Ludix Lab @ UTokyo
東京大学 大学院情報学環 藤本研究室
カテゴリー: Lab news
投稿日時: 2025-09-23 投稿者: leafyyan
こんにちは!藤本研究室M1の厳です。
8月の終わりから9月のはじめにかけて、北海道大学水産学部の練習船「おしょろ丸」に乗って、沿岸海洋学実習に参加してきました。東大からは私を含めて3人、ほかは北大の学部生が60人ほど+修士のTAさん。まさに“北の大所帯”で、少しドキドキしながらのスタートでした。
実習の内容はとにかく盛りだくさん。水中音響機器の実習、海洋観測、海水分析、データ解析…と、しっかり理系っぽいこともやりつつ、イカ釣りや解剖、プランクトンや底生生物の顕微鏡観察、鳥類や哺乳類の目視調査など、ちょっとした冒険感のあるプログラムもありました。

中でも印象に残ったのはやっぱり「タコ釣り」。釣り上げた瞬間の重みと力強さに「こんなに大変なんだ!」とびっくり。周りで「うわ、出た!」と歓声があがったりして、まるでお祭りみたいでした。イカ解剖も、最初はちょっと躊躇したけど、普段はなかなか触れない世界に直接触れられるのは貴重な体験でした。

「おしょろ丸」での生活も、普段の生活とはまるで別世界。毎朝6時起床、23時消灯。シャワーは節水を意識して、なるべく短く。ゲーム機の持ち込みは禁止で、Wi-Fiどころか携帯も圏外。船内にはクレジットカードで使える公衆電話がひとつだけ、という徹底ぶりでした。
つまり、AIもPCもスマホもない“オフライン生活”。最初は「どうやって発表準備するの!?」と不安でしたが、いざやってみると意外とアナログも悪くない。ノートとペンだけでアイデアを出し合って、みんなでまとめていく時間は逆に集中できて新鮮でした。

それから、細かいルールもいろいろあって面白かったです。「襟付きの服必須」「ドアの敷居は踏まない」「船縁に座らない」などなど。4日間過ごすうちにすっかり体に染みついてしまいました。
さらに特別な思い出になったのが、夜の星空観察。普段は夜間の甲板は禁止なのですが、航海士さんが案内してくださり、2晩にわたって星を眺める時間が設けられました。雲ひとつない夜空に広がる無数の星々、そして天の川までくっきり。東京ではなかなか見られない景色に、ただただ感動しました。久しぶりにこんなに明るい星空を見て、感動レベルMAX。心が洗われるような、すごく癒される時間でした。
・「ゲーム機持ち込み禁止」にショックを受けていたゲーマーがちらほら。夜はみんなでトランプやUNOが定番に。
・消灯23時なのに、翌朝は6時起床。寝不足の顔で朝食に並んでる人が続出してました。
・そして意外な発見――同室の女子たちはほぼ全員少なからず船酔いして全滅状態だったのに、なぜか私はピンピンしてました。酔い止め薬も用意してたのに一度も出番なし。4日間まったく揺れを感じず、「もしかして私は天選の海賊王…?」と思いました🌊

最後には「海洋中のマイクロプラスチック調査と発表」というテーマで成果をまとめ、グループごとに発表しました。短期間でデータを整理して議論し、形にするプロセスは大変でしたが、その分達成感も大きかったです。
4日間という短い時間でしたが、普段のキャンパスライフでは味わえない“船の上の生活”を存分に体験することができました。自然や海に向き合う中で、研究への視点も少し広がった気がします。次はもっと長い航海にも挑戦してみたい!
投稿日時: 2025-09-19 投稿者: shokotange
2025年9月13日〜14日に開催されたDiGRA JAPAN 夏季研究発表大会において、坂井特任研究員が研究発表を行いました。
発表テーマは「人生における喪失をテーマにしたダイスゲームがプレイヤーの自己成長感および人生満足度に及ぼす影響」。
本研究では、喪失体験を題材にしたシミュレーション型ボードゲーム『Dice of Destiny(運命の賽子)』を用い、プレイヤーが大切なものを失う体験を疑似的に経験することで、自己成長感や人生満足度にどのような影響を与えるのかを検証しました。
その結果、ゲームの中で人生における大切な物事を喪失する体験は、 プレイヤーの自己成長感と人生満足度を増加させることを示しました。
今後は、今回の成果を基盤に、効果の持続性や心理変化の要因を検討していく予定です。
ゲームが人生を見つめ直す「学びの場」としての可能性を広く共有し、次なる研究展開へとつなげていくことが期待されます。

投稿日時: 2025-09-11 投稿者: shokotange
2025年9月5日(金)~7日(日)、東北学院大学にて開催された日本心理学会第89回大会において、藤本徹教授、坂井裕紀研究員、木村知宏研究員が研究発表を行いました。
発表タイトルは、
「プレイフル状態とシングルマザーの経済的自立との関連 -自立支援プログラムを通して就職したシングルマザーの調査-」。
母子世帯の経済的自立をめぐる現状を踏まえつつ、支援プログラムの利用経験と「プレイフル状態(楽しさや面白さを感じられる心理的状態)」との関連を明らかにすることを目的とした研究です。
本発表では、2024年12月に実施した53名のシングルマザーを対象とする調査データをもとに、経済的自立感・自立意識の変化・プレイフル状態の関連について報告しました。分析の結果、経済的自立感とプレイフル状態の間に有意な関連があることを明らかにし、支援プログラムを「楽しい」「面白い」と感じながら利用することが自立の促進につながることを示しました。また、質疑応答では活発な議論が行われ、今後の福祉やキャリア支援のあり方を考える上でさらなる重要な知見が得られました。


投稿日時: 2025-09-11 投稿者: shokotange
2025年9月6日(土)、新潟市の開志専門職大学にて開催された日本キャリアデザイン学会 第21回研究大会において、広瀬由美子研究員が研究発表を行いました。
発表タイトルは、「多世代交流型ライフキャリア学習支援ワークショップの開発と評価 -映画を活用したプレイフルデザインに着目して-」 。大学生と50代社会人という異なる「移行期」にある世代を対象に、映画を媒介としたワークショップを通じてライフキャリアをめぐる対話と相互学習を促進することを目的とした研究です。
発表後の質疑応答では、対象世代の設定理由やオンライン実施の是非をはじめ、多世代展開の可能性、さらに女性のキャリア形成への応用といった幅広い視点から質問が寄せられました。会場からは、高校生やリタイア世代を含めた取り組みの可能性や、地域連携活動・教育現場での実践のあり方に関しても意見が出され、活発な議論が交わされました。
こうしたやりとりを通じて、本研究が持つ応用可能性の広さと、世代やテーマを拡張しながら多様な場面に展開できる余地が確認され、映画を活用したプレイフルデザインがキャリア形成に寄与し得る新たな可能性が示されました。
大会詳細はこちら
投稿日時: 2025-09-05 投稿者: shokotange
藤本研究室の卒業生・犬田さんが、研究協力者としてボードゲーム『シランティア』の開発プロジェクトに参加しました。
このプロジェクトは、東京大学の学生と吉本興業の芸人・スタッフが協働し、オリジナルボードゲームを企画・制作する取り組みです。
ゲームの監修にはプロのゲームデザイナーが携わり、イラストは吉本興業所属の芸人・ネゴシックスさんが担当しました。完成した『シランティア』は、簡単なルールで誰でも楽しめる内容となっており、東大生協などで販売されています。売上の一部は、東京大学の体験学習プログラムの支援に充てられます。
本プロジェクトに研究協力者として関わった犬田さんは、研究室で培った知識を活かし、社会連携を通じた教育的取り組みに貢献しました。
詳細は東京大学公式記事をご覧ください。
👉 東京大学ニュース「学生が吉本興業とオリジナルボードゲームを開発」
投稿日時: 2025-08-29 投稿者: shokotange
2025年8月23日(土)・24日(日)、東京大学本郷キャンパス福武ラーニングスタジオにて「夏休み親子ゲームジャム2025@東京大学」が開催されました。本イベントは藤本徹研究室が主催し、9歳から14歳までの子どもとその保護者、計10組が参加しました。
今回のテーマは「防災」。災害時の協力や資源の活用といった課題をゲームの仕組みに取り入れることを通じて、「日常生活における創造性」(mini-c)を育むことを目指しました。
1日目は、宝石の煌きやキングドミノ、ウボンゴなどの人気ボードゲームを体験し、ゲームデザインの多様な仕組みに触れると同時に、親子や参加者同士の交流を深めました。さらに保護者向けには「創造性を育てるための子どもへの関わり方」に関する講義も行われました。


2日目は、いよいよゲーム制作に挑戦。プロのボードゲームデザイナーや編集者も加わり、アイデアの具体化をサポートしました。試作と改良を繰り返し、最終的に5グループから6つの防災ゲームが完成し、子どもたちの自由な発想と保護者のサポートが融合した作品が発表されました。

参加者からは「プロのデザイナーと作業できて貴重だった」「発想や技術的なこと、メモの取り方など、子どものサポートの仕方も学ぶことが多かった」「自分の作ったゲームを大人が遊んでくれて嬉しかった。また挑戦したい」といった声が寄せられ、会場は熱気と充実感にあふれました。
本イベントは、子どもたちが創造性・協働力・表現力を育み、親子で新しい学びを共有するよい機会になりました。
投稿日時: 2025-08-22 投稿者: shokotange
2025年8月7日〜9日に韓国・仁川で開催された国際学会 「International Conference for Media in Education 2025(ICoME 2025)」 において、藤本教授が Invited Speaker として登壇しました。
今年の大会テーマは、
“Transforming Educational Media: Towards Accountable and Inclusive Future Learning”
であり、教育メディアを通じた未来の学びの在り方を国際的に議論する場となりました。
藤本教授は“Inclusive Futures through Play: Exploring Game-Based Learning for Diverse Learners”というテーマのもと講演を行いました。ゲームのもつ柔軟性や協働性に注目し、多様な学習者が参加しやすい学びの形を探る視点を提示し、研究者や実践者と活発な意見交換を行いました。

大会の詳細はこちら
投稿日時: 2025-08-22 投稿者: shokotange
修士2年の濱田璃奈さんが2025年8月7日〜9日に韓国・仁川で開催された国際学会「International Conference for Media in Education 2025 (ICoME 2025)」において「Young Scholar Award」を受賞しました。
ICoMEは、日本教育メディア学会(JAEMS)、韓国教育情報メディア学会(KAEIM)、中国教育工学会(CAET)、アメリカTCC(Teaching, Colleges and Community)との連携によって開催される国際学会です。同賞は、研究内容やプレゼンテーション力、学術的な貢献度が特に優れていると評価された若手研究者に贈られるもので、濱田さんが選出されました。

投稿日時: 2025-08-21 投稿者: shokotange
8月14日(木)13時30分から16時30分にかけて、長崎原爆資料館 平和学習室にて、ゲーム体験ワークショップとトークセッションを開催しました。
冒頭では、研究室代表の藤本教授より、本イベントの趣旨と研究室の主な活動について説明がありました。その後、坂井特任研究員の進行により、喪失から人生の大切さを学ぶゲーム『Dice of Destiny: Memories of Nagasaki』を用いたワークショップが行われました。


参加者からは、ゲーム体験を通じて「喪失から学ぶ意味」や「非戦・非核を伝える重要性」などの感想が寄せられました。続いて、木村特任研究員からは平和学習に効果的なビデオゲームの事例が紹介され、さらに坂井特任研究員からは、ビデオゲームを用いた悲嘆を軽減する研究についての説明がありました。
その後、登壇者3名による対話では、教育におけるゲーミフィケーションをデザインする際に配慮する点について意見が交わされました。

終盤には、参加者も交えてゲーミフィケーションの歴史を振り返りつつ、平和教育とゲーミフィケーションの可能性について活発な議論が行われました。
本イベントは、会場とオンラインのハイブリッド形式で実施され、トラブルもなく無事に終了しました。
最後に、参加者の皆さまと共に、平和教育とゲーミフィケーションについて積極的に議論を深められたことに、心より感謝申し上げます。
【参加者からの感想(抜粋)】
Mさん 40代 女性
昨日は大変楽しく有意義な機会に参加させて頂き、ありがとうございます。以前シリアスゲームに参加した際は、ゲーム外も深刻で重いムードだったので、今回覚悟して臨みましたが、心理面への配慮が随所に凝らされており安心しました。頂いた資料でより振返りやすくなります。今後の人生に役立てたいと思います。
Sさん 20代 女性
心に残る素敵な体験をさせていただき、誠にありがとうございました。喪失というテーマでありながらも、ゲームの流れに沿って人生を振り返り、取捨選択することで、楽しく喪失を体験することができました。また、他の参加者の価値観や言葉に触れることで、新たな知見を得ることができたうえ、時には他の参加者の人生経験に励まされることもあり、ポジティブな気持ちでゲームを終えられました。トークセッションでは、ゲームの作り手の葛藤に触れることができ、大変勉強になりました。
投稿日時: 2025-07-15 投稿者: fhasuike
こんにちは!M1の蓮池です。暑さが増してくる季節になりました。
本日は、各々の研究の進捗状況をまとめて、中間発表として報告するゼミ活動となりました。
発表は、社会的課題の解決から、職業倫理教育、文化表象、研究方法論に至るまで、ゲームやインタラクションを共通の軸とした多岐にわたる内容となりました。
友利さんは、「大学生とのゲームを介した交流を通して、児童養護施設で生活する若者の大学に対するイメージの形成」と題した修士論文の中間発表を行いました。
この研究は、児童養護施設の子どもたちの大学進学率が全国平均に比べて著しく低いという背景から出発しています。友利さんは、進学率の低さの一因として、大学進学への具体的なイメージや身近なロールモデルの不足があると考え、大学生との交流がその解決策となりうるかを探っています。
研究では、「ボンバーマン」を用いたゲーム大会「Bomber Cup」を企画・実施。児童養護施設の生徒と大学生がチームを組んで交流する場を設け、その前後での意識変化をアンケートやインタビューを通じて調査しました。
研究結果より、ゲームを介した交流は、施設の子どもたちが大学生個人やその生活(学業、アルバイトなど)へ興味を深めるきっかけとなることが示されました。今後は、修士論文提出を目指し、得られたデータのさらなる分析に取り組むそうです。
大空さんは、「職業倫理教育に資するゲーム学習プログラムの開発と評価」と題した研究の進捗を報告しました。近年、研究不正や企業の不祥事が社会問題となる中、既存の倫理教育が一方的な知識伝達に留まり、実践的でないという課題意識から本研究はスタートしました。
大空さんが開発したカードゲーム「QRP GAME」は、「疑わしい研究活動(Questionable Research Practice)」をテーマに、参加者同士が対話を通じて倫理的な判断軸を自ら考えることを促す教材です。これまでに複数の領域でワークショップを実践し、プログラムの改善を重ねてきました。
ワークショップは参加者から高い満足度を得ており、特に価値観の異なる他者との「対話」のプロセスが学びや楽しさにつながっていることが確認されました。
ゲームの設計は、参加者の多様な価値観を引き出し、それがゲームの面白さに寄与するよう意図通りに機能している可能性が示唆されました。
今後は、収集した質的・量的データをさらに詳細に分析し、学習効果のメカニズムを解明していく予定です。
質疑応答では、『公正感受性尺度』は簡単に変わるものではない等の評価指標に関する議論が活発になりました。
Leafyさんは、「Playful Orient? – ビデオゲームにおける東アジア文化の(再)構築とプレイヤーのアイデンティティ・フィードバック」というテーマで新たな研究計画を発表しました。
当初はフィッシング詐欺対策のゲーム設計を検討していましたが、自身の関心を再考し、ゲーム研究の分野へと方向転換しました。
この研究は、西洋製の人気ゲームに含まれる日本、中国、韓国などの東アジア文化の表象(侍、武術、K-POPなど)を分析するとともに、それらの文化圏のプレイヤーがその表象をどのように受け取り、解釈し、あるいは批判しているかを探るものです。
分析は、『Ghost of Tsushima』『Sifu』『Overwatch』といったゲームのテキスト分析と、SteamやReddit、Bilibiliなどのプラットフォーム上でのプレイヤーの受容分析を組み合わせて行われます。
また、本研究内容は、2025年10月にソウル大学で開催される「SNU-UTokyo-NCCU合同シンポジウム」で発表される予定です。
楽しみです!
Johannaさんは、一連の研究活動の締めくくりとして、ゲームベース学習(GBL)における人間とゲームのインタラクションを分析するための方法論的フレームワークを提示しました。
Johannaさんの発表では、S-O-R-Cモデル(Stimulus-Organism-Response-Consequence)に基づき、プレイヤーの行動を「行動レベル」「認知レベル」「生理レベル」といった複数の階層で捉え、体系的に分析・モデル化するアプローチが紹介されました。
これにより、ゲームがプレイヤーに与える影響や学習が起こるメカニズムを、仮説に基づいた理論的モデリングと、実際のデータに基づいた経験的モデリングの両面から解明する道筋が示されました。
また、日本での生活も存分に楽しんでいる様子が紹介されました。
日本語の勉強だけに留まらず、合唱団のイベント・ラボメンバーとのTTRPG(Tabletop Role-Playing Game)をするなど積極的な活動を行っています。
Johannaさんが、2ヶ月後に帰国してしまうのは大変寂しいですが、それまでにたくさんの思い出を作ろうと思います!
今回のゼミの報告は以上です!もうすぐ夏休みが始まりますね。
体調には気をつけて、これからも研究活動を進めていきましょう!
それでは、また次回のゼミもお楽しみに。