東京大学 大学院情報学環 藤本研究室
月別アーカイブ: 2023年11月
投稿日時: 2023-11-28 投稿者: inuda
こんにちは、修士1年の犬田です!
ゼミ活動報告の前に、今月あったイベントの報告をさせてください。11月16日から20日にかけて、東京大学制作展が開催されていました。私は、プロデューサーとして全体の方向性の決定をしながら、個人で作品の制作を行いました。様々な背景を持った人たちと協力しながら、1つの展示会を作り上げる経験は、今後の大事な財産になったと思います。また一方で、面白い人たちと関わる中で、自分の強みと弱みを考える良い機会になったなと思います。今後の人生で何を武器にして生きていくのか、そしてどのようなキャリアを歩んでいくのか、制作展が終わった今改めて考えてみる必要があるなと感じています。制作展にご来場いただいた皆様本当にありがとうございました。
さて、11月16日のゼミ活動報告に移りたいと思います。今回の内容は、研究進捗報告(春口さん、犬田)と研究員発表(坂井先生)になります。
■研究進捗発表(春口さん)
春口さんは、修士論文の進捗について共有されました。「通信プロトコルと階層の学習を支援するシリアスゲームの開発と評価」という題目で修士研究を進められています。現在は、シリアスゲームの評価に関する実験と並行して、論文の執筆も進められています。実験参加者は20名を目標とされていて、徐々に集まりだしているそうです。現在集まっている参加者の属性はばらばらで、大学学部生や教育関連企業、薬品会社勤務など多様な職業の方が実験に参加してくださっているようです。もし、参加可能な方がいらっしゃれば、こちらのフォームからご参加ください。
■研究進捗発表(犬田)
私は、質問紙調査のゲーム化に関する研究の進捗を共有しました。ゲーム化する質問紙の研究分野を、実験哲学に決定し、ゲーム化に適した既存の研究を探していることを報告しました。また、Gamified Surveyのデザイン・評価に関する論文や問題点がまとめられたレビュー論文が見つけられたので、今後精読していきます。加えて、制作展でゲーム要素を加えた、クラウドソーシングゲームのプラットフォームを開発したので、今後こちらも学会で発表できればと考えています。制作展を無事終えることができたので、今後は研究に集中して取り組みたいと思います。
■研究員発表(坂井先生)
坂井先生は、”Ephemeral games: Is it barbaric to design video games after Auschwitz?”(G.Frasca,2000)という論文を紹介されました。その後、プレイヤーに恐怖や不安を与えるテーマ(例えば,死)を扱うシリアスゲームを開発・利用する是非とその際の注意点についてディスカッションしました。紹介された論文は、ゲームにおける多くの行動は可逆的であるため、死などの概念は倫理的、歴史的、社会的価値を失うことになるが、死などを扱うシリアスゲームをデザインする上では、不可逆的で、刹那的であることが鍵となってくるといった内容でした。その後のディスカッションでは、恐怖や不安を与えるテーマ(例えば,死)を扱うシリアスゲームを開発・利用する是非について賛成か反対かで分かれ、意見を共有し合いました。そのようなゲームを開発・利用する際の、倫理的側面や効果について活発な議論が展開されました。
以上で、11月16日のゼミ活動報告は終了となります。ぜひ来週のゼミ報告記事もお読みください。それでは。
投稿日時: 2023-11-20 投稿者: snii
財津特任助教や「貿易ゲーム体験ワークショップ2023 at 東京大学」で講師を務めてくださった坪内康将さん・伊與田一成さんらがメンバーを務める日本ボードゲーム教育協会が、
この度「ボードゲーム教育概論Ⅰ」という<ボードゲーム✖️教育>の理論と実践をまとめた本📗を制作し、12月9日(土)ゲームマーケット2023秋@東京ビッグサイトで1,000円で頒布します。後日通販も。
ぜひお越しください⛄️🌟🎲
https://gamemarket.jp/game/181764
詳細や取り置き予約フォームへのリンクは上記のページをご覧いただければ幸いです🥳
投稿日時: 2023-11-17 投稿者: jona
こんにちは。研究生のジョナです。
段々と寒くなっているこの季節ですが、外で食べる暖かい焼き芋の美味しさなど、この時期ならではの幸せも多く感じ取っています!みなさんはいかがお過ごしでしょうか!
早速ですが、先週のゼミ活動のご報告に入りたいと思います。今回のゼミ活動は文献研究(M2大空さん、M1濱田さん)とプレイセッション(木村先生)でした。
文献研究 M2大空さん
<教育デザイン研究の理論と実践> 第6章 評価と省察
文章では評価と省察の全体像からはじめ、それぞれがどういうものか(評価はデザインとプロトタイプについて洞察を得るため用いる、省察は評価から得たものを振り返って考察する)、またそれらを行う理由及び効果、実施する際のポイントなどが紹介されました。
評価は計画、フィールドワーク、意味づけという3つのステップで構成されます。省察は有機的な省察と構造化された省察の2つのステップで構成されています。
大空さんは自分の研究の各段階が文章でどのステップと当てはまるかを詳しく説明してくださいましたので、内容を非常に具体的に理解することができ、今後自分の研究を進める参考にもなりました。
発表後の討論では「自分の研究を他人に伝える際にちゃんとしたフレームに従って文書化する必要性」や、「brush upを繰り返し行う開発研究では、経験をリソースとして次の開発に繋ぐ時に必要」、「実験ノートの必要性」などと、先生方から多くの貴重な意見がありました。
文献研究 M1濱田さん
Reinders, H. & Wattana, S. (2014). Can I Say Something? The Effects of Digital Gameplay on Willingness to Communicate. Language Learning & Technology, 18(2), 101–123.
この論文はEFL(English as a Foreign Language)に関する論文で、コミュニケーション意欲(WTC, Will to Communicate)の調査方法などを取り扱った、濱田さん自身の研究ととても関連性の高い内容でした。
この研究ではオンラインゲームをプレイすることが英語学習者のコミュニケーション意欲にどんな影響を与えるかを調査し、特別に設定されたクエストを行うことでWTCにどんな変化が生じたのかをアンケート調査で測定しています。結果、学生の英語への自信や言語不安、コミュニケーション能力などの領域で明らかな改善が見られたことで、ゲームベース言語学習の教育効果が肯定されています。討論の段階では、論文で扱う調査方法の適切性についての議論が行われました。
プレイセッション 木村先生
<トラベル島のニャンコ>
今学期の始まりに一度木村先生が紹介してくださった<トラベル島のニャンコ>という農場経営ゲームをメンバーでプレイしました。自分のペースで「適当に遊ぶ」組(5人)と何かを目的にして「頑張って遊ぶ」組(5人)に分け、ゲーム内で自由に活動しました。プレイ前後にはFlowの研究調査として事前テストと事後テストを行いました。
このゲームは農作物や畜産物を収集又は加工し、島を訪れる猫たちに売ることで、経験値と財産を増やしていく流れとなっています。私は頑張って遊ぶ組でしたので、ゲーム内でコインを多く集めることを目標とし、時間ギリギリまで挑戦しました。ゲーム内で得た成果をみなさんで共有した結果、頑張り組のランクがやや高いとなりました。
討論の段階ではFlowに関して、ゲームをやっている最中にデータを取れない点、個人差が存在する点、<トラベル島のニャンコ>は適切なゲームになるかどうかなどについて議論されました。木村先生によると、Flowの研究で最も多く扱われているゲームはTetrisだそうです。Tetrisを思い出すとなんとなくその理由がわかる気がしました。
以上が11月9日のゼミ報告となりますが、ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
では、また次の記事でお会いしましょう!
投稿日時: 2023-11-14 投稿者: snii
今週金曜日、サイエンスアゴラ2023 前夜祭というラジオ形式の音声のみのYouTube Liveに、我らが大空さんがパネリストとして参加します!👏
ラジオ形式のPR番組で、QRPGAME ワークショップについて簡単にご紹介される予定です📻
第2部(20:00~)の一発目です。ぜひお聞きください🎧✨
プログラム(抜粋)
(第2部) 20:00~20:30
・18-5E11 研究のグレーゾーンについて考える!カードゲーム「QRP GAME」を使った対話型ワークショップ(東京大学 ELSI Game Lab&藤本徹研究室(Ludix Lab))
前夜祭:出展者に聞いてみる企画のココが面白い!
https://youtube.com/live/QRh6IHMza3c
投稿日時: 2023-11-14 投稿者: snii
2024年度入試に向けて、11月10日(金)16時より藤本研究室を希望する方を対象とした説明会をオンラインで開催しました。全体に向けた説明と質疑応答部分の動画をYouTubeで公開しています。
当日参加できなかった方も、参加したけどもう一度聞きたいという方も、ぜひ動画をご覧いただき、出願を検討する際の判断材料の一つにしていただければ幸いです。
投稿日時: 2023-11-14 投稿者: hamada
こんにちは。M1の濱田です。11月2日のゼミ活動報告です。
今回のゼミは、以下の3本立てでした。
・春口さん 文献研究
・犬田さん 文献研究
・木村さん 研究員発表
春口さんは、「私たちはどう学んでいるのか」第2、3章の発表でした。
第2章は、知識とは伝えることができるものではなく、人の中で創発されるものであるという構成主義についての話でした。私たちが知るという経験をするとき、あらゆる感覚(味、食感、重さ、香りなど)や感情を複合して、私たちの経験を作り出し、知識を形成します。また、知識は環境や状況に依存しており、それらと互いに影響しあうことで、知識は構築されていきます。このように、知識は誰かが直接伝えることができるものではなく、主体の持つ認知的リソース、環境が提供するリソースの中で創発されるものであると筆者は述べていました。
第3章は、練習による上達についての話でした。練習によってマクロ化(別々の動作が一連のまとまりを持つ)、並列化(いくつかの動作を同時に行える)、環境の再構築(身体の動きを仮想的なイメージの中で再現する)が行われます。これらにより、徐々に上達していくのですが、スランプというものも存在します。このように、上達とは直線的なものではなく、うねりを伴うものです。しかし、このうねりが次の飛躍へと繋がると述べられていました。
犬田さんは、「デジタルゲーム研究」第9章の発表でした。
内容は、ゲームをメディア論の観点から捉えるというものです。「すべてのメディアは人間の感覚の拡張である」というマクルーハンの主張を軸に、ゲームは人々の集団意識や社会慣習をコード化し、拡張するという意味で、ゲームもメディアであると説明されていました。そして、どのメディアも他のメディアですでに表象されたものに過ぎないという再媒介化の概念を取り上げ、デジタルゲームも他のメディアを再媒介化したものであると述べられていました。
木村さんは、Ryan&Deci(2006)のコンピュータゲームに自己決定理論を適用した研究についての発表でした。これらの研究では、精神的幸福につながるとされる自律性、コンピテンス、関係性に着目して実験、調査が行われ、ゲームのプレイ動機やその違い、ゲーム内の満足度がその幸福にどのような影響を与えるかについて調査されていました。全体的な結果としては、ゲームプレイによる自律性やコンピテンスと精神的幸福の間には肯定的な関連が認められるとのことでした。
以上が今回のゼミ報告です。
投稿日時: 2023-11-09 投稿者: snii
当研究室M2春口さんの「通信プロトコルと階層の学習を支援するシリアスゲームの開発と評価」実験に参加しませんか?🧠🌞🎇 オリジナルのゲームをプレイし、その前後にアンケートに答える、というものです。
場所は本郷キャンパス福武ホールで、所要時間は1時間から1時間半程度です。謝礼としてAmazonギフト券1500円(交通費を含む)もお渡しします。
詳細・お申し込みは以下のフォームをご覧ください。
https://forms.gle/piRuw8Pf3keJhExK6
ぜひともご協力のほど、よろしくお願いいたします!🎮🌟
投稿日時: 2023-11-08 投稿者: snii
藤本研M1の犬田さんが、テクノロジー × アートの展示会である東京大学制作展2023に『Meta Crowdsourcing Game』という作品を出展されます✨
<作品説明>
ゲームで社会課題を解決することができたらと考えたことはないだろうか。電車内を見渡すと、多くの人々がスマートフォンを持ち、カジュアルゲームで暇つぶしをしている姿を見ることができる。私は、この暇つぶしに当てられているエネルギーを社会のために活用することはできないだろうかと考えていた。そんな折に出会ったのが『Foldit』というゲームだ。『Foldit』は、タンパク質の構造解析をパズルゲームにして市民に解析作業を手伝ってもらうゲームである。このような社会課題の解決のために必要な作業を市民に手伝ってもらうゲームのことをクラウドソーシングゲームと呼ぶ。私は、このクラウドソーシングゲームを普及させることで、社会がより楽しく、より豊かになると信じている。今回は、このような想いから、みなさんにクラウドソーシングゲームを知ってもらうためのプラットフォームを開発し、展示した。このプラットフォームで遊ぶことで、ゲームを基盤とした社会に思いを馳せてみてほしい。
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クラウドソーシングゲームと言えば、マンホールを撮影・レビューすることでポイントや特典を得る社会貢献型の位置情報ゲームが有名ですね💡このようなゲームで社会がより楽しく、より豊かになるはず🙋
また、同じくM1の濱田さんがメンバーの一人として制作された『水滴の彫刻』という作品も展示されています。
東京大学制作展2023は11月16日から20日まで開催されます。ぜひお越しください🐾
https://www.iiiexhibition.com/
投稿日時: 2023-11-02 投稿者: snii
本日、東京大学基金ウェブサイトにおいて藤本研究室の「プレイフル社会の理論構築と社会実装プロジェクト基金」への寄付募集を開始しました。詳細は以下のプロジェクトページをご覧ください。
https://utf.u-tokyo.ac.jp/project/pjt173
本プロジェクトへのご支援とご協力を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
投稿日時: 2023-11-02 投稿者: osora
こんにちは、修士2年の大空です。
皆さんはどうしても譲れないものはありますか?色んな切り口があると思いますが、例えばそれがダーツだとしたら、僕は一つ譲れないものがあります。ブルを狙うことです。ブルとはダーツボードの中心部を指します。しかし、ゲームルールによっては、必ずしもそこを狙う必要はなく、ブルに入れることで負けてしまう状況もありえます。ただ、僕はどうしてもブルを狙いたくなってしまうんです。ブルに入る嬉しさ>ゲームに勝つ嬉しさなのかもしれません。ゲームに負けたとしても、僕は今後もブルを目指していきたいと思います。
さて余談はこれくらいにして、10月26日のゼミ報告を行います。
発表者は大空、濱田さん、ジョナさんの3人です。
大空の発表では、修士研究で開発中の「QRP GAME」で参考にしたゲームの事例紹介を行いました。
「QRP GAME」を開発してちょうど1年が経ったのですが、これまでそのデザインプロセスを他の人にお伝えできるかたちで整理していなかったので、このタイミングでまとめるとともに、参考にしたゲームの紹介を行いました。
主に参考にしたゲームは、「Dixit」「キャットアンドチョコレート」「宝石の煌めき」という3つのゲームで、それぞれからコアとなるメカニクス、サブとなるメカニクスを抽出し、オリジナルの要素も加えて制作しました。また、制作前に行ったゲームの課題発見・定義やアプローチ選定等についてもご紹介しました。
現状、一旦プロトタイプですが、教育デザイン研究における「分析と探求」「デザインと構築」のフェーズは終わったので、今後は「評価と省察」「実装と普及」に向けて動いていこうと思います。まずは、11/18(土)にサイエンスアゴラというイベントでワークショップを行うので、そこで良い成果が出せるように努めます!
濱田さんの発表では、教育版Minecraftで実装されている化学の機能を使って、楽しみながら化学を学ぶことができる「Minecraft 化学のチュートリアル」の事例紹介を行われました。
この機能では、そもそも元素の概念が既に存在しており、化合物作成器(元素を組み合わせて30を超える化合物を作成できる)や実験テーブル(元素や化合物を組み合わせ新たな物質を作成することができる)といったアイテムが使用可能となっています。
ゲームならではの学びとして、即時的なフィードバックがありますが、このゲームでは機器を操作すると物質ができる / 誤った操作をすると爆発して廃棄物ができるというように、その結果がすぐに出るようになっています。だからこそ、現実では不可能なこともゲーム内では可能で、失敗から学ぶことができます。また、ゲームによるビジュアル化で複雑な概念の理解を促しやすいというメリットも挙げられます。
今回の発表をうけて、改めてMinecraftと科学教育の相性の良さを実感しました。濱田さんの研究では、英語教育におけるMinecraftの活用ですが、他分野の事例として紹介できるとともに、実際の教材づくりの参考にできそうな点も多いなと感じました!
ジョナさんの発表では、研究計画のより詳細な内容と今後の方向性について発表を行っていただきました。ジョナさんの研究では、モンゴル語学習を例に、小学生を対象とした少数言語・文化の学習を促すゲームの設計や開発、使用者調査を行い、デジタルゲームが少数言語・または文化の習得にどんな効果をもたらすかを明らかにすることを目的としています。
この研究目的を達成するために、参考になりそうな講義やゲーム「天穂のサクナヒメ」をご紹介いただくとともに、実際にどのようなゲームが良さそうかということも発表いただきました。モンゴル語に焦点を当てたゲーム案ではモンゴル語構造を列車のメタファーを使って表現する方向性を、文化の習得に焦点を当てたゲーム案ではモンゴル独自のチーズ作りを「天穂のサクナヒメ」のように表現する方向性を提示されました。
特に前者のモンゴル語に関しては、日本語とも英語とも構造が異なっており、純粋に言語として面白いなと思いました。そして、それを列車というメタファーを使って表現されることも感覚的でわかりやすいと感じました。今後のジョナさんの研究進捗が楽しみです!
以上が10月26日のゼミ報告となります。
それでは!