東京大学 大学院情報学環 藤本研究室
月別アーカイブ: 2025年6月
投稿日時: 2025-06-20 投稿者: leafyyan
こんにちは!M1のLeafyです。6月19日のゼミでは、スペシャルゲストとしてタツナミ シュウイチさんをお迎えし、「マインクラフト教育の進化とプログラミング教育の再定義――AI普及時代に改めて問う、学びの価値と可能性」というテーマでご講演いただきました。
昨年に続いてのご登壇ということもあり、今回も内容は濃密!AI・メタバース・探究学習……今まさに教育の最前線で起きている変化を、マインクラフトというプラットフォームを軸に語ってくださいました。
まず紹介されたのは、マインクラフト教育の爆発的な普及状況です。教育関係者向けの公式研修には世界で10万人以上が参加し、Microsoft認定の学校も年々増加。こうした流れを背景に、タツナミさんは「人間にしかできない力」――創造性、協働性、メタ認知といった要素を育む教育の重要性を強調されました。
そして、こうした非認知能力を実践的に育てる環境として、マインクラフトは非常に高いポテンシャルを持つとのこと。AIとの連携も進んでおり、NPCとChatGPTをつなげることで、ゲーム内で学習支援や対話的指導を行う取り組みも紹介されました。今後はマインクラフトのワールド内だけで「調べる・考える・学ぶ」が完結する未来が見えてきます。
印象的だったのは、授業の成果が家庭や社会にまで波及しているという具体的な事例の数々。
たとえば、サイバーセキュリティをテーマにした教材では、小学生が授業後に家で家族と話し合い、スマホやPCのパスワードを見直すなどの行動が8割以上の家庭で確認されたとのこと。ただ知識を得るだけでなく、実際の生活を変える力があるという点に、大きな可能性を感じました。
また、長崎の平和教育プロジェクトでは、子どもたちが自らマインクラフトで建物を作ったあと、「爆弾(TNT)」が登場する演出によって「失うことの怖さ」を直感的に体験させる仕掛けが紹介されました。怖がらせるのではなく、”壊されたくない”という感情を通じて、戦争の悲惨さを“自分ごと”として捉えるきっかけとなっていたのが印象的でした。
後は、参加者との活発な質疑応答タイムへ。
私は、ゲームに不慣れな学習者や3D酔いしやすい人への対応について質問させていただきました。タツナミさんは、現場でもそうしたケースはよくあるとしたうえで、まずは観察役から参加させる、画面設定を調整する、ペアやグループ作業を通じて自然に慣れてもらうなど、段階的な工夫を実践されていると話されていました。
他にも、メタバース的な学びがどのように日本の教育現場に根付くか、AIとの協働において子どもの主体性をいかに守るかなど、多様な角度からの問いが投げかけられ、参加者それぞれの視点が交差する、非常に充実したディスカッションとなりました。
「遊び」から始まる学びが、ここまで深く、そして社会と接続しうることに驚きと感動を覚えました。AIと教育の融合が進む中で、「創造性」や「探究心」といった人間ならではの価値をどう育てていくか。そのヒントが、マインクラフトという世界にたくさん詰まっていると実感しました。
以上、6月19日のゼミ報告でした。次回のゼミもお楽しみに!
投稿日時: 2025-06-18 投稿者: osora
こんにちは!M2の大空です。6/12のゼミ内容は、莫さんの事例紹介、蓮池さんの関連論文紹介、藤本先生のプレイセッションでした。それでは早速、今回のゼミの様子をお届けします!
莫さんは、2つのゲーム事例の紹介を行いました。目的は、デザイナー視点とプレイヤー視点から、ゲームのナラティブを比較し、自身の実践にどう活かせるか検討するためです。
まず、デザイナー視点の事例では、環境教育ゲーム『Citizen Science』を紹介いただきました。このゲームのナラティブは、rewardとしてプレイヤーの好奇心と行動を誘発するものとして設計されており、発表では具体的なナラティブと教育的役割についても言及されました。
そして、プレイヤー視点の事例では、ミステリー型教育ゲーム『Murder on Grimm Isle (MOGI)』を紹介いただきました。このゲームにはミステリーとしての正解がなく、情報を収集して自分なりの仮説を立て、それを物語としてまとめることがゴールになります。ある意味、ゲーム的構造が欠けているとも指摘できますが、「仮説を立て、自分なりのストーリーを構築する」こと自体が内発的な動機となる特徴的な事例でした。
ディスカッションでは、各事例のレビューを踏まえて、莫さんのMMGの具体的な改善策の話題で盛り上がりました。その観点の一つに、ミステリー型教育ゲーム『Murder on Grimm Isle (MOGI)』の事例のように、オープンエンドにするか否かの議論が進みました。
結末の扱い方によっては、プレイヤーの体験そのものが変わってしまう可能性があるため、実装は慎重になる必要がありますが、最終的には莫さんが学んでほしいことからの逆算によって決まるので、バージョンアップデートされたゲームがどのような形になるかとても楽しみです。
蓮池さんは、3つの研究関連論文を紹介されました。蓮池さんは、AI×教育×ゲームをメインキーワードとした研究を行っています。論文紹介の目的は、ゲーム内でのAIとのインタラクティブが実世界でどういった影響を与えるか明らかにするためです。
①Addressing Public Speaking Anxiety with an AI Speech Coach (GARCIA Jr, Frederick Voltair, et al.)
ーAIスピーチコーチサービス『Yoodli』が人前で話すことの不安を解消できるのか、スピーチ能力を向上させる上でどれほど効果的なのかを明らかにするために実施。学生20人を対象に、『Yoodli』を1週間最低10分程度使用してもらい、事前・事後でPRPSAとCSSEFを用いて不安レベルとスピーチ能力を測定した論文。
②Looking through goal theories in language learning: A review on goal setting and achievement goal theory (Xiaofang Cheng)
ー言語学習における目標理論の考察論文で、目標設定理論と達成目標理論について言及。この論文では、第二言語学習におけるモチベーションを解き明かす鍵として、目標設定理論と達成目標理論がどのように関連しており、教育現場でどう活かすことができるのか考察されている。
③Mobile language app learner’s self-efficacy increases after using generative AI
(Audrey K. K., et al.)
ーDuolingoに搭載されたリアルタイムの会話練習がどれだけ言語学習者の行動に強い影響を与えるかを調査した研究で、有料プランにすでにしている人 :既存ユーザー(153名) と使ったことのない人 :新規ユーザー(232名) の2つのグループに分けて実験を行っている。
3つの論文は、どれも最新のもので、この分野の研究が近年急速に進んでいることがわかります。蓮池さんの研究では、こうした次々と情報が更新される分野なので、キャッチアップが大変な一方、その研究成果には大きな関心が集まることが期待されます。ぜひ今回の論文を踏まえて、どのような研究成果が出るのか楽しみです。
最後に、藤本先生のプレイセッションとして、Nintendo Switch 2を使ってみんなでゲームをプレイしました。
プレイしたのは『Nintendo Switch 2 のひみつ展』です。楽しみながら、Nintendo Switch 2の機能や開発の裏側を知れるゲームになっています。具体的には、ゲーム内でNintendo Switch 2のコントローラーを探索しながら、開発背景に関するクイズや、新機能を使ったミニゲームなどがプレイできます。
時間の関係ですべてのゲームやクイズをプレイすることはできませんでしたが、特に「トゲトゲよけ」というゲームがゼミでは人気で、新機能であるコントローラーのマウス機能を使って盛り上がりました。
シリアスゲームの事例としても面白かったので、ぜひYoutubeでプレイ動画も参照したいと思いました!
以上、6月12日のゼミ活動の報告でした。次回のゼミ報告も楽しみにしててください 🙂
投稿日時: 2025-06-06 投稿者: hatta
株式会社イオンファンタジー主催のゲームカレッジ Lv.99において、保護者さま向けのオンラインミーティングが5月30日(金)に開催されました。
ゲームカレッジ Lv.99は「考えるチカラをゲームで伸ばす」小学生対象のオンラインスクールです。当研究室からはメインゲストとして藤本徹教授が参加いたしました。
https://www.fantasy.co.jp/level99
保護者の方々からは以下のような、お子さまの悩みについて相談が寄せられました。
・集中力がない!
・ゲームの時間が長い!
・すぐイライラしちゃう!
・SNSとの付き合い方
・不登校について
藤本教授からは、『各ご家庭の環境や個々のお子さまの特性によって状況や対応が変化することがあるが、社会生活に支障が出ているかどうかで判断し、各ご家庭によるルール作りが大切である』『様々な状況下でも楽しみを見つけ出すこと』『無理をさせずに成長を見守ること』など、あたたかく具体的なアドバイスが多く提供されました。