post date and time:   2025-07-05   contributor:   keirinkyou

【7月3日】ゼミ活動のご報告

こんにちは!M1の叶馨霖です。梅雨明け直前の7月3日に、研究室小会議室にて定例ゼミを開催しました。今回は以下の3名が発表し、その後活発な質疑応答を行いました。

叶 馨霖の発表

最初に発表を行ったの私は、認知負荷理論(Cognitive Load Theory, CLT)に基づく教育設計とそのゲームへの応用可能性について紹介した。CLTの基本構造として「内在的負荷」「外在的負荷」「学習的負荷」の三分類を取り上げ、教育/ゲームデザインにおける負荷調整の重要性を論じた。特にKesterらの実験を通して、ヒント提示のタイミングが学習効果に及ぼす影響を示し、「Supportive情報」と「Procedural情報」の提示タイミングを操作したデザインが紹介された。また、再生紙の利用などを例に、実生活への接続を意識した支援情報のゲーム内提示の意義についても触れた。

発表後には、荒さんより「CLTは教育ゲームの中で直接用いられる理論というより、支援設計や教材設計における方針として捉えるべきである」との指摘があり、この視点を踏まえてCLTの活用の位置づけについて理解を深める機会となった。実際のゲーム設計において、認知負荷という抽象的概念をどのようにデザイン原則に落とし込んでいくかが今後の課題として浮かび上がった。

謝 敏さんの発表

続いて謝さんが、フロー理論(Flow Theory)に関する文献紹介を行った。発表では、チクセントミハイによる理論の提唱から始まり、教育ゲームへの応用事例(例:『Minecraft教育版』や中国の語彙学習アプリ『開心詞場』)を通じて、明確な目標設定・即時フィードバック・課題と技能のバランスがもたらす没入体験のメカニズムについて解説された。フローの六大特徴と、それらを活かしたゲームメカニクスとの具体的接続がわかりやすく整理されていた。

発表後には、学生との共同制作によるゲーム映像の紹介もあり、そのビジュアルと構成に対して参加者からも好意的な反応が寄せられた。莫さんからは「フロー状態とこのゲームの関係性」についての質問があり、藤本先生とLeafyさんからは関連文献に関する具体的なアドバイスがなされた。次回の発表では、さらに具体的な事例や設計プロセスの説明が加わることを期待しております。

木村 知宏さんの発表

最後に木村さんより、「暴力的ビデオゲームが攻撃性に与える影響」に関する研究紹介が行われた。Sestir & Bartholow(2010)などの実験に基づき、暴力的ゲーム・非暴力的ゲーム・ゲームをしない対照群の3条件における攻撃的思考や援助行動の変化が詳細に紹介された。特に、「単語完成課題」や「ストーリー完成課題」などを通じた測定手法の工夫や、研究における統計解釈の誤解(misleading)の危険性にも触れ、正確な論文読解の重要性が強調された。

討議では、Johannaさんから「動作性の高い非暴力ゲームと暴力ゲームの区別」に関する問いが出され、木村さんは「本研究ではこのようなジャンル分類を行っているが、異なる結果が出る可能性はある」と応じた。友利さんは「非暴力的ゲームで15分後に攻撃性が高まった理由」に注目し、私も「非プレイ群をコントロール群としてどこまで有効といえるか」について質問を行った。木村さんは、「社会心理学的実験における条件対照の限界性」について具体例を交えて回答した。大空さんは「今回の研究では大学生を対象としているが、被験者が小学生であれば結果が異なるのではないか」と、研究の一般化可能性についての意見を述べた。最後に浜田さんが「攻撃性の測定に文字課題を使う理由」や「他に測定方法はあるのか」といった測定法に関する質問をし、木村さんがその根拠を補足するかたちで説明を加えた。


今回のゼミでは、それぞれ異なる理論的視点からゲームと教育の接点が丁寧に論じられ、改めて「理論を読む力」と「それをどう使うか」の両輪の重要性を実感しました。私自身も、他の発表者の工夫や熱意に多くの刺激を受けました。これからの自分の研究や実践にも活かしていきたいと思います。

学期もそろそろ終わりですね。みなさん、もう夏休みの計画は立てましたか?

Previous page

Category:   Lab news     Author:   keirinkyou   permalink