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【2025年11月27日】ゼミ活動のご報告

投稿日時:   2025-11-27   投稿者:   hamada

こんにちは。M2の濱田です。

大学の構内も銀杏が黄色に色づき、季節はすでに秋というより冬に近づいているように感じます。美しい大学の景色を見ながら歩いていると、ゼミに向かう足取りもいつもより軽く感じられますね。

さて、今日のゼミでは、大空さん、Leafyさん、濱田の3名による関連論文の発表が行われました。どの発表も非常に興味深く、知的好奇心を大いに刺激されました!

濱田の発表

今回の発表では、私の研究で採用している Design-Based Research(DBR)の理論的な枠組みを改めて整理し、その上で現在取り組んでいるニーズ分析(Phase 1)の進捗について共有しました。

研究の目的としては、日本の中学校英語教育において「自発的な英語発話が十分に生まれにくい」という現状に対し、自由度の高い学習環境である Minecraft を活用することで、生徒の発話をどのように促すことができるのかを明らかにすることを目指しています。情意面、言語的・認知的側面、そして学習環境面から発話に影響する要因を探り、DBRの枠組みに沿って授業デザインを段階的に改善しながら、発話促進に効果的なデザイン原理の導出を試みています。

DBRとは、教室にあるリアルな課題に対して、教師と研究者が協働しながら、「理論+テクノロジー+新しいデザイン」を組み合わせて実践し、その都度検証や改良を重ねることで、最終的に他の文脈にも応用できる設計原理を生み出す研究手法です。研究のプロセスは4段階に分かれており、私は現在その第1段階である「課題の特定とニーズ分析」を進めています。

先週は、研究フィールドとなる学校を訪問し、授業の様子を見学するとともに、先生方や生徒への聞き取りを行いました。そこで得られた情報を基に、現場にどのような課題があるのかを整理し、今後どのような授業デザインが適していそうかを検討しているところです。

12月には第1回目のパイロット授業を予定しており、それに向けて授業内容の詳細や質問紙の作成を進めていく予定です。

大空さんの発表

大空さんは、修士研究の議論を進めるにあたり、研究の方向性を明確にするため、研究倫理教育に関する既存研究の調査を行なっていました。その中でも、松沢による研究倫理教育の再考を促す論文を取り上げ、詳細に分析されていました。

大空さんが発表してくださった論文によると、研究倫理教育は従来、「研究作法」や「自己防衛の手段」として捉えられてきましたが、近年ではその手法自体を見直す動きが出ているそうです。ガイドラインや制度の整備によって形式的な枠組みは整ってきた一方で、今後は教育内容そのものの質を高めていく段階に入っていると指摘されています。また、多くの研究不正が「知らないうちに」生じるケースであり、罰則の強化だけでは防ぎきれないという課題も挙げられていました。さらに、不正の判断基準が文脈によって揺れるという「不均一性」も問題として示されています。こうした点をふまえ、単なる知識伝達ではなく、研究者自身が主体的に考え判断できるようになる「志向的な教育」の必要性が強調されていました。

大空さんが取り組んでいる修士研究は、まさにこの「志向的な教育」の重要性を扱うものであり、今回の文献が研究の議論や方向性を定めるうえで大きな示唆になったとのことでした。

Leafyさんの発表

Leafyさんは、フィッシング詐欺の被害には技術的な問題だけでなく、心理的要因が大きく関わっているという観点から、関連する文献を紹介してくださいました。フィッシングは、人の認知バイアスを巧みに利用し、緊急性や恐怖を喚起するメッセージを送りつけることで判断力を低下させると言われています。また、年齢や性別といった個人差要因も脆弱性に影響することが研究で報告されています。

今回の発表では、Big Five 性格特性とフィッシング行動の関連を調べた文献レビューを2本取り上げ、以下のような共通傾向が示されました。

・Neuroticism(神経症傾向):最も一貫した強いリスク要因
・Agreeableness(協調性)・Extraversion(外向性):状況依存だがリスクが高まりやすい
・Conscientiousness(誠実性):最も安定した保護要因として機能
・Openness(開放性):多くの研究で保護的に働くが、下位次元によっては例外もある

また、研究によって用いられる測定方法の違い(例:「on the farm」のような実験室的課題 vs. 「in the wild」のような自然に近い模擬攻撃)が、結果のばらつきに大きく影響することも指摘されていました。総じて、性格特性はフィッシング脆弱性を左右する重要な要因であり、特性によって弱点となる攻撃タイプが異なるため、教育・訓練は個別化が不可欠であると論じられていました。

これらの知見を踏まえ、Leafyさんは現在開発中のゲームの方向性についても考え直しているそうです。これまでは「詐欺を仕掛ける側」の視点に立ち、どのような点に注意すべきかを考えるゲームを構想していましたが、今回の文献を踏まえ、プレイヤーの性格特性に合わせてゲーム内のインタラクションが変化する、より個別化されたトレーニング設計も視野に入れているとのことでした。

藤本教授が 「ゲーミフィケーション カンファレンス QUEST」に登壇 しました

投稿日時:   2025-11-27   投稿者:   shokotange

2025年11月21日、東京・丸の内の Tokyo Innovation Base にて、社会を“やりたくなる”で満たすための実践と議論の場 ―「ゲーミフィケーション カンファレンス QUEST」が開催されました。株式会社セガ エックスディー(SEGA XD)と ゲーミフィケーション研究所が主催のこの場には、産官学民のトップランナーが集い、ゲームの力を社会や生活にどう活かすかが語られました。

藤本教授は、「ゲーミフィケーションの現在地と未来」の基調講演に登壇し、岸本 好弘 氏(遊びと学び研究所)や谷 英高 氏(ゲーミフィケーション研究所 所長/SEGA XD CEO) らとゲーミフィケーションの現在地と未来について議論を深めました。
また、「Gamification Award 2025」表彰式では、審査委員としてゲーミフィケーションを活用している優れた取り組みを実施した企業・団体に表彰を行いました。

今回の QUEST は、ゲームを「遊び」から「社会の仕組み」や「行動を促すデザイン」へと拡張していく、その現在地と未来の可能性を強く感じさせるイベントとなりました。

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