゲーム愛好者が集まり、限られた時間の中でゲームを制作するイベントです。大空さんは『ULTRA FAST WAR』という対戦ゲームをチームで開発し、サイエンスゲーム賞及び観客賞を受賞しました!
■【莫さん】研究進捗発表
次に、莫さんが自身の研究進捗を発表しました。彼女の研究は、murder mystery game(MMG)のデザイン要素を活用し、学習の向上を目指すものであり、具体的にはケーススタディおよび標準化患者を通じてチームワークの強化を図る、いわゆるteam-based learningに関連しています。
莫さんは、研究問題「MMGメカニズムの活用はCoR理論を通じてTBLを向上させるか」を設定し、追加的な文献研究を進めつつ、ワークショップの作成に着手しています。現在、彼女が直面している課題は、ワークショップ作成の参考文献としてMOOCを選択するか、それともより伝統的な教科書を選択するかという点です。莫さんは皆から意見を募り、日本の臨床心理学に関する書籍を参考にしてワークショップを最適化する方針を決定しました。木村先生は、莫さんの研究テーマが主に日本人を対象としていることを確認し、日本の学生や関連する心理系の医師との接触に関するアドバイスを提供されました。
さらに、莫さんは謎解きゲームによる東京大学制作展への参加経験や、今後の短期的および長期的な計画についても報告しました。
■【犬田さん】研究進捗発表
犬田さんは「ゲーム手法を用いたデータ収集法の開発と評価」という研究テーマについて発表しました。彼は今回の進捗発表において、データの収集と分析が既に完了したことを説明しました。犬田さんは、Googleフォームを利用した調査結果、およびその分析方法について詳細に解説しました。
自由記述のセクションでは、共起ネットワーク図の解釈や概要に重点を置き、特にゲーミフィケーションを活用した調査における興味を引く要素およびその頻度について議論を行いました。犬田さんはKH Coderを用いた分析結果も提示し、具体的な説明と共に分析を行いました。
最後に、犬田さんは自身の論文作成の進捗についても触れましたが、その詳細についてはここでは省略いたします。
■【アマンダさん】研究進捗発表
特別研究学生のアマンダさんは、非常に魅力的な研究進捗を報告しました。アマンダさんの研究テーマは「ビデオゲーム、知識、意味生成の絡み」です。アマンダさんは、彼女の研究において重要なゲーム開発者チームであるConcernedApeとのインタビューについて発表しました。インタビューは、アマンダさんにとって学術的にも非常に意義深い時間となったようです。
続いて、アマンダさんは今後6ヶ月間の研究タイムラインや現在進行中の論文について説明し、また日本の学術環境におけるインタビュー設計での参加者報酬に関する問題についても意見を求めました。
■【Leafy】プレイセッション
12月5日のゼミ活動の最後には、私が主催したプレイセッションが行われました。今回のプレイセッションのテーマはボードゲームであり、Leafyはドイツ式とアメリカ式のボードゲームの種類やスタイルについて紹介し、持参した手作りのボードゲーム、つまり「Splendor」メカニズムに基づいたドイツ式の戦略ボードゲームを紹介しました。皆さんにドイツ式ボードゲームの魅力を感じていただけたかどうかわかりませんが、参加者全員が非常に楽しんでいただいた様子でした ♪
以上が、12月5日のゼミ活動に関する報告です。ご覧いただき、ありがとうございました!
寒さが厳しくなり、インフルエンザも流行していますので、皆様は健康に留意し、忙しい学業や仕事の中でも体調に気を付けてください。
投稿日時: 2024-12-05 投稿者: qikeyi
皆さんこんにちは!研究生の斉です。
11月21日のゼミは、叶さんの文献研究、私の関連論文紹介と坂井先生の研究員発表の3本立てでした。
それでは、早速報告させていただきます。
叶さん:文献研究
叶さんが Experiential Learning Theory(経験学習理論)について紹介してくださいました。この理論に基づいて提案された Experiential Gaming Model(経験型ゲームモデル)についても解説していただきました。このモデルを応用して分析されたゲーム「The Arctic」についても具体例として共有され、興味深い視点が提示されました。
叶さんは経験学習理論の4つのプロセスを紹介しました:
1.Concrete Experience:実際の体験活動にどっぷり没入する。
2.Reflective Observation:実際の体験活動を多角的に観察し振り返る。
3.Abstract Conceptualization:観察と思考を通じて論理的な概念と理論を抽象化する。
4.Active Experimentation:これらの理論を使用して意思決定を行い、問題を解決し、新しく形成した概念や理論を実際の作業で検証する。
また、この理論に基づいて、4つの学習スタイル(Diverging、Assimilating、Converging、Accommodating)が提案されています。
Experiential Gaming Modelは、Flow TheoryとExperiential Learning Theoryを融合させたもので、ユーザーのアプリオリ知識と経験がユーザーがゲーム世界をどのように体験し、認識するかに影響を与え、さらに学習者のスキルに応じた課題をシステムが提供できれば、フロー体験を得られる可能性が高くなると提唱しています。
Experiential Gaming Modelは、教育用ゲームの設計と分析に使用できます。ただし、このモデルは教育理論とゲームデザインの間のリンクとして機能するものであり、ゲームデザインプロジェクト全体に対する手段を提供するものではありません。
最後に、叶さんはThe Arcticを使用して実例分析を行い、詳細なフロー図を提供しました。
斉さん:関連論文紹介
今回私が紹介する内容は、ゲームユーザー研究(GUR)における一般的な研究ツールと、その中でも最新の「PXI(Player Experience Inventory)」についてです。
ゲームユーザー研究(GUR)は、ヒューマンインタラクションとゲーム開発を融合させた研究分野です。GURは、プレイヤー体験を測定、分析、理解し、ゲームデザインを最適化することに焦点を当てています。そのため、GURの専門家は、特定のゲームデザインの選択がプレイヤーにどのような体験をもたらし、それがどのように特定の感情的反応を引き起こすのかを理解することを目指しています。
現在のGUR研究ツールには、質的および量的なデータ収集と分析を含むさまざまな方法が含まれており、社会科学、心理学、ヒューマンインタラクションなどの分野から取り入れられています。
今回紹介する論文では、現在のところGURによって特別に設計され、こうした実用的なプレイヤー体験の洞察を提供できるツールが不足していると指摘しています。このギャップを埋めるために、研究者たちは「プレイヤー体験清単(PXI)」を開発しました。このツールは、手段-目的理論を参考にしており、機能的結果と心理社会的結果の2つの観点からプレイヤー体験を評価します。
藤本先生と木村先生は、実際のゲームテストプロセスの観点から、この調査方法が現実と多少異なる可能性があることを指摘しました。そして、ゲーム会社が実際に行っているゲームテストの方法について、皆さんと議論されました。私は引き続き、PXIを応用した実際の事例を探し、学習を進めていきます。
坂井先生:研究員発表
最後に、坂井先生が国際会議で発表した論文について共有してくれました。本研究では、メンタルヘルス教育ゲーム「SMG」がストレス予防行動に及ぼす影響について検討しました。
近年、精神障害の労災やうつ病患者の増加が問題となる中、企業や従業員の中には、必要に迫られてメンタルヘルス対策を導入する動きがあります。特に、ゲーム要素を非ゲームシステムに導入する動きが注目されていますが、健康促進やストレス予防などの行動への効果はまだ検証されていません。坂井先生が紹介した研究では、この背景を踏まえ、メンタルヘルス教育ゲーム(SMG)を研修に取り入れることで、従業員のストレス予防行動にポジティブな影響があると考えられています。
この研究は、X市総務課が企画した中堅職員メンタルヘルス研修に参加した56名を対象に、ストレス予防行動に対する認識を測定するために「HSE(ストレス予防行動能力調査票)」を使用し、メンタルヘルス教育ゲーム「SMG:Stress Management Game」を基に実施されました。その後、坂井先生はゲームの物語、役割、目標、ゲームの流れなど、具体的な内容について紹介しました。
最後に、調査結果は「SMG」実施前後のストレス予防行動の平均値と効果量として主に示されました。その結果、メンタルヘルス教育ゲーム「SMG」が従業員のストレス予防行動にポジティブな影響を及ぼす可能性が示唆された。
討論の中で、皆さんはゲームの具体的な細部について質問し、各国の従業員の仕事のストレス状況についても議論しました。
以上で今回のゼミ活動報告でした!
投稿日時: 2024-11-21 投稿者: Amandancurtis.
みなさん、こんにちは! 特別研究学生のアマンダです。11月14日のゼミ活動では、Leafyさんの関連論文紹介と犬田さんの関連論文紹介と犬田さんのプレイセッションが行われました。
Leafyさん
Leafy introduced two papers on simulation games and their applications in research: “A Scientific Foundation of Simulation Games for the Analysis and Design of Complex Systems” and “What.Hack: Engaging Anti-Phishing Training Through a Role-playing Phishing Simulation Game.”
“A Scientific Foundation of Simulation Games for the Analysis and Design of Complex Systems” explores the use of simulation games as research tools, focusing on limitations, recommendations, and best practices. To do so, the paper reviewed related works, presented case studies, and conceptualized simulation games. It outlined three levels of inquiry: (1) philosophical level, (2) scientific level, and (3) practical level. It then provides a “scientific toolbox”. Simulation games were found to improve decision-making, team coordination, and understanding of complex systems.
“What.Hack: Engaging Anti-Phishing Training Through a Role-playing Phishing Simulation Game” focused on a game designed to teach participants how to identify phishing attempts. Using a controlled experiment, the authors found that the game was effective at improving phishing awareness, self-confidence, and decision-making in simulated and real-world scenarios. One of her main takeaways is that it is important to combine contextual learning theory with gamification design practices.
Leafyさん then related this to her own research plans.
Leafyさんの発表
Leafyさんは、シミュレーションゲームとその研究での活用に関する2つの論文を紹介しました。
1. 「A Scientific Foundation of Simulation Games for the Analysis and Design of Complex Systems」
2. 「What.Hack: Engaging Anti-Phishing Training Through a Role-playing Phishing Simulation Game」
「A Scientific Foundation of Simulation Games」では、シミュレーションゲームを研究ツールとして使うことについて議論されました。この論文では、他の研究をレビューし、ケーススタディを紹介し、哲学的レベル・科学的レベル・実践的レベルの3つの視点でゲームを分析しました。また、「Scientific Toolbox」を提供し、ゲームが意思決定、チームワーク、複雑なシステムの理解を向上させることがわかりました。
「What.Hack」では、フィッシング詐欺を特定するトレーニング用のゲームが紹介されました。実験では、このゲームがフィッシングへの理解、自信、意思決定力を向上させる効果があることがわかりました。Leafyさんの重要な結論は、文脈的学習理論とゲーム化デザインの実践を組み合わせることが重要だということです。
最後に、Leafyさんはこれらの内容を自身の研究計画に関連付けて発表しました。
犬田さん
犬田さん discussed a paper on gamifying online surveys: “Online research–game on!: A look at how gaming techniques can transform your online research”. It focused on transforming surveys with gamification techniques to make them more engaging and fun. Some key techniques are: personalization, emotion induction, projection (asking participants to take on another perspective), and fantasy scenarios. The study found that gamified surveys improved engagement, with visually rich versions showing higher satisfaction and response rates.
犬田さん emphasized that gamification can make surveys immersive and more enjoyable without compromising data quality. His own research focuses on improving how questions are presented, using visuals and feedback mechanisms to boost engagement.
犬田さんの発表
犬田さんは、アンケート調査のゲーム化に関する論文「Online research–game on!: A look at how gaming techniques can transform your online research」を紹介しました。この論文では、調査をもっと楽しく魅力的にするためのゲーム化の方法が紹介されました。主なテクニックは次の通りです:
• パーソナライズ(質問を参加者個人に関連付ける)
• 感情誘発(質問に感情を引き出す要素を追加)
• 視点の投影(他の視点で考えさせる)
• ファンタジーシナリオ(仮想の状況を想像させる)
この研究では、ゲーム化されたアンケートが回答者の満足度を高め、回答率を向上させることがわかりました。特に、視覚的な要素が多い形式は、テキストのみの形式より効果的でした。
犬田さんは、ゲーム化が調査を没入的で楽しいものにしつつ、データの質を損なわないことを強調しました。また、犬田さん自身の研究では、質問の提示方法を改善し、視覚的要素やフィードバックメカニズムを活用することで、エンゲージメントを高めることに焦点を当てていると話しました。
投稿日時: 2024-11-14 投稿者: osora
皆さん、こんにちは! 修士2年の大空です。
11月7日のゼミ活動では、大空とAmandaさんの発表が行われましたので、ご報告です。
■【大空】KJ法について
大空は、データ分析手法の一つである、KJ法について発表を行いました。KJ法とは、川喜田二郎が、文化人類学の分野で考案した質的データ分析手法で、現在は多様な分野で応用されています。
具体的には、名刺サイズのカードにデータを転記し、それらをグループ化・図解することで、情報をコンパクトかつ視覚的に整理する手法です。混沌とした質的データも、KJ法を用いることで簡潔にまとめやすくなります。
また、ユニークな特徴として、データの分類・図解・文章化の過程で研究者の主観を活用することで、新たな発想や仮説が生まれやすくなります。ただし、その研究利用に゙関しては、エスノグラフィー等とは異なり、利用シーンが発展していない・科学的な手法としての検討が十分ではないため、注意が必要です。
自身の研究においても、このKJ法を部分的に採用しようと思い、KJ法の手順〜上記の注意点まで、マニュアル形式で発表しました。実際に、再来週に研究室内でワークショップを行う予定なので、まずは実践してみて、自分自身、KJ法に対する理解をより深めようと思います。
■【Amandaさん】インクルーシブ・ゲーミングについて
Amandaさんは、インクルーシブ・ゲーミングについて発表されました。
インクルーシブ・ゲーミングとは、インクルーシビティ(バックグラウンドや能力、アイデンティティに関係なく、すべてのプレイヤーがアクセスしやすく、公平で、歓迎されること)を兼ね備えたゲーム体験を指します。
発表では、ゲームにおけるアクセシビリティ、表現と多様性の観点から、複数の事例をご紹介いただきました。単なるゲームプレイのしやすさだけでなく、障がいやマイノリティの方を包括したアプローチが多数見受けられました。
また、誰がインクルーシブな体験をデザインすべきか?というテーマも提示され、本分野におけるステークホルダーの多様さと複雑性が感じられました。最後には、それぞれ身近な例をもとに、このテーマについてディスカッションし、知識をより広げることができました。
Amandaさんの研究は、本分野の解決にも寄与するものであるため、研究室の中でも継続的に議論を深めていきたいテーマとなりました。
以上が、11月7日のゼミ活動報告です。
それでは!
投稿日時: 2024-11-07 投稿者: ziminmo
皆さんこんにちは!M1の莫です。
今回のゼミは、叶さんの関連論文紹介、斉さんの文献研究と広瀬先生の研究員発表の3本立てでした。
それでは、早速報告させていただきます。
叶さん:関連論文紹介
叶さんが「没入感とゲームデザイン」をテーマに関連論文研究を紹介しました。ゲーム体験やナラティブデザインに関する複数の論文を紹介し、没入感の構成要素や内発的動機とナラティブが学習効果に与える影響について発表しました。
まず最初に、ゲーム体験における没入感の要素について「audiovisual quality and style」「level of challenge」「Imaginative Immersion」の三分類(SCI Model)から、これらの要素がゲーム体験の質に与える影響について触れ、プレイヤーの集中力を引き出すと説明されました。
次に、没入感の三分類に基づいて、ゲーム物語デザインの効果と学習効果の高いゲームデザインの特徴について、それぞれ実験・論文を紹介し、詳しく説明しました。
1つ目の特徴として、内発的な動機づけがプレイヤーの学習効果を向上させる事例研究がありました。シューティングゲームにおける「内在・外在・コントロール」要素の区別により、内在的動機が強化されるとプレイヤーが積極的に学ぶ傾向が確認されました。
2つ目の特徴は、共感を通じた臨場感の向上です。アバターに感情移入できると、臨場感が高まることが報告されています。「シンパシー群 vs コントロール群」の比較で、シンパシー群がより高い臨場感を体験したことが示されました。
3つ目の特徴は即時フィードバックで、シナリオ主導のゲームで即時のフィードバックが没入感やコントロール感を向上させることが示され、学習効果と感情的関与を深める役割を果たすとされています。
今回の紹介を通じて、叶さんはゲーム没入感の多面的な構造について詳細な分析を行って、多くの研究について学びました。自分としては、今後のワークショップデザインで、没入感を高めるために、様々な要素の設計に注意を払う必要があると感じました。
斉さん:文献研究
斉さんは「art of the games: Games trough Fiction」を中心に、著者の議論に沿って研究者たちのゲームとビデオゲームの定義理論・研究例を紹介しました。まず、ゲームとビデオゲームの定義について、ビデオゲームは「インタラクティブな関与」を基盤とし、目標達成型(ルーディック)と自由探索型(パイディア)に分類されることが説明されました。
続いて、ゲームとパズルの違いについても紹介してくれました。ゲームは競争や協力を通じて目標達成を目指すものであり、他のプレイヤーと状況が進行する点が強調されました。一方、パズルは複雑さを解消し、安定した解決策を見つけることが目的とされており、プレイヤーは自ら解決策にたどり着くことが求められます。このように、プレイスタイルや目的が異なることが両者の大きな特徴です。
また、ゲームのルールがFictionを通してプレイヤーに提示されることの意義についても触れられました。斉さんは「Portal」というビデオゲームを例としてあげました。Fictionがゲーム体験に密接に関わっていて、プレイヤーがゲーム世界を理解しないとプレイが難しい構造となっています。そして最後に、「マジック・サークル」理論が取り上げられましたが、この理論では現実とゲームの境界が曖昧になるビデオゲームの多様性を十分に説明できないという課題も指摘されました。
広瀬先生:研究員発表
最後に広瀬先生が最新の研究について共有してくれました。広瀬先生は、オレゴンでの研究紹介をはじめに、最近日本で「ライフキャリア支援」をテーマに、エリクソンの生涯発達理論に基づき、越境的な学習環境を活用して、移行期における若者のアイデンティティ確立や中高年の次世代への貢献意識を促進するワークショップを展開しています。
次に、広瀬先生はワークショップの具体的な流れと設計について説明しました。参加者は事前に指定された映画を視聴し、関連する問いについて考えます。当日は、学生と社会人の混合グループで意見を交わし、登場人物の「人生の目的」について話し合いながら、それぞれのキャリア観を広げ、世代を超えた学びの機会を得ることが目指されています。
最後に、広瀬先生は初期の成果を共有しました。参加者のフィードバックによれば、映画とディスカッションを通じて、自身のキャリア設計について深く考えるきっかけを得られ、特に転換期において新たな示唆を受けたとのことです。こうした意見をもとに、今後はワークショップの設計を最適化し、さらに多くの地域での展開も検討されています。
広瀬先生の研究報告は、私たちのワークショップのアイデア発案から設計、そして特に参加者フィードバックからワークショップに活用することまでのプロセスにおいて、多くの参考となる内容でした。また、先生は質問応答の際にも非常に親しみやすく、ネットワーク環境でのワークショップの運営・ネット環境で賑やかな議論の雰囲気を起こし方についても多く勉強になりました。
以上で今回のゼミ活動報告でした!
ちなみに制作展のお知らせです。11月7日~11日には東京大学制作展『付いて離れて』が開催されます!私が参加した『本郷キャンパス謎巡り ーAさんの消失ー』と『心の味わい』の2作品は工学部2ホールと92Bにそれぞれ展示されています。
ご興味がございましたらぜひお越しください^^
投稿日時: 2024-10-31 投稿者: inuda
みなさん、こんにちは! 修士2年の犬田悠斗です。
10月24日のゼミ活動では、莫さんの文献研究と犬田の関連論文紹介、大空さんのプレイセッションが行われました。
■【莫さん】文献研究
莫さんは、"Team-Based Learning A Transformative Use of Small Groups in College Teaching"の第2章 "Getting Started with Team-Based Learning"について発表されました。
この発表では、自分自身の経験を踏まえながら、Team-based Learning(以後TBL)における4つの原則とTBLを実行するプロセスについて主に説明されました。
TBLにおける4つの原則は、以下の通りです。
1.グループは適切に形成され、管理されなければならない(Groups Must Be Properly Formed and Managed)
2.学生には個人ワークおよびグループワークに対して責任を負わせなければならない(Students Must Be Made Accountable for Individual and Group Work)
3.グループの割り当ては学習とチーム開発の両方を促進しなければならない(Group Assignments Must Promote Both Learning and Team Development)
4.学生は頻繁かつ適切なタイミングでフィードバックを受け取らなければならない(Students Must Have Frequent and Timely Performance Feedback)
また、TBLを実行するプロセスは、授業前(Before Class)、初回授業(The First Hours)、主要単元(Major Unit)、学期末(End of the Term)の4つに分かれています。
授業前には、授業を4-7つの単元に分け、それぞれに学習目標を設けます。加えて、成績の評価制度についても定めておきます。初回授業では、TBLの説明を行い、その後グループを作ります。加えて、学生に成績評価制度について説明します。主要単元では、授業内容に対する生徒の理解を深め、チームの結束を高めていきます。まず単元の準備確認からはじめ、その後応用に移っていきます。学期末には、授業内容やチーム内の相互作用などについて振り返りを行います。
この発表を聞いて、教師だけでなく、学生もTBLの原則とプロセスについて知っておくことが、授業を円滑に進めていく上で重要なのだろうなと思いました。
■【犬田】関連論文紹介
私は、下記の論文に基づいて、修士研究で開発したゲーミフィケーションを活用したオンライン調査のデザインプロセスについて発表しました。
Harms, J., Wimmer, C., Kappel, K., & Grechenig, T. (2014). Gamification of online surveys: conceptual foundations and a design process based on the MDA framework. Proceedings of the 8th Nordic Conference on Human-Computer Interaction: Fun, Fast, Foundational. 565–568.
この論文では、ゲーミフィケーションを活用したオンライン調査のデザインプロセスについて論じられています。デザインプロセスは5つに分かれており、それぞれの段階で考えるべきことは以下の通りです。
1.Aesthetics and the Relationship Layer:回答者の属性やフォームの内容に基づいて、感情的な反応やユーザー体験に関する目標を設定する
2.Dynamics and the Conversation Layer:具体的な質問項目に基づいてユーザーとフォームのインタラクション、そしてそれによって引き起こされる行動について検討する
3.Mechanics and the Conversation & Appearance Layers:意図する感情と行動を生み出すために、適切なゲームメカニクスとゲーム要素を採用し、それに基づいて質問内容・質問構成とフォームの見た目を変更する
4.Prototyping, Evaluation and Iteration:アイデア出し、スケッチ、プロトタイピング、評価を3回程度繰り返す
修士研究では、このデザインプロセスに基づいて、ゲーミフィケーションを活用したオンライン調査を作成しました。加えて、この発表では、選択肢をトラッキングする技術的な方法やデバックの方法などについても説明しました。
今回開発してみて、頭で考えてできる事でも実際に開発してみるとエラーやトラブルがたくさん発生することを実感しました。そして、実際に手を動かしながら、地道に開発することの大切さを改めて感じました。
■【大空さん】プレイセッション
プレイセッションでは、大空さんが開発した、会社経営を短時間で疑似体験できるボードゲームを遊びました。このボードゲームは、マーケティング施策を通じて、12ラウンド(1年間)で営業利益を最大化することが目標です。
そして、このゲームの学習目的は、マーケティング、特に3C/4P(※1)の全体感を理解することです。3Cと4Pの要素がゲームメカニクスに組み込まれており、ボードゲームを遊ぶことで、これらを自然と学習することができます。
実際に遊んでみて、上手いプレイヤーは競合のいない場所を見極めるのが早く、ビジネスにおける競合の重要性を感じました。経営シミュレーションゲームはプレイ時間が長くなりがちなので、短時間で経営におけるマーケティングの全体感を把握できるのはとてもいいなと思いました。
※1 3C/4Pともにマーケティングの基礎的なフレームワーク
3C=Company(自社)、Competitors(競合)、Customers(顧客)
4P=Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(広告・販売促進)
以上が、10月24日のゼミ活動報告です。ぜひ来週のゼミ報告記事もお読みください。
それでは!
投稿日時: 2024-10-18 投稿者: keirinkyou
みなさん、こんにちは!研究生の叶馨霖と申します。それでは、10月17日のゼミ活動を報告させていただきます。この度のゼミでは、研究生の進捗報告が行われ、発表者は斉さん、厳さん、アマンダさん、そして叶(私)でした。
斉さん
まず、斉さんは研究課題の変更について説明しました。知識の不足により、文献を読み進めた結果、研究テーマを「第二言語語彙学習ゲームの評価と設計のためのGameFlowヒューリスティクス」へと修正しました。テーマ自体は変わったものの、研究の動機は基本的に変わっていません。
次に、斉さんはフローモデルについて紹介しましたが、このモデルはさまざまな分野で応用されています。ゲーム学習に特化した研究に集中するため、斉さんはゲームにおけるフローモデルの研究に焦点を当てる予定です。
先行研究において、ある学者はゲームフローモデルを用いてリアルタイムストラテジー(RTS)ゲームを分析し、その結果からRTSゲームの評価や設計に役立つ詳細なヒューリスティクスを提案しました。斉さんも同様に、ゲームフローモデルを使って第二言語語彙学習ゲームを分析し、評価と設計に役立つ詳細なヒューリスティクスをまとめたいと考えています。
さらに、斉さんはゲーム分野と教育分野におけるフロー理論の違いについても説明しました。教育ゲームは明確な教育目的を持つため、楽しさと学習のバランスを見つけることが難しくなります。この時にヒューリスティクスがより重要な役割を果たします。
次に、なぜ第二言語学習を選んだのか、その理由を詳しく説明し、今後の研究計画も示しました。
その後、アマンダさんとモさんからいくつかの質問や提案がありました。アマンダさんは、もっと多くのゲームレビューを行うことを提案しました。莫さんは、どの種類のゲームを対象に調査するのか、また、異なる学年の学生に対する研究には多くの外的要因が絡む可能性があると指摘しました。加えて、ゲームの難易度も考慮すべき重要な要素です。
藤本教授からもコメントがありました。言語学習には単語や文法など、さまざまなタイプがあり、またゲームの形式にもパズルやクイズなど多くの種類があるため、これらの実例研究をもっと明確にする必要があると指摘されました。
最後に、フローゾーンの分類がこの研究の焦点となるのか、またそのデータはどのように収集・統計されるのかという点についても議論が行われました。
厳さん
まず、厳さんは自身のビジョンについて説明しました。彼の目標は、ゲームを通じてプレイヤーに経済や金融の知識を学んでもらうことです。その理由として、多くの人が金融詐欺の被害を受けていることが挙げられます。しかし、このテーマに関する背景調査では、いくつかの問題に直面しています。たとえば、被害者が自らの詐欺被害を共有したがらないことや、多くの人が「自分には関係ない」と考え、調査に協力しないという点です。
厳さんは、通常の詐欺防止教育のように「信じないで」と繰り返し説得する方法ではなく、詐欺のシミュレーションゲームを設計し、プレイヤーが詐欺のシチュエーションに参加することで防止策を学べるようにしたいと考えています。ここで重要なのは、被害者がどのようにして詐欺に引っかかる決断をするのか、そして被害の可能性についてです。
次に、厳さんはゲームをどうすれば魅力的にするかについて、プレイヤーの動機を基に説明しました。しかし、これはゲームデザイン理論のサポートが必要であり、今後さらなる文献研究を行い、どのようなゲームデザインやメカニズムがゲームをより説得力のあるものにするかを探っていきます。
その後、厳さんはこの研究が直面する可能性のある問題をいくつか挙げました。たとえば、実験結果の評価方法、ゲーム形式と金融詐欺教育の融合性、このゲームが金融や経済教育の他の側面に応用できるかどうかといった点です。
評価方法については、厳さんはすでに大まかな考えを持っており、質的調査と量的調査の両方を含む予定です。ただし、これらの具体的な方法については、金融詐欺やゲームデザインに関連する文献から答えを見つける必要があります。
最後に、厳さんは今後の研究計画をいくつか提示しました。
その後、藤本教授は「非常に創造的な発表だ」と感想を述べました。アマンダさんは「今後の研究の方向性は科学研究に重きを置くのか、それともゲームデザインに重点を置くのか?」と質問し、厳さんは「前者です」と答えました。続いて、莫さんからは「脆弱性(vulnerability)の定義は何ですか?」と質問があり、厳さんは「具体的に詐欺にかかりやすい人々の特徴や彼らのプロファイリングを指します。そして、詐欺の過程は意思決定の過程でもあります」と答え、私たちは新たな知識を得ることができました。
アマンダさん
まず、アマンダさんはゲームの人気と、それが現代生活に与える微妙な影響について紹介しました。その後、彼女は自身の主張を述べ、ゲームは文化的な芸術作品であると考え、ゲームが日常生活において人々の思考やアイデアにどのように影響を与えるかを探りたいと語りました。
次に、ゲームが思考を形作るメカニズムを探るために、アマンダさんは彼女が行った文献研究を紹介しました。主に以下のテーマが含まれます:ゲームと学習、ゲームと知識構築、意味形成(Meaning-Making)です。
特に「意味形成」について重点的に説明しました。Meaning-Makingとは、プレイヤーが自身の知識や経験に照らしてゲーム内の出来事を解釈し、意味を創造することを指します。これには次の3つのアプローチがあります:
-Knowing through games (e.g., games as group collaboration)
-Knowing by games (e.g., game developers embed their values into the game)
-Knowing with games (e.g., players co-construct knowledge alongside the games)
文献研究に基づき、アマンダさんは次の研究質問を提案しました:
–RQ1: 「知識の実践」はどのようにして、ゲームによって、ゲームを通して、ゲームとともに実現されるのか?
–RQ2: どのようにゲームを設計すれば、知識の実践をよりよく促進できるのか?
アマンダさんの研究の方法論設計は非常に興味深いものでした: 彼女のケーススタディでは、ゼルダの伝説: ティアーズ オブ ザ キングダム、スターデューバレー、スカイリムに焦点を当て、プレイヤーがこれらのゲームとどのように相互作用し、学んでいるかを分析します。
デザイナーインタビュー:ゲーム開発者のデザイン意図がプレイヤー体験にどのように影響を与えるかを探るインタビュー。
プレイヤーインタビュー & 日記:プレイヤーが7日間にわたってゲーム体験を記録し、その学びと反省を明らかにします。
ストリーミング観察:プレイヤーのリアルタイムのゲームプレイを観察し、ゲームとプレイヤーの相互作用を分析します。
データ分析については、テーマ分析とクロスケース分析を組み合わせ、プレイヤーとゲームにおける知識の実践を理解する予定です。
ウォークスルー:研究者が自らゲームをプレイし、ゲームデザインや技術的要素を理解します。
初期の発見として、アマンダさんは次のことを紹介しました:プレイヤーは、ゲームプレイスキルの向上、現実世界の情報(例:植物の識別)の学習、自己認識の向上、創造的なインスピレーションなど、ゲームを通じてさまざまな知識を習得しています。また、ゲームは動的なコミュニケーションの一形態としても機能し、プレイヤーはゲームの「言語」を理解しながら関与しますが、時には誤解が生じることもあります。
その後、莫さんから質問がありました:プレイヤーがゲーム日記の記録を維持し、フィードバックを続けることをどのように保証しますか? これに対してアマンダさんは、重要なのは被験者のコミュニティ意識を強化することであり、データ収集の前に「このプロセスはそれほど難しくない」と伝えることで彼らの自信を高めると回答しました。被験者自身も、ゲーム日記を記録することをゲームコミュニティの一部として共有するプロセスだと感じています。
また、厳さんからも質問がありました:なぜこの3つのゲームを選んだのか?これらのゲームは建築や冒険、経営の要素を含み、非常に面白いですが、ゲームが人の思考を形作るというテーマにおいて、バイアスが生じる可能性はありますか? アマンダさんは、「確かに多少の偏りがあるかもしれない」と認め、3つのゲームの違いを紹介しました。さらに、FPSゲームを追加することが良いかもしれないと述べ、後の研究者がこの研究からインスピレーションを得て、異なるタイプのゲーム研究を行うことも良いと言いました。
叶
まず、私の研究テーマの変更についてお知らせします。VR開発の難しさに加え、マグロの漁獲管理が十分に進み、個体数も回復傾向にあるため、もはや絶滅危惧種保護のゲームテーマとして適切ではなくなりました。今後、研究の焦点を海獺(ラッコ)の保護に置いたゲームデザインに変更いたします。
今回のゼミでは、以下の3つのテーマについて紹介しました:
なぜラッコを選んだ?
なぜゲームやRPG通じて保護意識を高めるか?(メリット)
動物保護テーマのゲームのレビュー
ラッコは絶滅危惧種に分類されており、世界全体の個体数がかつて2000匹ほどまで減少しました。北海道は日本におけるラッコの生息地の一つですが、現在、推定される生息数は50匹を超えないとされています。また、日本の水族館で飼育されているラッコはたった3匹で、そのうち来館者が実際に観覧できるのは2匹のみです。
さらに、ラッコは海底環境の修復にも重要な役割を果たしており、エコシステムの中で欠かせない存在です。私は個人的にラッコを非常に可愛いと感じており、「可愛さ」こそがラッコを研究対象に選んだ大きな理由でもあります。
「ベビーフェイス理論」によると、幼い特徴を持つ動物は人間の保護本能をより引き出しやすいと言われています。また、動物の親子関係や仲間同士の助け合いなどの親社会的行動は、人間に共感を与え、保護意識を促進する要因になります。ラッコは社会性が高く群れで行動する動物であり、この点からも研究対象として適していると考えました。
日常生活であまり接する機会がない動物に対する人々の関心は低くなりがちです。ラッコのように国内で展示されている数が非常に少ない場合、その存在自体が忘れられやすいと言えます。一方で、動きのある映像は学習の没入感を高める効果があり、さらにプレイヤーが自ら選択や行動をすることで、より深い没入体験を提供できます。これらの点から、ゲームは保護意識を高めるための効果的な手段だと考えました。
私はゲームの没入感について文献調査を行い、大きく3つのタイプがあることを確認しました:Sensory Immersion、Challenge-based Immersion、Imaginative Immersion。
複数のゲームを分析した結果、動物保護意識を高めるには、感覚的没入よりもタスクベースの没入と想像的没入のほうが効果的であると感じました。今後の研究では、この2つの没入感と保護意識の育成との相互作用に注目していく予定です。
私の発表後、藤本先生から「研究問題が複雑すぎるため、没入感のどれか一つに絞って進めたほうが良い」というアドバイスをいただきました。これは非常に有益な指摘であり、今後の文献調査では、最も適切な没入感のタイプを選び、それに基づいてゲームを設計する予定です。
プレーセッション
最後に、藤本先生が紹介してくださったのは「Rocksmith」でした。これは音楽の学習とゲーム要素を融合したリズムゲームで、Ubisoftによって開発されました。従来の音楽ゲームとは異なり、『Rocksmith』は本物のエレキギターやベースを使用してプレイすることができ、単なる模擬コントローラーでの操作に留まりません。USBケーブルで楽器をパソコンやゲーム機に接続し、実際の音符やコードをリアルタイムで演奏できる点が特徴です。
藤本先生は実際にこのゲームのプレイを私たちに披露してくれ、その魅力を存分に体感することができました。
待ってください!まだ話は終わっていませんよ!ゼミの後には、新人歓迎会とJonaさんの送別会がありました。場所は学内のレストランで、とても美味しいイタリアンをみんなで楽しみました。食事の間には、たくさんの楽しいおしゃべりやゴシップ話で盛り上がり、とても素敵なひとときでした!
それでは、来週の研究室活動もどうぞお楽しみに!
あ、最後にお知らせです。10月30日には藤本研究室の説明会が開催されます!研究室に興味のある受験生の皆さんは、ぜひご参加くださいね~!
投稿日時: 2024-10-14 投稿者: inuda
みなさん、こんにちは!
修士2年の犬田悠斗です。今回は、8月・9月の「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム」で行った<SF作品を作ろう!「ゲームを基盤とした社会」を創造するワークショップ>の報告記事です。ぜひ最後までお読みください。
■企画背景
タンパク質の構造予測を行うパズルゲーム『Foldit』など、遊ぶことで社会貢献できるゲームが開発されています。もしこれらのゲームが流行し、多くの人がゲームを通して世の中の発展に寄与する未来が訪れたとすると、社会ではどのような良いこと・悪いことが起こるのだろうと疑問に思いました。
そこで、SFプロトタイピングという、「サイエンス・フィクション的な発想を元に、まだ実現していないビジョンの試作品=プロトタイプを作ることで、他社と未来像を議論・共有するためのメソッド」(宮本他, 2021)を用いて、参加者の方にそのような未来を創造してもらうワークショップを実施しました。
■どんなワークショップ?
このワークショップでは、参加者の方に、「ゲームを基盤とした社会」をテーマにしたショートショートを作成してもらいました。「ゲームを基盤とした社会」とは、多くの人がゲームを通して世の中の発展に寄与する社会のことです。
このワークショップは、「1.設定資料の作成(20分)、2.ブラッシュアップ(20分)、3.執筆(10分)」の大きく3つのステップに分かれています。設定資料の作成では、まずテーマである「ゲームを基盤とした社会」の説明を行いました。その後、そのテーマを基に、ネタ出しを行っていただき、題材を決定してもらいました。題材が決定したら、それに合ったキャラクターとストーリーの作成を行ってもらいました。
ブラッシュアップでは、まずグループを作ってもらい、その後1人1人設定資料の発表をしてもらいました。各発表後、聞き手には設定資料を褒める、もしくは深堀りしてもらいました。
執筆では、参加者の方に作成していただいた設定資料を、生成AIであるChatGPTに読み込ませ、ショートショートを作成しました。1時間と限られた時間であったため、このワークショップでは1つの作品のみデモンストレーションとして執筆を行いました。以下で、長崎のワークショップを通じてできた作品を紹介します。
■作品
・THIS ゲームコミュニケーション(リアル農夫ホウメイ)
レンは東京の片隅で地道な作業を続ける考古学者だった。社会は完全にゲームに依存し、人々は日々の活動をゲームとして競い合っていた。ゴミ拾いから環境保全、さらには政治活動まで、全てがゲーム化され、その貢献度がポイントとして可視化される世界。高ランクのバッジやメダルを持つ者は多くの尊敬を集め、生活が優遇される。しかし、レンのように泥臭い発掘作業や一次産業を担う者は、ゲームで評価されない「ランク外」の存在として扱われ、軽視されていた。
レンの手はいつも土と埃にまみれていた。古代の遺跡を掘り起こし、かつて人類がどう生き、どう繁栄していたのかを知るための手がかりを探していたが、そんなことに興味を持つ者は少なかった。周囲の人々はレンを哀れむか、侮蔑の目で見つめるだけだった。「そんな無駄なことをして何になる?ゲームでポイントを稼げば、もっと簡単に名声が手に入るのに」と言う者さえいた。
しかし、レンは考古学こそが人類の未来を救うと信じていた。社会が完全にゲームに依存している今、彼はそのゲームの先にある破綻を予感していた。歴史を紐解くことで、かつての文明がどのようにして崩壊し、またどのようにして復興してきたのかを学び、再び訪れるかもしれない崩壊に備えようと考えていた。
ところが、どれだけ調査が成功しても、誰も見向きもしない。逆に、ランク外であることを理由に、レンは危険な目にあうことが多くなった。ある日、遺跡からの帰り道、彼はゲームランカーの一群に絡まれた。「お前のような無駄な人間は社会の邪魔だ」と言われ、追い詰められた。命を奪われる寸前、突然の大きな轟音が街を揺るがした。
空を見上げると、太陽が異常な輝きを放っていた。その瞬間、全てのデバイスが一斉に機能を停止し、世界中のITインフラが崩壊した。ゲームで支えられていた社会は一瞬にして機能不全に陥り、混乱が広がった。
人々は何もできなくなり、パニックに陥った。しかし、レンだけは冷静だった。考古学で学んだ知識を活かし、過去の文明がどうやって自然の力と共存してきたのか、そしてどのように復興してきたのかを伝え始めた。かつて軽視されていた彼の知識は今や価値を持ち始め、人々は彼に助言を求めるようになった。ゲームが支配していた社会は崩壊し、人々はレンの手によって新たな生活を取り戻し始めた。
レンは冷ややかに微笑んだ。
「世界はいつも同じことを繰り返す。だが、今回はどうかな?」
彼の貢献度は、もはやゲームには表示されなかった。それは、実際の世界に刻まれた。
・Under Game(ペンネーム:まさのり)
ケンタは、社会において成功を約束されたエリートだった。ゲームによって社会貢献が測られるこの時代、彼の目標は明確だった。ネオゲームセンターで提供される社会貢献型のゲームをこなし、ポイントを稼ぎ、ランクの高いバッジやメダルを手に入れること。そうすれば、さらに多くの尊敬を集め、社会的地位が揺るぎないものとなる。
ある日、ケンタはいつものようにネオゲームセンターに足を運んでいた。貧困問題を解決するためのパズルゲーム、環境保護をテーマにしたアクションゲーム。すべてが社会的意義を持ち、プレイするたびにポイントが蓄積されていく。しかし、その日はなぜか彼の心が浮かない。ルール通りに生きることがどれだけ正しいのか、自分でも分からなくなってきたのだ。
そんな時、ケンタはふと気づいた。ネオゲームセンターの裏側に、古びた扉がある。妙な好奇心に駆られ、扉を押し開けた。その先には、暗がりの中で静かに動く機械、そして数人の男たち。驚いたことに、それは今では違法とされる、娯楽のためだけのゲームを遊ぶ場だった。
「ここでやってるのは、社会に貢献しないゲームだ。無意味な勝負ごと、ただの時間の浪費だ。」
男の一人がそう言って笑った。
ケンタは不快感を覚えた。この社会では、娯楽のためだけのゲームは無意味であり、禁止されている。人々の時間は社会のために使われるべきであり、それ以外は無駄だと教わってきた。だが、彼は一瞬、躊躇した。そして、そのゲームに手を伸ばしてしまったのだ。
プレイは簡単だった。目の前の画面に次々と現れるキャラクターを倒し、得点を重ねる。それだけだ。だが、そのシンプルさが不思議な快感を与えた。意味もなく勝つだけのゲームなのに、彼の心は激しく動揺した。社会に貢献するゲームとは違い、何の責任もない。ただ達成感と快楽だけが残る。
数日後、ケンタは再びその裏の世界に足を運んでいた。彼の内心は苦悩で揺れていた。自分は今まで何のためにゲームをしてきたのか?社会的な評価を得るために、ポイントを稼ぐために生きてきた。だが、この無意味なゲームは、なぜか深い満足感を与えてくれる。
彼は迷い始めた。社会貢献のためのゲームと、ただ楽しむためのゲーム。一体、どちらが本当に価値のあるものなのか?自分が生きているこの社会は、本当に正しいのか?
そんなある日、ケンタは違法ゲームの場である男に話しかけられた。男は静かに笑いながら、ケンタにこう言った。
「ポイントを稼ぐことで尊敬を得る?バッジやメダルが手に入る?それが君に何を与えてくれるんだ?」
ケンタは凍りついた。社会貢献ゲームがすべてだと思っていた自分が、ただシステムに操られていただけだったことに気づいたのだ。
彼はついに知った。かつて、社会はもっと自由だったことを。ゲームはただの遊びであり、楽しむことが目的だった時代があったことを。しかし、現在ゲームは社会を管理するツールになっている。ケンタはすべてを理解した時、社会から消え去るように、その裏の世界に完全に身を委ねた。
・子の成長(ペンネーム:伊藤大海)
太一は、ゲームが禁止された家庭で育っていた。友達が楽しそうに最新のゲームについて話す中、彼だけがその話題に加われないことが、次第に辛くなっていた。そんな時、「社会貢献ゲーム」というものが流行し、それを通じて様々な社会問題が解決されだした。太一は、ふと良いアイデアを思いついた。
「社会貢献をしながらゲームをするなんて素晴らしいじゃないか!」
太一は、これなら親も納得してくれるだろうと思い、親にプレゼンを行うことを決心した。
「お母さん、お父さん、話があるんだ」
ある日、太一は緊張した面持ちで両親の前に立った。彼の目には強い決意が宿っていた。彼は、社会貢献ゲームのメリットを次々と挙げた。ポイントを集めることで、地域清掃やリサイクル活動に貢献できる。さらには、ゲームのランキングで上位に入ると、学校で表彰されたり、名誉あるバッジがもらえたりする。
「それにね、僕もこれを通じて、他の子と同じように楽しみたいんだ」と太一は言った。
しかし、両親の顔は渋いままだった。
「ゲームはやっぱり良くない。社会貢献ゲームだとしても、それに夢中になって他のことを疎かにするかもしれない」と母親が言う。
「その通りだ。何度も言ってきたが、ゲームなんて時間の無駄だ」と父親も続けた。
太一はがっかりした。しかし、彼は諦めなかった。次の機会に、もっと説得力のあるデータや資料を集めて、もう一度挑戦することにしたのだ。それから数週間、太一はゲームに関する論文やデータを読み漁り、より洗練されたプレゼン資料を作成した。そして再び、両親の前に立つ。
「僕はただ遊びたいわけじゃないんだ。これを通じて社会に貢献したいんだよ。それに、データによれば、社会貢献ゲームをやっている子どもたちは成績が上がる傾向にあるんだ」
プレゼンは以前よりも格段に上手くなっていた。両親も少しは興味を示し始めたように見えたが、それでも決定打にはならなかった。何度も何度も繰り返し、太一は挑戦した。親もその度に応じてくれた。徐々に、彼のプレゼンは緻密で説得力のあるものとなっていき、最終的には両親も深く考え込むようになった。
そして、ついに父親が口を開いた。
「太一、よく頑張った。お前の言うことも一理ある。だが、今度は別の考えが浮かんできたんだ。お前はここまで自分の考えをしっかり持って話せるようになった。それに、社会のことも考えている。これからはもっと高度なことに挑戦してほしいと思っているんだ」
太一の期待は膨らんだ。ついに許される時が来たのだろうか?
しかし、その瞬間、父親は予想外の言葉を続けた。
「ゲームは禁止のままだ。だが、その代わりに、お前のその能力を活かして社会のリーダーを目指してほしい。ゲームなんかに時間を費やすより、もっと大きな貢献ができるだろう」
太一は愕然とした。彼のプレゼンは成功したどころか、逆に両親の期待をさらに高める結果となり、ゲームをする夢はますます遠のいてしまった。そして、社会貢献ゲームではなく、現実での「貢献」を求められる日々が始まったのだ。
・Justice Games(ペンネーム:ロイ・たこやき)
ジャスティス・キングは、教師として、常に子どもたちが社会に役立つ人間になるよう、教育に力を注いでいた。社会貢献のゲーム「Justice Game」が普及し、誰もがゲームを通して社会問題を解決できる時代になっていた。ポイントを稼ぎ、バッジやメダルを獲得することで、社会に貢献した証を得るのだ。ジャスティスもその一人で、教師としての指導や日々の行動でポイントを稼ぎ、既に数々のバッジを手にしていた。
ある日、ジャスティスは放課後の街で、若者が喧嘩をしている場面に遭遇した。殴り合いをしている少年たちをなだめ、諭し、悪い行動を正した。彼はその行動によってさらにポイントを稼ぎ、新しいバッジを獲得した。「これで、また一つ社会が良くなった」とジャスティスは満足げに思い、周囲からも尊敬の眼差しを向けられる。
そんな彼に、突然の出会いが訪れる。トゥルース・クイーンという海外の美しい女性だ。二人は急速に親密な関係になっていった。だが、トゥルースは何も言わずに彼の前から姿を消した。彼女の故郷に帰ってしまったのだ。ジャスティスは困惑し、彼女を忘れることができなかった。そして、彼は決意を固め、彼女を追ってその国へ向かうことにした。
彼はその国に入国するやいなや、突然捕らえられ、投獄されてしまった。訳が分からないまま彼は牢の中で思い悩んだ。なぜ、自分がこんな目に遭うのか。やがて、彼は国のルールを知ることになる。この国では、彼の信じていた「Justice Game」とは全く異なる価値観が存在していたのだ。
その国では、殴ることが推奨され、他者を強くするための行為とされていた。暴力が美徳とされ、社会貢献の一環として行われていたのだ。彼が止めた行為こそ、ここでは正義だった。そして、トゥルース・クイーンは、ジャスティスの信じていた「正義」が、この国では愚かで無意味なものだと理解していたのだ。
ジャスティスは、自らの信じていた「社会貢献」とは何だったのかを問わざるを得なかった。どこまでが正義で、どこからが悪なのか。その境界は、国や文化によってこんなにも変わるのか。彼は初めて、自らの信念が完全に崩壊したことを悟った。
・田中の物語(ペンネーム:H.Y.)
田中太郎は、東京に住むごく普通の学生だった。しかし、彼には大きな夢があった。社会において最も名声高く、尊敬される企業「ブラック」に入ることだ。「ブラック」は、ゲームによる社会貢献で圧倒的な地位を築き上げ、社員は皆が憧れる存在となっていた。
田中も、毎日ゲームを通じて社会に貢献していた。ゴミ拾いや環境保護活動、地域の清掃など、ゲームを介してポイントを稼ぐことができ、それが社会的な地位や尊敬へと繋がる。田中は、ひたむきに努力を重ね、ポイントを積み上げていった。彼の胸には、数々のバッジやメダルが輝いていた。
ある日、田中は偶然、近所のゴミ捨て場で「ブラック」のバイトがゴミをまき散らしている場面に出くわした。彼は目を疑った。あれほど社会貢献を謳う企業の社員が、そんな不正を働いているなんて。「これは誤解だろう」と最初は思ったが、明らかに意図的な行動だった。田中は勇気を出して注意しようとしたが、バイトは冷笑を浮かべた。
「お前、知らないほうが身のためだぞ。」
その言葉が妙に胸に残った。
数日後、田中は「ブラック」の暗い裏側に気付いてしまった。ゴミ捨て場での一件が気になり、調査を進めると、表向きの社会貢献とは裏腹に、企業は闇のビジネスを展開していたのだ。田中が真実を訴えようとしても、「ブラック」の社会的な影響力が強大すぎて誰も信じてくれなかった。むしろ、田中が悪い噂を流していると逆に批判されてしまった。
「このままじゃ、僕が消される…」田中は焦りを覚えた。
田中は5人の仲間を集め、ゲームによるポイント稼ぎに全力を注ぐことを決意した。彼らは災害支援や海外ボランティアにまで手を伸ばし、ポイントを集めていった。だが、その活動は決して順調ではなかった。仲間のうち1人が、ある日突然消息を絶った。彼は「ブラック」の仕業だと噂された。さらに、残された2人の仲間がスパイであることが判明し、田中の活動は大きな打撃を受けた。
「もう何もかも無駄なんじゃないか…」田中は心が折れかけていた。
だが、驚くべきことが起きた。消されたと思われていた仲間が実は生きていたのだ。彼は巧妙に「ブラック」の目を欺き、死んだふりをしていたのだ。そして、その間に「ブラック」の不正行為を記録した動画を撮っていた。その映像は瞬く間に拡散され、田中たちは一気にポイントを獲得した。
その結果、「ブラック」は社会的に破滅した。企業は倒産し、社員たちは街から姿を消した。田中はついに自分の手で正義を成し遂げたのだ。しかし、田中が得たものはほんの一時の達成感だけだった。社会はすぐに新しい英雄を探し始め、田中の功績は徐々に忘れ去られていった。
・HIPPOPOTAMUS(ペンネーム:おーつ)
イオリは長崎県の動物園でカバの飼育員として働いていた。カバたちは彼の生活の中心だったが、最近はもう一つの情熱が加わっていた。それは「ゲーム」。今や、社会全体がゲームを通して社会貢献を行い、ポイントを集めることで報酬が得られる時代。学校や職場でも、誰がどのバッジを持っているかが話題になり、社会的な地位を決めるほどだった。
イオリもその熱狂にのめり込み、夜になるとゲームの世界に飛び込んでいた。カバの世話が終わると、すぐに家に帰り、画面の向こうのモンスターを次々に倒してポイントを稼ぐ。最初は簡単だった。敵は単純で、攻略法もすぐにわかった。
ところがある日、ゲーム内で突然異様に強いモンスターが現れた。これまでのモンスターとは次元が違うほどの力を持っており、どれだけ攻撃してもまるで歯が立たない。そのモンスターに倒されると、ただのゲームオーバーでは済まなかった。現実でも、事故や病気で命を落とすプレイヤーたちが次々と報告されるようになったのだ。
「おかしい…こんなことは聞いていない…」
イオリは恐怖に震えた。ゲームをやめれば安全だろうと思ったが、既に彼はその世界に取り憑かれていた。そして、ただ逃げているだけでは他のプレイヤーたちが危険にさらされる。イオリは意を決して、その恐ろしいモンスターに再び立ち向かう決意をした。
調べを進めるうちに、その強大なモンスターは、ゲームを設計したデザイナー自身が意図的に仕込んだものだと分かった。社会にゲームが浸透しすぎ、世界そのものを操る力を持つまでになっていたゲームデザイナーは、自分自身を最強のモンスターとしてゲーム内に登場させ、誰にも勝てない絶望感を植え付けることで、全てを支配しようとしていたのだ。
イオリは何度も挑んだが、結局彼の力では太刀打ちできなかった。諦めかけたその時、突如ゲーム内に現れた強大なプレイヤーが、モンスターに立ち向かい始めた。そのプレイヤーは誰も知らない謎の存在だったが、その圧倒的な力でデザイナーのモンスターを次第に追い詰めていった。
「いったい、誰なんだ…?」
イオリはその背中を見つめながら、共に戦い続けた。そしてついに、モンスターは倒され、ゲームの支配は終わった。社会は再び平和を取り戻し、ゲームも日常の一部として続いた。しかし、その謎のプレイヤーの正体は明かされないままだった。
現実に戻った彼は、いつものようにカバたちの世話を始めた。その時、ふと自分が飼っているカバを見つめた。何かが違う――彼は確信した。このカバが、あの強いプレイヤーだったのだ。カバは彼に一瞥を送り、どこか満足そうに鼻を鳴らし、黙々と水辺を歩き続けていた。
・ヒエラルキー・ワールド(ペンネーム:トモヤ)
ラッキーは、ゲーム社会の底辺にいた。学生の彼は、授業が終われば家に戻り、小さなデバイスを手に取りログインするのが日課だった。彼が生きるこの世界では、ゲームを通じて社会貢献ができ、その結果として多くの問題が解決されている。プレイヤーはゲーム内で稼いだポイントでバッジやメダルを獲得し、バッジの多さがそのまま社会的な尊敬につながる。ラッキーもいつか、そんな高いランクにのぼりつめたいと思っていた。
だが、現実は甘くなかった。彼はまだLv.1。スキルも乏しく、やっとの思いで小さなクエストをクリアしては、わずかなポイントを稼ぐのが精一杯だった。デバイスを通して周囲の プレイヤーのステータスが見えるが、皆が持つ煌びやかなバッジやメダルがまぶしく感じられ、彼は劣等感を抱くばかりだった。
そんなある日、同じような境遇にいる仲間と出会った。彼らもラッキー同様、下位ランクのプレイヤーで、バッジは一つも持っていない。だが、彼らは明るく、互いに切磋琢磨し合い、いつかこのゲーム社会の頂点を目指そうと決意していた。
ラッキーも彼らと共に少しずつ成長していった。クエストをこなし、ポイントを稼ぎ、バッジも増えた。バッジが増えるごとに、現実世界でも少しずつ尊敬を集めるようになり、彼は自分が変わっていくのを感じた。
しかし、平和な日々は長くは続かなかった。ある日、悪名高い「プレイヤーキル集団」が彼らを襲ったのだ。彼らは高ランクプレイヤーを憎み、無差別に攻撃を仕掛けてくる存在で、ゲーム内での成長を破壊することを楽しんでいた。ラッキーの仲間もその標的となり、一人、また一人とゲーム内で殺されていった。ゲームでの「死」は、現実の評価にも直結する。彼らは尊敬を失い、社会の底辺に転落していった。
ラッキーは絶望した。仲間が次々に消えていく中、自分一人が生き残っても何の意味があるのか?だが、彼は諦めなかった。自分が強くなれば、この悲劇を止めることができるかもしれない。ラッキーは、より困難なクエストに挑み、スキルを磨き続けた。そしてついに、ゲーム社会のトップクラスに到達した。
頂点に立ったラッキーは、「プレイヤーキル集団」を壊滅させ、多くの報酬を手にした。人々からは尊敬され、憧れられる存在となった。彼は仲間を失った悲しみを乗り越え、今や多くの人々に希望を与える存在として成長していた。
■振り返り
このワークショップでは、SFプロトタイピングという手法を用いて、「ゲームを基盤とした社会」に関するショートショートを作成することができました。これらの作品を通じて、「ゲームを基盤とした社会」における様々な問題や人々が持っている価値観などを、具体的に想起しやすくなったと感じます。
また、SFプロトタイピングは、小説家とコラボレーションして行われることが多いですが、このワークショップでは、執筆作業をChatGPTに代替させることで、開催コストの削減を目指しました。個人的な感想としては、この試みも一定の成功を収めることができたと思います。
今後の課題は、テーマをより明確にすることです。「ゲームを基盤とした社会」というテーマが抽象的で、想像の余地がありすぎたため、参加者によって解釈の幅が広くなりすぎました。また、ストーリーの作成方法についても、具体的な作品などを交えてより詳細に説明する必要があったと思いました。
【参考文献】
宮本道人(監), 難波優輝, 大澤博隆(編).(2021). SFプロトタイピング: SFからイノベーションを生み出す新戦略. 早川書房
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以上が、<SF作品を作ろう!「ゲームを基盤とした社会」を創造するワークショップ 報告記事>になります。また次回の記事もお読みいただけると嬉しいです。
それでは!!!
投稿日時: 2024-10-11 投稿者: qikeyi
この夏休み、私は「充実した生活+しっかりとした学び」を目標に過ごしました。この期間中、藤本研究室の遠征活動以外で特に印象に残ったのは、東京ゲームショウに参加したことです。
そこで、本報告では興味をテーマに、展覧会に参加した感想をまとめたいと思います。
4日間にわたる2024年のTGSは「ゲームで世界に先駆けろ。」をテーマに、9月29日に無事に閉幕しました。報道によると、今回のゲームショウには27万4739人の来場者があり、44か国と地域から985社の企業や団体が参加し、TGS史上最多の参加者数を記録しました。多くの新作ゲームが新しい予告編やオフラインでの試遊を披露しました。私にとっては、初めての大規模なゲーム展覧会への参加であり、ここで私の体験を共有したいと思います。
【中国ゲームの新たな勢力が輝く】
この夏休み期間中、『黒神話:悟空』が突如登場しました。中国ゲーム界のマイルストーンであり、初のソウルライクアクションRPGとして、中国の伝統文化を宣伝するだけでなく、初のAAA級アクションゲームとしても多くの期待を背負っています。私も50時間かけてこのゲームをクリアしました。中国のネットユーザーが4年間抱いていた期待に完璧に応えていると感じました。音楽、美術、ストーリー、そして挑戦的な戦闘に至るまで、非常に高い完成度を誇っています。
この作品は各界に大きな影響を与え、国内外のメディアでは『西遊記』のストーリーが再び注目されています。さらに、中国の江蘇省のいくつかの都市では関連する観光地が無料開放されるなど、大きな反響がありました。私自身も、この影響で『西遊記』の主要なストーリーを再度振り返ることになりました。ゲームを通じて文化を広めるという体験は本当に感動的です。
今回の展示会では、『黒神話:悟空』のチャレンジブースも設置され、3分以内にボス「黒熊精」に挑むというイベントがありました。私も見事にその挑戦を成功させることができました。
展会では、もう一つの中国ゲーム『影之刃零』が試遊可能でした。『悟空』と同様に、中華武侠をテーマにしたアクションRPGですが、現場での試遊を見る限り(私は試遊の枠を取ることができませんでした)、このゲームのアクションはよりスムーズで爽快感があり、物語の体験に重点を置いているようでした。もし『零』が『悟空』に続く成功を収めることができれば、それは中国ゲーム市場に明るい時代が訪れたことを示すかもしれません。
https://www.cruelmanstudio.com/?lang=zh
【初めての試遊体験:『The First Berserker: Khazan』】
29日、私は早起きして会場にワクワクしながら直行し、すぐに展台に並びました。目標は、展会での試遊初体験となる『The First Berserker: Khazan』です。28日にこの展台を通りかかった際、ゲームのUIがソウルライクゲームとそっくりで、一目で強く惹きつけられました。
このゲームはNeopleが開発中の三人称視点のアクションゲームで、ネットゲーム『ダDungeons & Dragons』のIPを引き継いだ作品です。現在は初期デモしか公開されていません。
私の体験でまず印象に残ったのは、アニメ風のキャラクターとリアルな自然景観が融合しているところです。キャラクターはアニメ調で描かれており、韓国ゲーム特有の美術スタイルが際立っていますが、背景にはリアルな雪山や岩などの自然景観が広がっています。この二つの要素には若干の違和感もありますが、それがこの作品のユニークさでもあると思います。
二つ目のポイントはアクションバトルシステムです。このゲームの重要な要素は「スタミナゲージ」と「マナゲージ」の管理です。攻撃や回避、防御を行うと「スタミナ」が消費され、完璧な回避で「スタミナ」が回復します。主人公には複数の派生アクションがあり、これには「マナ」が消費されます。豊富なアクションをどう使いこなし、各エネルギーを管理し、適切な装備やアイテムを構築することが、このゲームの戦闘の鍵となっています。
ボス戦は非常に難易度が高く、30分間試遊した中で、ボスのHPを半分も削ることができませんでした。とても悔しかったですが、このように硬派で挑戦しがいのある作品を初めて試遊できたことに、満足感でいっぱいです!
【大作の整理券が取れなかったら、インディーゲームを楽しもう!】
2日間の参加で一番感じたのは、長時間並んで大作ゲームを試遊するより、その時間を使ってたくさんの小さなゲームを楽しむほうが良いということです!会場には多彩な作品が並んでおり、クリエイターたちが自分のブースで期待に満ちた表情を浮かべていました。
ここでは、体験した中で特に光るものがあった作品を紹介します。仕事や勉強で疲れたときに、ぜひ遊んでみてほしいです!
【everdeep aurora】2d adventure puzzle
これはレトロ風の2Dアドベンチャー謎解きゲームで、プレイヤーは猫のキャラクターとなり、ドリルを手に地下世界を探索していきます。16ビット時代の美学にインスパイアされたこの物語探索型プラットフォームゲームは、あの時代のクラシックなゲームのシンプルさと興奮を思い出させてくれるでしょう。https://www.everdeepaurora.com
【LOVE ETERNAL】 Side-Scrolling
このゲームの主なプレイスタイルは、重力を反転させながら進む横スクロールジャンプアクションです。操作感が素晴らしく、ステージの設計も巧妙で、次の『Celeste』になる予感がします。特に注目すべきはストーリーと場面のデザインです。主人公が虚構の世界を走っている途中、突然家に戻り、怪物と化した父親と出会います。また、虚構の世界に戻ると背景には巨大な仏像や工業廃墟が現れ、印象的なシーンが展開されます。デモ版はわずか数シーンでしたが、プレイヤーの期待を高め、ドット絵の無限の可能性を見せつけました!https://store.steampowered.com/app/3010610/LOVE_ETERNAL
【sonokumi】top-view high-speed hardcore action game
このゲームは、一度展台を通り過ぎると目が離せなくなる2Dサンドボックスアクションゲームで、全体的なスタイルが非常に独特です!ゲームモードから見ると、作者は『Hotline Miami』のファンであることが伺えます。
プレイヤーはカエルとなり、色とりどりのピクセル空間を移動します。各部屋の独特なモンスター配置に対し、次の数秒でどのスキルを使うかを考える必要があります。ゲームのテンポは非常に速く、セーブポイントの配置も密集しているため、全体としてアクションパズルのような感覚が味わえます。さらに、ゲーム内のラップのバックグラウンドミュージックも非常にノリが良く、印象的です!
これは、熱血で刺激的、原始的な暴力に満ちたアクションゲームで、どこを見ても拳による致命的な近接戦闘が展開され、次の瞬間には粉々になりそうです。このような情熱を核心にした感覚を実現しているのは、ゲームのプレイメカニクスが巧妙に絡み合い、ビジュアルと音楽が相互に作用しているからで、まさにゲームデザインの魅力です!https://www.sonokuni.com
【Blades of Mirage】 top-down Action RPG
このゲームでは、箱庭式のマップ内で一つずつ戦闘ステージをクリアし、道を見つけるための謎解きを行い、最終ボスに挑むことが求められます。主人公は3種類の武器を持ち、それぞれに3つの派生アクションがあります。そのほかに弓もあり、弓を使った操作は非常に扱いにくいと感じたため、スタッフにその問題を伝えました。ボス戦のデザインには謎解き要素があり、特定の武器でエンチャントを破る必要があります。最終的に、私は友達と一緒にデモをクリアし、フィードバックアンケートを記入して、公式のTシャツをもらいました(嬉しい!)。https://store.steampowered.com/app/3227500/Blades_of_Mirage
【美輪美奐のビジュアル体験】
ゲームの相談や試遊だけでなく、展示会での楽しみの一つは、各ブースの装飾を見ることです。それでは、皆さん一緒に楽しんでみましょう!
暗喩幻想のブースでは、鎌倉の仏教僧が経を唱えていて、本当に素晴らしかったです!日本の伝統文化のインパクトは非常に強いですね!
子供の頃から楽しんできたシミュレーション経営ゲーム「カイロソフト」が、今回源コードの展示イベントを開催しました。
パルのブースはとても美しかったです。
私がとても好きなテキスト推理アドベンチャーゲーム『Raging Loop』が、驚くべき無料ギフトを用意していました!
クリエイターたちの熱意を目の当たりにして、心が高鳴りました。以前はネットでTGSの最新ニュースを探していましたが、実際に会場に足を運び、クリエイターと直接交流し、ブースで新しい発見をすることができて、本当に感動しました。
人々が自分の愛するものに集中して研究する時、幸せを感じずにはいられません。いつか、胸を張って皆に研究成果を紹介できる日を楽しみにしています!