Ludix Lab @ UTokyo
東京大学 大学院情報学環 藤本研究室
Monthly archive: November 2025
post date and time: 2025-11-27 contributor: hamada
こんにちは。M2の濱田です。
大学の構内も銀杏が黄色に色づき、季節はすでに秋というより冬に近づいているように感じます。美しい大学の景色を見ながら歩いていると、ゼミに向かう足取りもいつもより軽く感じられますね。
さて、今日のゼミでは、大空さん、Leafyさん、濱田の3名による関連論文の発表が行われました。どの発表も非常に興味深く、知的好奇心を大いに刺激されました!
今回の発表では、私の研究で採用している Design-Based Research(DBR)の理論的な枠組みを改めて整理し、その上で現在取り組んでいるニーズ分析(Phase 1)の進捗について共有しました。
研究の目的としては、日本の中学校英語教育において「自発的な英語発話が十分に生まれにくい」という現状に対し、自由度の高い学習環境である Minecraft を活用することで、生徒の発話をどのように促すことができるのかを明らかにすることを目指しています。情意面、言語的・認知的側面、そして学習環境面から発話に影響する要因を探り、DBRの枠組みに沿って授業デザインを段階的に改善しながら、発話促進に効果的なデザイン原理の導出を試みています。
DBRとは、教室にあるリアルな課題に対して、教師と研究者が協働しながら、「理論+テクノロジー+新しいデザイン」を組み合わせて実践し、その都度検証や改良を重ねることで、最終的に他の文脈にも応用できる設計原理を生み出す研究手法です。研究のプロセスは4段階に分かれており、私は現在その第1段階である「課題の特定とニーズ分析」を進めています。
先週は、研究フィールドとなる学校を訪問し、授業の様子を見学するとともに、先生方や生徒への聞き取りを行いました。そこで得られた情報を基に、現場にどのような課題があるのかを整理し、今後どのような授業デザインが適していそうかを検討しているところです。
12月には第1回目のパイロット授業を予定しており、それに向けて授業内容の詳細や質問紙の作成を進めていく予定です。
大空さんは、修士研究の議論を進めるにあたり、研究の方向性を明確にするため、研究倫理教育に関する既存研究の調査を行なっていました。その中でも、松沢による研究倫理教育の再考を促す論文を取り上げ、詳細に分析されていました。
大空さんが発表してくださった論文によると、研究倫理教育は従来、「研究作法」や「自己防衛の手段」として捉えられてきましたが、近年ではその手法自体を見直す動きが出ているそうです。ガイドラインや制度の整備によって形式的な枠組みは整ってきた一方で、今後は教育内容そのものの質を高めていく段階に入っていると指摘されています。また、多くの研究不正が「知らないうちに」生じるケースであり、罰則の強化だけでは防ぎきれないという課題も挙げられていました。さらに、不正の判断基準が文脈によって揺れるという「不均一性」も問題として示されています。こうした点をふまえ、単なる知識伝達ではなく、研究者自身が主体的に考え判断できるようになる「志向的な教育」の必要性が強調されていました。
大空さんが取り組んでいる修士研究は、まさにこの「志向的な教育」の重要性を扱うものであり、今回の文献が研究の議論や方向性を定めるうえで大きな示唆になったとのことでした。
Leafyさんは、フィッシング詐欺の被害には技術的な問題だけでなく、心理的要因が大きく関わっているという観点から、関連する文献を紹介してくださいました。フィッシングは、人の認知バイアスを巧みに利用し、緊急性や恐怖を喚起するメッセージを送りつけることで判断力を低下させると言われています。また、年齢や性別といった個人差要因も脆弱性に影響することが研究で報告されています。
今回の発表では、Big Five 性格特性とフィッシング行動の関連を調べた文献レビューを2本取り上げ、以下のような共通傾向が示されました。
・Neuroticism(神経症傾向):最も一貫した強いリスク要因
・Agreeableness(協調性)・Extraversion(外向性):状況依存だがリスクが高まりやすい
・Conscientiousness(誠実性):最も安定した保護要因として機能
・Openness(開放性):多くの研究で保護的に働くが、下位次元によっては例外もある
また、研究によって用いられる測定方法の違い(例:「on the farm」のような実験室的課題 vs. 「in the wild」のような自然に近い模擬攻撃)が、結果のばらつきに大きく影響することも指摘されていました。総じて、性格特性はフィッシング脆弱性を左右する重要な要因であり、特性によって弱点となる攻撃タイプが異なるため、教育・訓練は個別化が不可欠であると論じられていました。
これらの知見を踏まえ、Leafyさんは現在開発中のゲームの方向性についても考え直しているそうです。これまでは「詐欺を仕掛ける側」の視点に立ち、どのような点に注意すべきかを考えるゲームを構想していましたが、今回の文献を踏まえ、プレイヤーの性格特性に合わせてゲーム内のインタラクションが変化する、より個別化されたトレーニング設計も視野に入れているとのことでした。
post date and time: 2025-10-02 contributor: hamada
みなさん、こんにちは。修士2年の濱田です。
最近は肌寒さを感じる日も増え、すっかり秋の気配が濃くなってきましたね。夏休み中、研究自体はいろいろと進めていましたが、その中でも大きなイベントが2つありました。夏休みも終わりを迎えるにあたり、この期間に取り組んだ研究の活動を振り返りたいと思います。

2025年8月7日〜9日に、韓国・仁川の仁荷大学で開催された国際学会「International Conference for Media in Education 2025 (ICoME 2025)」に参加しました。ICoMEは、日本教育メディア学会(JAEMS)、韓国教育情報メディア学会(KAEIM)、中国教育工学会(CAET)、アメリカTCC(Teaching, Colleges and Community)が連携して開催している国際学会です。
23回目の開催である今年は、「Transforming Educational Media:Towards Accountable and Inclusive Future Learning(訳注:教育メディアの変革:責任ある包摂的な未来の学びに向けて)」と題し、昨今、目まぐるしく移り変わる教育メディアについて関心を持つ研究者や学生が集まり、発表と意見交換を行ないました。
2023年度から継続して行なっているMinecraftカップでの創造性調査に関する内容を発表しました。この研究に関心を持つ研究者や学生がセッションに参加してくれて、研究をさらに良くするためのアイデアについてディスカッションを行ないました。とても有益なアイデアをたくさんいただき、現在行なっている研究にさっそく取り入れています。

Young Scholar Awardも受賞することができました。自身の研究の伝え方やディスカッションについて、ゼミを通していろいろと苦労しつつ考えてきたところがあったので、それが受賞に繋がったように感じ、非常に嬉しかったです。
8月31日、香川県高松市のサンポートで開催された「わくわくワールドエキスポ」に参加し、ワークショップを行いました。国際交流をテーマとしたイベントで、英語でアート作品をつくるワークショップや多彩なステージイベントもあり、多くの人でにぎわっていました。
私は小学校から高校まで高松市で過ごし、マイクラに出会った中学校時代もこの場所でした。私が今の研究を志すきっかけになった場所であり、感慨深い思いでワークショップ開催のお話を引き受けました。
今回のテーマは「英語で観光案内を書こう」です。参加者には、マイクラの中で香川の観光名所を制作してもらい、ワークシートを使って観光案内を英語で記述。その後、マイクラ内の看板に英作文を入力してもらいました。参加してくれたのは主に小学生です。
今回のワークショップはいつもと形式が異なり、40分程度のセッションを10回以上ローテーションする形でした。短時間で導入から制作、英作文までを行う必要があり、初めての試みだったのでうまくいくか不安もありました。しかし、スタッフや保護者の皆さんが積極的に関わってくださったおかげで、スムーズに進行することができました。この場を借りて改めて感謝申し上げます。
当日は大盛況で、整理券も早々に配布終了となりました。「英語を学ぼう」というテーマでしたが、多くの子どもたちが「楽しそう」と感じて参加してくれ、改めてマイクラの人気の高さを実感しました。
さらに、高校時代に英語を教えてくださった恩師も会場に駆けつけてくださいました。先生は大学時代にお笑い活動をされており、授業で生徒に英語で漫才をさせたり、一緒にM-1に出場したりするほどバイタリティにあふれた方です。最近大学院も修了されていて、教育者であり大学院の先輩として、多くの励ましの言葉をいただきました。
自分の原点である高松で、子どもたちとマイクラや英語を通じて交流できたことは、とても感慨深い体験でした。今回のワークショップを通して、マイクラが子どもたちにとって「英語を学ぶ入口」として大きな可能性を持っていることを改めて実感しました。短時間のセッションにもかかわらず、子どもたちが工夫しながら観光案内を英語で書き上げる姿がとても印象的でした。マイクラをきっかけに「英語を使ってみたい」という気持ちが生まれていたらいいなと思っています。
夏休みを通して、本当にたくさんの学びがあり、とても充実した時間になりました。ゼミが始まるこれからも、挑戦を重ねながら、自分なりに納得できる研究を進めていきたいと思います。
post date and time: 2024-07-01 contributor: hamada

渡邉英徳研究室と藤本徹研究室は、8月5日(月)- 6日(火)に、Minecraftワークショップ「教育版マインクラフトで長崎の歴史を学ぼう」を長崎市役所にて開催します。本イベントは、「ミライの平和活動展 〜テクノロジーでつながる世界〜」(8月4日(日)〜8日(木))の一環として行なわれます。
イベント概要
かつて長崎にはどのような街があり、それが原爆によってどのように変わってしまったのか。
原爆投下日の8月9日を迎えるにあたり、世界の子どもたちに支持されている「Minecraft」を通して長崎の歴史について理解を深めるワークショップイベントを実施します。参加費は無料です。
教育版マインクラフトを使って、 参加者全員でマルチプレイで街をつくりましょう。
テーマは「原爆投下前のナガサキの暮らしと街並み」 です。
みなさんの想像力を最大限発揮してください!
講師にはプロマインクラフターのタツナミシュウイチさんをお招きします。
参加者全員で協力しながら、グループになって一緒に考え、ワールドを作ってみましょう! ※マルチプレイでの作業となりますので、他の参加者への迷惑行為が見受けられた方にはご退出いただく場合がございます。
※定員が超過した場合は抽選となります
①Minecraftカップ全国大会への参加登録 → こちらから
②申し込みフォームから申し込み → こちらから
※申し込みフォームには、ワークショップへの参加登録時に登録したメールアドレスと同じアドレスを入力してください。
③問い合わせ :こちらから
主催:東京大学大学院 渡邉英徳研究室・藤本徹研究室、Minecraftカップ全国大会運営委員会
協力:NIB長崎国際テレビ
post date and time: 2024-06-24 contributor: hamada
こんにちは、修士2年の濱田です。今週も充実したゼミが行われましたので、報告いたします。今回は、大空さんによる関連論文研究、犬田さんによる事例研究、木村さんによる研究員発表の3本立てでした。
大空さんは、「技術者倫理教育におけるケーススタディの有効性」をテーマに発表してくださいました。大空さんは先日、自身が研究で設計している倫理教育のためのゲームを使って研修を行ったそうなのですが、果たしてそれが本当に教育に有効なのか疑問に感じ、文献を通してその有効性を学ぶことを目的として、倫理教育の手筈や導入方法について説明しました。
倫理教育は、倫理学の歴史や様々な倫理理論の知識に加え、ケーススタディによる学習が重要となるようです。大空さんは、特にこのケーススタディの部分をゲームによって楽しく学べるようにできればとおっしゃっていました。
今回の文献研究によって、大空さんの研究の位置づけを再度明確にするような発表だったと感じました。
犬田さんは、「アナザーコード リコレクション:2つの記憶/記憶の扉」というゲームを事例研究として取り上げて発表してくださいました。このゲームは、3Dのゲーム世界を探索し、謎や仕掛けを解きながら、ストーリーを進めていくゲーム(アクション×ノベル)だそうです。
今回の発表では、このゲームのUIデザインに着目し、プレイヤーの視線を集める背景のフレームや、キャラクターの会話エフェクト、選択肢選択時のインタラクションについて詳しく解説してくださいました。犬田さんは、このゲームのUIを参考に、自身の研究で制作しているゲームのUI設計を進めています。ゲームのデモも披露してくださいました。完成が楽しみです。
木村さんは、「ゲーム心理学」をテーマに発表してくださいました。ゲーム心理学という言葉はあまり学術的には一般化していないそうですが、木村さんはゲーム心理学を確固たる研究分野にすべく、研究を行ない、そしてこれからも研究をひろげていきたいとのことでした。発表の中では、ゲーム心理学を、ゲームスタディーズと心理学を融合した学問分野で、ゲームのプレイヤーの心と行動を実証的に扱う科学的な分野と定義していました。この分野では、ゲームとは何か、ゲームはプレイヤーにどのように影響するのか、ゲームが私たちの生活にどのように役に立つのかという3つの問いを掲げ、それらに応えることを目指すとのことでした。
ゲーム心理学というテーマに対してゼミ生から質問や意見があがり、木村さんも有意義な発表になったとおっしゃっていました。
今週のゼミ報告は以上となります。では、また来週!
post date and time: 2024-05-02 contributor: hamada
こんにちは、M2の濱田です。あっという間に学年が上がっていました。
では、今週のゼミ報告です。
今週は、濱田による事例研究・大空さんによる事例研究・夏休みの出張ゼミ企画検討セッションの3本立てでした。
今回の事例研究では、「トド英語」というアプリを紹介しました。このアプリは、動画や本、ミニゲームなどを使いながら英語を学ぶというもので、すべてクリアすると幼稚園~小学2年生レベルの英語をマスターできるとのことです。私はMinecraftを使った英語学習をテーマに、英語コミュニケーションが促進されるようなワークショップの開発をしているのですが、「トド英語」で使われている手法がワークショップでの英単語の導入などに使えるのではないかと思い、事例研究の対象としました。
今回の事例研究で、学習対象の単語に繰り返し触れること、そして綴りを画像や動画とともに学習することの2点が重要で、それはどちらもMineecraft上で実現可能であるとわかりました。
ここまでが事例研究の目的でしたが、研究室メンバーからのフィードバックで議論が進み、ワークショップにゲーミフィケーションの要素をどのように入れることができるかにまで話が広がりました。今後の研究のためになる発表となり、とても良かったです。
大空さんも事例研究として、『フードデザイン 未来の食を探るデザインリサーチ』という書籍を紹介していました。この書籍の中で『キャット&チョコレート』というゲームの事例が取り上げられており、それがどのように大空さんの研究に活かせそうかという観点から発表してくださいました。
大空さんは、疑わしい研究行為に関する新たな事例を作るために、『キャット&チョコレート』の手法を用いるとのことでした。このゲームは例えば、「大きな岩が転がって来た」といった非日常なお題に対して、「ガムテープ」や「マッチ」といった与えられた選択肢を使ってどのようにうまく乗り切るかを考えるゲームです。
この手法をとりいれることで、普段であれば思いつかない斬新なアイデアが期待できるそうです。これは「ジェネラティブ・リサーチ」と呼ばれます。
また、「なぜなぜ5回」という人の行動の背後にある理由を掘り下げて根底に潜む重要な理由を明らかにする手法や、「What ifシナリオ」という「もし~したらどんなことか?」のようなあらゆる事態を想定し、システムがうまく構築されているかを確かめる手法も研究に取り入れるとのことでした。
このような事例をふまえて、最後に大空さんの今後の研究の方向性について発表してくださいました。
企画検討セッションでは、夏休みに行う出張ゼミ企画について検討しました。
今年度は、長崎や大阪で研究室メンバーの発表の機会が設けられるそうです!研究室メンバーはそれぞれやりたいことが決まっており、とても有意義で楽しい企画になるのではないかと思いました!
今週のゼミ報告は以上となります。では、また来週!
post date and time: 2024-01-26 contributor: hamada
みなさん、こんにちは。M1の濱田です。
1月18日に行われたゼミの活動の報告です。
今回のゼミは、以下の3本立てでした。
・春口さんによる修士研究発表
・ジョナさんによる研究生活動成果報告
・大空さん、犬田さん、濱田による春季研究活動計画
春口さんは、修士論文口述試験の練習も兼ねて、2年間の研究成果をまとめた発表を行ってくださいました。先行研究からゲーム開発、分析に至るまで丁寧にまとめられており、これまで春口さんが積み重ねてこられた研究成果が伺える発表でした。修士研究お疲れさまでした。ジョナさんは、研究テーマをより具体的にし、継承語に焦点を当ててモンゴル語学習のためのゲームを作られるとのことでした。プロトタイプも作られていて、モンゴル語とモンゴルの文化が同時に学べるように上手く設計されていました。完成がとても楽しみです。大空さん、犬田さん、濱田は、研究に加えて、仕事や就活、学会発表など、それぞれ春休みみの活動計画を発表しました。各自やりたいことが明確にあって、それに向かって着実に進む姿は勉強になる部分が多くあります。
さて、今回が今年度最後のゼミとなりました。時間が過ぎるのはあっという間ですね。
ふり返るとこの1年は、大学院入学もさることながら、Minecraftカップでインターンをさせていただくなど、自分の研究を大きく進める年になったと思います。その一方で、新たな環境に慣れつつ、次々と目の前に現れてくる経験や情報を処理するというのは、なかなか大変な面もありました。新しい世界が見えるにつれて当然疑問も増えていくもので、常に頭の中が?だらけだったような気がします。
ただ、この自分が持っている疑問に対して真剣に考える時間があるということ、そして一緒に考えてくださる方々がいるというのは、非常にありがたいことだと思っています。研究などなど、悩みつつとりあえずの答えを出しつつで来年度も頑張っていきたいと思います。
以上が今回の活動報告です。また次回!
post date and time: 2024-01-26 contributor: hamada
みなさん、こんにちは。M1の濱田です。
1月11日に行われたゼミの活動の報告です。
今回は、大空さん、犬田さん、濱田による研究進捗発表と、犬田さんによるプレイセッションでした。
研究進捗発表では、各自が今学期行ってきた研究の成果を発表しました。修士研究に関しては、それぞれ紆余曲折ありながらも研究手法が具体的に固まってきた印象です。その他、研究に関するワークショップの開催や学会発表の準備など、これまで行ってきた活動についても報告しました。来年度も頑張りたいです。
プレイセッションでは、犬田さんが制作したゲーム「Shall we dance? 一緒に踊らないかい?」をプレイしました。このゲームはその名の通り、英語で口説き文句を作るゲームです。ルールは、口説かれる1人が場面設定のカードを引き、それに対して他のプレイヤーは英語の助動詞や主語、動詞などが書かれたカードを組み合わせ、英語とその日本語訳を言いながら口説きます。そして、その中でNo.1口説き文句に認定された人が勝ちというゲームです。カードはランダムなので、どのような文章になるのかわからないという運の要素もあります。
作った口説き文句は、例えば、交差点で信号待ちの人に対して「車でカフェにいきませんか?」という少し怪しげなものから「猫と一緒に宇宙に行きませんか?」といった突拍子のないものまであり、どれもおもしろいものばかりで、いちばん良い口説き文句を選ぶのが大変でした。
そして、今回のゲームは、ゴールが「助動詞を学ぶ」ではなく「口説き文句を作る」という、学習とは少し離れた位置に置かれており、楽しみながら意識せず助動詞の疑問文を学べるゲームでした。機会があればまたプレイしたいです。


以上が今回の活動報告になります。また次回!
post date and time: 2023-11-14 contributor: hamada
こんにちは。M1の濱田です。11月2日のゼミ活動報告です。
今回のゼミは、以下の3本立てでした。
・春口さん 文献研究
・犬田さん 文献研究
・木村さん 研究員発表
春口さんは、「私たちはどう学んでいるのか」第2、3章の発表でした。
第2章は、知識とは伝えることができるものではなく、人の中で創発されるものであるという構成主義についての話でした。私たちが知るという経験をするとき、あらゆる感覚(味、食感、重さ、香りなど)や感情を複合して、私たちの経験を作り出し、知識を形成します。また、知識は環境や状況に依存しており、それらと互いに影響しあうことで、知識は構築されていきます。このように、知識は誰かが直接伝えることができるものではなく、主体の持つ認知的リソース、環境が提供するリソースの中で創発されるものであると筆者は述べていました。
第3章は、練習による上達についての話でした。練習によってマクロ化(別々の動作が一連のまとまりを持つ)、並列化(いくつかの動作を同時に行える)、環境の再構築(身体の動きを仮想的なイメージの中で再現する)が行われます。これらにより、徐々に上達していくのですが、スランプというものも存在します。このように、上達とは直線的なものではなく、うねりを伴うものです。しかし、このうねりが次の飛躍へと繋がると述べられていました。
犬田さんは、「デジタルゲーム研究」第9章の発表でした。
内容は、ゲームをメディア論の観点から捉えるというものです。「すべてのメディアは人間の感覚の拡張である」というマクルーハンの主張を軸に、ゲームは人々の集団意識や社会慣習をコード化し、拡張するという意味で、ゲームもメディアであると説明されていました。そして、どのメディアも他のメディアですでに表象されたものに過ぎないという再媒介化の概念を取り上げ、デジタルゲームも他のメディアを再媒介化したものであると述べられていました。
木村さんは、Ryan&Deci(2006)のコンピュータゲームに自己決定理論を適用した研究についての発表でした。これらの研究では、精神的幸福につながるとされる自律性、コンピテンス、関係性に着目して実験、調査が行われ、ゲームのプレイ動機やその違い、ゲーム内の満足度がその幸福にどのような影響を与えるかについて調査されていました。全体的な結果としては、ゲームプレイによる自律性やコンピテンスと精神的幸福の間には肯定的な関連が認められるとのことでした。
以上が今回のゼミ報告です。
post date and time: 2023-10-05 contributor: hamada
こんにちは。M1の濱田です。
8/4, 5に開催された「教育版マインクラフトで広島の歴史を学ぼう」ワークショップに参加してきました。このワークショップは、Minecraftカップ、広島テレビ、東京大学大学院の渡辺英智研究室、そして藤本徹研究室の共同で開催されました。

ワークショップの目的は、原爆投下前の広島の暮らしや街並みを子どもたちに理解してもらうことでした。広島平和公園レストハウスや広島テレビの展示、事前に準備した当時の写真、原爆を経験した田中稔子さんの講演をもとに、子どもたちは当時の暮らしを想像しながらマインクラフトで再現していきました。お寺や幼稚園、商店街などをテーマとし、グループに分かれて作業をしました。
さらに、セリフを追加できるNPC(ノンプレイヤーキャラクター)を制作した建物に設置し、ワークショップを通じて感じたことや考えたことをNPCに話させたり、当時の人が何を思っていたかを想像してセリフを追加したりしました。


今回のワークショップで最も印象に残っているのが、田中稔子さんがおっしゃった「当時、芝生なんてほとんど生えていなかった」という言葉です。今回使用したマインクラフトのワールドは、地面が全て緑色の草ブロックで覆われていました。普段マインクラフトをプレイしていると、地面が緑色なのは当たり前のことで、子どもたちも全く意識していないポイントでした。この言葉を聞き、子どもたちはさっそく、地面の色を茶色に変えていました。これは田中さんと子どもたちの何気ない会話の一部でしたが、マインクラフトというゲームが、当時暮らしていた人の記憶を蘇らせるツールにもなるし、マインクラフトを通して被爆者の方の当時のイメージが子どもたちにも共有されるのだということを知り、マインクラフトの可能性に感動しました。

私は、このワークショップに企画段階から関わらせていただき、とても貴重な経験となりました。子どもたちに伝えたいことは何か、どうしたらわかりやすく伝えられるかをメンバーのみなさんとひたすらに考え、形にすることができました。このことで、ワークショップを企画する際の核の部分が何となくつかめたような気がします。これから自分で企画し運営していく機会が増えていくと思うので、今回の経験を糧に精進していきます!
最後に、ワークショップ開催にあたり、非常に多くの方のご支援をいただき、子どもたちの新たな学びにつながる機会を作ることができたと思います。この場をお借りして感謝申し上げます。ぜひ、機会があればまた開催したいです。
ワークショップの詳細については、こちらにわかりやすくまとめてくださっているので、ぜひご覧ください。
『「教育版マインクラフトで広島の歴史を学ぼう」ワークショップ開催報告(2023年8月4,5日)』
post date and time: 2023-05-29 contributor: hamada
こんにちは。M1の濱田です。早速、ゼミ活動の報告です。
今回は、文献研究(犬田さん)、事例研究+進捗報告(濱田)、研究員発表(木村さん)の三本立てでした。そして、ゼミ終わりに台湾料理を食べに行く会が開催されました!
犬田さんは、ゲームを使用したデータ収集法について研究されていて、その基盤となる枠組みについての紹介でした。
文献はこちらです。
・Harms, J., Wimmer, C., Kappel, K., Grechenig, T. (2014) “Gamification of online surveys: conceptual foundations and a design process based on the MDA framework” . In: Proceedings of the 8th Nordic Conference on Human-Computer Interaction: Fun, Fast, Foundational. pp. 565–568. ACM
・Hunicke, R., LeBlanc, M., and Zubek, R. (2004) “MDA: A formal approach to game design and game research”. In Proc. AAAI-04 Workshop on Challenges in Game AI ,1–5.
・Jarrett, C., and Gaffney, G. (2008) “Forms that work: designing web forms for usability”. Morgan Kaufmann,pp5-6
発表によると、ゲーミフィケーションを用いたオンライン調査では、MDAモデル(ゲーミフィケーション)、アンケートフォームデザイン、調査領域の3つの軸をもとに、それぞれをどのように組み合わせるかについて考えながらデザインしていく必要があるとのことでした。
また、WEB調査にゲーミフィケーションを組み込むことで、回答者のモチベーションやエンゲージメントといった心理面・行動面の両方に対して効果が期待できるが、一方で、ゲーミフィケーションの要素が回答の統計誤差につながる可能性もあるとのことでした。
私(濱田)の発表では、ケンブリッジ大学英語検定機構が開発した『English Adventures with Cambridge』という英語が学べるMinecraftゲームを紹介しました。私の目指すゲームも今回の事例のように、Minecraft内でのNPCとの対話や与えられたタスクの遂行によって付随的に英語が学べるような仕組みにしていきたいと考えています。しかし、具体的な設計図が全く見えない…という相談も兼ねての事例研究発表でした。
藤本先生をはじめ、みなさんからのフィードバックにより、今後の方針として、まずはMinecraftの論文を読み漁り、教育の場面でMinecraftがどのような使われ方をしているかを調査するという結論に至りました。最終的にどのようなゲームにしたいのか決めてから文献調査などを行っていくというより、調査を行っていく中で作りたいものが見えてくるというボトムアップ的なアプローチもあると気づき、個人的にとても有意義な発表となりました。
木村さんの発表は、科学とは何か、相関関係と因果関係とは何かというところから始まり、「AならばBである」という命題において、「Aである」からといって「Bである」とは限らないという後件肯定の誤謬についてのお話がありました。
これをふまえて脳機能イメージングについて考えたときに、脳機能イメージングは行動(木村さんの研究の場合はゲームプレイ)と脳活動の相関を見ているにすぎず、相関関係があるからといって因果関係があるということにはならないということでした。
また、脳科学的な説明を加えると、たとえそれが良くない説明だったとしても一般人は信頼しやすくなるという興味深い研究を紹介してくださいました。言葉に踊らされず、その相関関係・因果関係をきちんと理解しようということを改めて肝に銘じました。
参加できる人のみで新居さん一押しの台湾料理を食べに行きました。今回は昨年卒業された叶さん、升井さんも参加してくださいました。おいしい台湾料理を食べながら、藤本先生や先輩方からのありがたいありがたいお話を聞くことができ、とても楽しい会になりました。ぜひまた行きたいです!