【5月26日】 ゼミ活動のご報告

こんにちは。M1の春口です。
先日行われたゼミ活動のご報告を致します。

事例紹介 大空さん
 今回は「人事制度ゲーム」というボードゲームを紹介されました。
 「人事制度ゲーム」は、企業の人事、人材育成担当者を対象として、チームに分かれてそれぞれのチームで社員の育成をしながら企業の利益を上げていくことを目指すゲームです。チームごとに企業の規模を変えることができ、大企業・中堅企業・ベンチャー企業の3つから選ぶことができます。人事制度を自分たちで作ることができるのが特徴で、ゲームを通して人材育成や人事制度について学ぶことができます。
 今回の事例は、大空さんの研究計画に影響を与えたようで、研究対象者を学生として企業の人事制度などを学生のうちから理解することを目的としたゲームの作成という方向性も新たに視野に入ってきたようでした。先行研究から様々な気づきを得られていて、とても意義深い事例紹介となりました。

文献研究 叶さん
 今回は「Gee, J. (2005). Semiotic social spaces and affinity spaces: From The Age of Mythology to today’s schools.」についての紹介でした。
 内容はAffinity Spaceについて論じるものでした。Community of practiceという考え方を人のグループではなく、人が集まる空間から再考したものをSemiotic Social Spaces(記号的社会空間)(以下SSS) と定義し、SSSの特別な例がAffinity Spaceであるそうです。
 SSSでは、その空間の中で人々が記号を得たり意味を与えたりします。論文ではそのための要素として、Generator(意味・記号を生成するもの)・Portal(記号へアクセスするための窓口)・Internal Grammar(記号のデザイン)・External Grammar(SSSと人のインタラクション)の4つが定義されています。
 Affinity Spaceでは上記の4つに合わせて、メンバーがある共通のゴールに対して熱意を持っていることや暗黙知の利用が推奨されること、地位を獲得する方法が多岐にわたることなど11種類の条件が成立するそうです。少し難しい概念ですが、実世界で考えるとゲームの攻略WikiなどがAffinity Spaceの要素を強く持っています。
 Wikiの参加者はあるゲームの攻略という共通のゴールに対して熱意をもっていますし、ゲーム内でしか通用しない言葉をよく用いるでしょうし、Wiki内で有名になる方法はレベルアップに必要な経験値量の整理や隠しアイテムの発見など多岐に渡るでしょう。ゲームのWikiという空間はまさにAffinity Spaceです。逆くにあまりAffinity Spaceの要素を持っていないのが学校であると叶さんは主張されていました。
 少し難しい概念の内容でしたがとても分かりやすくまとめられていて、今後の研究に活かせそうな概念を1つ知ることができました。

研究員発表 財津さん
 今回は財津さんの進められている研究のうち、「子供たちのルールに対する態度に関する探索的研究」と「ボードゲームの学びに関する評価」の2つの研究内容のご紹介でした。
 「子供たちのルールに対する態度に関する探索的研究」は、創造性に関する理論である4c理論を背景に、mini-cからlittle-cやpro-cへの変容をルールに対する態度から捉えられないか?という仮説から、ボードゲームを遊ぶ・作る活動をビデオで記録して、ビデオ録画から典型的な場面を抽出してルールに対する態度を特定するという方法で創造性の変化を捉えるという研究内容でした。
 「ボードゲームの学びに関する評価」は、各ボードゲームがどんな学びを含んでいるかを明らかにするという内容で、ボードゲームをすることの良さの証明という関心から行われている研究です。この良さとは、個別具体的なボードゲームが持つ固有の学びの証明ではなく、ルールへの態度の獲得・変容という形で表現される良さのことであると説明されていました。
 2つの研究とも、研究結果がとても大きな意味を生み出しそうであると予感される研究内容でした。扱われている理論もとても興味深く、特に前者の研究の4c理論は自分の研究にも活かせそうな内容であったためこれから自分でも詳しく調べてみようと思います。

以上が5月26日のゼミ内容の報告です。

【5月19日】ゼミ活動のご報告

M2の升井です。今回のゼミは自身初の対面で行われ、とても新鮮な気持ちで迎えることができました。M1の優秀な後輩もできて、これから1年頑張ってゼミを盛り上げたいと思います。

  • 文献研究 担当:升井

C.M.ライゲルース, B.J.ビーティ, R.D.マイヤーズ(編), 鈴木克明(監訳)(2020)学習者中心の教育を実現するためのインストラクショナルデザイン理論とモデル.北大路書房.

第3章 課題中心型インストラクションの原理

第4章 個人に合わせたインストラクションの原理

第3章では、課題中心型インストラクション(TCI)について扱われています。TCIとは学習課題を中心に①学習課題、②既有知識の活性化、③例示/モデリング、④応用、⑤統合/探究の要素で構成され、さらに、フェードアウトする足場かけが施された学習モデルです。

ディスカッションでは資源対学習者数の効率の悪さを克服するためには何が必要かなどを話し合いました。アクティブラーニング全般に言えることですが、協働作業の時間の確保のために③例示の部分を事前のビデオ視聴に置き換えるなどの工夫ができます。しかし、そのビデオと協働作業との接続の工夫の余地はまだまだ残っていそうだと思いました。

第4章では、個人に合わせたインストラクションについて様々なことを個別化する方法論が示されています。章の中で「グラインディング=わざと繰り返し作業をプレイヤーにさせること」というゲーム用語が出てきて、グラインディングについての経験などを話しながら盛り上がりました。やはり、ゲーム学習の研究室なのでゲームの話になると白熱します。

  • 文献研究 担当:春口さん

ケイティ・サレン, エリック・ジマーマン (2019) ルールズ・オブ・プレイ:ゲームデザインの基礎(再編集版)ニューゲームズオーダー

第3章 意味ある遊び

第4章 デザイン

M1の春口さんが担当でした。春口さんの発表資料はスライド形式で、自分の解釈なども交えながらのプレゼンは斬新でした。第3章の「ゲームを作ること」とは何かというディスカッションで、「人の行為の変換装置を作ること」や「体験を作ること」などの各々の意見が出たり、スプラトゥーンとFPSのデザインの違いなどを考察したりして盛り上がりました。また、第4章では記号論などを織り交ぜながら、ゲームデザインとは何ぞやということを話し合いました。藤本ゼミの研究ではシリアスゲームなど、自作のゲームを作る学生も多いので、ルールズ・オブ・プレイのゲームデザイン論はとても役に立つ内容だと思いました。

  • プレイセッション 担当:財津さん

財津さんが担当したプレイセッションではルールを追加・削除する大富豪を2チームに分かれてプレイしました。片方のチームは大富豪になった人がルールを新たに1つ追加して、もう一方のチームは大富豪になった人がルールを1つ削除するという特別な仕掛けがありました。大富豪といえば、そもそも人によっては大貧民と呼んだり、ローカルルールがあったりで、ルールに調整がかかりやすいゲームです。私のチームは減らす方で、Jバックを消すなどのルール変更がなされました。ディスカッションで興味深かったのは、どこまでルールを消すと大富豪がゲームでなくなるのか?ということです。極論、「手札を配る」というルールを消すとゲームが成立しなくなったり、手札を全部見せてプレイするというルールにすれば、ゲーム感覚は全然違うものになったり、ルールを作るという作業は思ったよりもクリエイティブであるということを体感しました。対面ならではのゲームで、久しぶりにリアルの人と交流できて楽しかったです。

さて、今日はこのあと藤本ゼミの入試説明会があります。院生として、受験しようと思っている人たちにZOOMで話す機会があるので、多くの人にゼミの魅力が伝えられるように頑張ります。

【5月12日】ゼミ活動のご報告

皆さん、久しぶりです。M2の叶です。

早速、先週のゼミ活動についてご報告いたします。
今回は私と大空さんの事例研究と、木村研究員の研究発表の回でした。

大空さんは、ゲームマーケットで購入した『社畜牧場』というボードゲームについて紹介しました。このゲームではプレイヤーが「社長」となり、「社畜」を使って自社の「株価」の上昇を目指す対戦し、ワーカープレイスメントというメカニクスでゲームを進めます。

ワーカープレイスメント:プレイヤーが自分のポーン(ワーカー、労働者)をアクションスペース(建物)に配置することで、ターンオーダーでアクションを選んでいく

大空さんはゲームの構造を踏まえて、『社畜牧場』の遊びにおいては派遣や収益を高めるための経営のプロセスが表れると分析し、今後の人材育成類ボードゲームの制作において「ワーカープレイスメント」の活用の可能性、プレイヤーの当事者意識を入れるなどを検討しました。

自分は「Game2Text」という、GITHUBで無料に配布されたオープンソースのゲームでの外国語学習のため活用できるツールキットを取り上げました。基本機能としてはOCRでゲームのスクリプトを特定し、アドオン辞書と組み合わせてゲームテキストを簡単に調べたり翻訳したりすることができ、単語帳アプリと連携することで暗記カードを簡単に作れます。

「Game2Text」はゲームを活用した外国語(特に日本語)の学習と復習には有用性が高いと考えられます。しかし、今のバージョンだとOCR機能にはまだ正確性に欠ける、インストール・利用する際のハードルが高いなどの課題点により、学習ギーク・ゲームギーク・パソコンに一定程度詳しい説明人でなければ、利用するモチベーションが低いとも考えられます。

最後に、木村さんの「ゲームと人を対象とした心理学研究の方法とその範囲」というテーマで発表しました。木村さんは、Schellの『ゲームデザインバイブル』の中で心理学について説明している項にある行動主義派と現象学派の切り分け方を批判し、心理学では質的なアプローチも多く用いられてきたことを強調しました。その後は、「即時的な反応を要求するゲームとその熟達が感情経験に与える影響」(木村, 2020)における実験の例を挙げ、「感情の円環モデル」についても説明してくれました。

その時就活に苦戦していた自分は、「疲れた」と「警戒した」という複雑の感情に陥って、ただ一つのモデルはまだ説明しきれない部分があるだろうと思っていました。皆さんはこの記事を読む時は、どのような「感情」にいるのでしょうか?

では今回はここまでです!次回は対面の回で、初めて新入メンバーと会う回ですので楽しみしています!皆さんもぜひ次回の記事を楽しみにしてください〜

  • 木村 知宏 (2020). 即時的な反応を要求するゲームとその熟達が感情経験に与える影響デジタルゲーム学研究, 13(1), 21–29.
  • Russell, J. A. (1980). A circumplex model of affect. Journal of Personality and Social Psychology, 39, 1161–1178.

「教育システムデザイン論オンラインセミナー」動画公開のお知らせ

4月20日(水)に当研究室主催で開催しました「教育システムデザイン論オンラインセミナー」の動画を2本に分けてYouTubeで公開いたしました。当日残念ながらご参加いただけなかった方も、ぜひご覧いただければ幸いです。

🌸教育システムデザイン論ゲストセッション前半(ゲスト講師:石戸奈々子先生)

🌼教育システムデザイン論ゲストセッション後半(ゲスト講師:中村伊知哉先生)