東京大学 大学院情報学環 藤本研究室
Monthly archive: May 2025
post date and time: 2025-05-02 contributor: keirinkyou
皆さんこんにちは!M1の叶です。
2025年度Sセメスター第4回ゼミ活動についてご報告します!
今回は春休みを経て、それぞれの研究進捗を共有する機会となりました。新しいメンバーも増えて、活気あるスタートになりました! では、さっそく今回のゼミ内容を見ましょう!
大空さんは、研究倫理教育におけるゲーム活用の可能性について発表されました。
まず、近年問題となっている研究不正(STAP細胞事件など)を例に挙げながら、研究倫理教育の必要性とその限界を分かりやすく整理されました。特に現行のeラーニング型教育(知識詰め込み型)の問題点や、現場での倫理教育(ORT)だけでは不十分であることを丁寧に説明し、「スキル開発を重視した双方向型の学び」の重要性を訴えられました。
また、既存のDilemma Gameの長所と課題を分析し、大人の学習者特性(自律性・目的志向性など)を踏まえた新たなゲーミフィケーションの方向性も提案されました。
非常に体系的で、問題意識が明確な発表で、聞いていて背筋が伸びる思いがしました!Sセメスター後半の実践がとても楽しみです。
蓮池さんは、語学学習アプリのゲーミフィケーション要素と学習継続率の関係について研究計画を発表されました。
元々は『Rocksmith+』という音楽ゲームをきっかけに、ゲームの教育的可能性に興味を持たれたそうですが、今回はさらに進めて、語学学習アプリ『スピークバディ』を対象に研究を展開されます。
特に、ゲーミフィケーション要素(即時フィードバック、報酬ポイント、リーダーボードなど)が、日本人英語学習者の内発的・外発的動機づけにどのように作用するか、またそれが継続率にどう影響するかを、自己決定理論(SDT)に基づいて検討される予定です。
アンケートとインタビューを組み合わせた堅実な方法設計で、動機づけタイプ別の比較にも挑戦するとのことで、非常に意欲的なプランでした!
発表後には、友利さんから「英語能力をどう測るか?」という実践的な質問があり、大空さんからもDoulingoの検証研究が紹介されるなど、活発な議論になりました。これからの設計ブラッシュアップも期待しています!
友利さんは、児童養護施設に入所する中学生を対象に、大学進学への興味を促すためのゲーム共同プレイ環境に関する実践報告をされました。
この春休みには、実際に東京都内の施設で『Super Smash Mitaka Cup』というゲーム大会を開催され、小中高生と大学生を交えてチームプレイを実施されました。
大会中、大学生に中学生が興味を持って話しかけたり、進路について自然な会話が生まれる場面も観察できたとのことです。一方で、もっと積極的に交流を引き出すには、ゲームの設定やルール設計に工夫が必要だと感じたそうです。
木村さんと藤本先生からは、「今後、ボードゲームとの比較も試してみると面白いかもしれない」とアドバイスがありました。友利さんのフィールド感覚に基づいた実践報告は非常に臨場感があり、次の改善実践が本当に楽しみです!
私は、動物保護をテーマにした教育型協力カードゲームの設計に向けた研究進捗を発表しました。
春休み中には、ドキュメンタリー映画の限界について文献レビューを行うと同時に、市販されている動物保護関連ゲーム(『Animal Shelter』『Steer Madness』『Shelter』『Endangered』など)を実際にプレイ・レビュー調査しました。
それぞれの作品が「感情喚起」や「知識提供」にどこまで貢献できているかを自分なりにまとめ、現状では「個人の具体的行動」にまでつながる設計が不足していると分析しました。
また、新たにTheory of Planned Behavior(計画的行動理論)を理論枠組みとして取り入れることにしました。これはゼミメンバーのJohannaさんからアドバイスを受けたもので、「態度」「主観的規範」「行動意図」が実際の行動に結びつくプロセスを説明できるため、動物保護行動の促進にも適用できると考えています。
さらに、今回の発表後、藤本先生と厳さんから以下のような重要なフィードバックをいただきました。
今回のゼミは、全員が春休み中にしっかりと手を動かしてきたことがよく伝わる、非常に密度の高い会でした。
それぞれの研究が理論面でも実践面でも確実に前進しており、これからの展開がますます楽しみです!
今年度のSセメスターも、新メンバーも増えて、新たな風が吹き込んでいる藤本研。研究室全体で切磋琢磨しながら、いい形で進めていきたいと思います!
それでは、今回の活動報告は以上になります!
post date and time: 2025-05-01 contributor: leafyyan
こんにちは!M2の莫です。
4月も終わりに近づき、新年度のゼミも本格的にスタートしましたね。
今回は研究計画・進捗報告、そして研究員発表という豪華な内容でした!
それでは早速、今回のゼミの様子をお届けします。
莫:研究進捗報告
まずは私から、修士研究の進捗報告を行いました。
「Enhancing Team-Based Learning with Murder Mystery Game: A Psychoeducational Workshop Design on Stress Management」というテーマで、マーダーミステリーゲーム(MMG)の仕組みを活用し、チームベース学習(TBL)における情報共有の質を高めるワークショップデザインについて発表しました。
TBLにおける情報共有の偏り(Information Sampling Model)という課題に対して、MMGの役割分担・情報交換のメカニズムがどのように貢献できるかを考察しています。
今回は特に、今後のワークショップ実施に向けた実践面でのアドバイスをたくさんいただきました。本当にありがとうございました!
Leafyさん:研究進捗報告
続いてLeafyさんからは、前学期に配布したアンケート調査の分析結果を共有していただきました。
「ゲームを活用した金融リテラシー向上:アンチフィッシングシミュレーションゲームの設計と評価」というテーマのもと、異なる国・文化圏におけるフィッシング詐欺経験や、対策教育に対する認識の違いなど、興味深い洞察がたくさん紹介されました。
また、アンケート設計や実施における工夫や課題についての振り返りも共有され、非常に実践的な学びが得られました。
Johannaさん:研究計画発表
Johannaさんは、臨床心理学に由来するSORKCモデルについて紹介してくれました。
行動分析の枠組みとして、刺激(S)-個体特性(O)-反応(R)-結果(C)-連関(K)の要素に分け、なぜある行動が起き、持続するのかを分析する手法です。
GBL(Game-Based Learning)にも応用できる理論で、特に行動や感情の観察、介入設計に役立つとされます。
(個人的には、普段の生活でも応用できそうなとても実用的な考え方だなと思いました!)
XIE:自己紹介+研究計画発表
XIEさんは、第一回に間に合わなかった自己紹介を今回してくれました!
自身の研究テーマは「文化遺産をテーマにしたシリアスゲームの設計」。
これまで中国で手掛けた文化遺産関連のゲームプロジェクトや、取得した特許についても紹介してくれて、すごく印象に残りました。
実は、彼女の指導教員が昨年うちの研究室を訪問した際、私も立ち会っていたので、不思議なご縁を感じています!
坂井裕紀先生:研究員発表
最後は坂井先生による、JSET2025春季大会での発表内容のご紹介でした。
テーマは「オンライン学習環境における学びのエンゲージメントとゲーミフィケーションとの関連の検討 ―学習者のタイプに着目して―」。
オンライン講座を対象に、ゲーミフィケーション要素が学習者のモチベーションやエンゲージメントに与える影響を検討したものです。
特に、「プレイヤー型」(報酬志向型)の学習者にとってはゲーミフィケーションがポジティブな効果をもたらす一方で、必ずしもすべての学習者に有効とは限らないという、非常に示唆に富む結果が示されました。
学習支援デザインにおいて、受け手の個性に合わせた工夫が一層重要であることを改めて感じさせられました。
以上、4月24日のゼミ報告でした!
それではまた!