【8月25日】『Her Story』のゲームプレイにおける英語学習に関する検討

皆さんお久しぶりです!M1の叶です。
夏休み(?)はどうお過ごしているのでしょうか。 

自分は春学期に色々講義を取ってゲームプレイ時間がなかなかできませんが、夏休みに入るとようやく積みゲーをいじはじめました。自分の研究で扱うゲームジャンルは主に「物語中心のゲーム(Narrative-based Game)」で、修士研究で既に行ったインタビューの中ではいくつかの有名かつ自分が遊んだことないゲーム名が登場し、その中の一つ、夏休みにようやくクリアした『Her Story』というゲームを今回の記事のテーマとして扱いたいと思います。

6時間をかけて13の実績をすべて解除しました!!(実はかなり遅いです…)

フォーマルの研究においては、主観的なバイアスが生じる恐れがあるので研究者自身のゲーム体験の分析はなかなかできないのですが、実は研究者目線で自分のゲーム経験を振り返ることは、実際の研究で研究対象になるゲームプレイヤーとの共感に役立ちますし、プレイヤーの行動に対する解釈などにもとても重要です。まさに4月のゼミで紹介したReinhardtらの論文で書かれているように、

“…We should heed the fact that the number of well intentioned educational games that have failed is enormous as well, and that L2 education professionals have not always been the most informed of digital game consumers. The solution is for researchers and practitioners to learn to evaluate, and eventually speak to the design of, game-mediated instruction, both game-enhanced and game-based. The first step is simple—interested researchers and practitioners should play digital games themselves, keeping an open mind and analytical disposition towards insights into language use and learning.”

Reinhardt, J., & Sykes, J. M. (2012). Conceptualizing Digital Game-mediated L2 Learning And Pedagogy: Game-enhanced And Game-based Research And Practice

ゲームを媒介とした言語学習の研究者はまずゲームプレイヤーになり、常に身近なゲームプレイを分析していくべきだということです。

そのため、今回は第二言語習得の視点から自分の『Her Story』のゲームプレイを検討したいと思います。また、同じくゲームクリアした友人のRさんとのディスカッションも踏まえて、さらにMAXQDAという質的分析ツールを使って、STEAMというゲームプラットフォームでのゲームレビューに対して簡単な分析も行いました。今回はあくまでもインフォーマルなリサーチなので、考慮に欠けるところも色々あると思いますが、研究メモ(ゲームレビュー)として自分の所感を共有したいと思います。これからは、箇条書きの形で簡潔にまとめます。

テーマ:『Her Story』のゲームプレイにおける英語学習に関する検討

〜『Her Story』に関して〜

  • ゲーム情報:『Her Story』とは、サイレントヒル シャッタードメモリーズのクリエイターでもあるサム・バーロー(Sam Barlow)が作り上げたアドベンチャーゲームです。2016年のGDC Awardsでは5部門を受賞した。物語はゲームの中心要素になる。
  • ゲーム言語:英語(字幕付き)(日本語にも翻訳されたようですが、今回のゲームプレイは英語で行いました)
  • ゲーム紹介:事件に関わった主人公に対する取り調べ録画を調査することによって事件の真相を突き止める。
  • 遊び方(ネタバレあり)取り調べ録画のデータベースが検索システムがあり、キーワードを入力することによって、キーワードが含まれた動画を見て事件の全貌を推測しつつ、真相を解明する。
  • ゲーム特色:ナレーションにおける非線形の語り口

〜ゲームプレイにおける第二言語習得の分析〜

  • 調査対象:英語で『Her Story』を遊んだ中国人ゲームプレイヤー (主に自分、友人Rさん)
  • 分析内容:自分とRさんのゲームプレイ、STEAMで690件中国語のゲームレビュー(中国語版がないので中国人プレイヤーはみんな英語でプレイされたと考えられる)
  • 分析手順:
    1. ゲームを終えた後自分のゲームプレイで行った英語習得に関わる行動を振り返る。
    2. 遊びにおける英語習得に関して、ゲームクリアしたRさんに簡単なインフォーマルなインタビューを行う。
    3. STEAMで『Her Story』の690件中国語のレビューを質的データ分析ツールMAXQDAに導入し、「英語」「英文」「発音」「読解」などのキーワードで検索し、英語学習と関わるテキストをオーペンコーディングをして簡単な分析を行う。
  • 分析結果:
  • オーペンコーディングの項目とその数
ゲームレビューに対するテーマ関連のオーペンコーディング
  • 『Her Story』の遊びで起こりうる英語習得に関わる行為
    • 文脈に応じて知らない英単語の意味を推測する
    • 知らない単語を自発的に辞書で調べる
    • 英単語を入力することが求められるので、自発的にスペルチェックを行う
      (例えば、自分がずっと「License」を「Lisence 」に間違って今回のプレイでその錯誤に気づいた)
    • 英語の聴解と読解を繰り返す
    • *直接習得するより、練習と復習とみなれる行為が多く見られる
  • 『Her Story』の遊びに起こりうる英語の獲得(気づき)
    • 類義語、同義語に対する気づき(習得した知識を振り返る)
    • ミステリーに関する英単語の獲得
    • 自分の英語能力に対する自信が高まる
    • イギリスアクセント、イギリスの慣用語に対する気づき
    • *直接な獲得より、知識の統合と省察のほうが多く見られる
  • ゲーム要素と第二言語習得
    1. 音声:ゲームでのテキストはすべて音声がついているため、レビューで「英語聴力」の学習材料として言及した回数が一番多い。今までのインタビューでもわかってきたように、物語中心のゲームにおいて、音声付きということは、ゲームプレイヤーの注意力をゲームテキストに払わせ、第二言語の環境を作り、プレイヤーが断れない第二言語の「インプット」を提供する。(プレイヤーがそれをスキップできない、あるいは音声があるからこそスキップたくなくなるのだ)
    2. 字幕:コメントの中で「音声を聞きながら字幕を活用することによってゲームを理解することのハードル下がった」のようコメントも散見する。字幕がゲームの進行を促進する他、英語インプットのチャンネルを増やす(聴解+視覚)ことにより学習が促進される(マルチメディアの認知理論?)。また、いくつかのコメントによると、ゲーム進行において音声より字幕が「補助的」な役割を務める、ということにも注目したい。

〜検討は以上です〜

まだまだ浅い分析なのですが、今回の分析はここまでにしたいと思います。もちろん、6時間をかけて英単語を暗記するのがより効率的だと思われますが、『Her Story』をプレイすることは、英語小説、ドラマや映画などを活用した学習と同様な(それよりいい効果、動機づけと獲得の維持率が高いかもしれない)魅力的なインフォーマル学習(復習)法の一つだと考えられます。

また、英語で遊ぶことに最適なのはこのようなプレイヤーだと思います:
・中級以上の英語学習者(目安として4000以上の語彙力が必須で、5000+が望ましい)
・ミステリーや推理物語に対して興味を持つ人
・特に、以上の2つを満たしているのに英語が嫌いとか、自分の英語語力に対して自信を持っていない方におすすめです。一度遊んでみたら、「自分が英語学習でゲームができるんだ」という気持ちが味わえるので、ぜひぜひ、夏休みにお時間があったら、『Her Story』の物語を通じて英語力を磨きましょう。

**ゲーム攻略としては、データベースの75%以上を見終わってから、オンラインの攻略を調べるのがおすすめです。

以上、今回の長い記事を終わらせたいと思います!
ここまで読んでくれてありがとうございました!

【7月8日】ゼミ活動のご報告

皆さんこんにちは。M1の叶です。
梅雨期のムシムシする東京から今週のゼミを報告します。
今回はM1の研究進捗報告とプレイセッションの会でした。発表順で紹介します。

進捗報告:叶
研究テーマ(仮):「ゲーム活動における第二言語学習に関する探索的研究 ー物語中心のゲームをする中国人プレイヤーに着目してー 」

今学期の主な進捗は研究方法の定着です。Sセメスターにはエスノグラフィーの授業を履修して、研究手法について色々考えることができて、修士研究ではエスノグラフィーの研究方法を用いて、具体的にはゲームプレイヤーに対するインタビュー、オンラインゲーム関連サイトにおける調査など手法をとると決めました。

進捗報告:升井さん
研究テーマ(仮):「ゲーミフィケーションを用いた授業動画システムの開発と評価」

升井さんは自分の広い研究ビジョン、修論の全体的イメージ、問題意識と目的、プロトタイプと評価方法のイメージ、研究上の課題分析、今後三ヶ月間の計画について詳しく説明してくれました。

その後、M1の二人の研究計画をめぐって、藤本先生とゼミの皆さんに貴重なフィードバックをいただきました。

プレイセッション(財津さん)

ボードゲームベテランの財津さんが「コードネーム」というゲームを紹介し、ゼミの皆がその公式Web実装サイトでプレイしました。

ルールを簡単に説明すると、
・まず赤⻘のスパイ2チームに分かれ、各チームはリーダー1名を決める(リーダーの他はスパイ役になる)。
・各リーダーが、分布図に基いて場の25語内の自チームのスパイ達を一度により多くチームメイトに当てさせるように、連想ヒント1語を捻り出して伝える。
・自チームの全ての正解カードが当てられた状態になったら、その時点でそのチームの勝ちとなる。

今回の対戦で出てきた語を例とすると、
分布図での単語(左)とリーダーが捻り出した1語(右)は以下のようになります。
「キング」、「ジャック」→ 「トランプ」 
「ホテル」、「ヘリコプター」、「壁」→ 「たかい」 

財津さんが捻り出した「たかい」はさすがに一語多義で難しく、無事に正解ができた張さん、升井さんに拍手します。ちなみに、カタカナ苦手な私はゲーム中ずっとグーグル画像を辞書として単語を調べていましたが、「トランプ」を検索するとアメリカ大統領が出てきて、コンセプトの罠に陥て「なぜジャックなんだ???」と混乱してしまいました。

プレイした後の振り返りで、創造的思考としての「発散的思考」「収束的思考」の概念が触れられ、普段創造力といえば「発散的思考」がよく強調されているものの、「与えられた条件から正解を導き出す思考」を意味している「収束的思考」は、まさに今回の「コードネーム」のようなゲームプレイに求められている思考法だと考えられる。

ちなみに、今回利用したコードネームのオンラインプラットホームでは英語などの言語でも遊べます。自分のプレイ経験から見ると、わりとカタカナの勉強になったので、プレイ言語を切り替えることによって外国語の勉強にもなりそうでしょうね。

ちなみに、財津さんはこれからの夏休みに東京と福岡で「夏休み親子ゲームジャム2021」を開催する予定で、興味ある片ぜひチェックしてみてください!!!

ではまた来週!!

【6月10日】ゼミ活動のご報告

皆さんこんにちは!M1の叶です。

今学期第九回のゼミは、関連論文紹介+プレイセッションの回です。以下は発表順で報告させていただきます。

関連論文3本(叶芷晴)

1.Chen, H.‑J. H., & Yang, T.‑Y. C. (2013). The impact of adventure video games on foreign language learning and the perceptions of learners.Interactive Learning Environments, 21(2), 129–141. (アドベンチャービデオゲームが外国語学習者の学習意識と実践にもたらす影響)

本研究は、市販アドベンチャーゲームが第二言語学習者の意識と学習にもたらす影響を探究するために、「BONE」という市販ゲームを使って大学生に対して短い期間の実験 (n=22)と長時間の介入後(n=35)で質的複合研究法で測定するという二つ研究を行いました。結論として、「BONE」のようなゲームは、大学生に英語のインプットを提供することにより、学習者の英語聴力、読解力、語彙力と学習動機づけを高められるということがわかりました。

2.Chen, Z.‑H., Chen, H. H.‑J., & Dai, W.‑J. (2018). Using Narrative-based Contextual Games to Enhance Language Learning: A Case Study.Journal of Educational Technology & Society, 21(3), 186–198.(言語学習を促進するための物語中心のゲームの活用に関する事例研究)

研究2は1と同一の研究グループにより行われ、研究①から得た知見と理論に基づいて物語中心デザインフレームワーク (Narrative-based contextual game fo language learning, NCGLL) が提出された。このフレームワークにもとづく「PlanetAdventure」という英語学習ゲームが作られ、実証研究が行われました。この研究での注目点として、筆者たちがラスター分析を行い、ゲームログとアンケート調査の結果によって被験者を3グループに分け、それぞれの学習パターンを理論と関連づけながら解釈したところです。

3.Hulstijn, J. H. (2003). Incidental and Intentional Learning. In C. Doughty & M. H. Long (Eds.),The Handbook of second language acquisition(pp. 349–381). Blackwell. (偶発的学習と意図的学習)

本研究は、偶発的学習と意図的学習の系譜について詳細にレビューした論文で、ゲーム学習領域、特に第二言語習得のためのゲーム学習における偶発的学習の読まなければならぬテキストだと思います。偶発的学習と意図的学習の心理学の起源が語られ、21世紀に至ってこの二つの言葉の理論的使いがより方法的な使いに変化しつつあることが指摘されました。

関連論文3本(升井さん)

升井さんからは、アバターに関する三本の研究を紹介してくださいました。

1. Yee, N. and J. Bailenson. 2007. The Proteus Effect: The effect of transformed self-representation on behavior.Human Communication Research 33: 271–290. 

プロテウス効果が「アバターがヒトの心理的状態・態度・振舞いに影響を与える効果」と定義された。アバターになることが人々の行動にどのような変化を生むのかを明らかにするため、2つの実験行った。結果として、アバターの「魅力」がVR空間でのコミュニケーションでの「距離」と「自己開示」に影響を与えていおり、アバターの「身長」が「自信」を影響していることが分かりました。

豆知識:プロテウスはギリシャ神話に出てくる「姿を自在  に変えられる海神」のことである。

2. 鳴海 拓志(2019)「ゴーストエンジニアリング:身体変容による認知拡張の活用に向けて」認知科学, 26 巻, 1 号, p.  14-29 

本研究の面白いポイントとしては、身体変容による認知と行動に変化と表情変形による能力向上のことです。(例: ビデオチャットで疑似的に双方を笑顔に変形させると、 通常の1.5倍のアイデアが出る。)

豆知識:「ゴースト」=自己のアイデンティティを司る心的機能(情動、認知機能、意識、思考様式等)

3. 小柳 陽光 他(2020)「ドラゴンアバタを用いたプロテウス効果の生起による高所に対する恐怖の抑制」日本バーチャル  リアリティ学会論文誌, 25巻, 1 号, p. 2-11

「ドラゴン」と 「ヒト型」 のアバターが準備され、被験者にVR空間で空を飛ぶ体験をしてもらう 。その後、VR空間で高さ40mまで上昇するリフトに乗ってもらい、どちらのほうが高所を怖いと感じるかを測定した結果、ドラゴンアバタの方が、高所への恐怖感が抑制されたことがわかりました。

プレイセッション(張さん)

今回は張さんが準備してくれたゲームの名前は「ito」で、その名前には相手の「意図」を読み取ると「糸」に従って脱出するというダブルミーニングが含まれています。

ざっくりルールを説明しますと、①プレイヤーは1~100の数字を配られ、 ②お題(例:おにぎりの人気)にそって各自、自分の数字に当てはまるものについて話し合う(例:83 → ツナマヨ、92 → 鮭)。③みんなで推理して、全員を順番に並べることが出来たら勝利。

このゲームでは、遊んでいるうちにプレイヤー同士の物事に対する物差しがだんだんわかり、ゲームに勝利するために相手の自分のルブリックと照らし合わせながら、より統一なルブリックを作っていくのを目指している。自分と相手の世界観と価値観を伝え合う、面白くて不思議なゲームですので、ぜひやってみてください!

以上は今回のご報告でした。

【5月13日】ゼミ活動のご報告

いつもお世話になっております。M1の叶(イェ)です。
5月に入り、東京は暖かくなりましたね。緑にあふれたキャンパスで対面のゼミができないのは残念ですが、早速、今週のゼミ内容について報告させていただきます。

今週のゼミは、事例研究(叶、升井さん)と研究テーマの関連論文3本概要紹介(K.I.さん、張さん)という流れで行われました。

・事例研究(1)-「Word Castle」(担当:叶)

2018年に2人の開発者により作られた、中国のある英単語学習系インディーゲームです。「Word Castle」は実は「ローグライクゲーム」と「英単語ドリルアプリ」の融合だと思われます。基本的なルールとしては、語彙力(単語を覚えるの)がゲーム進行の必須条件(手段)になり、ゲームを楽しみながら英語の語彙力を身につけることができます。

ゲームのレビューを分析してみたところ、ゲームの形より、学習のデザインの厳密性や効率性がプレイヤーに懸念されていることがわかりました。「World Castle」のような学習ゲームは、学習に関する部分がさらによくデザインされれば、未来のいいシリアスゲームになるのでしょうか?

・事例研究(2)- 「Geoguessr」(担当:升井さん)

ランダムに飛ばされたGoogle ストリートビューの場所を当てる「地理系シリアスゲーム」です。升井さんは過去の面白いゲーム経験を踏まえて、ゲーミフィケーションカードを使ってそのゲームシステムを詳しく分析しました。

その後、Geoguessrに取り入れられなかった「ロールプレイ要素」を加えるのであればどんなゲームデザインが可能なのか、日常生活でどんなモノがゲーム化できるのかについて皆の意見を交わし、「学術論文を探したり整理したりする際はゲーム化できるのか」についての議論が盛り上がりました。

とても面白いゲームで毎日5回無料で遊べますので、興味がある人はぜひやってみてください!(東大に飛ばされたら安田講堂と駒場キャンパス1号館が似ているのにお気をつけくださいね:D)
https://www.geoguessr.com/

・研究関連論文3本紹介(1)(担当:K.I.さん)

①富田誠, 2019, 「共創の場における視覚的対話手法の比較」『芸術学研究 = Tsukuba Studies in Art and Design』 24 : 31-39.
②伊藤ふみ子・田代和子,2020, 「独居高齢者の社会的孤立に関する文献検討」『淑徳大学看護栄養学部紀要 』12 : 69-77.
③阿部彩,(2019)「包摂社会の中の社会的孤立 – 他県からの移住者に注目して – 」『東京大学社会科学研究所 社會科學研究』 65巻1号, 13-30

社会的孤立に関する2本の論文(②、③)の他に、論文①はデザインゲームの定義、歴史と現状を述べた論文で、まちづくりだけでなく、他の領域のデザインゲームに関する研究でも先行研究として引用できる論文でした。

研究関連論文3本紹介(2)(担当:張さん)

①『The Seeds of Speech』Chapter 2:  5. The Family Tree & 6. A Devious Mind
② Tseng, V., & Fuligni, A. J. (2000). Parent‐Adolescent language use and relationships among immigrant families with East Asian, Filipino, and Latin American backgrounds. Journal of Marriage and Family, 62(2), 465-476.

『The Seeds of Speech』の第2章は言語誕生の仮説、人間に言語が必要な理由、言語がなにかできるのかなどを述べた章で、論文②は移民家族の言語使用状況と親子関係の関連性の実証研究です。どれも言語学に関する興味深い論文で、ぜひチェックしてみてください。

以上は今回のゼミ報告でした。研究室の説明会、皆様のご参加をお待ちしております!

改めまして、M1の叶(イェ)です。

改めまして、外国人研究生からM1に進学した、叶芷晴(Ye Zhiqing)です。

時間の経つのが早いもので、既に半年間藤本研にお世話になっていました。研究生期間には、毎週ゼミに参加させていただき、事例研究、文献研究、研究進捗の報告の回を重ね、極めて充実な時間を過ごしました。事例研究の回でいつも様々な興味深いゲーム事例を知り、文献の輪読会で学習デザインとゲームデザインの知見を深め、進捗報告の機会で様々な貴重なご意見を伺ってきて、ゼミの皆様に心より感謝を申し上げます。

この半年間、前立てた研究計画に沿って研究を始めたものの、研究を実際に行うと色々課題にぶつかり、研究のロジックを絶えずに考慮して直したり、より良い研究問題と研究法の設定を模索してきました。未だに改善せねばならぬところが多いと思うが、簡単にこの先続けていく研究テーマについて紹介させていただきます。

修士期間の研究は、研究生期間の「ゲーム活動における第二言語学習」というテーマを続けたいと思っております。

ゲームプレイヤーは外国語のゲーム、特に物語中心のゲームをする時、実は外国語の本を読むと同じ、外国語に囲まれています。プレイヤー自身は気づいていないかもしれないけど、第二言語の「偶発的な学習」がゲーム行為とともに常に生じています。例えば、英語を勉強するためにゲームをしているわけではないが、英語のゲームテキストを読みながら、ついにそのゲームでよく出てくる語彙を身につけるようになりました。また、一部分の積極的な学習者としてのプレイヤーは、そのような物語中心のゲームを「独学教材」として扱っています。その場の学習は既に「偶発的」から「意図的」に変化しました。

また、ゲームは第二言語の本と違って、フィードバック、インタラクションがあるので、プレイヤー・学習者の参加度、集中力、学習動機づけが高まる上に、文脈的に基づいた意味ある語彙の獲得にも繋がり、第二言語の習得に有効だと考えられます。

しかしながら、現在の物語中心のゲーム (Narrative-based game)は、ほとんど市販ゲームで、偶発的学習が行った、学習材料として活用されていると言っても、その効果はまだ明らかではなく、勉強できることもゲームのテーマに関わるものに限られているなど、その学習に豊かな可能性とともに、いろいろな課題があると思われます。

そこで疑問に思うのは、どのように「物語中心のゲーム」というゲーム種を、第二言語学習のためによく活用できるかということです。この問題を答えるために、まず実際の遊びの場(gaming in the wild)で、第二言語でのゲーム活動と第二言語学習の関係を探究せねばならないと思っています。

この研究を進めながら、実は時々「ゲームで遊ぶのは本当に勉強になるか。勉強になるのであればどれぐらいの程度に役立てるのか」と、色々と戸惑わずにはいられなくなってしまいます。ですが、外国語ゲームプレイヤーと外国語学習者という「ダブル・アイデンティティ」を持っている一人として、自分の経験から見ると、やはりゲームがもたらした「楽しい知識獲得」は他のコンテンツがもたらせないものなのではないかと常に思い、ゲームの学習価値を信じたい、ゲームに含まれている学習の可能性を拡張したいと、思っています。そのため、これからも頑張っていきたいと思っております。引き続き、報告させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

また長い話しになってしまいましたが、読んでいただきありがとうございます!

【1月7日】ゼミ活動のご報告

皆さん、あけましておめでとうございます!
早速、2021年一回目のゼミについてご報告させていただきます。今回は文献研究の週で、私とK.I.さんはテキストの輪読で、張さんは三本の相関論文を紹介してくれました。

文献輪読(発表順)
● 『ルールズ・オブ・プレイ』(K.I.さん)
・第27章 シミュレーションの遊びとしてのゲーム

本章では、シミュレーションを「現実」の諸側面を進行過程として表現したものだと定義され、進行過程と「現実」という2要素をめぐって、色々な例があげられ、シミュレーションのデザイン手法が分析され、メタコミュニケーション、再媒介化 (remediating)といった概念が説明されました。また、最近のゲームデザイナーはシミュレーションをデザインする時には、「没入の誤解」、つまり「シミュレーションは現実似ているほど完璧だ」、という罠にかかりがちだという現象が指摘されました。

● 『インストラクショナルデザインの理論とモデル』 (叶)
・第11章 理解を促進するために
・第12章 情意的な発達を促進する:感情的知能

第11章では、理解というのは知識よりも実践する能力だという定義に基づいて、「理解のためのフレームワーク」について詳しく説明し、その教授法の普遍的構成要素、新しいテクノロジーとの統合、他の教育フレームワークとの関連、状況依存原理について論じました。第12章では、感情的知能のための近年の三種類の教授モデルが紹介され、ミリルのIDの第一原理を枠組みとしてその普遍的な教授原理を説明され、学習者の感情発達レベルとその発達の影響要因などの、個体的な異なる状況に応じた原理も挙げられました。

●  研究テーマの関連論文(張さん)
・吉田 国子, 2009, 「語学学習における動機づけに関する一考察」『武蔵工業大学環境情報学部紀要』1:1-13
・加藤 映子,2011,「語学教育とゲーム」,『コンピュータ&エデュケーション』 31,pp.28-33.
・大西 博子, 2006, 「言語能力はいかにして評価するべきか : ACTFL-OPIにおける言語能力観の分析と考察をとおして利用統計を見る」『言語文化教育研究』4:17-30

言語学習の動機づけの論争をレビューした論文 (吉田,2009) が紹介されました。また、現在が行われているほとんどの言語能力標準テストの基準を基底しているのが「母語話者」という概念であることを指摘している論文(大西, 2006)も紹介され、それについてゼミの皆さんの留学生活を触れて、言語能力の評価の新しいあり方の可能性についてディスカッションしました。

今回の報告は以上になります。
新しい一年も一緒に頑張りましょう!

【12月3日】ゼミ活動のご報告

皆さんこんにちは!叶です。早速今週のゼミ活動を報告させていただきます。
今週は主に事例研究の週で、皆さんの発表内容は以下の通りです。

(発表順です)

● 『ローカルダイアログ』(K.I.さん)

K.I.さんは、実際の個人参加経験を踏まえて、『ローカルダイアログ』と呼ばれ、自分たちが暮らしたいまちの姿を考え、カードを使って対話しながら、まちづくり戦略を作っていく、というワークショップを紹介してくれました。『ローカルダイアログ』における楽しさと学習は、参加者の意思決定、意見交換、知識の共有により生じた、ということは注目に値するでしょう。

● 『RE:コロキュアル』(叶)

『RE:コロキュアル』は2019年7月に配信された、父が経営する英会話スクールを立て直せる物語を舞台にした英語会話学習ADVゲームアプリです。スマホ時代における、ゲームと学習の組み合わせの勇敢な試みとみなされるこのアプリでは、ゲーム要素と英語学習要素がうまく融合している点もありますが、残っている課題もかなり多いと思われます。英語学習ゲームアプリはどのように位置づけるかとの問題(これは多分研究者もゲーム・教材開発者にとっても厄介なのですが)を回答する際、そのターゲットの利用者は誰か、即ちそのプレイヤーのポートレートを考えねばならないのではないでしょうか。

● 研究進捗(張さん)

張さんは新バージョンのボードゲームと、その改良したルールを丁寧に説明してくれました。張さんは今回のゲームをパワーポイントでデジタル化してくれて、オンラインファイルの共同編集の機能を活用することにより、オンラインでもゼミ全員が張さんのゲームを楽しめられました!実際に遊んでみると、同じゲームカードでも、実は色々な形で遊べるのも明らかになりました。

(雑談ですが)今回のゼミでは、前できないと思ったことは、実は手間をかければ、オンラインでもなんとかできると感じます。これは多分コロナ時期からこそできた新たなマインドセットなのではないでしょうか。

今回のゼミ報告は以上です。次回の報告をお楽しみに!

【11月12日】ゼミ活動のご報告

皆さんこんにちは!叶です。日本は最近寒くなってきましたね。
早速、今週のゼミ活動をご報告させていただきます。

当日、K.I.さんと私は輪読発表の担当で、張さんは研究関連分野の文献について紹介してくださいました。

テキスト輪読(発表順)

● 『ルールズ·オブ·プレイ』 (K.I.さん)
・第24章 楽しみの遊びとしてのゲーム

● 『インストラクショナルデザインの理論とモデル』(叶)
・第5章 直接授業法を用いたアプローチ
・第6章 ディスカッションを用いたアプローチ

研究テーマ関連論文3本概要紹介(張さん)

三上 京子(2007)「日本語教育のための基本オノマトペの選定とその教材化」『ICU日本語教育研究』,3号,188-205
・Krashen, Stephen. (1982). Principles and Practice in Second Language Acquisition. Oxford: Pergamon Press
・吉満 たか子(2006)「ドイツ語授業における言語学習ゲーム–実践例とその効果」『広島外国語教育研究』,9号,77-99

テキスト輪読の報告後、藤本先生はその内容を踏まえて、私たちそれぞれの研究に関して質問をしてくださいました。その回答により、今回のテキストはどのように自分の研究かゲームの開発に活用していくかを、もう一度、見逃した視点から考えてみました。また、シミュレーションゲームを開発する時、どのようにそのリアリティ感を保ちながら、楽しさが入れられるかという、ゲームデザイン上のチャレンジも指摘されました。

ちなみに、『IDの理論とモデル』の視点からゼミの形を考えると、第6章の「ディスカッションのアプローチ」がよく使われて、第5章の直接授業法の「問いと応答」という方法も活用されていると感じました!

以上は今回のゼミ報告でした。
来週の中間進捗報告会をお楽しみに!

【10月22日】ゼミ活動のご報告

皆様、こんにちは。叶です。
本日は、10月22日のゼミ活動について報告させていただきます。

当日は、藤本先生は今回の冬入試について話してから(関心のある方はぜひ「注目」の記事を読みましょう)、K.I.さんと張さんは「事例研究」の結果を発表して、最後に私は研究進捗を報告いたしました。

まず、K.I.さんは「SIM熊本2030」という、熊本県庁職員の自主活動グループ「くまもとSMILEネット」によって開発された、町の2030年の問題を体感できる対話型自治体経営シミュレーションゲームを紹介してくださいました。その後のディスカッションでは、「SIM熊本2030」は実は熊本県だけではなく、他の県が主催したまちづくりをテーマとしたイベントや体験会でも積極的に活用している、ということが注目されました。また、研究で遊ぶ時間の長いゲームを利用すれば、その実行は難しくなるという研究上の注意点も強調されました。

それから張さんは、2020年上半期大人気だったゲーム「あつまれ どうぶつの森」の事例をめぐって、コロナ時代のオンライン授業の問題点、即ち「空間移動の不足=コミュニケーションの不足」について論じました。簡単に言えば、オンライン授業では簡単に会議室のURLにアクセスしてから始まり、カメラをオフにしてから終わるので、授業間の隙間時間や、建物間の移動をしている時に人との出会いと交流が失われました。どのように、「あつまれ どうぶつの森」での空間移動、空間共有(バーチャル空間でも)といった概念をオンライン授業に取り入れて、コミュニケーションの欠如のオンライン授業を良くするかは、コロナ後時代の新課題になるでしょう。

最後に、私は改良した研究計画を発表いたしました。半年間でできる、かつ修士期間の研究に繋げられる、といった点を考えて、テーマを「インタラクティブ・フィクション( IF )ゲーム活動における能動的な第二言語学習 ~中国人IFゲーマーに着目した事例研究~」に少し変えて、主要な研究手法はデプスインタビューにしました。張さん、K.I.さんから、研究結果の論理性を確保するためにさらに研究対象を絞って、その選択と限定を再確認するという非常に参考になるフィードバックと、藤本先生から、事例研究であればその事例が代表できる範囲を明らかにすべきである、などの貴重なご意見をいただきました。

以上、今週の報告でした。皆様の事例もその分析も面白くて意味深いので、ついたくさん書きました。記事が長くなって申し訳ありませんでした。読んでいただいてありがとうございました。

はじめまして、外国人研究生の叶です。

改めまして、こんにちは。今年の10月からLudix Labの外国人研究生になり、来年の4月からM1になる予定の叶 芷晴(イェ シセイ / Ye Zhiqing)です。
初めて投稿させていただきます。

学部での専門は国際経済と貿易でしたが、幼い頃からゲームが好きで、大学四年生の時ゲームが教育・学習に持つ可能性について触れ、非常に興味を持つようになり、大学院でこの分野で研究を進めたいと決めました。そしてようやく、ずっと憧れている藤本研究室に加入させていただきました(笑)。

ゲームと教育・学習の全般に興味を持っていますが、大学院ではまず「インタラクティブ・フィクション(IF)ゲーム活動における第二言語学習」について探究していきたいと思っています。IFゲームというのは、簡単に言えば、物語要素を中心として扱うゲームで、アドベンチャーゲームに属しており、時々ビジュアルノベルとも呼ばれています。『逆転裁判』、3 Minute’s Game『Lifeline』 などはその例として挙げられます。第二言語でIFゲームをする時、偶発的や意図的な第二言語学習が発生しているので、研究を通じて、ゲーム活動におけるインフォーマル・ラーニングに対して理解を深めていきたいと思います。

10月1日には秋学期第一回目のゼミに参加しました。今回の充実したゼミは予想通りにワクワクして、楽しんでいました。藤本先生にゼミ活動を紹介していただいてから、M1の張さんとK.I.さんの研究進捗を拝聴しました。二人ともより良い学習環境を作るために、ボードゲームの開発、ゲーム活動の設計をされていて、今回のゼミではそれぞれのプロトタイプを紹介してくれて、非常に勉強になりました。私の研究生段階の研究計画に対しても、先輩たちと藤本先生から貴重なご意見をいただきました。これらの意見に基づいて計画を改良して、今後また報告させていただきたいと思います。

今後とも、よろしくお願いいたします!

叶 芷晴