月別アーカイブ: 2024年7月

【7月4日】ゼミ活動のご報告

投稿日時:   2024-07-11   投稿者:   inuda

みなさん、こんにちは!修士2年の犬田悠斗です。

7月4日のゼミ活動では、斉さんの関連論文紹介と研究室企画「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」のミーティングが行われました。

今回は、報告内容が2つだけと短くなりそうなので、余った紙幅を使わせていただいて、はじめに私の研究関心について書かせてください。


私は、「ゲームを基盤とした社会(Game Based Society)」を目指して研究を行っています。

え、「ゲームを基盤とした社会(GBS)」ってなに?と多くの人が思われたと思います。

この「ゲームを基盤とした社会(GBS)」とは、多くの人がゲームを通じて社会貢献している社会のことを指しています。具体的には、多くの人がゲームをすることで、研究やボランティア活動に貢献し、社会を支えているような世界のことです。

このビジョンを目指そうと思ったきっかけは、ジェイン・マクゴニガル著の〈幸せな未来は「ゲーム」が創る〉で紹介されていた『Foldit』というゲームでした。『Foldit』とは、遊ぶことでタンパク質の折りたたみ構造の解析に貢献できるゲームです。このゲームを知った時に、「ゲームを遊んでいたら、勝手に社会貢献に繋がるってめっちゃ面白いな」と思いました。しかし、このゲームを実際に遊んでみると、「あまり面白くない」(個人的に)。そこで、より面白い、社会貢献のゲームを作り、この考えを広めたいと思い、「遊んでいたら勝手に社会貢献に役立つゲーム(クラウドソーシングゲーム)」の研究を始めました。

そして、現在、この社会貢献に役立つゲームの開発などを通じて、「ゲームを基盤とした社会(GBS)」の実現を目指しています。「ゲームを通じて社会をデザインする」って、すごく魅力的じゃないですか。

ただ、これだけでは、「ゲームを基盤とした社会(GBS)」や「社会貢献に役立つゲーム(クラウドソーシングゲーム)」について何を言っているかわからないという方も多いと思います。

「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」では、これらについてより具体的な話をしたいと考えています。そして、開発したゲームの試遊もできます!少しでも興味のある方は、ぜひ現地でお話させてください!

「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」の参加は、こちらから!

さて、長々と語ってしまいましたが、以下からゼミ活動の報告に移ります。


【斉さん】関連論文紹介

斉さんは、下記の論文を紹介されました。

Govender T, Arnedo-Moreno J. (2021) . An Analysis of Game Design Elements Used in Digital Game-Based Language Learning. Sustainability, 13(12), 6679. https://doi.org/10.3390/su13126679

この研究では、デジタルゲームベースの言語学習(以後、DGBLL)における5つのリサーチクエスチョン(以後、RQ)が立てられています。そして、それらをもとに、ゲームデザイン要素に関して、DGBLLに関する論文のレビューが行われています。

1つ目のRQは、「 DGBLLにおいて最も頻繁に使用されるゲームデザイン要素は何か?」です。このRQについては、フィードバックシステム、テーマと物語、ポイントまたは経験値、レベルと進行度合いの可視化が 最も頻繁に使用されていることが示されていました。

2つ目のRQは、「特注のゲーム、市販のゲーム、娯楽用ゲーム、教育用ゲームの間でゲーム要素にはどのような違いがあるか?」です。このRQについては、娯楽用ゲームと教育用ゲームで、ゲーム要素の量に大きな違いがあり、前者の方がゲーム要素が多いことが示されていました。また、特注のゲームと市販のゲームでは、前者の方がゲーム要素が多いことが示されていました。

3つ目のRQは、「特注のゲームと市販のゲームで、特定の年齢層における結果への影響に違いがあるか?」です。このRQについては、小学生以外では、市販のゲームの方が多く使用されていることが示されていました。ただし、年齢層で論文数に大きな違いがあるため(就学前、中学生が少ない)、就学前、中学生に対するより多くの研究が必要であることが指摘されていました。

4つ目のRQは、「言語技能に関するデザイン要素の間には違いがあるか?」です。このRQについては、語彙の獲得と保持でゲームの使用が最も多く、インプットとアウトプットでゲームの使用が少ないことが分かりました。また、コミュニケーションスキルで使用されたゲームが、最も多くのデザイン要素(ソーシャルディスカバリーなど)を含んでいることが分かりました。

5つ目のRQは、「DGBLLアプリケーションで潜在的な効果を示したあまり使用されていないゲームデザイン要素は何か?」です。このRQについては、評価のためのボスバトルや収集・交換などが挙げられていました。

斉さんは、この論文のRQをもとに不明瞭な箇所を分析し、より精緻なRQを立てられていました。この論文はDGBLLにおけるゲームデザイン要素のレビュー論文であり、今後の斉さんの研究で大いに役立つだろうと思いました。


■研究室企画「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」

8月6日(火)・8月7日(水)に長崎市中央公民館で開催する「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」のミーティングを実施しました。ミーティングでは、プログラム概要や会場の設備などについて話し合いました。

「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」では、ゲーム学習分野を中心にさまざまな研究成果を発表します。特に注目のセッションとしては、小学校教諭で、エデュテイメントプロデューサー の正頭英和氏と藤本徹先生らがパネルディスカッションを行う〈『桃太郎電鉄 教育版』事例研究シンポジウム〉やプロマインクラフターのタツナミシュウイチ氏を講師としてお招きする〈『教育版マインクラフト』特別講演セッション〉があります。

加えて、〈教育版マインクラフトで創る未来の学び:教育効果と実践事例〉という題目で、Minecraftカップ運営委員会ディレクターの土井隆氏に講演を行っていただきます。もちらん藤本研究室の研究員や大学院生の研究成果を中心とした、興味深い発表もご準備しております。

「ゲームの遊びと学びの未来シンポジウム in 長崎」の参加は、こちらのフォームから!

また、8月4日〜8日に長崎市役所で開催される「ミライの平和活動展 in 長崎 〜テクノロジーでつながる世界〜」に連動した企画セッション「戦争とゲーム」を8月6日(火)15:30〜16:30に長崎市役所多目的ホールで行います。

ミライの平和活動展 in 長崎の詳細についてはこちらのウェブサイトをご覧ください。

みなさんとともに、「ゲームの遊びと学びの未来」について考えられることを心から楽しみにしております。では長崎で!

以上が、7月4日のゼミ活動報告です。ぜひ、来週のゼミ報告記事もお読みください。

それでは!

【5月9日】ゼミ活動のご報告

投稿日時:   2024-05-17   投稿者:   inuda

みなさん、こんにちは!M2になりました犬田です。

今年は東京の桜の名所に行って花見をしようと決意していたのですが、気がついたらすべて散っていました。悲しいです。あと、就職活動も無事終了しました。

さて、5月9日に行われたゼミ活動の報告をします。発表内容は、莫さんの関連論文紹介とジョナさんの文献研究です。


■【莫さん】関連論文紹介

莫さんは、以下の2つの論文を紹介されました。

①Folz, H. N., Black, J., & Thigpen, J. (2023). Evaluation of a murder mystery activity to teach patient communication interviewing skills. Currents in pharmacy teaching & learning15(6), 581–586.

②Kavanaugh, R., Pape, Z., LaTourette, B., & Lehmier, S. (2022). Who killed Mr. Brown? A hospital murder mystery in a pharmacy skills course. Medical teacher44(10), 1151–1157.

2つの論文はどちらも、マーダーミステリーゲームを用いて医学生のコミュニケーション能力を向上させることを目的としています。研究結果としてはどちらも、医学生がコミュニケーションスキルを学ぶ上で、マーダーミステリーゲームが効果的であることを示唆していました。ただ、どちらの文献にも、マーダーミステリーゲームの定義や学習効果を高めるメカニズムについての言及がなかったので、今後行っていきたいと仰られていました。

発表の後のディスカッションでは、患者の症状から病気を特定する行為や限られた情報から死因を推測する行為は、与えられた情報から犯人を推理するようなマーダーミステリーゲームと相性がよいという意見が出ました。与えられた情報から何かを推測する活動とマーダーミステリーゲームを組み合わせることで、意義のある体験を生み出すことができるのではないだろうかと思いました。

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■【ジョナさん】文献研究

ジョナさんは、今年2024年3月に発売された藤本先生が編著の「シリアスゲーム」の「第3章 シリアスゲームのデザイン」を紹介されました。第3章は、情報学環にいらっしゃった池尻良平先生が執筆を担当されています。第3章では、シリアスゲームのデザイン論、特に学習領域に合わせたゲームデザイン論について、多くの事例とともに説明されています。

本書ではまずゲーム学習のフレームワークとして、スタールダイネン&デフレイタスの「ゲームをベースにした学習のフレームワーク」が紹介されています。このフレームワークは、「学習→インストラクション→評価」の3段階で構成されています。個人的には、2段階目のインストラクションにおいて、ゲーム要素を「文脈、表現、教育学、学習特性」に分けているところに面白さを感じました。

また、学習に効果的なゲーム要素として、「競争」、「協力」、「探究発見」などが紹介されていました。そして、学習領域に合わせた効果的なシリアスゲームのデザイン手順として以下が提案されていました。

1.学習領域ならではの目的、要素、キー概念を発見する

2.キー概念との親和性の高いゲーム要素を同定する

3.キー概念を絡めたメインルールをデザインする

4.学習を促す追加ルールをデザインする

5.シリアスゲーム外の学習をデザインする

感想としては、一般的なゲームデザインの指南書を読むだけでなく、開発するジャンルに特化したゲームデザインの本を読むことで、より適した思考法やデザイン手法を学習することができるなと改めて思いました。


以上が、5月9日のゼミ活動報告です。ぜひ来週のゼミ報告記事をお読みください。

それでは!

【1月4日】ゼミ活動のご報告

投稿日時:   2024-01-15   投稿者:   inuda

みなさん、あけましておめでとうございます!M1の犬田です。

みなさんは年末年始をどのように過ごされたでしょうか。私は、ボードゲーム制作をしたり、論文を整理したりと中々手を付けられていなかったことに取り組んでいました。年末年始感は全然感じられなかったのですが、実家でのんびりと過ごして英気を養っていました。今年も楽しく充実した1年にしたいなと思います。

今年もみなさんどうぞよろしくお願いいたします。

さて、1月4日に行われたゼミ活動の報告をします。発表内容は、大空さんの事例研究と濱田さんの研究関連論文紹介です。


【大空さん】事例研究

大空さんは、食肉倫理をテーマにしたシリアスカードゲーム『マナーな食卓』について紹介されました。『マナーな食卓』とは、異なる種族が互いを食べ合いながらも共存する世界で、他種族に配慮した食事マナーを考えるカードゲームです。このゲームは、食材となった命にどのように敬意を払うかを考えることで、プレイヤーに命をいただくという行為について再考してもらうことを目的としています。

大空さんは、感想として、テーマ「食肉倫理」とゲームメカニクス「大喜利」の相性があまり良くない点を指摘されていました。一方で、今回の事例研究を通じて、役割カードの重要性と専門家レビューの大切さについて学習されていました。

私はこの発表を聞き、シリアスゲーム開発において、表現したいシリアスさとメカニクスによって起こされる感情が上手く嚙み合わないと、込められたメッセージが十分にプレイヤーに伝わらないのだなと思いました。この点については、自分がボードゲームを制作するときも意識したいと思います。

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【濱田さん】研究関連論文紹介

濱田さんは、以下の2つの論文を紹介されました。その後、その2つの論文を受けての、研究計画についても発表されました。

①Macintyre, P. D. (2012). The Idiodynamic Method: A CloserLook at the Dynamics of Communication Traits. Communication Research Reports, 29(4), 361–367.

この論文では、研究方法に焦点を当てて紹介されました。この研究では、 “Idiodynamic Method”という、コミュニケーションにおける情意の変動を学習者自らに評価してもらう方法が取られています。具体的には、会話を録音・録画し、それを視聴してもらいながら自己評価してもらう。そして、インタビューを行い、それを解説してもらうという方法が取られています。

②Pawlak, M., & Mystkowska-Wiertelak, A. (2015). Investigating the dynamic nature of L2 willingness to communicate. System, 50, 1-9.

この論文の目的は、コミュニケーション意欲(WTC)の変動のパターンとその要因を分析することです。研究方法では、「参加者にペアで即興の対話をしてもらい、その様子を録音する。そして、その対話のなかで30秒ごとに、WTCの自己評価を行ってもらう。その後、その変化の要因を質問紙で回答してもらう。さらに、録音を聞きながらその変化の詳細な説明を参加者に説明してもらう。」という手法が取られています。結果としては、WTCは話を聞いているときは低下し、意見を述べるときには増加するなどが分かっています。

濱田さんは、この2つの先行研究を受けて、Minecraftを複数人でプレイしながら英語でコミュニケーションをとったときのWTCの変化とその要因を研究していきたいと発表されていました。


以上が、1月4日のゼミ活動報告です。ぜひ来週のゼミ報告記事もお読みください。

それでは!

【11月16日】ゼミ活動のご報告

投稿日時:   2023-11-28   投稿者:   inuda

こんにちは、修士1年の犬田です!

ゼミ活動報告の前に、今月あったイベントの報告をさせてください。11月16日から20日にかけて、東京大学制作展が開催されていました。私は、プロデューサーとして全体の方向性の決定をしながら、個人で作品の制作を行いました。様々な背景を持った人たちと協力しながら、1つの展示会を作り上げる経験は、今後の大事な財産になったと思います。また一方で、面白い人たちと関わる中で、自分の強みと弱みを考える良い機会になったなと思います。今後の人生で何を武器にして生きていくのか、そしてどのようなキャリアを歩んでいくのか、制作展が終わった今改めて考えてみる必要があるなと感じています。制作展にご来場いただいた皆様本当にありがとうございました。

さて、11月16日のゼミ活動報告に移りたいと思います。今回の内容は、研究進捗報告(春口さん、犬田)と研究員発表(坂井先生)になります。

■研究進捗発表(春口さん)

春口さんは、修士論文の進捗について共有されました。「通信プロトコルと階層の学習を支援するシリアスゲームの開発と評価」という題目で修士研究を進められています。現在は、シリアスゲームの評価に関する実験と並行して、論文の執筆も進められています。実験参加者は20名を目標とされていて、徐々に集まりだしているそうです。現在集まっている参加者の属性はばらばらで、大学学部生や教育関連企業、薬品会社勤務など多様な職業の方が実験に参加してくださっているようです。もし、参加可能な方がいらっしゃれば、こちらのフォームからご参加ください。

■研究進捗発表(犬田)

私は、質問紙調査のゲーム化に関する研究の進捗を共有しました。ゲーム化する質問紙の研究分野を、実験哲学に決定し、ゲーム化に適した既存の研究を探していることを報告しました。また、Gamified Surveyのデザイン・評価に関する論文や問題点がまとめられたレビュー論文が見つけられたので、今後精読していきます。加えて、制作展でゲーム要素を加えた、クラウドソーシングゲームのプラットフォームを開発したので、今後こちらも学会で発表できればと考えています。制作展を無事終えることができたので、今後は研究に集中して取り組みたいと思います。

■研究員発表(坂井先生)

坂井先生は、”Ephemeral games: Is it barbaric to design video games after Auschwitz?”(G.Frasca,2000)という論文を紹介されました。その後、プレイヤーに恐怖や不安を与えるテーマ(例えば,死)を扱うシリアスゲームを開発・利用する是非とその際の注意点についてディスカッションしました。紹介された論文は、ゲームにおける多くの行動は可逆的であるため、死などの概念は倫理的、歴史的、社会的価値を失うことになるが、死などを扱うシリアスゲームをデザインする上では、不可逆的で、刹那的であることが鍵となってくるといった内容でした。その後のディスカッションでは、恐怖や不安を与えるテーマ(例えば,死)を扱うシリアスゲームを開発・利用する是非について賛成か反対かで分かれ、意見を共有し合いました。そのようなゲームを開発・利用する際の、倫理的側面や効果について活発な議論が展開されました。

以上で、11月16日のゼミ活動報告は終了となります。ぜひ来週のゼミ報告記事もお読みください。それでは。

【10月12日】ゼミ活動のご報告

投稿日時:   2023-10-20   投稿者:   inuda

みなさん、こんにちは!M1の犬田です。

もうすっかり秋となり、寝るときには布団が恋しくなる季節になってきました。今年も大好きな厚手のパーカーを着ることができるようになり、テンションが上がるなーと思っているこの頃です。

今週のゼミ活動報告の内容は研究生活動計画発表(ジョナさん)と研究計画発表(濱田さん、犬田)、研究進捗発表(大空さん、春口さん)になります。

■研究生活動計画発表(ジョナさん)

ジョナさんは、モンゴル語学習を例に、小学生を対象とした少数言語・文化の学習を促すゲームの設計や開発、使用者調査を行い、デジタルゲームが少数言語・または文化の習得にどんな効果をもたらすかを明らかにする研究をされています。この研究を進めるにあたり、5つのことを計画されています。1つ目は、内モンゴルと日本のモンゴル語教室に訪問し、授業の相違点と共通点を見つけること。2つ目は、言語学習ゲームの事例研究。3つ目は、モンゴル語教師へのインタビュー。4つ目は、C#などゲーム開発に必要な能力を磨くこと。5つ目は、授業デザインについて学習することです。今後研究を進めるにあたって、必要なアクションがしっかりと計画されていて、自分も頑張らないとなと思いました。

研究計画発表(濱田さん)

濱田さんは、夏休みに運営として参加したワークショップを通じて得た気づきや学びをもとに、研究計画を考えられていました。「英語学習における言語不安と動機付け」を研究テーマに、日本人中学生の言語不安の要素を測定する計画を立てられていました。方法としては、マインクラフトを利用したPBLを行った中学生とマインクラフトを利用しないPBLを行った中学生とを比較検討する計画をされていました。今後の計画としては、渋谷区の学校に研究協力していただけないか交渉に行くことと、英語学習の評価法を調べることを挙げられていました。様々なアクションを積極的に起こされていて、見習わないとなと思いました。

研究計画発表(犬田)

犬田は、「ゲーム的手法を用いたデータ収集法の開発と評価」をテーマに研究を進めています。具体的には、WEB調査におけるSatisfice行動、質問内容を理解していない回答者の存在、動機づけの欠如という課題を解決できる、ゲーム手法を用いた新たな調査法を開発・検討しています。今後の計画としては、10月-11月で調査で扱うテーマを決定し、11月後半、12月からゲーム作成に取り掛かる計画を立てています。調査法の開発と並行してエンゲージメントやユーザー体験を測れる既存の尺度がないか調べようと思っています。

研究進捗発表(大空さん)

大空さんは、研究倫理教育のカードゲームの作成とそのカードゲームを用いたワークショップの開発を研究としてされています。ゲームもワークショップもほとんど完成されていて、今後はワークショップ形式の予備的実験と学会発表を重ね改良を重ねていく計画を立てられていました。具体的には11月にサイエンスアゴラでワークショップを行い、2-3月にDiGRAJでポスター発表、時間があればJSETで口頭発表もされるそうです。さらに、来年5月に科学技術IP養成プログラムへの出願、来年8月にDiGRAJで口頭発表とGENSEKIでピッチすることも計画されていました。かなり先まで綿密に計画されていて、本当にすごいなと思いました。

研究進捗発表(春口さん)

春口さんは、夏休み期間でプロトコルの階層化を学習することができる、トロッコで荷物を運ぶゲームを作成されました。今後は、知識テストの作成、評価の手続き、時間配分の決定、実験参加者の募集、ゲーム内部で取得する情報の決定をされる予定です。その後このゲームを用いて実験を行い、得られたデータを分析・評価されます。ゼミ生も今後実験参加者になるので、詳細については知ることができませんでした。実験に参加することが楽しみです。デジタルゲームを作成し切り、実験内容まで考えられていてさすがだなと思いました。

以上で、10月12日のゼミ活動報告は終了です。ぜひ来週のゼミ報告記事もお読みください。それでは!

夏休みの活動報告【9月】犬田悠斗

投稿日時:   2023-09-28   投稿者:   inuda

みなさん、こんにちは!

修士1年の犬田悠斗です。今回は夏休みの活動報告9月版です。

 私は、夏休みのテーマの1つとして、「たくさんのコンテンツに触れること」を掲げていました。夏休み期間に、美術館、博物館、ギャラリーを回ったり、映画やアニメ、漫画を見たり、もちろんゲームもたくさんしました。その中で、今回はゲームの展覧会である「Cygames展 Artworks」について書きたいと思います。

 「Cygames展 Artworks(以下、Cygames展)」とは、2023年9月2日(土)~10月3日(火)に上野の森美術館で開催されている展覧会です。この展覧会では、Cygamesがこれまでに開発したゲームのイラストや設定資料、映像などが展示されていました。最後には現在開発中のゲームの設定資料や映像も展示されていました。たくさん見どころがあったのですが、今回の報告記事では自分がいいなと思った3つの展示を紹介したいと思います。

 1つ目は、『Shadowverse』エリアにあった、ゲーム内のすべてのカードがタッチパネルで表示されていて、それらのカードをタッチすると進化するという展示です。1つのスペースに膨大な量のカードが展示されていて、その多さに圧倒されました。また、カードをタッチするとかっこいい演出とともにそのカードが進化するというインタラクティブ要素も、子供心がくすぐられ面白かったです。

『Shadowverse』の展示

 2つ目は、『ワールドフリッパー』エリアにあった、アナログのドット絵を重ねることで、デジタルのゲーム画面を再現した展示です。ドット絵のゲームをアート作品としてアナログな手法で表現するときに、このような見せ方があるのかと驚きました。単にドット絵を展示するのではなく、部分的にドット絵を重ねる箇所を作ることで立体感を表現することができるのだと勉強になりました。

 3つ目は、ARカメラでかっこいい写真を撮ることができる『バハムート像』です。バハムート像自体が非常に大きく、かつ精密に作られており、像だけでも見ごたえがとてもありました。さらに、専用アプリのARカメラを使用することで、黒い煙と雷を背景にした超絶かっこいいバハムートを撮ることができ大興奮でした。

バハムート像

 Cygames展に行き、もっとゲームのアート的な側面に光が当たってほしいなと改めて思いました。そして、ゲームのアートとしての価値が高まり、多くのゲームに関係する人々が美術館やギャラリーで展覧会を開けるようになったら面白いだろうなと思いました。2026年にみなとみらいにゲームアートミュージアムが建てられることもあり、今後ゲーム×アートは日本でもますます注目されていくだとうなと思います。

 以上が、犬田の9月の活動報告になります。また次回の記事もお読みいただけると嬉しいです。

それでは!!!

夏休みの活動報告【8月】犬田悠斗

投稿日時:   2023-09-06   投稿者:   inuda

みなさん、こんにちは!

修士1年の犬田です。今回は夏休みの活動報告です。

私は、8月11日に研究室の有志のメンバーで「ポケモンワールドチャンピオンシップス2023横浜みなとみらい」に行ったことについて書きたいと思います。ポケモン世界大会に初めて参加したのですが、想像以上に大規模で驚きました。幼少期をポケモンゲームやアニポケ、ポケモン指人形に囲まれて過ごし、現在もアルセウスやスカーレットを楽しんでいる身からすると、大興奮の1日でした。

集合時間が15時だったので、早めにみなとみらいに付近に着き辺りを散策していました。すると、みなとみらいの至る所にポケモンがいました。赤レンガ倉庫には、ミジュマルバスやヤドンタクシーなどが置かれていて、近くの乗船場には海上に浮かぶ等身大ラプラスがいました。また、すれ違う人の多くがポケモングッズを身に着けていて、ポケモン愛に溢れているなと思いました。

ミジュマルバス

散策をしていたらあっという間に時間が過ぎ、15時になりそうだったので、急いで集合場所であったパシフィコ横浜の「ポケモンアクティビティゾーン」に向かいました。研究室の方々と無事に合流することができ、世界大会の観戦スペースに向かいました。途中に、等身大のカビゴンがいて、とてもかわいかったです。観戦スペースはほぼほぼ満席でポケモンの人気の凄さをまざまざと見せつけられました。観戦後に、パシフィコ横浜内を散策していたところ、「はらぺこベトベター」というベトベターのゴミ箱がありました。缶やペットボトルを入れると、ベトベターの鳴き声を聞くことができ、ゴミの種類で聞こえる鳴き声が変わっていました。初期のゲーミフィケーション事例でゴミを捨てると面白い音が鳴るゴミ箱がありましたが、それのアレンジかなと思いました。また、ポケモンによる地方創生の活動を展示するスペースもありました。8つの県に各県に合ったポケモンが割り当てられており、多くのコラボグッズが販売されていました。ポケモンというIPの力を使うことで、地方まで盛り上げることができるのかと感動しました。

はらぺこベトベター

アクティビティゾーンを散策した後は、ポケモンアート巡りをしました。「ポケモンカード151イラストコレクション」という赤・緑に登場する151匹のポケモンたちのポケモンカードイラストが展示されているスペースや「Pokémonカード伝説の回廊」という1m近くありそうな伝説のポケモンのポケモンカードが展示されているスペースなどを順々に見て回りました。他にも、各地に各世代の御三家の銅像が置かれていたり、屋外の至る所にポケモンカードの展示があったりしました。近年ポケモンカードが高騰していますが、これだけ魅力的なイラストが載っているとなると、価値が上がっていくのも納得だなと思いました。展示方法も、一か所に集めるのではなく、展示スペースが点在しているような形をとっており、みなとみらいを観光しながら展示も楽しめるような構造になっていました。はじめて横浜に来た自分からすると非常に面白かったです。インスタレーション作品や絵画作品など多様な作品を見ることができ、大満足でした。

「ポケモンカード151イラストコレクション」で一番好きなリザードのイラスト

一通り見終わった後、夕食を食べ、「We move!!」というダンスとドローンによるパフォーマンスを見に行きました。ダンサーの方々のダンスも、光とBGMの演出もすごくかっこよかったのですが、何よりドローンによるパフォーマンスが圧巻でした。ドローンを効果的に用いることで空中で立体的な表現をすることが可能になっていて、立体的でかつ自由に操作できる花火を見ているようでした。パフォーマンスを見終わった後、興奮冷めやらぬ中、帰路につきました。

帰りに撮ったピカチュウが映った観覧車

総じて、ポケモンというIPの凄まじさを体感する一日になりました。そして、これだけ多くの人がポケモンというコンテンツを愛しているのだと実感した日でもありました。ゲームから生み出されたものがこれだけの影響力を持つ時代になったことに、興奮と感動を感じつつ、ゲーム研究を頑張ろうと改めて思いました。

以上が、犬田の8月の活動報告になります。また次回の記事もお読みいただけると嬉しいです。

それでは!!!

【7月20日】ゼミ活動のご報告

投稿日時:   2023-07-26   投稿者:   inuda

みなさん、こんにちは!M1の犬田です。

先日「ボードゲームアリーナ」というオンラインでボードゲームを楽しむことができるプラットフォームで友達と一緒に遊びました。「ボードゲームアリーナ」では、682種類ものボードゲームがオンラインで実装されています。実際に遊んでみて、オンラインで実装することで直感的に次の動作をプレイヤーに提示することができ、スムーズにプレイすることができるなと思いました。また、オンラインでプログラムされた行為しかできないので、ルール違反も防ぐことができるなと思いました(ゲームとしての面白さの1つが欠落している気もしますが)。そして、何より遠隔地にいる友達とも一緒に遊べるところがいいなと思いました。今後も定期的に遊ぶことができたらなと個人的には思っています。

さて、今週のゼミ活動報告に移りたいと思います。今回の内容は、研究進捗報告(犬田&濱田さん)とプレイセッション(財津先生)になります。

■研究進捗報告(犬田)

私は、修士研究のこれまでの進捗を発表しました。私は、WEB調査の動機付けの欠如や質問内容を読まない回答者の存在、Satisfice 行動といった問題を、ゲーミフィケーションを導入することによって解決する研究を行っています。特に現状ゲーミフィケーションを取り入れたWEB調査は、ポイントやバッジシステムを単に導入した構造的ゲーミフィケーションにしかなっておらず、結果としてSatisfice 行動を助長する結果になっています。なので、WEB調査をノベルゲームにすることで、内容のゲーミフィケーションとなり、WEB調査の問題を解決することができるのではないかと考えています。M1のSセメスターでは、この研究の研究背景、研究目的の明確化とプロトタイプの作成を行いました。

研究室の方々から、題材とゲームの相性をもう一度精査し、ノベルゲームと相性の良い題材を再度考えてみる必要があるのではないかという指摘が出ました。相性のよい題材の要素を書き出し、それに適した題材を再度検討してみようと思いました。

■研究進捗報告(濱田さん)

濱田さんも、修士研究のこれまでの進捗を発表されました。濱田さんは、Minecraft Eduを利用して英語教育を行うためのプログラム開発をされています。現在は、研究目的を英語4技能、語彙力、文法力のうちどの能力の向上にするのか、そしてその教育効果をどのように評価するのかについて先行研究を踏まえて検討されています。

濱田さんは現在課外活動に積極的に取り組まれていて、Minecraftについてのオンラインイベントを企画・運営されています。Minecraftの学術的な知見を発信する場の構築にも関心を持たれているとのことでした。他にも、わくわくするような計画があり、濱田さんの動向を要チェックだなと思いました。これらの課外活動で得られた知見を研究にも活用しようと考えられています。

■プレイセッション(財津先生)

財津先生のプレイセッションは、2本立てでした。前半にボードゲームを用いた創造力測定の検査を、後半は財津先生が考えられている新作ボードゲームの試遊をしました。前半のボードゲームを用いた創造力測定の検査では、あるボードゲームで遊び、そこで用いた創造力についてプレイヤー自身が評価しフォームに回答しました。後半では、惑星の掟をメンバーと合意形成して定めるという財津先生の新作ボードゲームを試遊しました。どちらも楽しくかつ、着眼点やゲームデザインなど学びになることが非常に多くあり、有意義で、贅沢な時間だなと思いました。

ちなみに、今回の記事執筆担当は前回のプレイセッションのゲームの勝ち負けによって決まっており、犬田は3位になったため担当することになりました笑

以上で、7月20日のゼミ活動報告は終了となります。ぜひ来週のゼミ報告記事もお読みください。それでは!

【6月8日】ゼミ活動のご報告

投稿日時:   2023-06-14   投稿者:   inuda

みなさん、こんにちは!M1の犬田です。

近頃は、7/7-7/10に開催される東京大学制作展EXTRA2023の準備で、充実した日々を過ごしています。多様な専門の人たちと共同で取り組む経験は、刺激的だなと感じています。研究活動をこつこつと進めながらも、研究以外の活動にも全力で取り組んでいきたいと思います。そして、東京大学制作展EXTRA2023の一般予約が開始されたので、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください!

さて、今週のゼミ活動報告に移りたいと思います。今回の内容は、研究テーマ関連論文紹介(大空さん、春口さん)とプレイセッション(犬田)になります。

■研究テーマ関連論文紹介(大空さん)

大空さんは、以下の4つの論文を紹介してくださいました。

1)山根悠平ら:国内の研究倫理教育の実践に関する研究動向(2019)
2)鈴木大助:ジグソー法を用いた研究倫理教育(2020)
3)有江文栄ら:看護研究倫理の課題: 研究倫理教育に焦点を当てて(2017)
4)札野順:技術者倫理教育, その必要性, 目的, 方法, 現状, 課題(2006)

発表では、研究倫理教育の体制は整ってきているが、研究倫理教育の評価や初等中等教育における研究倫理教育の実践が不十分であること、ジグソー法を用いた情報リテラシー教育の実践事例などを紹介してくださいました。特に「国内の研究倫理教育の実践に関する研究動向」については、日本の研究倫理教育が網羅的にまとめられており、今後の大空さんの研究の基盤となる論文だと思いました。

研究倫理教育というと、大学生もしくは大学院生を対象にするものが真っ先に思い浮かびますが、自由研究などで研究に近い活動を行い始める初等中等教育から研究倫理教育が今後行われていくようになるのではないかと思いました。また、レビュー論文を読むことによって、対象とする研究分野の全体像を俯瞰することができ、効率よく研究を進めることができるというお話を聞き、自分の研究分野のレビュー論文を探してみようと思いました。

■研究テーマ関連論文紹介(春口さん)

春口さんは、以下の3つの論文を紹介してくださいました。

1)Dave, F.:Teaching Simplified Network Protocols(2010).
2)飯塚正明:情報ネットワーク通信プロトコルの理解を深める教材,千葉大学教育学部研究紀要 第66巻 第1 号,pp. 405~408 (2017).
3)Shaoqiang, W. DongSheng, X. ShiLiang,Yan.: Analysis and Application of Wireshark in TCP/IP Protocol Teaching (2010).

これらの論文では、高校生、中学校の教員免許取得者などにプロトコルと階層化を教えた実践例が紹介されていました。具体的には、各階層のプロトコルの役割を様々なメタファーで表現した事例や実際にネットワーク機器を用いて実習を行った事例を紹介されていました。春口さんは、今回の論文を読み、プロトコルと階層化の効果的な教育事例では「各階層の役割」を教えるフェーズと「プロトコルの役割」を教えるフェーズ、その後に「2つの対応」を教えるフェーズの3つの段階で構成されていることに気づかれていました。

これまでの事例を聞くと、実際にコードを書いたり、ネットワーク機器を使用したりとプログラミングやネットワークに関する知識を前提とする事例が多く、初学者にとってはハードルが高いなと思いました。一方で、春口さんの研究はゲームを用いたプロトコルと階層化の教育なので、この分野の初学者にとっては、とっつきやすいだろうなと思いました。

■プレイセッション(犬田)

プレイセッションでは、『刑法ポーカー』を行いました。刑法ポーカーは、犯罪を構成する要件が書かれた5枚のカードを上手くそろえて、最も重い犯罪を作るドローポーカーを基にしたボードゲームです。今回は、最初に全員でルールを確認した後、ゼミ内で刑法ポーカー王決定戦を行いました。このゲームは東京大学法科大学院生が開発したボードゲームで、東京大学生協でも販売されています。

ゲームとしては、運の要素が強いものの、重い役を作るのかある程度の役で抑えておくのかなど駆け引きをすることができ、とても楽しかったです。一方で、学習については、構成要件と犯罪の対応など刑法についてしっかりと学ぶことができたとは言えませんでした。原因としては、法律に詳しい人がいなかったことや刑法について学ぼうという意識が低かったことが挙げられると思います。学習効果を高める方法としては、法律に詳しい人と一緒に行うことや最後手札を公開する際に構成要件と成立した犯罪を読み上げることなどが話として上がりました。他にもゲームデザインについて様々な意見が出ていました。

以上で、6月8日のゼミ活動報告は終了となります。今週のゼミは藤本先生の海外出張でお休みです。ぜひ来週のゼミ報告記事もお読みください。それでは!

【5月11日】ゼミ活動のご報告

投稿日時:   2023-05-19   投稿者:   inuda

みなさん、こんにちは!M1の犬田です。

今週になり最高気温が30度を超える日が出てきて、いよいよ初夏がやって来たなと感じます。キャンパス内でも半袖を着る人が多くなってきて、私が長袖のパーカーで授業に行くと友達に「よくそんな暑そうなの着れるな」と言われるようになってきました。そんなこんなで、最近はそろそろ衣替えをせねばとぼやーと考えています笑


さて、それでは今週のゼミ報告に移りたいと思います。

今回は、文献研究(春口さん)と、事例研究(大空さん)、プレイセッション(大空さん)という内容でした。

■文献研究(春口さん)

春口さんは、『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』という書籍の「8章 学習のためのゲームデザイン」について発表してくださいました。

8章では、学習のためのゲームデザインの普遍原理として、「ゲームのビジョンを作る」、「ゲーム空間の設計」、「教授空間の設計」の3つが挙げられていました。

「ゲームのビジョンを作る」では、学習ゴールを設定すること、ゲーム内の要素と現実のものの特徴が一致している真正性があること、徐々に難しくなるような難易度構成にすることなどが書かれていました。「ゲーム空間の設計」では、ゴール、ゲームの仕組み、ルールといったゲームの構成要素を設計する方法が書かれていました。「教授空間の設計」では、教授空間を設計する上で、難易度の調整やヒントを与えるコーチング、フィードバック、例示、練習機会の提供について考慮する必要があると書かれていました。

春口さんは、この普遍原理を、自身が作成されている「通信プロトコルと階層の学習を支援するゲーム」にも適用し、よりよい学習用ゲームを作成するためにはどこを新たに磨くべきか検討されていました。具体的には、プロトコルについての解説機能の実装と、その解説機能とゲーム機能の連動について考えられていました。

今回の春口さんの発表は、ゲームデザインの理論を実践にどう用いるかについて、わかりやすくまとめられていて、理論を実践に移す際に大変参考になるなと思いました。

■事例研究(大空さん)

大空さんは、事例研究として防災シミュレーションカードゲーム『クロスロード』を紹介してくださいました。

このゲームの目的は、2つあります。1つ目は、災害対応に関する様々な意見や価値観を参加者同士で共有すること、2つ目は災害に対して誠実に考え対応するために、災害が起こる前から考えておくことです。

ゲームのルールは、カードに書かれた災害時に起こりがちなジレンマ(例:ペットを避難所に連れていくか)に対して、参加者はYesかNoのどちらかを選び、その選択肢のカードを伏せます。そして、一斉にオープンし、参加者同士で意見交換を行います。多数派とオンリーワンの人は座布団をもらうことができ、ゲーム終了時に最も座布団の多い人が優勝です。

現在大空さんが作成されている研究倫理教育のカードゲームとクロスロードの共通点は、答えのない問題に対して意思決定をする点です。研究では、研究不正とは言えないが責任ある研究活動とも言えない、「疑わしい研究活動」が生じています。この「疑わしい研究活動」の是非という問題と災害時のジレンマは、答えを出すことが難しい、もしくは答えがないという点で共通しています。

大空さんは、この類似性から、クロスロードのゲームデザインの一部を自身の研究倫理教育のカードゲームに応用できないか検討されていました。

大空さんの発表で、事例研究を通じて実際に自身のゲームに使えそうな部分を見つけだす方法について学習することができました。

■プレイセッション(大空さん)

プレイセッションでは、大空さんが現在作成されている『QRPゲーム(仮)』というボードゲームをゼミのメンバーで遊びました。

このゲームのルールについて簡単に説明します。まず、親と子に分かれます。そして、上記でも述べた「疑わしい研究活動(QRP)」の具体的な事例が与えられます。子はその事例が研究倫理的に問題があるかないかを5段階で評価し、一方で親は子が5段階のうちのどれを選ぶ人が多いかを当てにいきます。そして、それぞれがどれを選んだのかを見せ、そう評価した理由について話し合います。親は、同じ評価を選んだ子の人数分だけポイントを獲得することができます。この一連の流れが終わる度に、親を交代していきます。

すごいなと思ったポイントは沢山あるのですが、今回は3つ紹介します。1つ目は、遊ぶ前に見る研究倫理の背景知識に関するスライドの完成度の高さです。研究不正の全体像からはじまり、疑わしい研究活動まで網羅的に、そして端的に分かりやすくまとめられていて、すっとゲームを始めることができました。2つ目は、遊ぶ際に使うカードのデザインの美しさです。必要最小限の文章量と人物の絵がプレイヤーに見やすいように配置されていて、ストレスなく遊ぶことができました。3つ目は、不正防止のための工夫です。このゲームはチーム戦なのですが、ゲームが始まる段階では誰とチームかは分からず、ゲーム終了後に公開されます。そのため、勝つために点数をわざと下げるような行為が起きないようになっています。

実際にゲームプレイをしてみて、とても楽しく、そして多くの学びを得ることができました。特に先生方と一緒にプレイすることで、研究倫理に関する持つべきスタンスを学ぶことができました。一方で、答えがないとは言え、学生のみでプレイすると明らかに誤った結論になってしまう危険性も少しあるかなと思いました。ただ、この点については、考え方の指針をヒントとして示すことで解決できる問題だろうなと思いました。

今回の報告は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。来週の記事もぜひお読みください!