【8月25日】『Her Story』のゲームプレイにおける英語学習に関する検討

皆さんお久しぶりです!M1の叶です。
夏休み(?)はどうお過ごしているのでしょうか。 

自分は春学期に色々講義を取ってゲームプレイ時間がなかなかできませんが、夏休みに入るとようやく積みゲーをいじはじめました。自分の研究で扱うゲームジャンルは主に「物語中心のゲーム(Narrative-based Game)」で、修士研究で既に行ったインタビューの中ではいくつかの有名かつ自分が遊んだことないゲーム名が登場し、その中の一つ、夏休みにようやくクリアした『Her Story』というゲームを今回の記事のテーマとして扱いたいと思います。

6時間をかけて13の実績をすべて解除しました!!(実はかなり遅いです…)

フォーマルの研究においては、主観的なバイアスが生じる恐れがあるので研究者自身のゲーム体験の分析はなかなかできないのですが、実は研究者目線で自分のゲーム経験を振り返ることは、実際の研究で研究対象になるゲームプレイヤーとの共感に役立ちますし、プレイヤーの行動に対する解釈などにもとても重要です。まさに4月のゼミで紹介したReinhardtらの論文で書かれているように、

“…We should heed the fact that the number of well intentioned educational games that have failed is enormous as well, and that L2 education professionals have not always been the most informed of digital game consumers. The solution is for researchers and practitioners to learn to evaluate, and eventually speak to the design of, game-mediated instruction, both game-enhanced and game-based. The first step is simple—interested researchers and practitioners should play digital games themselves, keeping an open mind and analytical disposition towards insights into language use and learning.”

Reinhardt, J., & Sykes, J. M. (2012). Conceptualizing Digital Game-mediated L2 Learning And Pedagogy: Game-enhanced And Game-based Research And Practice

ゲームを媒介とした言語学習の研究者はまずゲームプレイヤーになり、常に身近なゲームプレイを分析していくべきだということです。

そのため、今回は第二言語習得の視点から自分の『Her Story』のゲームプレイを検討したいと思います。また、同じくゲームクリアした友人のRさんとのディスカッションも踏まえて、さらにMAXQDAという質的分析ツールを使って、STEAMというゲームプラットフォームでのゲームレビューに対して簡単な分析も行いました。今回はあくまでもインフォーマルなリサーチなので、考慮に欠けるところも色々あると思いますが、研究メモ(ゲームレビュー)として自分の所感を共有したいと思います。これからは、箇条書きの形で簡潔にまとめます。

テーマ:『Her Story』のゲームプレイにおける英語学習に関する検討

〜『Her Story』に関して〜

  • ゲーム情報:『Her Story』とは、サイレントヒル シャッタードメモリーズのクリエイターでもあるサム・バーロー(Sam Barlow)が作り上げたアドベンチャーゲームです。2016年のGDC Awardsでは5部門を受賞した。物語はゲームの中心要素になる。
  • ゲーム言語:英語(字幕付き)(日本語にも翻訳されたようですが、今回のゲームプレイは英語で行いました)
  • ゲーム紹介:事件に関わった主人公に対する取り調べ録画を調査することによって事件の真相を突き止める。
  • 遊び方(ネタバレあり)取り調べ録画のデータベースが検索システムがあり、キーワードを入力することによって、キーワードが含まれた動画を見て事件の全貌を推測しつつ、真相を解明する。
  • ゲーム特色:ナレーションにおける非線形の語り口

〜ゲームプレイにおける第二言語習得の分析〜

  • 調査対象:英語で『Her Story』を遊んだ中国人ゲームプレイヤー (主に自分、友人Rさん)
  • 分析内容:自分とRさんのゲームプレイ、STEAMで690件中国語のゲームレビュー(中国語版がないので中国人プレイヤーはみんな英語でプレイされたと考えられる)
  • 分析手順:
    1. ゲームを終えた後自分のゲームプレイで行った英語習得に関わる行動を振り返る。
    2. 遊びにおける英語習得に関して、ゲームクリアしたRさんに簡単なインフォーマルなインタビューを行う。
    3. STEAMで『Her Story』の690件中国語のレビューを質的データ分析ツールMAXQDAに導入し、「英語」「英文」「発音」「読解」などのキーワードで検索し、英語学習と関わるテキストをオーペンコーディングをして簡単な分析を行う。
  • 分析結果:
  • オーペンコーディングの項目とその数
ゲームレビューに対するテーマ関連のオーペンコーディング
  • 『Her Story』の遊びで起こりうる英語習得に関わる行為
    • 文脈に応じて知らない英単語の意味を推測する
    • 知らない単語を自発的に辞書で調べる
    • 英単語を入力することが求められるので、自発的にスペルチェックを行う
      (例えば、自分がずっと「License」を「Lisence 」に間違って今回のプレイでその錯誤に気づいた)
    • 英語の聴解と読解を繰り返す
    • *直接習得するより、練習と復習とみなれる行為が多く見られる
  • 『Her Story』の遊びに起こりうる英語の獲得(気づき)
    • 類義語、同義語に対する気づき(習得した知識を振り返る)
    • ミステリーに関する英単語の獲得
    • 自分の英語能力に対する自信が高まる
    • イギリスアクセント、イギリスの慣用語に対する気づき
    • *直接な獲得より、知識の統合と省察のほうが多く見られる
  • ゲーム要素と第二言語習得
    1. 音声:ゲームでのテキストはすべて音声がついているため、レビューで「英語聴力」の学習材料として言及した回数が一番多い。今までのインタビューでもわかってきたように、物語中心のゲームにおいて、音声付きということは、ゲームプレイヤーの注意力をゲームテキストに払わせ、第二言語の環境を作り、プレイヤーが断れない第二言語の「インプット」を提供する。(プレイヤーがそれをスキップできない、あるいは音声があるからこそスキップたくなくなるのだ)
    2. 字幕:コメントの中で「音声を聞きながら字幕を活用することによってゲームを理解することのハードル下がった」のようコメントも散見する。字幕がゲームの進行を促進する他、英語インプットのチャンネルを増やす(聴解+視覚)ことにより学習が促進される(マルチメディアの認知理論?)。また、いくつかのコメントによると、ゲーム進行において音声より字幕が「補助的」な役割を務める、ということにも注目したい。

〜検討は以上です〜

まだまだ浅い分析なのですが、今回の分析はここまでにしたいと思います。もちろん、6時間をかけて英単語を暗記するのがより効率的だと思われますが、『Her Story』をプレイすることは、英語小説、ドラマや映画などを活用した学習と同様な(それよりいい効果、動機づけと獲得の維持率が高いかもしれない)魅力的なインフォーマル学習(復習)法の一つだと考えられます。

また、英語で遊ぶことに最適なのはこのようなプレイヤーだと思います:
・中級以上の英語学習者(目安として4000以上の語彙力が必須で、5000+が望ましい)
・ミステリーや推理物語に対して興味を持つ人
・特に、以上の2つを満たしているのに英語が嫌いとか、自分の英語語力に対して自信を持っていない方におすすめです。一度遊んでみたら、「自分が英語学習でゲームができるんだ」という気持ちが味わえるので、ぜひぜひ、夏休みにお時間があったら、『Her Story』の物語を通じて英語力を磨きましょう。

**ゲーム攻略としては、データベースの75%以上を見終わってから、オンラインの攻略を調べるのがおすすめです。

以上、今回の長い記事を終わらせたいと思います!
ここまで読んでくれてありがとうございました!