東京大学 大学院情報学環 藤本研究室
月別アーカイブ: 2024年11月
投稿日時: 2024-11-07 投稿者: ziminmo
皆さんこんにちは!M1の莫です。
今回のゼミは、叶さんの関連論文紹介、斉さんの文献研究と広瀬先生の研究員発表の3本立てでした。
それでは、早速報告させていただきます。
叶さん:関連論文紹介
叶さんが「没入感とゲームデザイン」をテーマに関連論文研究を紹介しました。ゲーム体験やナラティブデザインに関する複数の論文を紹介し、没入感の構成要素や内発的動機とナラティブが学習効果に与える影響について発表しました。
まず最初に、ゲーム体験における没入感の要素について「audiovisual quality and style」「level of challenge」「Imaginative Immersion」の三分類(SCI Model)から、これらの要素がゲーム体験の質に与える影響について触れ、プレイヤーの集中力を引き出すと説明されました。
次に、没入感の三分類に基づいて、ゲーム物語デザインの効果と学習効果の高いゲームデザインの特徴について、それぞれ実験・論文を紹介し、詳しく説明しました。
1つ目の特徴として、内発的な動機づけがプレイヤーの学習効果を向上させる事例研究がありました。シューティングゲームにおける「内在・外在・コントロール」要素の区別により、内在的動機が強化されるとプレイヤーが積極的に学ぶ傾向が確認されました。
2つ目の特徴は、共感を通じた臨場感の向上です。アバターに感情移入できると、臨場感が高まることが報告されています。「シンパシー群 vs コントロール群」の比較で、シンパシー群がより高い臨場感を体験したことが示されました。
3つ目の特徴は即時フィードバックで、シナリオ主導のゲームで即時のフィードバックが没入感やコントロール感を向上させることが示され、学習効果と感情的関与を深める役割を果たすとされています。
今回の紹介を通じて、叶さんはゲーム没入感の多面的な構造について詳細な分析を行って、多くの研究について学びました。自分としては、今後のワークショップデザインで、没入感を高めるために、様々な要素の設計に注意を払う必要があると感じました。
斉さん:文献研究
斉さんは「art of the games: Games trough Fiction」を中心に、著者の議論に沿って研究者たちのゲームとビデオゲームの定義理論・研究例を紹介しました。まず、ゲームとビデオゲームの定義について、ビデオゲームは「インタラクティブな関与」を基盤とし、目標達成型(ルーディック)と自由探索型(パイディア)に分類されることが説明されました。
続いて、ゲームとパズルの違いについても紹介してくれました。ゲームは競争や協力を通じて目標達成を目指すものであり、他のプレイヤーと状況が進行する点が強調されました。一方、パズルは複雑さを解消し、安定した解決策を見つけることが目的とされており、プレイヤーは自ら解決策にたどり着くことが求められます。このように、プレイスタイルや目的が異なることが両者の大きな特徴です。
また、ゲームのルールがFictionを通してプレイヤーに提示されることの意義についても触れられました。斉さんは「Portal」というビデオゲームを例としてあげました。Fictionがゲーム体験に密接に関わっていて、プレイヤーがゲーム世界を理解しないとプレイが難しい構造となっています。そして最後に、「マジック・サークル」理論が取り上げられましたが、この理論では現実とゲームの境界が曖昧になるビデオゲームの多様性を十分に説明できないという課題も指摘されました。
広瀬先生:研究員発表
最後に広瀬先生が最新の研究について共有してくれました。広瀬先生は、オレゴンでの研究紹介をはじめに、最近日本で「ライフキャリア支援」をテーマに、エリクソンの生涯発達理論に基づき、越境的な学習環境を活用して、移行期における若者のアイデンティティ確立や中高年の次世代への貢献意識を促進するワークショップを展開しています。
次に、広瀬先生はワークショップの具体的な流れと設計について説明しました。参加者は事前に指定された映画を視聴し、関連する問いについて考えます。当日は、学生と社会人の混合グループで意見を交わし、登場人物の「人生の目的」について話し合いながら、それぞれのキャリア観を広げ、世代を超えた学びの機会を得ることが目指されています。
最後に、広瀬先生は初期の成果を共有しました。参加者のフィードバックによれば、映画とディスカッションを通じて、自身のキャリア設計について深く考えるきっかけを得られ、特に転換期において新たな示唆を受けたとのことです。こうした意見をもとに、今後はワークショップの設計を最適化し、さらに多くの地域での展開も検討されています。
広瀬先生の研究報告は、私たちのワークショップのアイデア発案から設計、そして特に参加者フィードバックからワークショップに活用することまでのプロセスにおいて、多くの参考となる内容でした。また、先生は質問応答の際にも非常に親しみやすく、ネットワーク環境でのワークショップの運営・ネット環境で賑やかな議論の雰囲気を起こし方についても多く勉強になりました。
以上で今回のゼミ活動報告でした!
ちなみに制作展のお知らせです。11月7日~11日には東京大学制作展『付いて離れて』が開催されます!私が参加した『本郷キャンパス謎巡り ーAさんの消失ー』と『心の味わい』の2作品は工学部2ホールと92Bにそれぞれ展示されています。
ご興味がございましたらぜひお越しください^^