東京大学 大学院情報学環 藤本研究室
月別アーカイブ: 2024年10月
投稿日時: 2024-10-31 投稿者: inuda
みなさん、こんにちは! 修士2年の犬田悠斗です。
10月24日のゼミ活動では、莫さんの文献研究と犬田の関連論文紹介、大空さんのプレイセッションが行われました。
■【莫さん】文献研究
莫さんは、"Team-Based Learning A Transformative Use of Small Groups in College Teaching"の第2章 "Getting Started with Team-Based Learning"について発表されました。
この発表では、自分自身の経験を踏まえながら、Team-based Learning(以後TBL)における4つの原則とTBLを実行するプロセスについて主に説明されました。
TBLにおける4つの原則は、以下の通りです。
1.グループは適切に形成され、管理されなければならない(Groups Must Be Properly Formed and Managed)
2.学生には個人ワークおよびグループワークに対して責任を負わせなければならない(Students Must Be Made Accountable for Individual and Group Work)
3.グループの割り当ては学習とチーム開発の両方を促進しなければならない(Group Assignments Must Promote Both Learning and Team Development)
4.学生は頻繁かつ適切なタイミングでフィードバックを受け取らなければならない(Students Must Have Frequent and Timely Performance Feedback)
また、TBLを実行するプロセスは、授業前(Before Class)、初回授業(The First Hours)、主要単元(Major Unit)、学期末(End of the Term)の4つに分かれています。
授業前には、授業を4-7つの単元に分け、それぞれに学習目標を設けます。加えて、成績の評価制度についても定めておきます。初回授業では、TBLの説明を行い、その後グループを作ります。加えて、学生に成績評価制度について説明します。主要単元では、授業内容に対する生徒の理解を深め、チームの結束を高めていきます。まず単元の準備確認からはじめ、その後応用に移っていきます。学期末には、授業内容やチーム内の相互作用などについて振り返りを行います。
この発表を聞いて、教師だけでなく、学生もTBLの原則とプロセスについて知っておくことが、授業を円滑に進めていく上で重要なのだろうなと思いました。
■【犬田】関連論文紹介
私は、下記の論文に基づいて、修士研究で開発したゲーミフィケーションを活用したオンライン調査のデザインプロセスについて発表しました。
Harms, J., Wimmer, C., Kappel, K., & Grechenig, T. (2014). Gamification of online surveys: conceptual foundations and a design process based on the MDA framework. Proceedings of the 8th Nordic Conference on Human-Computer Interaction: Fun, Fast, Foundational. 565–568.
この論文では、ゲーミフィケーションを活用したオンライン調査のデザインプロセスについて論じられています。デザインプロセスは5つに分かれており、それぞれの段階で考えるべきことは以下の通りです。
1.Aesthetics and the Relationship Layer:回答者の属性やフォームの内容に基づいて、感情的な反応やユーザー体験に関する目標を設定する
2.Dynamics and the Conversation Layer:具体的な質問項目に基づいてユーザーとフォームのインタラクション、そしてそれによって引き起こされる行動について検討する
3.Mechanics and the Conversation & Appearance Layers:意図する感情と行動を生み出すために、適切なゲームメカニクスとゲーム要素を採用し、それに基づいて質問内容・質問構成とフォームの見た目を変更する
4.Prototyping, Evaluation and Iteration:アイデア出し、スケッチ、プロトタイピング、評価を3回程度繰り返す
修士研究では、このデザインプロセスに基づいて、ゲーミフィケーションを活用したオンライン調査を作成しました。加えて、この発表では、選択肢をトラッキングする技術的な方法やデバックの方法などについても説明しました。
今回開発してみて、頭で考えてできる事でも実際に開発してみるとエラーやトラブルがたくさん発生することを実感しました。そして、実際に手を動かしながら、地道に開発することの大切さを改めて感じました。
■【大空さん】プレイセッション
プレイセッションでは、大空さんが開発した、会社経営を短時間で疑似体験できるボードゲームを遊びました。このボードゲームは、マーケティング施策を通じて、12ラウンド(1年間)で営業利益を最大化することが目標です。
そして、このゲームの学習目的は、マーケティング、特に3C/4P(※1)の全体感を理解することです。3Cと4Pの要素がゲームメカニクスに組み込まれており、ボードゲームを遊ぶことで、これらを自然と学習することができます。
実際に遊んでみて、上手いプレイヤーは競合のいない場所を見極めるのが早く、ビジネスにおける競合の重要性を感じました。経営シミュレーションゲームはプレイ時間が長くなりがちなので、短時間で経営におけるマーケティングの全体感を把握できるのはとてもいいなと思いました。
※1 3C/4Pともにマーケティングの基礎的なフレームワーク
3C=Company(自社)、Competitors(競合)、Customers(顧客)
4P=Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(広告・販売促進)
以上が、10月24日のゼミ活動報告です。ぜひ来週のゼミ報告記事もお読みください。
それでは!
投稿日時: 2024-10-14 投稿者: inuda
みなさん、こんにちは!
修士2年の犬田悠斗です。今回は、8月・9月の「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム」で行った<SF作品を作ろう!「ゲームを基盤とした社会」を創造するワークショップ>の報告記事です。ぜひ最後までお読みください。
■企画背景
タンパク質の構造予測を行うパズルゲーム『Foldit』など、遊ぶことで社会貢献できるゲームが開発されています。もしこれらのゲームが流行し、多くの人がゲームを通して世の中の発展に寄与する未来が訪れたとすると、社会ではどのような良いこと・悪いことが起こるのだろうと疑問に思いました。
そこで、SFプロトタイピングという、「サイエンス・フィクション的な発想を元に、まだ実現していないビジョンの試作品=プロトタイプを作ることで、他社と未来像を議論・共有するためのメソッド」(宮本他, 2021)を用いて、参加者の方にそのような未来を創造してもらうワークショップを実施しました。
■どんなワークショップ?
このワークショップでは、参加者の方に、「ゲームを基盤とした社会」をテーマにしたショートショートを作成してもらいました。「ゲームを基盤とした社会」とは、多くの人がゲームを通して世の中の発展に寄与する社会のことです。
このワークショップは、「1.設定資料の作成(20分)、2.ブラッシュアップ(20分)、3.執筆(10分)」の大きく3つのステップに分かれています。設定資料の作成では、まずテーマである「ゲームを基盤とした社会」の説明を行いました。その後、そのテーマを基に、ネタ出しを行っていただき、題材を決定してもらいました。題材が決定したら、それに合ったキャラクターとストーリーの作成を行ってもらいました。
ブラッシュアップでは、まずグループを作ってもらい、その後1人1人設定資料の発表をしてもらいました。各発表後、聞き手には設定資料を褒める、もしくは深堀りしてもらいました。
執筆では、参加者の方に作成していただいた設定資料を、生成AIであるChatGPTに読み込ませ、ショートショートを作成しました。1時間と限られた時間であったため、このワークショップでは1つの作品のみデモンストレーションとして執筆を行いました。以下で、長崎のワークショップを通じてできた作品を紹介します。
■作品
・THIS ゲームコミュニケーション(リアル農夫ホウメイ)
レンは東京の片隅で地道な作業を続ける考古学者だった。社会は完全にゲームに依存し、人々は日々の活動をゲームとして競い合っていた。ゴミ拾いから環境保全、さらには政治活動まで、全てがゲーム化され、その貢献度がポイントとして可視化される世界。高ランクのバッジやメダルを持つ者は多くの尊敬を集め、生活が優遇される。しかし、レンのように泥臭い発掘作業や一次産業を担う者は、ゲームで評価されない「ランク外」の存在として扱われ、軽視されていた。
レンの手はいつも土と埃にまみれていた。古代の遺跡を掘り起こし、かつて人類がどう生き、どう繁栄していたのかを知るための手がかりを探していたが、そんなことに興味を持つ者は少なかった。周囲の人々はレンを哀れむか、侮蔑の目で見つめるだけだった。「そんな無駄なことをして何になる?ゲームでポイントを稼げば、もっと簡単に名声が手に入るのに」と言う者さえいた。
しかし、レンは考古学こそが人類の未来を救うと信じていた。社会が完全にゲームに依存している今、彼はそのゲームの先にある破綻を予感していた。歴史を紐解くことで、かつての文明がどのようにして崩壊し、またどのようにして復興してきたのかを学び、再び訪れるかもしれない崩壊に備えようと考えていた。
ところが、どれだけ調査が成功しても、誰も見向きもしない。逆に、ランク外であることを理由に、レンは危険な目にあうことが多くなった。ある日、遺跡からの帰り道、彼はゲームランカーの一群に絡まれた。「お前のような無駄な人間は社会の邪魔だ」と言われ、追い詰められた。命を奪われる寸前、突然の大きな轟音が街を揺るがした。
空を見上げると、太陽が異常な輝きを放っていた。その瞬間、全てのデバイスが一斉に機能を停止し、世界中のITインフラが崩壊した。ゲームで支えられていた社会は一瞬にして機能不全に陥り、混乱が広がった。
人々は何もできなくなり、パニックに陥った。しかし、レンだけは冷静だった。考古学で学んだ知識を活かし、過去の文明がどうやって自然の力と共存してきたのか、そしてどのように復興してきたのかを伝え始めた。かつて軽視されていた彼の知識は今や価値を持ち始め、人々は彼に助言を求めるようになった。ゲームが支配していた社会は崩壊し、人々はレンの手によって新たな生活を取り戻し始めた。
レンは冷ややかに微笑んだ。
「世界はいつも同じことを繰り返す。だが、今回はどうかな?」
彼の貢献度は、もはやゲームには表示されなかった。それは、実際の世界に刻まれた。
・Under Game(ペンネーム:まさのり)
ケンタは、社会において成功を約束されたエリートだった。ゲームによって社会貢献が測られるこの時代、彼の目標は明確だった。ネオゲームセンターで提供される社会貢献型のゲームをこなし、ポイントを稼ぎ、ランクの高いバッジやメダルを手に入れること。そうすれば、さらに多くの尊敬を集め、社会的地位が揺るぎないものとなる。
ある日、ケンタはいつものようにネオゲームセンターに足を運んでいた。貧困問題を解決するためのパズルゲーム、環境保護をテーマにしたアクションゲーム。すべてが社会的意義を持ち、プレイするたびにポイントが蓄積されていく。しかし、その日はなぜか彼の心が浮かない。ルール通りに生きることがどれだけ正しいのか、自分でも分からなくなってきたのだ。
そんな時、ケンタはふと気づいた。ネオゲームセンターの裏側に、古びた扉がある。妙な好奇心に駆られ、扉を押し開けた。その先には、暗がりの中で静かに動く機械、そして数人の男たち。驚いたことに、それは今では違法とされる、娯楽のためだけのゲームを遊ぶ場だった。
「ここでやってるのは、社会に貢献しないゲームだ。無意味な勝負ごと、ただの時間の浪費だ。」
男の一人がそう言って笑った。
ケンタは不快感を覚えた。この社会では、娯楽のためだけのゲームは無意味であり、禁止されている。人々の時間は社会のために使われるべきであり、それ以外は無駄だと教わってきた。だが、彼は一瞬、躊躇した。そして、そのゲームに手を伸ばしてしまったのだ。
プレイは簡単だった。目の前の画面に次々と現れるキャラクターを倒し、得点を重ねる。それだけだ。だが、そのシンプルさが不思議な快感を与えた。意味もなく勝つだけのゲームなのに、彼の心は激しく動揺した。社会に貢献するゲームとは違い、何の責任もない。ただ達成感と快楽だけが残る。
数日後、ケンタは再びその裏の世界に足を運んでいた。彼の内心は苦悩で揺れていた。自分は今まで何のためにゲームをしてきたのか?社会的な評価を得るために、ポイントを稼ぐために生きてきた。だが、この無意味なゲームは、なぜか深い満足感を与えてくれる。
彼は迷い始めた。社会貢献のためのゲームと、ただ楽しむためのゲーム。一体、どちらが本当に価値のあるものなのか?自分が生きているこの社会は、本当に正しいのか?
そんなある日、ケンタは違法ゲームの場である男に話しかけられた。男は静かに笑いながら、ケンタにこう言った。
「ポイントを稼ぐことで尊敬を得る?バッジやメダルが手に入る?それが君に何を与えてくれるんだ?」
ケンタは凍りついた。社会貢献ゲームがすべてだと思っていた自分が、ただシステムに操られていただけだったことに気づいたのだ。
彼はついに知った。かつて、社会はもっと自由だったことを。ゲームはただの遊びであり、楽しむことが目的だった時代があったことを。しかし、現在ゲームは社会を管理するツールになっている。ケンタはすべてを理解した時、社会から消え去るように、その裏の世界に完全に身を委ねた。
・子の成長(ペンネーム:伊藤大海)
太一は、ゲームが禁止された家庭で育っていた。友達が楽しそうに最新のゲームについて話す中、彼だけがその話題に加われないことが、次第に辛くなっていた。そんな時、「社会貢献ゲーム」というものが流行し、それを通じて様々な社会問題が解決されだした。太一は、ふと良いアイデアを思いついた。
「社会貢献をしながらゲームをするなんて素晴らしいじゃないか!」
太一は、これなら親も納得してくれるだろうと思い、親にプレゼンを行うことを決心した。
「お母さん、お父さん、話があるんだ」
ある日、太一は緊張した面持ちで両親の前に立った。彼の目には強い決意が宿っていた。彼は、社会貢献ゲームのメリットを次々と挙げた。ポイントを集めることで、地域清掃やリサイクル活動に貢献できる。さらには、ゲームのランキングで上位に入ると、学校で表彰されたり、名誉あるバッジがもらえたりする。
「それにね、僕もこれを通じて、他の子と同じように楽しみたいんだ」と太一は言った。
しかし、両親の顔は渋いままだった。
「ゲームはやっぱり良くない。社会貢献ゲームだとしても、それに夢中になって他のことを疎かにするかもしれない」と母親が言う。
「その通りだ。何度も言ってきたが、ゲームなんて時間の無駄だ」と父親も続けた。
太一はがっかりした。しかし、彼は諦めなかった。次の機会に、もっと説得力のあるデータや資料を集めて、もう一度挑戦することにしたのだ。それから数週間、太一はゲームに関する論文やデータを読み漁り、より洗練されたプレゼン資料を作成した。そして再び、両親の前に立つ。
「僕はただ遊びたいわけじゃないんだ。これを通じて社会に貢献したいんだよ。それに、データによれば、社会貢献ゲームをやっている子どもたちは成績が上がる傾向にあるんだ」
プレゼンは以前よりも格段に上手くなっていた。両親も少しは興味を示し始めたように見えたが、それでも決定打にはならなかった。何度も何度も繰り返し、太一は挑戦した。親もその度に応じてくれた。徐々に、彼のプレゼンは緻密で説得力のあるものとなっていき、最終的には両親も深く考え込むようになった。
そして、ついに父親が口を開いた。
「太一、よく頑張った。お前の言うことも一理ある。だが、今度は別の考えが浮かんできたんだ。お前はここまで自分の考えをしっかり持って話せるようになった。それに、社会のことも考えている。これからはもっと高度なことに挑戦してほしいと思っているんだ」
太一の期待は膨らんだ。ついに許される時が来たのだろうか?
しかし、その瞬間、父親は予想外の言葉を続けた。
「ゲームは禁止のままだ。だが、その代わりに、お前のその能力を活かして社会のリーダーを目指してほしい。ゲームなんかに時間を費やすより、もっと大きな貢献ができるだろう」
太一は愕然とした。彼のプレゼンは成功したどころか、逆に両親の期待をさらに高める結果となり、ゲームをする夢はますます遠のいてしまった。そして、社会貢献ゲームではなく、現実での「貢献」を求められる日々が始まったのだ。
・Justice Games(ペンネーム:ロイ・たこやき)
ジャスティス・キングは、教師として、常に子どもたちが社会に役立つ人間になるよう、教育に力を注いでいた。社会貢献のゲーム「Justice Game」が普及し、誰もがゲームを通して社会問題を解決できる時代になっていた。ポイントを稼ぎ、バッジやメダルを獲得することで、社会に貢献した証を得るのだ。ジャスティスもその一人で、教師としての指導や日々の行動でポイントを稼ぎ、既に数々のバッジを手にしていた。
ある日、ジャスティスは放課後の街で、若者が喧嘩をしている場面に遭遇した。殴り合いをしている少年たちをなだめ、諭し、悪い行動を正した。彼はその行動によってさらにポイントを稼ぎ、新しいバッジを獲得した。「これで、また一つ社会が良くなった」とジャスティスは満足げに思い、周囲からも尊敬の眼差しを向けられる。
そんな彼に、突然の出会いが訪れる。トゥルース・クイーンという海外の美しい女性だ。二人は急速に親密な関係になっていった。だが、トゥルースは何も言わずに彼の前から姿を消した。彼女の故郷に帰ってしまったのだ。ジャスティスは困惑し、彼女を忘れることができなかった。そして、彼は決意を固め、彼女を追ってその国へ向かうことにした。
彼はその国に入国するやいなや、突然捕らえられ、投獄されてしまった。訳が分からないまま彼は牢の中で思い悩んだ。なぜ、自分がこんな目に遭うのか。やがて、彼は国のルールを知ることになる。この国では、彼の信じていた「Justice Game」とは全く異なる価値観が存在していたのだ。
その国では、殴ることが推奨され、他者を強くするための行為とされていた。暴力が美徳とされ、社会貢献の一環として行われていたのだ。彼が止めた行為こそ、ここでは正義だった。そして、トゥルース・クイーンは、ジャスティスの信じていた「正義」が、この国では愚かで無意味なものだと理解していたのだ。
ジャスティスは、自らの信じていた「社会貢献」とは何だったのかを問わざるを得なかった。どこまでが正義で、どこからが悪なのか。その境界は、国や文化によってこんなにも変わるのか。彼は初めて、自らの信念が完全に崩壊したことを悟った。
・田中の物語(ペンネーム:H.Y.)
田中太郎は、東京に住むごく普通の学生だった。しかし、彼には大きな夢があった。社会において最も名声高く、尊敬される企業「ブラック」に入ることだ。「ブラック」は、ゲームによる社会貢献で圧倒的な地位を築き上げ、社員は皆が憧れる存在となっていた。
田中も、毎日ゲームを通じて社会に貢献していた。ゴミ拾いや環境保護活動、地域の清掃など、ゲームを介してポイントを稼ぐことができ、それが社会的な地位や尊敬へと繋がる。田中は、ひたむきに努力を重ね、ポイントを積み上げていった。彼の胸には、数々のバッジやメダルが輝いていた。
ある日、田中は偶然、近所のゴミ捨て場で「ブラック」のバイトがゴミをまき散らしている場面に出くわした。彼は目を疑った。あれほど社会貢献を謳う企業の社員が、そんな不正を働いているなんて。「これは誤解だろう」と最初は思ったが、明らかに意図的な行動だった。田中は勇気を出して注意しようとしたが、バイトは冷笑を浮かべた。
「お前、知らないほうが身のためだぞ。」
その言葉が妙に胸に残った。
数日後、田中は「ブラック」の暗い裏側に気付いてしまった。ゴミ捨て場での一件が気になり、調査を進めると、表向きの社会貢献とは裏腹に、企業は闇のビジネスを展開していたのだ。田中が真実を訴えようとしても、「ブラック」の社会的な影響力が強大すぎて誰も信じてくれなかった。むしろ、田中が悪い噂を流していると逆に批判されてしまった。
「このままじゃ、僕が消される…」田中は焦りを覚えた。
田中は5人の仲間を集め、ゲームによるポイント稼ぎに全力を注ぐことを決意した。彼らは災害支援や海外ボランティアにまで手を伸ばし、ポイントを集めていった。だが、その活動は決して順調ではなかった。仲間のうち1人が、ある日突然消息を絶った。彼は「ブラック」の仕業だと噂された。さらに、残された2人の仲間がスパイであることが判明し、田中の活動は大きな打撃を受けた。
「もう何もかも無駄なんじゃないか…」田中は心が折れかけていた。
だが、驚くべきことが起きた。消されたと思われていた仲間が実は生きていたのだ。彼は巧妙に「ブラック」の目を欺き、死んだふりをしていたのだ。そして、その間に「ブラック」の不正行為を記録した動画を撮っていた。その映像は瞬く間に拡散され、田中たちは一気にポイントを獲得した。
その結果、「ブラック」は社会的に破滅した。企業は倒産し、社員たちは街から姿を消した。田中はついに自分の手で正義を成し遂げたのだ。しかし、田中が得たものはほんの一時の達成感だけだった。社会はすぐに新しい英雄を探し始め、田中の功績は徐々に忘れ去られていった。
・HIPPOPOTAMUS(ペンネーム:おーつ)
イオリは長崎県の動物園でカバの飼育員として働いていた。カバたちは彼の生活の中心だったが、最近はもう一つの情熱が加わっていた。それは「ゲーム」。今や、社会全体がゲームを通して社会貢献を行い、ポイントを集めることで報酬が得られる時代。学校や職場でも、誰がどのバッジを持っているかが話題になり、社会的な地位を決めるほどだった。
イオリもその熱狂にのめり込み、夜になるとゲームの世界に飛び込んでいた。カバの世話が終わると、すぐに家に帰り、画面の向こうのモンスターを次々に倒してポイントを稼ぐ。最初は簡単だった。敵は単純で、攻略法もすぐにわかった。
ところがある日、ゲーム内で突然異様に強いモンスターが現れた。これまでのモンスターとは次元が違うほどの力を持っており、どれだけ攻撃してもまるで歯が立たない。そのモンスターに倒されると、ただのゲームオーバーでは済まなかった。現実でも、事故や病気で命を落とすプレイヤーたちが次々と報告されるようになったのだ。
「おかしい…こんなことは聞いていない…」
イオリは恐怖に震えた。ゲームをやめれば安全だろうと思ったが、既に彼はその世界に取り憑かれていた。そして、ただ逃げているだけでは他のプレイヤーたちが危険にさらされる。イオリは意を決して、その恐ろしいモンスターに再び立ち向かう決意をした。
調べを進めるうちに、その強大なモンスターは、ゲームを設計したデザイナー自身が意図的に仕込んだものだと分かった。社会にゲームが浸透しすぎ、世界そのものを操る力を持つまでになっていたゲームデザイナーは、自分自身を最強のモンスターとしてゲーム内に登場させ、誰にも勝てない絶望感を植え付けることで、全てを支配しようとしていたのだ。
イオリは何度も挑んだが、結局彼の力では太刀打ちできなかった。諦めかけたその時、突如ゲーム内に現れた強大なプレイヤーが、モンスターに立ち向かい始めた。そのプレイヤーは誰も知らない謎の存在だったが、その圧倒的な力でデザイナーのモンスターを次第に追い詰めていった。
「いったい、誰なんだ…?」
イオリはその背中を見つめながら、共に戦い続けた。そしてついに、モンスターは倒され、ゲームの支配は終わった。社会は再び平和を取り戻し、ゲームも日常の一部として続いた。しかし、その謎のプレイヤーの正体は明かされないままだった。
現実に戻った彼は、いつものようにカバたちの世話を始めた。その時、ふと自分が飼っているカバを見つめた。何かが違う――彼は確信した。このカバが、あの強いプレイヤーだったのだ。カバは彼に一瞥を送り、どこか満足そうに鼻を鳴らし、黙々と水辺を歩き続けていた。
・ヒエラルキー・ワールド(ペンネーム:トモヤ)
ラッキーは、ゲーム社会の底辺にいた。学生の彼は、授業が終われば家に戻り、小さなデバイスを手に取りログインするのが日課だった。彼が生きるこの世界では、ゲームを通じて社会貢献ができ、その結果として多くの問題が解決されている。プレイヤーはゲーム内で稼いだポイントでバッジやメダルを獲得し、バッジの多さがそのまま社会的な尊敬につながる。ラッキーもいつか、そんな高いランクにのぼりつめたいと思っていた。
だが、現実は甘くなかった。彼はまだLv.1。スキルも乏しく、やっとの思いで小さなクエストをクリアしては、わずかなポイントを稼ぐのが精一杯だった。デバイスを通して周囲の プレイヤーのステータスが見えるが、皆が持つ煌びやかなバッジやメダルがまぶしく感じられ、彼は劣等感を抱くばかりだった。
そんなある日、同じような境遇にいる仲間と出会った。彼らもラッキー同様、下位ランクのプレイヤーで、バッジは一つも持っていない。だが、彼らは明るく、互いに切磋琢磨し合い、いつかこのゲーム社会の頂点を目指そうと決意していた。
ラッキーも彼らと共に少しずつ成長していった。クエストをこなし、ポイントを稼ぎ、バッジも増えた。バッジが増えるごとに、現実世界でも少しずつ尊敬を集めるようになり、彼は自分が変わっていくのを感じた。
しかし、平和な日々は長くは続かなかった。ある日、悪名高い「プレイヤーキル集団」が彼らを襲ったのだ。彼らは高ランクプレイヤーを憎み、無差別に攻撃を仕掛けてくる存在で、ゲーム内での成長を破壊することを楽しんでいた。ラッキーの仲間もその標的となり、一人、また一人とゲーム内で殺されていった。ゲームでの「死」は、現実の評価にも直結する。彼らは尊敬を失い、社会の底辺に転落していった。
ラッキーは絶望した。仲間が次々に消えていく中、自分一人が生き残っても何の意味があるのか?だが、彼は諦めなかった。自分が強くなれば、この悲劇を止めることができるかもしれない。ラッキーは、より困難なクエストに挑み、スキルを磨き続けた。そしてついに、ゲーム社会のトップクラスに到達した。
頂点に立ったラッキーは、「プレイヤーキル集団」を壊滅させ、多くの報酬を手にした。人々からは尊敬され、憧れられる存在となった。彼は仲間を失った悲しみを乗り越え、今や多くの人々に希望を与える存在として成長していた。
■振り返り
このワークショップでは、SFプロトタイピングという手法を用いて、「ゲームを基盤とした社会」に関するショートショートを作成することができました。これらの作品を通じて、「ゲームを基盤とした社会」における様々な問題や人々が持っている価値観などを、具体的に想起しやすくなったと感じます。
また、SFプロトタイピングは、小説家とコラボレーションして行われることが多いですが、このワークショップでは、執筆作業をChatGPTに代替させることで、開催コストの削減を目指しました。個人的な感想としては、この試みも一定の成功を収めることができたと思います。
今後の課題は、テーマをより明確にすることです。「ゲームを基盤とした社会」というテーマが抽象的で、想像の余地がありすぎたため、参加者によって解釈の幅が広くなりすぎました。また、ストーリーの作成方法についても、具体的な作品などを交えてより詳細に説明する必要があったと思いました。
【参考文献】
宮本道人(監), 難波優輝, 大澤博隆(編).(2021). SFプロトタイピング: SFからイノベーションを生み出す新戦略. 早川書房
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以上が、<SF作品を作ろう!「ゲームを基盤とした社会」を創造するワークショップ 報告記事>になります。また次回の記事もお読みいただけると嬉しいです。
それでは!!!
投稿日時: 2024-10-10 投稿者: inuda
みなさん、こんにちは!
修士2年の犬田悠斗です。今回は、夏休みの活動報告9月編です。
9月を一言で表すと、「遊びと研究のバランス」です。
学会発表や大阪遠征などで研究発表を行う反面、友達と会ったり、ゲームイベントに行ったりと遊びも充実した一ヶ月でした。今回は、その中でも印象に残っている「日本デジタルゲーム学会2024年夏季研究発表大会」、「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 大阪」と「遊び」の話について書こうと思います。
■日本デジタルゲーム学会2024年夏季研究発表大会
9月6日(金)と9月7日(土)に、「日本デジタルゲーム学会2024年夏季研究発表大会」が開催されました。私は、下記の2つの発表を行いました。学部3年生の頃から毎回発表することを習慣にしていたので、バタバタしていたのですが思い切って発表しました。
①インタラクティブセッション:クラウドソーシングゲームのプラットフォーム「Meta Crowdsourcing Game」の開発
②ライトニングトークセッション:実験哲学におけるゲーミフィケーションを活用した WEB 調査の開発実践の進捗
今回の学会を通じて感じたことは、「ゲーミフィケーションであっても、ゲームとして評価・判断されることが多い」ことです。ゲーミフィケーションは、「コンピュータゲームのなかで特徴的に培われてきたノウハウを現実の社会活動に応用する行為のこと」です。つまり、必ずしもゲームを開発することではありません。
エンターテインメントを目的としない場合、むしろゲームにしすぎるとその部分がノイズになってしまい、ユーザー体験を損なうことが往々にしてあると思います。メモ帳を開くたびに長々とゲームをするのは億劫ではありませんか。
ゲーミフィケーションの場合は、「ゲーム要素を通じて何を実現したいのか」を見ることが重要だと思います。ユーザーのエンゲージメントを高めたいのか、ゲームのシステムを通じて社会構造を表現したいのか。ゲーミフィケーションと一言にいっても、様々な目的があると思います。
ゲーミフィケーションを活用したものには幅があり、ゲーム要素がしっかり盛り込まれているものもあれば、少しだけゲーム要素を足したものもあります。ただ、1つ言えることは、ゲーミフィケーションに関しては、ゲーム要素の量で評価することはできないということです。つまりゲーム要素が少なくても、目的が達成されていたなら、その制作物は素晴らしいということです。
ゲーミフィケーションを評価する場合には、ゲームとして面白いかではなく、「ゲーミフィケーションを活用することで、何を実現することができているのか」を考えることが良いのではないかと個人的には思っています。
■ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 大阪
9月18日(水)に「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 大阪」が藤本研究室のイベントとして開催されました。私は下記の4つの発表を行いました。
①SF作品を作ろう!「ゲームを基盤とした社会」を創造するワークショップ(ワークショップ)
②クラウドソーシングゲームのプラットフォーム『Meta Crowdsourcing Game』(デモ展示)
③実験哲学ゲーム『Free Will 自由意志と道徳的責任』(デモ展示)
④英語の勧誘表現を学習できるカードゲーム『Shall we dance? 一緒に踊らないかい』(デモ展示)
今回のイベントは、大学院で培ってきたことが凝縮された良い展示ができたと思っています。デジタルゲーム、アナログゲーム、ゲーミフィケーションを活用したWEBアプリ、ワークショップでできた創作物、グラフィックと多様なものを展示しました。「多様なメディアを用いて表現していく」という自分らしさを出すことができたと思います。
今回のイベントをはじめとして、このような挑戦の機会をいただけているのは、藤本研究室を支えてくださっている皆様のご支援のおかげです。本当にありがとうございます。
■遊び
最後に、「遊び」として、「東京ゲームショウ2024」と「勇気づけられた友人との話」を簡単に紹介したいと思います。
・東京ゲームショウ2024
内定先の企業からチケットをいただき、「東京ゲームショウ2024」に行ってきました。実は、私の東京ゲームショウに行く目的は、「ゲームを遊ぶこと」ではなく、「各企業の展示を見に行くこと」です。どの企業も、ゲームをモチーフとした様々な展示を行っていて、こんな見せ方があるのかと毎回感動しています。人が多すぎて試遊はなかなかできないのですが、展示を見に行くというモチベーションだと、東京ゲームショウも楽しめるのではないかと思います。
・勇気づけられた友人との話
最後に、友人と会った時に話した「研究者のタイプと評価の話」を紹介させてください。
ここから相当ざっくりとした話になりますがご了承ください。話の概要は以下です。
研究者には、「注目度の高い領域で熾烈な競争を生き抜いていく研究者」と「独自の世界観を作り育てていく研究者」がいる。前者は一見華やかで注目されがちだけど、後者はしっかりと時間をかけて世界観を育て続けていったら、競争だけでは辿り着けないより大きくて広い世界に行けるんじゃないか。
私は、完全に後者のタイプなので、本当に勇気づけられました。久しぶりに友人と腹を割って話すのもいいものだなと改めて思いました。
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以上が、犬田の9月の活動報告になります。また次回の記事もお読みいただけると嬉しいです。
それでは!!!
投稿日時: 2024-10-09 投稿者: inuda
みなさん、こんにちは!
修士2年の犬田です。今回は、夏休みの活動報告8月編です。
8月を一言で表すと、「やりたいこと・やらなければならないことに取り組み続けた1カ月」です。
学会発表の予稿提出や倫理審査の提出、大手芸能事務所とのボードゲーム制作など振り返ってみると、盛り沢山だったなと思います。今回は、その中でも印象に残っている、「第10回シリアスゲームジャム」と「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」について書こうと思います。
■第10回シリアスゲームジャム
8月27日(火)~8月29日(木)に「第10回シリアスゲームジャム」が開催されました。今回のテーマは、「ゲームで再定義する新しい防災訓練のカタチ」でした。
私たちのチームは、「わんにゃん避難訓練」というペットとの避難所生活を体験できるシミュレーションゲームを企画しました。結果としては、「The Serious Game Grand Prize(1位)」を受賞することができました。前回は同率2位だったので、嬉しかったです。
あわせて今回のシリアスゲームジャムの感想や考えたことについても書きたいと思います。
今回のゲームジャムの特徴は、「ペーパープロトタイプの制作」までをゴールに設定しているところです。これまで見聞きしたゲームジャムは、「(デジタル)ゲームの開発」までをゴールにしていることが多かったです。しかし、短期間で開発まで行うゲームジャムでは、「開発しきらなければならないこと」が足枷になり、十分に企画を深めることができません。
「開発すること」に重きを置いているゲームジャムではそこまで大きな課題ではないのですが、ことシリアスゲームジャムでは大きな課題だと思いました。なぜなら、シリアスゲームジャムは、「ゲーム開発」だけでなく、「ゲームの企画を構想する中で、社会課題について深く考えること」が重要だと考えているからです。
前提として「短期間で開発できるもの」という足枷があると、企画が小さくまとまってしまい、十分に社会課題についての深堀が行えません。しかし、「ペーパープロトタイプの作成」をゴールにすると、開発にかける時間が少なくてすみ、その分企画で社会課題について向き合うことができます。
シリアスゲームジャムを、社会課題について学ぶ1つのプログラムだと捉えると、ゴールを「ペーパープロトタイプの作成」にするのは、理にかなった良い取り組みだったと個人的に思いました。
■ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎
8月6日(火)と8月7日(水)に「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」が藤本研究室のイベントとして開催されました。私は、以下の5つの発表を行いました。「これもやりたい!あれもやりたい!」が積み重なって、いつのまにか5つ発表することになり、準備が大変でした、、、
①クラウドソーシングゲームー遊ぶことで社会貢献できるゲームの可能性ー(研究発表)
②SF作品を作ろう!「ゲームを基盤とした社会」を創造するワークショップ(ワークショップ)
③クラウドソーシングゲームのプラットフォーム『Meta Crowdsourcing Game』(デモ展示)
④実験哲学ゲーム『Free Will 自由意志と道徳的責任』(デモ展示)
⑤英語の勧誘表現を学習できるカードゲーム『Shall we dance? 一緒に踊らないかい』(デモ展示)
基本的には、遊ぶことで社会貢献できるゲームである「クラウドソーシングゲーム」とゲームを通じて多くの人が世の中の発展に寄与している社会である「ゲームを基盤とした社会」に関する発表を行いました。
今回のイベントを通じて、多くの人々に自分の研究を伝える中で、「興味をもってもらうこと」の難しさを改めて感じました。私は、「クラウドソーシングゲーム」や「ゲームを基盤とした社会」のような広く普及していない概念をテーマとして扱っています。これらの知らない概念については、多くの人は無関心です。なので、自分の研究をそのまま普通に紹介をしても興味は持ってもらえません。
そこで大事なのが、「分かりやすい表現で伝えること」と「知っている概念と繋げてあげること」だと思いました。興味を持ってもらえないからいいやではなく、相手の目線に立って分かりやすく伝え、興味を持ってもらうこと。この技術も、研究を続けていくためには重要なのだろうと思いました。
私は、どうしても自分が考えていることをすべて知ってほしいからと、世界観全開で分かる人だけに伝わればよいという発表をしがちです。もしくは、伝えることを諦めて、超絶簡単にしてしまいがちです。そうではなく、しっかりと向き合って、研究テーマを分かりやすく、身近に思ってもらえるように発表をする。その努力を忘れてはいけないなと思いました。これからはうまく使い分けられるように意識したいなと思います。
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以上が、犬田の8月の活動報告になります。また次回の記事もお読みいただけると嬉しいです。
それでは!!!
投稿日時: 2024-10-08 投稿者: inuda
みなさん、こんにちは!
修士2年の犬田悠斗です。今回は、ゲーミフィケーションに関する研究の調査協力のお願いです。
本調査では、修士研究の一環として開発した、「ゲーミフィケーションを活用したオンライン調査」に取り組んでいただき、その評価を行っていただきます。
下記のURLから調査を開始することができます。調査対象者は、18歳以上の方です。
所要時間は30分程度で、謝礼としてAmazonギフトカード500円分を送付します。
調査URL:https://forms.gle/vsu55euwweA2ckPW9
この研究は、ゲームの社会活用における新たな可能性を探索する取り組みになっています。ご協力のほど何卒よろしくお願いいたします。
万が一トラブルが生じた場合は、以下のメールアドレスにご連絡ください。可能な限り早急に対応いたします。よろしくお願いします。
Mail: inuda-yuto760@g.ecc.u-tokyo.ac.jp
投稿日時: 2024-07-11 投稿者: inuda
みなさん、こんにちは!修士2年の犬田悠斗です。
7月4日のゼミ活動では、斉さんの関連論文紹介と研究室企画「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」のミーティングが行われました。
今回は、報告内容が2つだけと短くなりそうなので、余った紙幅を使わせていただいて、はじめに私の研究関心について書かせてください。
私は、「ゲームを基盤とした社会(Game Based Society)」を目指して研究を行っています。
え、「ゲームを基盤とした社会(GBS)」ってなに?と多くの人が思われたと思います。
この「ゲームを基盤とした社会(GBS)」とは、多くの人がゲームを通じて社会貢献している社会のことを指しています。具体的には、多くの人がゲームをすることで、研究やボランティア活動に貢献し、社会を支えているような世界のことです。
このビジョンを目指そうと思ったきっかけは、ジェイン・マクゴニガル著の〈幸せな未来は「ゲーム」が創る〉で紹介されていた『Foldit』というゲームでした。『Foldit』とは、遊ぶことでタンパク質の折りたたみ構造の解析に貢献できるゲームです。このゲームを知った時に、「ゲームを遊んでいたら、勝手に社会貢献に繋がるってめっちゃ面白いな」と思いました。しかし、このゲームを実際に遊んでみると、「あまり面白くない」(個人的に)。そこで、より面白い、社会貢献のゲームを作り、この考えを広めたいと思い、「遊んでいたら勝手に社会貢献に役立つゲーム(クラウドソーシングゲーム)」の研究を始めました。
そして、現在、この社会貢献に役立つゲームの開発などを通じて、「ゲームを基盤とした社会(GBS)」の実現を目指しています。「ゲームを通じて社会をデザインする」って、すごく魅力的じゃないですか。
ただ、これだけでは、「ゲームを基盤とした社会(GBS)」や「社会貢献に役立つゲーム(クラウドソーシングゲーム)」について何を言っているかわからないという方も多いと思います。
「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」では、これらについてより具体的な話をしたいと考えています。そして、開発したゲームの試遊もできます!少しでも興味のある方は、ぜひ現地でお話させてください!
「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」の参加は、こちらから!
さて、長々と語ってしまいましたが、以下からゼミ活動の報告に移ります。
■【斉さん】関連論文紹介
斉さんは、下記の論文を紹介されました。
Govender T, Arnedo-Moreno J. (2021) . An Analysis of Game Design Elements Used in Digital Game-Based Language Learning. Sustainability, 13(12), 6679. https://doi.org/10.3390/su13126679
この研究では、デジタルゲームベースの言語学習(以後、DGBLL)における5つのリサーチクエスチョン(以後、RQ)が立てられています。そして、それらをもとに、ゲームデザイン要素に関して、DGBLLに関する論文のレビューが行われています。
1つ目のRQは、「 DGBLLにおいて最も頻繁に使用されるゲームデザイン要素は何か?」です。このRQについては、フィードバックシステム、テーマと物語、ポイントまたは経験値、レベルと進行度合いの可視化が 最も頻繁に使用されていることが示されていました。
2つ目のRQは、「特注のゲーム、市販のゲーム、娯楽用ゲーム、教育用ゲームの間でゲーム要素にはどのような違いがあるか?」です。このRQについては、娯楽用ゲームと教育用ゲームで、ゲーム要素の量に大きな違いがあり、前者の方がゲーム要素が多いことが示されていました。また、特注のゲームと市販のゲームでは、前者の方がゲーム要素が多いことが示されていました。
3つ目のRQは、「特注のゲームと市販のゲームで、特定の年齢層における結果への影響に違いがあるか?」です。このRQについては、小学生以外では、市販のゲームの方が多く使用されていることが示されていました。ただし、年齢層で論文数に大きな違いがあるため(就学前、中学生が少ない)、就学前、中学生に対するより多くの研究が必要であることが指摘されていました。
4つ目のRQは、「言語技能に関するデザイン要素の間には違いがあるか?」です。このRQについては、語彙の獲得と保持でゲームの使用が最も多く、インプットとアウトプットでゲームの使用が少ないことが分かりました。また、コミュニケーションスキルで使用されたゲームが、最も多くのデザイン要素(ソーシャルディスカバリーなど)を含んでいることが分かりました。
5つ目のRQは、「DGBLLアプリケーションで潜在的な効果を示したあまり使用されていないゲームデザイン要素は何か?」です。このRQについては、評価のためのボスバトルや収集・交換などが挙げられていました。
斉さんは、この論文のRQをもとに不明瞭な箇所を分析し、より精緻なRQを立てられていました。この論文はDGBLLにおけるゲームデザイン要素のレビュー論文であり、今後の斉さんの研究で大いに役立つだろうと思いました。
■研究室企画「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」
8月6日(火)・8月7日(水)に長崎市中央公民館で開催する「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」のミーティングを実施しました。ミーティングでは、プログラム概要や会場の設備などについて話し合いました。
「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」では、ゲーム学習分野を中心にさまざまな研究成果を発表します。特に注目のセッションとしては、小学校教諭で、エデュテイメントプロデューサー の正頭英和氏と藤本徹先生らがパネルディスカッションを行う〈『桃太郎電鉄 教育版』事例研究シンポジウム〉やプロマインクラフターのタツナミシュウイチ氏を講師としてお招きする〈『教育版マインクラフト』特別講演セッション〉があります。
加えて、〈教育版マインクラフトで創る未来の学び:教育効果と実践事例〉という題目で、Minecraftカップ運営委員会ディレクターの土井隆氏に講演を行っていただきます。もちらん藤本研究室の研究員や大学院生の研究成果を中心とした、興味深い発表もご準備しております。
「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」の参加は、こちらのフォームから!
また、8月4日〜8日に長崎市役所で開催される「ミライの平和活動展 in 長崎 〜テクノロジーでつながる世界〜」に連動した企画セッション「戦争とゲーム」を8月6日(火)15:30〜16:30に長崎市役所多目的ホールで行います。
ミライの平和活動展 in 長崎の詳細についてはこちらのウェブサイトをご覧ください。
みなさんとともに、「ゲームの遊びと学びの未来」について考えられることを心から楽しみにしております。では長崎で!
以上が、7月4日のゼミ活動報告です。ぜひ、来週のゼミ報告記事もお読みください。
それでは!
投稿日時: 2024-05-17 投稿者: inuda
みなさん、こんにちは!M2になりました犬田です。
今年は東京の桜の名所に行って花見をしようと決意していたのですが、気がついたらすべて散っていました。悲しいです。あと、就職活動も無事終了しました。
さて、5月9日に行われたゼミ活動の報告をします。発表内容は、莫さんの関連論文紹介とジョナさんの文献研究です。
■【莫さん】関連論文紹介
莫さんは、以下の2つの論文を紹介されました。
①Folz, H. N., Black, J., & Thigpen, J. (2023). Evaluation of a murder mystery activity to teach patient communication interviewing skills. Currents in pharmacy teaching & learning, 15(6), 581–586.
②Kavanaugh, R., Pape, Z., LaTourette, B., & Lehmier, S. (2022). Who killed Mr. Brown? A hospital murder mystery in a pharmacy skills course. Medical teacher, 44(10), 1151–1157.
2つの論文はどちらも、マーダーミステリーゲームを用いて医学生のコミュニケーション能力を向上させることを目的としています。研究結果としてはどちらも、医学生がコミュニケーションスキルを学ぶ上で、マーダーミステリーゲームが効果的であることを示唆していました。ただ、どちらの文献にも、マーダーミステリーゲームの定義や学習効果を高めるメカニズムについての言及がなかったので、今後行っていきたいと仰られていました。
発表の後のディスカッションでは、患者の症状から病気を特定する行為や限られた情報から死因を推測する行為は、与えられた情報から犯人を推理するようなマーダーミステリーゲームと相性がよいという意見が出ました。与えられた情報から何かを推測する活動とマーダーミステリーゲームを組み合わせることで、意義のある体験を生み出すことができるのではないだろうかと思いました。
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■【ジョナさん】文献研究
ジョナさんは、今年2024年3月に発売された藤本先生が編著の「シリアスゲーム」の「第3章 シリアスゲームのデザイン」を紹介されました。第3章は、情報学環にいらっしゃった池尻良平先生が執筆を担当されています。第3章では、シリアスゲームのデザイン論、特に学習領域に合わせたゲームデザイン論について、多くの事例とともに説明されています。
本書ではまずゲーム学習のフレームワークとして、スタールダイネン&デフレイタスの「ゲームをベースにした学習のフレームワーク」が紹介されています。このフレームワークは、「学習→インストラクション→評価」の3段階で構成されています。個人的には、2段階目のインストラクションにおいて、ゲーム要素を「文脈、表現、教育学、学習特性」に分けているところに面白さを感じました。
また、学習に効果的なゲーム要素として、「競争」、「協力」、「探究発見」などが紹介されていました。そして、学習領域に合わせた効果的なシリアスゲームのデザイン手順として以下が提案されていました。
1.学習領域ならではの目的、要素、キー概念を発見する
2.キー概念との親和性の高いゲーム要素を同定する
3.キー概念を絡めたメインルールをデザインする
4.学習を促す追加ルールをデザインする
5.シリアスゲーム外の学習をデザインする
感想としては、一般的なゲームデザインの指南書を読むだけでなく、開発するジャンルに特化したゲームデザインの本を読むことで、より適した思考法やデザイン手法を学習することができるなと改めて思いました。
以上が、5月9日のゼミ活動報告です。ぜひ来週のゼミ報告記事をお読みください。
それでは!
投稿日時: 2024-01-15 投稿者: inuda
みなさん、あけましておめでとうございます!M1の犬田です。
みなさんは年末年始をどのように過ごされたでしょうか。私は、ボードゲーム制作をしたり、論文を整理したりと中々手を付けられていなかったことに取り組んでいました。年末年始感は全然感じられなかったのですが、実家でのんびりと過ごして英気を養っていました。今年も楽しく充実した1年にしたいなと思います。
今年もみなさんどうぞよろしくお願いいたします。
さて、1月4日に行われたゼミ活動の報告をします。発表内容は、大空さんの事例研究と濱田さんの研究関連論文紹介です。
【大空さん】事例研究
大空さんは、食肉倫理をテーマにしたシリアスカードゲーム『マナーな食卓』について紹介されました。『マナーな食卓』とは、異なる種族が互いを食べ合いながらも共存する世界で、他種族に配慮した食事マナーを考えるカードゲームです。このゲームは、食材となった命にどのように敬意を払うかを考えることで、プレイヤーに命をいただくという行為について再考してもらうことを目的としています。
大空さんは、感想として、テーマ「食肉倫理」とゲームメカニクス「大喜利」の相性があまり良くない点を指摘されていました。一方で、今回の事例研究を通じて、役割カードの重要性と専門家レビューの大切さについて学習されていました。
私はこの発表を聞き、シリアスゲーム開発において、表現したいシリアスさとメカニクスによって起こされる感情が上手く嚙み合わないと、込められたメッセージが十分にプレイヤーに伝わらないのだなと思いました。この点については、自分がボードゲームを制作するときも意識したいと思います。
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【濱田さん】研究関連論文紹介
濱田さんは、以下の2つの論文を紹介されました。その後、その2つの論文を受けての、研究計画についても発表されました。
①Macintyre, P. D. (2012). The Idiodynamic Method: A CloserLook at the Dynamics of Communication Traits. Communication Research Reports, 29(4), 361–367.
この論文では、研究方法に焦点を当てて紹介されました。この研究では、 “Idiodynamic Method”という、コミュニケーションにおける情意の変動を学習者自らに評価してもらう方法が取られています。具体的には、会話を録音・録画し、それを視聴してもらいながら自己評価してもらう。そして、インタビューを行い、それを解説してもらうという方法が取られています。
②Pawlak, M., & Mystkowska-Wiertelak, A. (2015). Investigating the dynamic nature of L2 willingness to communicate. System, 50, 1-9.
この論文の目的は、コミュニケーション意欲(WTC)の変動のパターンとその要因を分析することです。研究方法では、「参加者にペアで即興の対話をしてもらい、その様子を録音する。そして、その対話のなかで30秒ごとに、WTCの自己評価を行ってもらう。その後、その変化の要因を質問紙で回答してもらう。さらに、録音を聞きながらその変化の詳細な説明を参加者に説明してもらう。」という手法が取られています。結果としては、WTCは話を聞いているときは低下し、意見を述べるときには増加するなどが分かっています。
濱田さんは、この2つの先行研究を受けて、Minecraftを複数人でプレイしながら英語でコミュニケーションをとったときのWTCの変化とその要因を研究していきたいと発表されていました。
以上が、1月4日のゼミ活動報告です。ぜひ来週のゼミ報告記事もお読みください。
それでは!
投稿日時: 2023-11-28 投稿者: inuda
こんにちは、修士1年の犬田です!
ゼミ活動報告の前に、今月あったイベントの報告をさせてください。11月16日から20日にかけて、東京大学制作展が開催されていました。私は、プロデューサーとして全体の方向性の決定をしながら、個人で作品の制作を行いました。様々な背景を持った人たちと協力しながら、1つの展示会を作り上げる経験は、今後の大事な財産になったと思います。また一方で、面白い人たちと関わる中で、自分の強みと弱みを考える良い機会になったなと思います。今後の人生で何を武器にして生きていくのか、そしてどのようなキャリアを歩んでいくのか、制作展が終わった今改めて考えてみる必要があるなと感じています。制作展にご来場いただいた皆様本当にありがとうございました。
さて、11月16日のゼミ活動報告に移りたいと思います。今回の内容は、研究進捗報告(春口さん、犬田)と研究員発表(坂井先生)になります。
■研究進捗発表(春口さん)
春口さんは、修士論文の進捗について共有されました。「通信プロトコルと階層の学習を支援するシリアスゲームの開発と評価」という題目で修士研究を進められています。現在は、シリアスゲームの評価に関する実験と並行して、論文の執筆も進められています。実験参加者は20名を目標とされていて、徐々に集まりだしているそうです。現在集まっている参加者の属性はばらばらで、大学学部生や教育関連企業、薬品会社勤務など多様な職業の方が実験に参加してくださっているようです。もし、参加可能な方がいらっしゃれば、こちらのフォームからご参加ください。
■研究進捗発表(犬田)
私は、質問紙調査のゲーム化に関する研究の進捗を共有しました。ゲーム化する質問紙の研究分野を、実験哲学に決定し、ゲーム化に適した既存の研究を探していることを報告しました。また、Gamified Surveyのデザイン・評価に関する論文や問題点がまとめられたレビュー論文が見つけられたので、今後精読していきます。加えて、制作展でゲーム要素を加えた、クラウドソーシングゲームのプラットフォームを開発したので、今後こちらも学会で発表できればと考えています。制作展を無事終えることができたので、今後は研究に集中して取り組みたいと思います。
■研究員発表(坂井先生)
坂井先生は、”Ephemeral games: Is it barbaric to design video games after Auschwitz?”(G.Frasca,2000)という論文を紹介されました。その後、プレイヤーに恐怖や不安を与えるテーマ(例えば,死)を扱うシリアスゲームを開発・利用する是非とその際の注意点についてディスカッションしました。紹介された論文は、ゲームにおける多くの行動は可逆的であるため、死などの概念は倫理的、歴史的、社会的価値を失うことになるが、死などを扱うシリアスゲームをデザインする上では、不可逆的で、刹那的であることが鍵となってくるといった内容でした。その後のディスカッションでは、恐怖や不安を与えるテーマ(例えば,死)を扱うシリアスゲームを開発・利用する是非について賛成か反対かで分かれ、意見を共有し合いました。そのようなゲームを開発・利用する際の、倫理的側面や効果について活発な議論が展開されました。
以上で、11月16日のゼミ活動報告は終了となります。ぜひ来週のゼミ報告記事もお読みください。それでは。
投稿日時: 2023-10-20 投稿者: inuda
みなさん、こんにちは!M1の犬田です。
もうすっかり秋となり、寝るときには布団が恋しくなる季節になってきました。今年も大好きな厚手のパーカーを着ることができるようになり、テンションが上がるなーと思っているこの頃です。
今週のゼミ活動報告の内容は研究生活動計画発表(ジョナさん)と研究計画発表(濱田さん、犬田)、研究進捗発表(大空さん、春口さん)になります。
■研究生活動計画発表(ジョナさん)
ジョナさんは、モンゴル語学習を例に、小学生を対象とした少数言語・文化の学習を促すゲームの設計や開発、使用者調査を行い、デジタルゲームが少数言語・または文化の習得にどんな効果をもたらすかを明らかにする研究をされています。この研究を進めるにあたり、5つのことを計画されています。1つ目は、内モンゴルと日本のモンゴル語教室に訪問し、授業の相違点と共通点を見つけること。2つ目は、言語学習ゲームの事例研究。3つ目は、モンゴル語教師へのインタビュー。4つ目は、C#などゲーム開発に必要な能力を磨くこと。5つ目は、授業デザインについて学習することです。今後研究を進めるにあたって、必要なアクションがしっかりと計画されていて、自分も頑張らないとなと思いました。
研究計画発表(濱田さん)
濱田さんは、夏休みに運営として参加したワークショップを通じて得た気づきや学びをもとに、研究計画を考えられていました。「英語学習における言語不安と動機付け」を研究テーマに、日本人中学生の言語不安の要素を測定する計画を立てられていました。方法としては、マインクラフトを利用したPBLを行った中学生とマインクラフトを利用しないPBLを行った中学生とを比較検討する計画をされていました。今後の計画としては、渋谷区の学校に研究協力していただけないか交渉に行くことと、英語学習の評価法を調べることを挙げられていました。様々なアクションを積極的に起こされていて、見習わないとなと思いました。
研究計画発表(犬田)
犬田は、「ゲーム的手法を用いたデータ収集法の開発と評価」をテーマに研究を進めています。具体的には、WEB調査におけるSatisfice行動、質問内容を理解していない回答者の存在、動機づけの欠如という課題を解決できる、ゲーム手法を用いた新たな調査法を開発・検討しています。今後の計画としては、10月-11月で調査で扱うテーマを決定し、11月後半、12月からゲーム作成に取り掛かる計画を立てています。調査法の開発と並行してエンゲージメントやユーザー体験を測れる既存の尺度がないか調べようと思っています。
研究進捗発表(大空さん)
大空さんは、研究倫理教育のカードゲームの作成とそのカードゲームを用いたワークショップの開発を研究としてされています。ゲームもワークショップもほとんど完成されていて、今後はワークショップ形式の予備的実験と学会発表を重ね改良を重ねていく計画を立てられていました。具体的には11月にサイエンスアゴラでワークショップを行い、2-3月にDiGRAJでポスター発表、時間があればJSETで口頭発表もされるそうです。さらに、来年5月に科学技術IP養成プログラムへの出願、来年8月にDiGRAJで口頭発表とGENSEKIでピッチすることも計画されていました。かなり先まで綿密に計画されていて、本当にすごいなと思いました。
研究進捗発表(春口さん)
春口さんは、夏休み期間でプロトコルの階層化を学習することができる、トロッコで荷物を運ぶゲームを作成されました。今後は、知識テストの作成、評価の手続き、時間配分の決定、実験参加者の募集、ゲーム内部で取得する情報の決定をされる予定です。その後このゲームを用いて実験を行い、得られたデータを分析・評価されます。ゼミ生も今後実験参加者になるので、詳細については知ることができませんでした。実験に参加することが楽しみです。デジタルゲームを作成し切り、実験内容まで考えられていてさすがだなと思いました。
以上で、10月12日のゼミ活動報告は終了です。ぜひ来週のゼミ報告記事もお読みください。それでは!